湖畔殺人事件?薬師丸ひろ子VS眞野裕子。
冬ドラマナンバーワンと思える『白夜行』と同じ直木賞作家の原作小説があり、映画研究会出身の映画監督の作品なので、いい意味で疑問の残る作品になっている。たとえば眞野裕子の美乳がオンエアされて、柄本明の顔面粉砕シーンがオンエアされないなどテレビの事情があるにせよ、最後まで事実関係がはっきりしない現場にキッドの興味を引き付けてくれた手腕はすごい。
ちょっと前にオンエアが予定されていたのだが、もう少し大衆的な作品の宣伝のために繰り下げられており、そのあたりの哀愁も漂う。好むと好まざるとに関わらず、競争社会でみんな必死なのだな。以下、ネタバレは必至なので、「見る前は白紙で派」の人は注意していただきたい。
まず、タイトルに反し、殺人事件があったのかどうか、最後まで明かされない。死体はあるが、事故死であった可能性を除外していないからだ。当然、犯人も解明しない。出演者以外が犯人の可能性もあり、そういう意味で映画に関する限り王道のミステリーではない。また、誤解している人もいるかもしれないが、隠された死体が表面化するのかしないのかも判然としていない。浮上する描写はないし、あくまでライターの持ち主である役所の主観的なイメージと考えることもできる。つまりすべては謎につつまれて終っているわけで「作品内展開完結主義者」には痛い作品となるだろう。犯罪者たちのハッピーエンドともとれる内容なので「エンターティメントにおいて裁かれない犯罪は針一本許せない人々」にも認められないだろう。ただし、そういう人々は概ねバカなのでそのことに気がつかないかもしれない。
で、『レイクサイドマーダーケース』(2004劇場公開作品フジテレビ060602PM9~)原作・東野圭吾、脚本・深沢正樹(他)、監督・青山真治を見た。お受験を控える親たちが無関係とは言えない人の死体を発見してしまい、関り合いになるのを恐れて団結して死体を隠そうとする物語である。
なぜ、死体を隠そうとするのか。動機が変転する。「親の一人の愛人の死体なのでお受験に差し障る」という理由から、「子供たちが犯人である可能性を視野に入れた肉親の盲目的愛情」という理由に変わるのである。このステップアップに注目すればただ一人、子供と血縁関係をもたない義理の親であり、死体の愛人でもあり、お受験に批判的でもある役所が隠蔽チームの中に溶け込むまでの成長物語であると読める。彼が小児性愛者である可能性まで考えると・・・危険なのでやめておく。
『野生の証明』でデビューした薬師丸ひろ子は超能力者というよりサイキックな役が得意でこれは「サイキックとクレイジーが紙一重」だからなのだが、・・・『木更津キャッツアイ』の壊れた教師役が嵌るのも肯けるだろう。今回は明らかに超能力者なのだが、「紫の夕焼けのように瞳に灯る炎」のシーンはグレイトであった。脱がないで若い子と張り合うのは大変なのだが魅力的でしたよ。できれば眞野裕子さんくらいの年齢で銀幕上のボカシのない、リアルなヌードも見たかったですが、それは儚い望みというものでしたね。とにかく、勝負にならなかったわけですが、眞野さんも頑張りました。
欲望に忠実な偽善者という中学生のようなダメ大人役をさすがに役所さんは無難にこなし、そこはかとなく、そういうダメさゆえに二人の未来予知能力者が彼を愛してしまうのだろうと暗示しております。流石です。もちろん、ほっぺの白い豊川悦司も、鼻の頭が赤くない柄本明もいい味出してます。だから本作品のゆるやかな流れが持つわけですが。
ライター、キー、写真、怪しい人影、携帯電話、浴室からもれる湯気、髪を拭く少女、割れた花瓶とミステリー要素をちりばめながら、まったくミステリー映画ではないというのも、ある意味芸術的でしたね。怒る人もいるかもしれないがキッドは怒らない。こういう想像力を刺激する映画は魅力的だと思う。
日曜日に見る予定のテレビ日曜洋画劇場特別企画『TRICKスペシャル(洋画じゃないし・・・しかも再放送って)』(テレビ朝日・・・ついでにジブリ作品をなんどめだ攻撃したくせに・・・でも見るね)
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