頭の悪い女だねえ。・・・お母さん。(渡部篤郎)
ま、嘘ですけどね。久しぶりの渡部篤郎主演なので幻聴が鳴り響きました。他にも「頭の悪い女だねぇ・・・愛人」とか、「頭の悪い女だねぇ、・・・婚約者」とか、もう頭の悪い女に囲まれて、渡部篤郎バンザイです。今さらですが、以下ネタばれ満載です。
ちなみに31年前に夫の教え子とかけおちして10才くらいの渡部を捨てたお母さんが佐久間良子です。判事となった渡部と殺人事件の被告として再会します。上司である渡部の子供を身ごもり捨てられた愛人が藤谷美紀です。手切れ金をつきかえし渡部を守るために傷害事件の犯人になります。親の決めた政略結婚の渡部の婚約者が林美穂です。渡部との情事を楽しみますが渡部の出世の道が閉ざされると親の命ずるままに婚約を破棄します。・・・おっと、林美穂は賢いのか?
幼くして母親が男とかけおち。二人のキスシーンを目撃。約束していた遊園地に母親がこないので雨に打たれて閉演まで待つ。幼い頃の合言葉が「僕はお母さんが一番好き、お母さんは僕が一番好き」・・・現在の職業・裁判官。来ましたね。これは来ました。屈折したエリート。これはもはや、渡部篤郎の世界なのです。
で、『月曜ゴールデン サスペンス特別企画 黙秘』(TBSテレビ060814PM9~)脚本・安井国穂、演出・長谷川康を見た。少年時代の渡部は塩顕治くん。美少年だが、渡部かどうかは意見が分かれるな。で、30年前の佐久間良子も今の佐久間良子も佐久間良子が演じるのだが、いいのかよ。それで。しかも、過去の佐久間を少し照明多めにしたぐらいでほとんど同じメイクアップ。女優はたしかに年をとらないんだけどさ。映画『五番町夕霧楼』(1963=43年前当時23才)とか大河ドラマ『おんな太閤記』(1981=25年前当時41才)とか、やはり・・・ただ今、女に年は聞かないものよ委員会から勧告がありましたのでこの話題を中止します。佐久間良子さんはいつまでも若く美しくて大好きです。
佐久間さんが演じるのは「やるときはやる女」である。昔から「女はしでかす」のであるが、それは美人であればあるほどすごくしでかすのです。で、まず「かけおち」で地方の旅館に住み込みの仲居さん。自棄酒の若い恋人をあやしあやされ30年である。二人とも過去も家族も捨てたのだが、男が死病となり保険金目当ての偽装殺人を計画して自殺。本気で愛した男のために「死体遺棄」。計画がずさんなので「殺人容疑で逮捕」となる。そして下手にしゃべると偽装発覚の可能性があるために「黙秘」なのです。やってくれますよねえ。
そして死体が身元不明では保険金が下りないので、裁判開始とともに正体を明かす予定だったのだが、現れた判事が運命の悪戯か、ご都合主義か、30年も前に捨てたわが子。ああ、愛人との肉欲におぼれつつ抱き続けた約束の遊園地のティケットは新品のごとく。ここで思い悩む演技が見所ですね。そして、告白。佐久間を堪能しましたぁ。
やってくれます。ふつうの人々は佐久間のあまりに身勝手な振る舞いにゲンナリすると思いますが、ま、人間ってものはこういうものです。
渡部は母親に捨てられて人間不信、愛情不信、女性不信に凝固しつつエリートになったわけですが、30年前から音信不通だったとはいえ、身内に殺人容疑者が出たことでエリートコースさえも失ってしまいます。やってくれるよなあ、あんた。俺があんたに何したよ・・・失礼、また幻聴です。永遠の仔の愛なんていらねえよ夏白夜行のケイゾクの誰かが何かをささやいているのです。
夜の道を歩く渡部。時々、手を高くあげたりします。淡々と歩けないのです。渡部です。
「ごめんなさい。母さんを許して」と土下座する佐久間。この後で、渡部笑います。会心の笑みです。渡部です。
「お腹の子供の役に立ちたいんだ」と心のこもらない口ぶりで愛の告白。淡々としかしゃべれないのです。渡部です。
ああ、渡部も堪能しました。逆恨み恐喝者をナイフで刺しそうになる渡部。でも刺すのは藤谷美紀。なぜなら渡部を愛しているからです。母にあやまられ、愛人に誠を見せられて癒される渡部。ああ、やはり世界は渡部のために回るのだ。それでいいのだ。愛されたら愛してしまうしかないのです。愛が成立するのはその場合のみだから。この屈折を体現できるりはやはり渡部なのです。久しぶりの渡部に認知のドーパミン大量放出中。とても幸せです。
佐久間の事件の真相にせまる刑事モト冬樹。聞き込み先で手かがりとなる証言をするエド山口。渡部と佐久間を堪能する最中に兄弟共演でちょっと笑ってしまったことを付け加えておきます。
水曜日に見る予定のテレビ『水曜ミステリー9・信濃のコロンボ・事件ファイル⑫陰画の構図』(テレビ東京)
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