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2006年10月11日 (水)

てるー、リリンリリーン、みやこちゃーん×10(僕の歩く道)

オリジナルなのでどこへ向かって行くのか定かではない。弱肉強食の論理では世界は荒む、弱者保護は和みであり、人は誰も老い病むものだという共通認識によって立つのだが、弱者と強者の平等は不公平感を伴うという矛盾を孕む。よってどこへ向かうにしても劇的な展開になるのである。

自閉症は基本的には機能的障害であり、人間関係に支障をきたす人間という困難な問題を持つ。たとえば「おはよう」と挨拶をしたのに挨拶をしない聾唖者を批難してしまった人が事情を知って恥じるのはたやすいが、自閉症者が「おはようございます」と云われなかったので「おはようございます」と発声できなかったことを批難した人が恥じる気持ちに至るのはなかなかの知的水準を要求されることになる。恥じなかった人を批難すると知的障害者を批難することにもなりかねない。

キッドはかってラーメン屋で合い席した見ず知らずの老婦人から、「私の息子は盲目なんです。私の生きている間はなんとかなるでしょうけど・・・心配でね」と明るく話しかけられたことがあり、返答に屈したものだが、そのような、母親のいつくしみの心はあくまで個人的なものである。いつくしみの社会化は結局、その社会のゆとりのなせる技と云えるだろう。そういう意味で日本がゆとりある社会であることは間違いないだろう。人民の生活を犠牲にしても核武装しなければならない国家に「僕の歩く道」が存在しないことは充分に想像できる。

で、『僕の歩く道』(フジテレビ061010PM10~)アソシエイトプロデューサー・石原隆、脚本・橋部敦子、演出・星護を見た。第一回のサブタイトルが『誰よりも純粋な男』であることを除けばまずまずの出来だったと考える。少なくともキッドは主人公が誰よりも純粋な男であるとは思わないし、そういう方向性で作ったら道を誤ると思う。

『僕の生きる道』で矢田亜希子を。『僕と彼女と彼女の生きる道』で美山加恋をスターにした草彅剛が今度スターにするのは香里奈のようだが、本仮屋ユイカの可能性もないではない。意外と須賀健太だったりするかもしれない。本命・香里奈は能世あんな、えれなに続く美人三姉妹の三女だが、草彅マジックで早くもいつもより魅力的になっている。

今回は香里奈のパシリとなるのがパシリの第一人者・田中圭であることも特筆したい。生きているだけで緊張感を与える自閉症者をめぐり、庇護者を宿命づけられた香里奈と無理解な一般人代表の田中が、くりかえしのコントを淡々と演じる。もう少し早く分かってやれよと野次るお茶の間の皆さんもあるだろうが、本当に草彅の存在は厄介なのであり、それを理解しなければ、幼い頃からずっと付き合い続けている香里奈の最後の爆発は理解できないのである。あれを「不倫の彼氏のために料理を用意したのに結局妻の病気を理由に約束をやぶられ、うっかり切った指はズキズキ痛いので八つ当たりした」ととってはならないのである。香里奈は草彅を慈しみ、慈しみ、慈しむあまりに、涙を流して叱ったのだったから。だから、パニックでツール・ド・フランス優勝者モードになった草彅に変わり、SMAPが「ありがとう」を連呼するのではないか。

古典的な演出方法だが、前半のフェイドアウトの多用がおしゃれだった。途中からカットアウトになり、物語の速度を加速させるのである。視聴者によっては展開が苦痛に感じる内容なのでなだめながら、最後は一気に見せてしまうという意図であろう。

「絶対に・・・」と思わせぶりな演技を要求される加藤浩次をはじめ、佐々木蔵之介、森口瑤子、小日向文世、大杉漣、MEGUMIそして長山藍子がしっかりと脇を固め、こうして僕は歩き出した。

自閉症のドラマといえば映画『レインマン』を嚆矢として、最近では篠原涼子の出世作とも言える『光とともに・・・自閉症児を抱えて』(日テレ・04)や「三年B組第7シリーズ」の弥生(岩田さゆり)が記憶に新しいが、まだまだ世間の認知度は低く、ゲーム脳などという怪しげな私論が展開されたり、バカな政治家が無定見に言葉を使ったりして混乱を巻き起こしている。それが、機能的な障害であり、障害者とともに暮らすことは楽ではないが、ゆとりある社会であることを示すバロメーターであることをしっかりと伝えてもらいたいと考える。しつこいようだが、香里奈は偽善者を演じたのでなく、人間を演じただけなのだ。で、ありますように。

木曜日に見る予定のテレビ『嫌われ松子の一生』(TBSテレビ)VS『Dr.コトー診療所2006』(フジテレビ)・・これは涼子VS涼子以上の強力な対決なのか?

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コメント

絶対に怒らない筈だった都古ちゃん。
ん?あれは八つ当たりでは無いのですか?
あたしもまだまだ未熟です(笑)。

香里奈さんが3姉妹の末っ子。
しかも皆さん芸能人だったとはっ!
知りませんでしたわ~σ( ̄∇ ̄;)

投稿: まこ | 2006年10月11日 (水) 14時13分

まこ様、いらっしゃいませ~。
八つ当たりか、いつくしみか。
キッドもほぼ八つ当たりだとおもいますが、
静かに「教えること」ができず、
強い口調になってしまったことは、
怒りの捌け口ではなく、
怒りでコントロールが効かなくなったから。
・・・というような深みが僕シリーズの持ち味だと
考えますので。涙がね。その印。

マンガみたいですよね。美人三姉妹。
でも事実なのです。(´∀`)アンナエレナカリナ。

投稿: キッド | 2006年10月11日 (水) 15時04分

キッドさん、こんばんは!
イントロとしては上々。つかみは良かったですよね。
>ゆとりある社会であることを示すバロメーターであることをしっかりと伝えてもらいたいと考える。

そうですよね。バロメーターですか・おもしろいことを言いますね。認知度があがればもう少しゆとりの風土が根付くと考えたいですね。

>しつこいようだが、香里奈は偽善者を演じたのでなく、人間を演じただけなのだ
試されていると感じた瞬間でしたね・・。
テルがここで都古に見切りをつけないでほしい・・。
どうやってここを切り抜けるか脚本の腕を楽しみにしています。

投稿: かりん | 2006年10月11日 (水) 17時23分

かりん様、いらっしゃいませぇ。

・バロメーター①晴雨計②指標。
(例)国語辞書の有無はその国の文化のバロメーター。
・障害者に配慮できる社会=人々は美味しいものを食べている。

・カレーはやっぱりトマトとタマネギみじん切りをワインビネガー漬けのサラダ付で。×∞

・モルモットはテンジクネズミ、ミーナは活発。覚えておいてください。×∞。

・秋ドラマのレビュー楽しみにしています。×∞

投稿: キッド | 2006年10月11日 (水) 18時15分

はじめまして。TBどうもです。
要するに、輝明も都古もそれぞれ1人の人間。
どちらもある意味で純粋、どちらもある意味で
不完全ってことでしょう。。

投稿: テンメイ | 2006年10月11日 (水) 19時33分

テンメイ様、いらっしゃいませ。
そうですね。
社会的な弱者という観点を抜けば
人はみんな不完全であるし、
そういう意味では対等。
100%人間だということでは純粋ですよね。
でも人間関係はそうでもない。
たとえば親子関係。
対等なら、それはもはや親子という関係では
なくなってしまう。
都古と輝明では
求められる責任の重さが変わる。
これが微妙なとこでしょう。

投稿: キッド | 2006年10月12日 (木) 01時05分

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