ケロロ軍曹のペコポン(ポコペン)戦記であります。
キッドは1993年におタクを教養人と規定したわけだが、その場合は一般人を無知蒙昧な庶民として差別している貴族主義的な傾向がなきにしもあらずである。師匠ソクラテスは「無知の知」で「俺が知らないことがあるのにお前が全部を知っているはずはない」とよく言うのだが全知全能を語るものは「シッダルタとかそう信じ込んでいるんだからしょうがない」のでゴロゴロいる。輪廻転生と宇宙円環に従えば自他同一であるのだが、仏教徒にそんなこと言っても無駄か。
「袖触リ合うも多生の縁」の正当性はさておき、解釈としては「袖が触れ合うことになったのもたくさんの輪廻転生を重ねたことで結ばれた縁があること」である。輪廻転生で因果応報的な発想である。で、まず「ふりあう」は「触り合う」でも「振り合う」でもいいことになっている。「振り合う」となるとかなり神道的になり、土着感がある。「愛する人のために無事を祈って呪術的に袖を振るのは縁だから」と恋愛の匂いもする。次に「たしょう」である。俗に「他生」と書く。と正当な人々は言うが、「多生」と「他生」は「多くの前世」と「今世以外のすべての前世」と解釈すれば「他生」の方がスケール大きい。ただし、「多生」には「今世」も含まれる可能性があり、そういうニュアンスで使うときは正しいと考えられる。しかし、無知な異教徒が「多少」を使った場合の間違いを指摘する場合、彼らは「主に今世の、あるいは輪廻を認知しない立場からの発言」をしているので「他生」を使った方がインパクトがある。だからキッド的には「袖振り合うも他生の縁」として「こうしてお互いに出会ったり(別れたり)するのも前世からの必然であってけして偶然ではないのです。だからセックス(さばさばとお別れ)しましょう」と解釈するのが教養だと考える。
そう解釈しないとギロロのカニングハム姉弟に対する「一期一会」的なおもてなしの心底は理解できないのであります。
で、『ケロロ軍曹』(テレビ東京060616PM0530~)原作・吉崎観音、脚本・笠原邦暁、演出・清水一伸を見たのであります。(以下であります省略)・・・先週、特撮シリーズネタでこれでもかと押した反動なのか、今週はガンダムネタが続々登場。電車男もアムロも星くんも歓喜の回であったな。姉がチャコちゃんのゲストだとパーフェクトだったな。神谷が神谷だけに意外と親族まとめだったりするとおしゃれすぎるのだが。ああ、もう大衆相手の文脈ではない。でも対象が対象ですから先走ることをお許しください。ケロロがいけないのだよ。
孤高を気取っても同じ趣味の人を見かけると勝手に心があったかくなったりする弱みにつけこんだパロディー三昧なのだが、原作の骨格がしっかりしているので非常に完成度の高い「おふざけ」になっている。ペコポン(原作ではポコペン=地球)を侵略しにきた宇宙人がガンプラオタクなのでうかつな手法では侵略できないという基本テーマが「敵国の異性を愛してしまう」というラブロマンスの王道のいいボケである。それがかわいいカエル系で少年少女と戦いながら友情が芽生えていくというポコペンもどきのテポドンで狙われている国民にとっては敵にはこうであってもらいたい理想のキャラになっている。圧倒的にトレビアンじゃないか。
で、全モビルスーツの中で「どの機体もそれぞれ・・・いえ、グフです。グフが一番」好きな人にとってはのっけからガンダムVSランバラルで始まり、小銭をせしめたケロロが作るガンプラがグフという展開はまさにアタリだ。アタリの回だ、ガチャポンでいきなりシークレットのような手柄立てちゃえばこっちのもんだ満州軍参謀なのだ。それにしてもケロロつくづくダメ宇宙軍人ですわぁ。前後に甲殻だのハム太郎だのをカニだけにはさみながら、チョーカワイーカニパン宇宙人とギロロ伍長のアムロ=星ゆえの特訓シーンへと展開していく。花形の殺人打球に対する一徹の奇策炸裂である。この場面でのギロロの情が「他生の縁」で説明されるべきなのかどうかはそれぞれの信仰心に問うがよい。ま、サルカニ合戦で有力な森羅万象がカニに味方したり、可愛い姉弟の仇討ちには助太刀するのが日本の伝統文化ですから。
Bパートはぶっちゃ毛のダソヌマソのシリーズ展開。サタディナイトフィーバー世代以降にはペーパーピーコでもある。ここでもファーストシリーズの終焉を飾るアムロ散華のオマージュが虚空に漂うサイコフレームも美しい。ヘルメットオチも美しい。ケロロか、何もかも美しい。キリがないのでキッド、やめまーす。
テムレイのシーンの本当の意味が分かるのはある程度愛された少年時代を送り、尊敬もし、反発もした親にちょっとした認知症の傾向を発見した時である。その哀愁。もちろん、徘徊したりする前に心不全になれと祈ったりする人をキッドは責めたりはしない。それもまた他生の縁、あるいは人は獣のようには生きれない複雑系なので。
関連するキッドのブログ『堂本光一がトールで獣王の件。』
日曜日に見る予定のテレビ『新堂本兄弟』(フジテレビ・・・ま、裏が裏だけにVTRですがね)
| 固定リンク
コメント