トリック新作スペシャル再放送で7年目。
劇場版2のための宣伝番組である。トリック(2000)は平均7.9%、トリック2(2002)が平均10.6%、劇場版をはさんで、トリック(2003)が平均15.6%、そして新作スペシャル(2005)が24.7%と苦闘の果ての栄光。本作品が半年でゴールデンで再放送という快挙を成し遂げたシリーズ。ソフトは積み重ねられ、カルト的な人気を持ち、主演女優は視聴率の女王に、演出家は専門学校卒業生のカリスマになっている。トレビアンである。
切り口多すぎて、おタク泣かせだ。『金田一少年の事件簿』『ケイゾク』と続く演出家のトリックへのこだわりの結実としてタイトルを語るだけでも相当に語数を要するだろう。阿部寛さんの超二枚目なのに演技派の秘密を探るだけでも一生を費やしそうだ。言葉があふれるのである。どうしよう。こんなことなら今日は『代表チームサッカー日本VSマルタ』にしておけばよかったと思うほどだ。
とにかく、魅力的なドラマであり、また世間の一部には理解されないだろう「おふざけ」に徹したソフトであり、それがメジャーとなった稀有な作品である。キッドはとにかく作品全体がかもしだす「コツコツとやっている」という姿勢が好きだ。そして登場人物がもはや夢に出てくるほどなのだ。映画宣伝再放送しすぎだ。
で、『日曜洋画劇場特別企画・TRICKスペシャル』(テレビ朝日060604PM9~)脚本・林誠人、演出・堤幸彦を見た。最後に犯行の真相を語るのは名取裕子である。ネタバレとかそういう問題ではなく、ドラマの中で本人が語るのだから間違いない。つまり語る前に「語るわよ」と語るのである。こういうことが許される世界であり、アニメで声優経験のある仲間由紀恵がウヌャニュペェィギュゥリュ星人の声を真剣に演じるような空間なのだ。
お約束の山田里美(野際陽子)の書道塾での子供たちのお習字は「カルヴォナーラ」「安定収入」「通風」「間開けすぎ」「ハイリスクハイリターン」「祥子が犯人」「国家公務員一種試験突破」「劇場版2よろしくねっ」「23時超えるよ」である。だから、ネタバレとかそういう問題ではない。・・・と思う。ここで「テロップが出るよ」とか「Aママ逮捕」とかがあると怖いのだが、「この世に超能力者などいない」という番組テーマに反するので言及を控える。
インチキなバラエティーショーのインチキな司会者や出演者、そしてインチキな占い師が「うらないでおもてなし」する番組内番組でスタートすると主演女優は去年の三社祭りの頃の浅草の花やしきでまじめに奇術を演じてクビになる。とぼとぼと家路につくと相棒から電話がある。そして貧乳と巨根という素人探偵コンビの中でも屈指の恥ずかしい二人は事件に突入していく。その間もなすびだの亀だの御札だの山海塾だの小ネタ満載である。
小ネタでいえば、トリックの舞台となる雑貨商『古池屋』では「赤ブラジャーと白ウサギ」がつるされているが、赤ブラジャーは「忘れ物」であり、白ウサギは「昨日GET!」なのであってドラマの展開とは何の関係もない。また裏にするとカンナになるオロシガネも売られておりその効用は鰹節もおろせ・・・・限がないのでやめておきます。西村雅彦と阿部ちゃんが肉弾対決するシーンはスカシになっているがこれはあえてふざけたスカシ。ただのお遊びかと思っていると重要な証拠を消滅させるくだりになっていたりして油断できないのだな。
エンターティメントなのである。くすぐるのである。そしてついに敵ボスに名取裕子さんも登場。もうトリックの敵役は一つのステータスだろう。個性派俳優の事典といえるほど歴代様々な被害者と加害者がいた。かぶっていないのが不思議なくらいだ。いや、かぶっているのかも。とにかく、事件が解決し、上田先生と次郎号が河原を散歩し、山田が生活のために彼を探し始める頃、視聴者はちょっぴり寂しくなっている。卒業式、漫画の最終回、旅行の終わりのあの寂しさ。情が移っている。センチメンタルなのである。スタッフのしてやったり状態なのだ。『月光』(鬼束ちひろ)でなく『ラッキー・マリア』(Joelle)でもキッドは許せるのである。
火曜日に見る予定のテレビ『ニードフル・シングス』(テレビ東京)
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