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2006年9月 1日 (金)

官軍も賊軍も死んだらただの仏でさぁ。(中村雅俊)

清水(静岡県)の港の名物男の話である。これは定番の部類に入るだろう。エンターティメントにはいくつか定番がある。時代劇というジャンルも定番だが、時代劇にも定番がある。まず、戦国もの、次に幕末もの。他に源平もの、江戸もの、南北朝ものがある。戦国ものの中にも織田信長もの、豊臣秀吉もの、徳川家康ものといった定番があり、幕末ものにも、坂本竜馬もの、西郷隆盛もの、新撰組ものといった定番があるのだな。そして「清水の次郎長もの」は幕末ものの定番のひとつなのである。ジャンルとしては「股旅もの」という要素も含んでいる。さらに広いジャンルでは「仁義なき戦い」や「マイボスマイヒーロー」と同じヤクザものである。おいおい、その分類は侠客マニアに刺されそうな分類だぞ。

ま、何はともあれ、世が世なら、「やくざの親分」をこれほど持ち上げたら問題になるところをならない頃に持ち上げられヒーロー像を獲得した稀な存在と言えるだろう。国定忠治と違って、それなりに権力側に組してひとつの勢力として天寿を全うしている。いわばハッピーエンドなやくざの親分ということで世をすねる庶民としては憧れたり、納得できるアウトローなのである。ま、キッドは清水の人がどう思おうとやくざはやくざだと思いますがね。やくざをヒーローとしてドラマにとりあげるNHKはまあ健全と言えるかな。なにしろ、定番なのだから。

やくざだからといってドラマにできないというのはあまりにもバカだと思うが、それはそれとしてやくざがいかに社会にとって害毒かということは主張しなければならない。なぜならやくざは基本的に暴力で語るのである。暴力で語られると弱い人たちはたくさんいるからな。そういう人たちのためにも暴力に正義のないことを明らかにするべきだ。明らかにする方法はもちろん断固たる暴力である。

で、『木曜時代劇・次郎長 背負い富士(最終回)荒神山の対決』(NHK総合060831PM8~)原作・山本一力、脚本・ジェームス三木、演出・佐藤峰世を見た。ライバル黒駒(山梨県)の勝蔵との抗争の頂点ともいえる「荒神山決戦」を中心に描き中村雅俊版次郎長は幕を引く。定番としては吉良の仁吉(安田顕)は男でござんす死亡、女房泣くがあった。安田はなかなかに男前の仁吉。もちろん中村雅俊も悪くない。『俺たちのまた旅』って感じで。ただし次郎長をリアルで描くとすれば渡辺哲以外には考えられないのだが、ま、夢だけどな。

最後の女房お蝶は田中美里である。『利家とまつ』(02大河)のお市の方からここなのでちょっと上品な気がした。伝説的には次郎長は博打のときに生涯丁目しか張らなかったので愛人の名前も蝶で統一したとされている。ま、やくざのやることだから、しょうがないのだが、末期をみとったお蝶はそれなりに優れた夫人だったのかもしれず、そういう意味ではもう少しお蝶にスポットをあててもよかったかもしれない。お蝶「明治になったって漁師は魚をとるし農家は田植えをするし何にも変わりませんねえ」次郎長「お前は賢いねぇ。本当にそうだなあ」なんていうのどかな夫婦の会話。さすがはジェームス三木先生と感じました。

二十代で博打で身を持ち崩し、五十才近くまで切った張ったの渡世人だった次郎長なのだが、勝海舟・西郷隆盛会談(江戸城無血開城のため)のセッティングをした幕臣山岡鉄舟に一夜の宿を貸したことから、運が開ける。侠客として筋を通す見せ場、官軍の威光にさからい敗軍の死者を葬る場面は鉄舟からの指図あるいは嘆願があったからとも言われる。旧勢力と新勢力の狭間で上手に立ち回る才は博打に通じるのかもしれない。

立ち回り上手と言われた黒駒の勝蔵が新政府の軍人として戦いを重ねたあげく、明治維新後、旧罪によって刑場の露と消えたのとくらべても天寿を全うした次郎長はやはり幸運の持ち主で庶民にとってはご利益のありそうなヒーローなのであります。ま、やくざだけどな。

草刈正雄の大政、水橋研二の小政、山本太郎の石松(都鳥一家との大立ち回りで死亡したので最終回には不在だったが)、大河内浩の勝蔵もいい味だしてました。ま、なんだな、男のドラマっていうか、男臭いっていうか、このドラマが好きっていう人は男の人が好きなタイプなんでしょうかね。いや、女性は女性でお好きでしょうけれども。そういうサービスはちょっと少なかったかな。あ、刺青か。刺青問題かぁ。

日曜日(土曜深夜)に見るテレビ『オーメン4』(テレビ朝日)この夏の締めが洋物かぁ。

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