冷蔵庫に美容整形機能がプラスされました。
容姿に関するコメディーである。美醜は非常に重要なテーマであるから、見ざるを得ない。かって容姿による差別を声を高くして叫ぶのは女性であった。それは吉永小百合がじゃがいもでもよかったからであり、差別されているのは表面的には女性だったからだ。
『醜女(しこめ)狩り』(芝紀美子1975)では「醜女狩り始まり連れて行かれた/探知車が警笛鳴らして捕まえに来た/醜女村はブスばかり/私もその一人」と歌うほどであった。これが『顔』(コンセントピックス1984)になると「あなたはととてもいい人ね/性格だって悪くない/顔が嫌い/あんたの顔が嫌いなの」と矛先が変わってくる。男性も美醜で差別される時代が到来したのである。それから20年、容姿と性格は男女ともに見果てぬ夢を語る時に無視できない問題となった。この場合、見果てぬ夢とは理想の恋愛のことである。
原作者は『白鳥麗子でございます!』『おそるべし!!!音無可憐さん』の整形美人漫画家である。当然、美へのこだわりはせつないのである。美であればあれでしょ。ちょっとした犯罪は許されて然るべきでしょ。という主張がそこはかとなく漂うのである。ま、確かに金正日がヨン様だったら奥様たちはあと1ダースぐらいミサイルを撃ってもしょうがないわね~ですますかもなあ。
で、『ビバ!山田バーバラ』(テレビ朝日060707PM1115~)原作・鈴木由美子、脚本・高山直也、演出・木下高男を見た。太ったおばさんの中島唱子が冷蔵庫に3分入ると若くてモデルをしていた片瀬那奈に変身する。水をあびると元に戻るという設定でかっての恋人(杉本哲太)の息子(内田朝陽)と恋におちるというドタバタである。もちろん、この冷蔵庫は市販されていないので真似をすることはできない。特殊メイクの梅沢壮一も中島を片瀬に仕上げる技術は持っていないようだ。
ま、ありえない話だが、一番ありえないのは杉本哲太が中島唱子が片瀬のなれのはてと知ったときの態度である。杉本は中島を愛してしまうのである。というか、片瀬の頃から容姿を愛していたわけではないという態度なのだ。まあ、確かに、石田えりみたいな感じのあるJJモデルを美人と認知しない男性は多いかと思うが、それにしてもだ。片瀬と別れ中島になって再会したらキッドだったら泣いちゃう。哲太の演技力に脱帽だ。こんな無理なキャスティングと設定なのに淡々と中島を愛する男を演じていた。ブルブルッ。
しかし、原作者の妄想はそんなことでおさまるわけではない。父息子どんぶりの二重生活を続けながら、中島/片瀬の正体がついに発覚する。ここで、内田は酒井彩名よりも中島/片瀬という妖怪変化を選択するのである。すごい趣味だ。しかも内田がモンスターおタクであったというような伏線はまったくなくこの展開だ。頭おかしいよ。
だが、さらに妄想はエスカレートして杉本哲太までもが中島/片瀬を受け入れてしまう。これはもう似たもの親子だったというような段階ではない。そして父・杉本が息子・内田に恋のライバル宣言。「お前には負けないぞ~」ニコリである。わはははは。もう笑うしかありません。中島/片瀬を中央に花束を持った親子という三人が海辺を腕を組んで行進。そしてオチは中島/片瀬が奈落の底に墜落である。まあ、妄想を続けたスタッフ一同が正気に戻った瞬間ですかね。
このテーマの傑作には『OLヴィジュアル系』(テレビ朝日2000)があるが、美についての女性の願望の具現化としては『ビバ・・・』の方がストレートであったな。この先には『永遠に美しく・・・』(1992アメリカ映画)があると思うが、美と恋愛の目的意識が混濁していくところがポイントですな。ま、美は限られた時間、限られた者だけが味わうことができる特別なものだということに化粧品メーカー、美容機器メーカー、美容師の皆さんはノーと云い続けるとは思いますけれど。
日曜日に見る予定のテレビ『誰よりもママを愛す』(TBSテレビ)
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