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2006年9月21日 (木)

パシリな僕ですが恋をしてもいいですか。(田中圭)

ラブコメの基本は「おかしな人が恋をすること」なのだな。「普通の人」が恋をしてもラブコメにはならないのである。それは純愛もの、悲恋もの、修羅場ものなどになる。もちろん、「おかしさ」の基準は作り手がどう考えるかによって変わる。「もうすぐ30才の女性プランナー」がおかしいかどうか、「もう40才の男性建築家」がおかしいかどうか、「やくざの若頭の高校生」がおかしいかどうか、作り手がどう考えるかという問題である。もちろん、常識的にあきらかにおかしい場合もあり、そういう場合は作り手は楽に考えて「おかしいだろう」と思えばいい。

「パシリ」はどうか。定義をしてみると「やくざの手下のように支配者の命令に従順に従う奴隷。小学生ではいじめられっこで中学生でジュースを買いにいかされるようになり、高校生では上納金をおさめないと殴られるようになる。大学に行ければ過去を清算できる可能性があり、社会人になればそんな時代はなかったことにできる場合が多い。性格は優柔不断で、いやなことをいやと言えず、我慢強さがとりえ。マゾヒストならそれなりに喜びがある人」ということでどうだろう。・・・ま、パシリは充分、おかしな人の資格があると思います。

つまり、「パシリが恋だとぉ、1億年早いんだよー」と蔑まれる可能性大ですから。だから「パシリの恋の物語」はラブコメとして必要条件を満たしているということです。

で、『もうひとつのシュガー&スパイスVol.4(最終回)』(フジテレビ060921AM0045~)脚本・渡辺千穂、演出・松山博昭を見た。ヒロインは松本莉緖である。FM TOKYOのカフェで働く女子大生で、陶芸家になるという夢を果たすために休学中だ。彼女は実在するラジオ番組『SCHOOL OF LOCK!』のリスナーでもある。そんな彼女が最近気になっているのが、ラジオ局でアルバイトをしている大学生・田中なのだが、彼には秘密があった。そう、田中は高校時代、パシリだったのです。

・・・ということなのだな。松本といえば松本恵時代からずーっと美少女なのだが、移籍トラブルなどもあり、また美少女すぎて一般受けしないという法則が強く作用して、現在に至るのである。しかし、実写版『ガラスの仮面』では姫川亜弓、実写版『エースを狙え!』では竜崎麗香(お蝶夫人)を演じているように敵対的美少女の理想型であることは間違いのないところだ。美女が脇役に甘んじる。これが日本的ショー・ビジネスの限界なのだな。ただし映画『富江 BEGINNING』(2005)では川上富江だ。バンザーイ。(歴代富江・①菅野美穂②宝生舞③酒井美紀④安藤希⑤松本莉緖⑥伴杏里)次の富江まだぁ?

さて、田中といえば山田孝之との共演でおなじみ(WATER BOYS→世界の中心で、愛をさけぶ→白夜行→タイヨウのうた)、まさに芸能界におけるパシリポジションなのでこの役柄はまさに適役と言えるだろう。そして田中はパシリのくせに恋に落ちるのである。もちろん、相手は松本様である。

お互いの友人、星野源と有村実樹のセッティングでダブルデート。いいムードで二人きりの帰り道。「好きな曲は何かなぁ」などと情報交換しているところに高校時代のご主人様登場。「お、パシリのくせにいい女連れてんなぁ。お前も出世したなあ」とかっこ悪いところをみせてしまう。この後でレイプが発生しないのは女性が松本様だからだろう。その辺の普通のご主人様では恐れ多くて手が出せないのであるな。考えてみるとそんな松本様に恋をするなんて田中は「身の程知らずもいいところ」なのだな。そこが面白い。

もちろん、田中はカフェにも顔を出せなくなり、恋のくすぶり、ひきこもり、パシリの分際で恋の花実を咲かせるなどと、妄想しちゃってごめんなさい状態に。そこで松本様がラジオを利用して匿名メール「勇気を出さなきゃだめじゃない」を投稿。

身分を忘れて田中がカフェを訪ねるともはや彼女は夢のために旅立った後、今夜の深夜バスで陶芸のメッカ(信州か京都かそれとも九州か)に行ってしまうのです。ああ、やはりパシリは所詮パシリなのか。いいえ、最後の手段があります。それは「涙のリクエスト」だ。こうして主題歌『LYLA』が流れ、パシリの告白はオンエアされ、松本様のお耳に届くのでした。めでたしめでたし。

もうひとつのシュガー&スパイス・シリーズ唯一のハッピーエンドです。え、ハッピーエンドじゃないのではないかって、いえいえ、これは極上のハッピーエンドですよぉ。だって、パシリのくせに松本様に恋心を告白できたんですよ。もう身に余るハッピーじゃないですか。だってこれはラブコメなんだから。

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田中圭はこの後『僕の歩く道』(フジテレビ10月10日(火)スタート)である。『僕の生きる道』『僕と彼女と彼女の生きる道』の延長線上にある期待できるドラマ。草彅剛のパシリとして名作になるように精進してもらいたい。がんばれ、田中圭、君よ君こそが全国のパシリの皆さんの希望の星なのです。

土曜日(金曜深夜)に見る予定のテレビ『怨み屋本舗』(テレビ東京)

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