ザ・ピーナッツはなっちとあさみん。
インファント島の小美人(ザ・ピーナッツ)は言葉を発する前にお互いの顔を見合わせるしぐさをする。そしてユニゾンでしゃべり始める。これは「せーの」というアイコンタクトを交わしているのだと思うが、このみつめあってからしゃべりだすイメージがキッドのザ・ピーナッツのコアにある。だから安倍姉妹がこのポーズを決めた時は嬉しかった。
番組内番組の『ザ・ヒットパレード』でザ・ピーナッツは箱から飛び出るのだが、この箱は明らかにモスラのマユであった。しかし、『ザ・ヒットパレード』は1959年スタート。映画『モスラ』は1961年公開なので、これはきっとシャレなのであろう。まあ、研究資料がVTRではなく、フィルムだったからと想像もしてしまうのだが。
昔のテレビは本当にシャボン玉のようであった。一度見たらもう二度とは見れない。今のようにどうでもいいドラマまで即DVDになって無駄に積まれているのを思うとちょっと複雑な気持ちになる。それはさておき、テレビ黄金期の回顧が始まると、ああ、通夜もまだなのに「デジアナになります」という巨大なビジネスが葬式を早々と始めている気にもなり、つい涙目になってしまう東京タワーと同い年のキッドなのであった。
で、『ザ・ヒットパレード~芸能界を変えた男・渡辺晋物語~前編』(フジテレビ060526PM9~)脚本・矢島正雄、演出・鈴木雅之を見た。渡辺晋は柳葉敏郎、渡辺美佐を常盤貴子が演じている。実在の美佐さんは美人なので常盤さんはピッタリの配役だと思うが、もう少し昔のお嬢様なしゃべり方でもよかったと思う。女子大生時代と実業家時代でおきゃんさの差別化はできていたが、もはや大女優なのでもう一歩踏み込む演技を期待してしまう。
中村八大(ふかわりょう)、宮川泰(近藤芳正)、すぎやまこういち(原田泰造)と作曲家だけでも神様のような人たちの登場である。近藤芳正さんは時々谷啓を演じているのかと思うほどだったが、葬式の時に『宇宙戦艦ヤマト』のテーマで出棺してくれと遺言した人のおかしさをがんばって再現していたようだ。ザ・ピーナッツのレッスンの時の軽いボケは伝わったかどうかギリギリだったが。
ドラマとしては『ザ・ヒットパレード』のタイトルをめぐる渡辺晋のこだわりが前編のクライマックスになる。ほぼ天才のすぎやまこういちのアイディアに対して渡辺晋がねばる。このギリギリまでOKを出さないリーダーというのは下っ端にとっては大迷惑なのであるが、このもうワンランク上を狙う姿勢が創作の基本中の基本なのであるなあ。困ったすぎやまこういちが目先を変えた瞬間、渡辺晋は憎まれ役の甲斐があったと思うのである。キッドは頭が下がるのであるがお茶の間には伝わったのだろうか。
明らかにレッスンの時と声質の違うなっちとあさみんの素晴らしい名曲で幕となる前編はほぼ美談。展開に不満が残る人もいるだろうが、あの時代を掘り下げだしたらどんな地獄がでてくるか、分かったもんじゃありませんから。でも予告編では山下敬二郎が別のプロダクションに・・・のシーンが。
何も知らなくて恥ずかしい時代というのはある。キッドは山下敬二郎さんと初めて会った時に家族の話をしていて「お父さんのお仕事は何ですか」と質問してしまったことがある。大落語家・柳家金語楼さんの次男に対してである。山下さんはにこやかに笑って教えてくれた。ロカビリー一筋の山下さんは優しい大人だった。そんな山下さんが結構、ワルとして描かれている。若いって面白くてやっぱり恥ずかしいものなのだな。
日曜日に見る予定のテレビ『功名が辻』(NHK総合)
| 固定リンク
コメント