たけしさん、夏次郎見たよと小泉総理は云った。
遠い昔。とあるスタジオで深夜放送のラジオ番組のパイロット版のトークを聞いていた。ディレクターが言う。「こんなに面白いのに上の方はわからないんだよ」すでに別の局ではたけしさんのトークショーが始まっていた。「企画はうちの方が早かったのにな」と未練たっぷりにディレクターはぼやく。キッドは別のテレビ局で、『みのもんたの家族対抗芸能クイズ』が『ツービートのクイズマガジン80』に変わり、クイズ出題者として、死ぬほどクイズを作らせておきながら、座付きの作家がいるからという理由で初回収録だけでクビにされたうらみがあったので、日の目を見なかったたけしさんのしゃべりを上の空で聞いていた。
それから、数年後、『天才たけしの元気が出るテレビ』がスタートして、7年くらいの間、毎日、たけしさんのことを考える日々がくる。誰かを思うことを愛と呼ぶのなら、キッドはたけしさんを愛していると思う。毒舌ということでは日本一の芸人であると思う。たけしさんは「ツッコミはボケの一種」であるということをキッドに示してくれた芸人さんだ。そして20世紀末を代表するお笑いおタクの一人だろう。漫才ブームの中、関西圏の方言がインパクトを与える中、標準語ではなく、東京場末の職人言葉でボケていたことがすごいと思うのだ。
ま、いろいろなことがあって世界のたけしになったり、とんでもないことをしたりでフォーエバーヤングのたけしさんだが、今、持っているテレビのレギュラー番組の中で毒舌がコンスタントに発揮されるのはこの番組だと思う。
で、『たけしのTVタックル祝・・・小泉総理5周年』(テレビ朝日060501PM9~)構成・橋克弘(他)、ディレクター・佐藤文彦(他)、演出・高橋尚樹を見た。大竹さんが休みで阿川佐和子さんとたけしさんがMCである。もちろん、話題は小泉総理だ。
キッドは小泉総理が好きだ。だって面白い。小泉総理が日本を良くしたのか、悪くしたのかというのは誰にも解析不能だと思うが、少なくとも小泉総理はメディアにおける自分を客観視している政治家だと思う。亀井や野中にはそれがない。自分が悪人顔だという自覚が足りないのである。そういう意味で小沢はちょっぴり自覚的なのだと思う。たとえば森前総理はそういう意味で大ボケなのか。役者なのか一番判断に困る。ただ云えるのは「神の国」ではなく、「神様がたくさんいる国」という表現力はないのだった。
同じボケでも小泉総理は『菊次郎の夏』という映画のタイトルを監督本人に『夏次郎』見たよと云ってしまうという楽しいエピソードにする。とたけしさんは言う。そしてそれは職人言葉的であると。
冷戦(第三次世界大戦)終了後、対テロ戦争(第四次世界大戦)に突入しているという自覚があるかないかで、職人言葉の意義は変わってくる。大賄賂首相の娘さんにはこの自覚がないから失脚したと言える。戦争なんかないと目をそらしていれば、捕虜なんかいないということになるし、敵中に乗り込んでたとえ一部分でも敵から捕虜開放をすることはできないだろう。職人言葉の論理、現場の論理だから、完璧ではないが、やれることはやるという姿勢が生まれるのである。
たけしさんは職人言葉仲間の小泉総理を短く論評した。これぞ、毒舌なのだな。ま、『菊次郎の夏』は映画監督としては『夏次郎』じゃいやだという気持ちもあったのかもしれませんが。
腕のいい職人が9月に現場を離れると、日本はどうなってしまうのかなあ。ま、それはそれで楽しみだ。
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