« ドラえもんの店とのび太の街。 | トップページ | うたばんだけど2曲それは奥様ばんだから。 »

2006年6月 8日 (木)

観月ありさのハートに火をつけて。

孤独という言葉は二つの漢字で出来ている。孤とは幼くして親がないこと。孤児である。独とは年老いて子供がないこと。独居である。かなり寂しいのである。本能というフィクションにおいてはかなりこわいことだ。独身貴族などという今を生きる気楽さで開き直る言葉もあるが、独立して生きていける強さに恵まれていないと成立しない。群れを軽蔑することはたやすいが、群れることができないのは考えものだ。熱き血潮に触れもせずだ。

孤独という言葉と縁の深い作品がある。ハートウォーミングストーリー。心暖まる物語。その定番が「ダメになりそうな人々が助け合って再生する」というスタイルである。孤独が心を冷却するとき、心をあたためるものが欲しくなるのはないものねだりの人間にとって必然だ。そういうジャンルの中で、この作品は非常に高いクオリティーを保持していると考える。

前世紀末のこのジャンルの代表作は『バグダッドカフェ』(1987)になると思うが、再生にはリーダーシップが必要になる。今回、つぶれそうな旅館の女将がリーダー。リーダーには謎が必要となる。彼女はなぜやる気になったのか。この物語がロマンチックなのは動機が・・・ハートに火をつけられた。火をつけた相手はもう手の届かないところにいる。でも煙が目にしみるので・・・という不純さに満ち溢れているところだろう。

で、『私を旅館に連れてって』(2001春ドラマの再放送・フジテレビ060607PM0207~)企画・石原隆、脚本・太田愛、音楽・本間勇雄、演出・村上正典を見た。『大脱走』『淋しいのはお前だけじゃない』『高原へいらっしゃい』に影響を受けた企画者はチームワーク、純愛、再生という三つの要素を融合して結実させている。脚本家はウルトラマンシリーズで怪獣をなるべく殺さない話を作る人。スカシだが反逆児なので許される。このシリーズにはもう一人脚本家がいて女優出身の相沢友子である。その心情は主人公たちに生き生きと反映されているようだ。

観月ありさはキャンペーンガールのミニも似合い、女将の和装も似合い、最高に魅力的な勉強は出来ないけれど頭が悪いわけじゃないタイプを演じている。これに勉強もでき、頭もいいけれど人の心がわからない浅野ゆう子、勉強もできないしちょっと頭も悪い矢田亜希子、勉強も頭もそこそこの馬渕英里可、まだまだ子供の黒川芽以、疲れたベテランの円城寺あやなどが集い、それぞれがよどみなくいいキャラである。素晴らしいキャスティングだ。

エピソードがお約束ながらスピーディーに展開する。オンエア当時、あっと言う間につづくになってしまう印象があったのだが、再放送を見ても同じだったので驚いた。話がよく出来ているのだ。旅行雑誌の覆面取材、認知症の夫婦客、突然の断水、特別仕入れの伊勢海老などが複雑にからみあい、最後はいろいろあったけど結果オーライとなる。

脱線しそうになるメンバーを影で支えるのは風間杜夫の花板さん。これがまたいい味出している。弟子の馬渕と金子賢で独立してひとつの物語が出来そうなほどキャラが立っているのである。他にも亀が友達の運転手とか、腰の悪い湯番とか、使い込みしそうな番頭とか、ライバルの腹黒ホテル経営者とか、温泉街のスナックのママとか、もうわかりやすいキャラが満載。しかもバズレなし。

この手のジャンルの傑作だと思うのだが、あまり絶賛されていないようなのでキッドはちょっと孤独を感じる。この後も再生に向け、旅館『花壱』の皆さんの奮闘は続く。何もかも上手くいきそうなムードののところへ雷鳴が鳴り響くと本当にハラハラドキドキします。福原裕美子の主題歌『What would I do』もかくれた名曲だし、サウンドトラックもいい。うーん。ちょっと理想郷すぎたのかしらね。

金曜日に見る予定のテレビ『NHKスペシャル・変貌する日米同盟・第2回・加速する一体化』(NHK総合)

|

« ドラえもんの店とのび太の街。 | トップページ | うたばんだけど2曲それは奥様ばんだから。 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 観月ありさのハートに火をつけて。:

« ドラえもんの店とのび太の街。 | トップページ | うたばんだけど2曲それは奥様ばんだから。 »