情熱大陸でマタギが共存なんて嘘だと言う。
情熱大陸は人間百科であるが、どちらかといえばスポーツ選手、芸能人の回が多い。
今年になってからでも、芸能人8人、スポーツ関係者3人、医者2人、その他3人である。その他は劇画家、料理家、絵描きだった。まあ、視聴者の興味がそこにあると言われればそれまでだが。
そこにマタギである。これは見ざるをえない。もっとも直木賞作家・熊谷達也の小説『相克の森』のモデルになったマタギということで、まったく名なしのマタギではないのだが・・・。
で、『情熱大陸』(TBSテレビ060430PM11~)構成・岩井十朗、演出・松村亮一、ナレーション・窪田等を見る。情熱の人は大滝国吉さん、45歳、新潟県山熊田のマタギの親方である。
マタギは簡単に言うと猟師さんです。大滝さんには4人の子供がいて、中学生の娘が2人、小学生の息子が2人というような編成。後はお母さんと奥さん。亡父も亡祖父もマタギであり、代々マタギ。しかし、幼い長男はマタギは継がないという。理由は熊は怖いからだった。・・・そう、マタギは熊を撃たねばならぬのだ。
12月の新潟県北部。山は銀世界である。散弾銃を肩に、マタギは雪の山中を走る。ウサギを撃ち、テンを撃ち、ヤマドリを撃ち、タヌキを撃ち、カモを撃ち、・・・獣の皮をはぎ、獣の肉を食う。骨までしゃぶりつくす。家でタヌキを平たくしていると血の色が生々しい。子供の目には不安がある。家族でなべをかこむ。骨を手にした子供の目にも不安は残る。この不安の色は難解だ。マタギの子供の不安。
やがて、巻狩りという手法で熊を獲る。十数人が参加する集団狩猟である。5歳の月の輪熊が撃たれた。死んだ熊は小さく感じられる。「かわいそうと思ったら、撃てない。自然というものは強いものが命を獲りながら、生きていくということ。それは痛いことだ。熊を殺した時、俺も半分死ぬ」・・・マタギの目にも、不安がある。ただその不安は老練なのだった。
山の神としての熊がマタギと命をやりあう。小説なら『凍樹の森』(谷甲州・徳間文庫)のように楽しめる。しかし、情熱大陸には不安がつきまとうのである。それは人がみな忘れん坊だからだろう。
火曜日に見る予定のテレビ『アテンションプリーズ』(フジテレビ)
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