いじめられて、よかったよ。(蒼井優)
マタギ(五月一日のブログ)以来の『情熱大陸』である。蒼井優と聞いては『X-MEN2』も『誰よりもママを愛す(最終回)』もシカトされてしまうのだな。って、蒼井優がシカトされてたのかよ。小学校で。そして「いじめられたことが」「よかった」って言うのかよ。天才。神のターゲットからどうかはずれますようにと祈りました。神様、シカトでお願いします。
『アニー』(1999)から2000年のおはガールである。上戸彩と奈良沙緒理の間くらいである。あれから5~6年。去年、今年の蒼井優はスクリーンで大爆発だな。番組では無視されていたが『鉄人28号』(05)からだな。本当は金田正子という役にして少女が鉄人をあやつるという映画にすればさらにカルトだったと思うのだが。
そこから『変身』『ニライカナイからの手紙』『亀は意外と速く泳ぐ』『星になった少年』『男たちの大和/YAMATO』『ハチミツとクローバー』『フラガール』と充実の20→21才のラインナップ。映画はこの後、『鉄コン筋クリート』なども控えている。秋ドラマは『Dr.コトー診療所2006』で柴咲コウの後釜かあ。う、なんか、今回データっぽい。
で、『情熱大陸・蒼井優/女優』(TBSテレビ060910PM11~)構成・長南武、演出・小林潤子を見た。06年1月-8月の蒼井優ドキュメントである。フラガール中心であるが、バンダイ系の映画なので、ヒモつき臭さがない。なにしろ、後半はコトー(フジテレビ)のロケも挿入され、このあたりが情熱大陸のうまさであるな。夢見る若者がここをひとつの目標にする気持ちがよく分かる。なにより蒼井優がこれ以上なく素敵に描かれているのである。もちろん、素材が素敵だからな。
一晩たってテイク2(再撮影)というシーンがある。蒼井優が「納得」できず、監督に要求したという設定。テイク1がまったく没になったのどうかは本編で確認してもらいたいが、こういうアクションを企画する20才というのが凄い!なのである。そしてそういうこともあるだろうなあという存在感。それはつきつめるという姿勢である。
「こだわり」は誰にでもある。それは「思いつき」と同じだ。「こだわり」も「思いつき」もつきつめなければならない。それは再検討でもあり、洗い直しでもあり、二度手間でもある。アマチュアとか、ダメなやつとか、短気な人には難しい作業だ。しかし、これをしなければいい味は出せないのである。つきつめて初めてこだわったのであり、つきつめて初めてアイディアなのである。若くしてこれができるのは天才の名に相応しい。「天才か天然か」そうしない人(凡人)には区別できないのだな。
8ヶ月を30分で。これもつきつめた結果だ。それがかっこいいのは言うまでもない。つきつめなければ情熱大陸にならないのだな。昔、キッドも鉛筆と消しゴムで書き物をしていた頃、消しゴム使用量の少ない作品はやっぱりダメだったのだ。もちろん、サインペンでしか書かないし、書き損じないというさらに上を行く天才もいるが、そういう人は神様のターゲットにされてしまえばいいのさ(嫉妬)。
蒼井優が見たいと思うレンタルビデオリスト(一部)、ファーゴ、市民ケーン、アニーホール、レイジングブル、未来世紀ブラジル、ぼくの伯父さん、ファニーとアレクサンドル、タクシードライバー、チャイナタウン、博士の異常な愛情、81/2・・・ほぼ古典である。つきつめるための材料としては有効な素材と言える。推奨映画が『ある子供』『レオン』分かり安くするためのマイナー例、メジャー例。借りた映画『どですかでん』『東京裁判』『春夏秋冬そして春』である。非常に明解だ。方針というか好みは「いろんなものを排除した作品」悪い例・スピルバーグ作品。あはははははははは。スピルバーグもつきつめるときはつきつめるんですけどね。『プライベートライアン』の冒頭とか。最後まであのトーンだと観客が何人か死ぬと思いますが。
干しいもが三袋。フラダンスの腰のキレ。いじめられた小学校。こっそりかばってくれたお兄ちゃん。走って帰る別居中の父の家。完成披露試写会のエレベーターで喪服。着替えたフラダンサー衣装。出棺途中で葬式を抜けた「ダメな孫」である自分、プライベートとオフィシャルの中間で止まらない涙。ああ、素敵なドキュメント。ああ、愛しい女優・蒼井優。
「かっこ悪いけれどだれかのホン(台本)でしか自分のメッセージを伝えられないから」いいえ、脚本家はみな、「かっこ悪いけど役者にしか自分のメッセージを伝えられないから」なんですから。分業ですよ。分業。って結婚できない男が言ってました。
ま、もちあげてばっかりのこの手の番組でもちあげられて「辛辣な言動」を見せる女優という典型があるので、一緒にされたら困るのだが、蒼井優に限って「なんとなく撮って編集したらいい出来上がり」になったのだと思う。素材がいいのだな。相手役が鈴木杏でも大丈夫。宮崎あおいでも大丈夫。中島美嘉でも大丈夫。伊東美咲でも大丈夫なんて女優、そうはいない。『高校教師』(03)の時は上戸彩に対してソニンとキャラっていうか、外見かぶっててちょっと困ってた感があったけど、そこがまた、可愛い、のです。
火曜日に見る予定のテレビ『結婚できない男11/12』(フジテレビ)プラス『ダンドリ。10/11』(フジテレビ)
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コメント
映画「フラガール」を観ました。お金をかけなくても、こんなにも良質な作品が作れるんですね。
松雪泰子さん、富士純子さんが名演技でしたが、その中で、蒼井優さんが輝いて見えました。
ラストのソロで踊るシーン、最高!
米アカデミー賞にノミネートが決定したそうですが、受賞すると良いですね。
これからも、輝いて欲しい女優さんです。
投稿: 柴又の怪人 | 2006年10月 3日 (火) 10時25分
柴又の怪人様、いらっしゃいませ。
ま、虎屋の芋ようかんでもどうぞ。
あ、寅ちがいでしたか。
松雪さんと蒼井さんの師弟関係は
コーチ(松雪さん役のモデルとなった人)も
まじえて
撮影現場でもウルウルものだったようです。
とにかくハードスケジュールの中で
腰が振れるようになる
(フラダンスの基本を習得する)
のだって大変なことだと思います。
また、遊びに来てくださいね。
投稿: キッド | 2006年10月 3日 (火) 16時42分