二人で何を話しているんですかぁ?(原田美枝子)
すべての終焉を迎えたあと、チェ・ミンソを除くとほとんど唯一の女優である彼女(防衛大学生の母で海上自衛官の妻)が息子と夫に語りかける。墓前である。現実にこういう光景が展開する日は秒読み寸前であると言えるだろう。それにしてもイラク戦争で一人も死者を出さなかったなんてなんと我が軍は優秀なのだろうか。もちろん総力戦論に従えば、公僕やおバカな民間人に死者は発生しているのだが、国内でいじめにより自殺する子供の数よりもはるかに少ない数値であり、それにくらべればこのミッションの損害の大きさはまさしく内閣総辞職級であるといえるだろう。汎用護衛艦「うらかぜ」(むらさめ型)撃沈。乗員死傷者多数。こんごう型イージス護衛艦「いそかぜ」自沈。乗員死傷者若干名である。ああ、貴重なDDやDDGが・・・始末書ではすみません。
本題に入る前に先週末の視聴率についてメモしておく。
金曜日は『家族』が11.4%タコウインナーはがんばった。『セーラー服と機関銃』が*9.6%である。これはまったく重なった視聴者が『デスノート』24.5%(とりすぎ~)に浮気したためだろう。レベル的には細木数子の占いと同じ怪奇の話に釣られる若い奴がたくさんいるってことでちょっと面白い。
土曜日は『たったひとつの恋』が12.2%で辛うじてピンチを脱した。それにしても『魂萌え』11.3%強いな。ちなみに踊る弁護士は16.8%。ま、そこまで踊るにつきあう人たちは義理堅いっていうか、踊らされているっていうか、楽しい人たちだと思う。ま、視聴コレクターとしては当然の態度ですけどね。これだけ落すわけにはいかないものな。ま、とはいうもののスピンオフにも限度があるだろーっ。
日曜日は『鉄板少女アカネ』が8.7%と微量の回復。『亡国のイージス』は17.8%である。まきまき、来週はなんとしてもレビューしたいなぁ。イージスはこれだけ女っ気なしでこの数字。鉄板焼きよりイージス艦かっ・・・なわけないですよね。ま、内容的には和製「沈黙の戦艦」ですから、このワクとは相性いい感じですかね。
で、『日曜洋画劇場40周年特別企画・亡国のイージス』(テレビ朝日061029PM9~)原作・福井晴敏、脚本・長谷川康夫(他)、監督・坂本順治を見た。北朝鮮の政権交代を目指す反逆工作員が米軍の化学兵器を盗み、謀略で海上自衛隊のイージス艦副長とそのシンパ自衛官を巻き込んでイージス艦「いそかぜ」を強奪、日本政府を脅迫するという設定である。
副長は自分の息子を自衛隊情報局に抹殺されたと思い込まされ、反逆の徒になるのだが、それに従った自衛官たちはあまりリアリティーがない。三島に立てと言われて立たなかった彼らが今さら立つ可能性はあまりないのではないか。・・・ま、そんなこと言ってたらエンターティメントは成立しないか。
もちろん、キッドは日本人の国防意識がこのままでいいとは思わない一人ではあるが、上意下達では意識の改革はなされないだろう。そういう考えだと自衛艦を乗っ取るのではなく、某国の工作船を乗っ取って自衛艦に特攻したり、某国の基地施設を乗っ取ってミサイルを発射したりして、国民に痛みを感じさせるのがもっとも効果的であると思うな。ああ、もちろんとんでも発想ですが。
ま、リアリティーはともかく、北朝鮮・自衛隊の反乱分子が手を組んで、イージス艦を乗っ取ることをある程度読んでいた我が国情報局は特殊工作員を艦内に送り込んでいた。如月一等海士(勝地涼=永遠の仔のモウルですよー、大きくなったなぁ)である。彼の目的は工作員リーダー・ホ・ヨンファ(中井貴一)から盗まれた化学兵器(東京を全滅できる毒ガス)を回収し、敵・工作員の制圧のために味方・工作員の侵入ルートを確保することだった。
このあたり、彼のキャリア組の上司・渥美本部長(佐藤浩市)との関係も含めて、非常に不明確である。原作を知らないと多くの人がどうなっているのか分からぬまま、物語は進行していったと思われる。とにかく、日本側の工作員・如月が任務を遂行するのを阻止してしまうのが、千石先任伍長(真田広之)である。部下が上陸中に事件を起こせば土下座して侘び、イージス艦のすべてを知り尽くしたたたき上げの軍曹的自衛官。ま、スティーブン・セガールの二面性(特殊工作員がただの乗員を装う)を勝地と真田で役割分担したのである。
真田が乗っ取り工作の妨害工作をしていた勝地を捕獲してしまうため、イージス艦は乗っ取られてしまう。真田は強制退艦させられてしまうが、単身、勝地が乗っ取り阻止のために爆破してあけた穴から艦に舞い戻る。真田はイージス艦奪還のために艦内テロを行い、勝地工作員、北朝鮮工作員、反乱自衛官の様々な国防意識の交錯する艦内バトルが始まる。
ああ、もうストーリーをたどるだけで複雑すぎる。「毎日、子供が餓死し続ける祖国には革命が必要だ」として犠牲をいとわない北朝鮮工作員グループ。ホ・ヨンファのメッセージは「よく見ろ、日本人、これが戦争だ」であり、毒ガスをミサイルに装填し、東京を狙う。
阻止しようと停戦勧告した護衛艦「うらかぜ」はハープーン対艦ミサイルで攻撃され、シースパロー・アンチ・ミサイルの防御もむなしく海のもくずと消える。ま、名場面です。発射の瞬間、真田が「ハープーン・・・」とつぶやくのですが、キッドは思わず「ハープーン・・・」とハモってしまいましたぁ。
シージャックされた「いそかぜ」を追尾するのは強襲部隊を乗せた潜水艦「せとしお」なのだが、結局出番なし。
ほとんど真田の大活躍で艦内の敵は全滅する。しかも「撃つ前に考えろ」的な人道主義で勝つところに若干無理がありますけど。特殊な訓練を受け射殺可能な勝地「あんたは実戦を理解していない」真田「お前は人間を理解していない」、心の動いた勝地は撃つ前に考えたので撃たれてしまう。まあ、ここが肝ですな。先手必勝は戦術の基本だが、先制攻撃をタブーとする戦略上の立場では犠牲はつきものっていうことなんですが、これを理解するのが現代を生きる日本人にとっては至難の技なのですねえ。
原田芳雄総理大臣がイージス艦を殲滅する威力を持つF-2搭載兵器テルミットプラスの攻撃命令を下す寸前、衛星画像に任務終了を告げる真田の手旗信号が、ほっと胸をなでおろす佐藤本部長。真田と佐藤といえぱ映画「らせん」で貞子に人類の未来を売り飛ばしたコンビであるが、今回は東京を危機から救ったのである。まあ、救われているうちは真の国防意識は芽生えないとキッドは思いますが。
強敵女工作員を演じるチェ・ミンソは美しく悲壮な兵士を演じるのだが、セリフが全くないのは彼女が唖者であるためと映画だけで察することのできた人はいないと思う。スクリューに巻き込まれる彼女を救うことができないシーンは餓死する北朝鮮の子供たちになす術がない善意の人々の無力への符号であろう。ま、それが世界というものだ。
小説の書かれた2000年、映画の作られた2005年という5年という歳月と2006年というたった1年のあまりの隔たりに呆然とする感がないではない。北朝鮮の核保有と、日中、日韓の歩み寄り。一刻も早い、憲法改正、一刻も早い、北朝鮮の軟着陸による東アジアの安定、それがリンクしていることを日本の良識ある人々が認識を共有してくれることを願わずにはいられない。国内でいじめで自殺する子供よりももっと大量の子供が餓死しているかもしれないのである。それはキッドにとってどちらも他人事ではあるが、心は同じように痛むのではないか。同様に明らかにいじめ苦自殺の連鎖を引き起こしているいじめ撲滅キャンペーン。マスメディアは今、自殺をそそのかしているのだが、それに見合うキャンペーンの成果を本当に信じているのか。キッドは疑わずにはおれないのだが。皆さん、いじめ自殺を追及しているマスメディアは受信料や広告収入の確保のために話題を確保しているだけなのですから、どうか乗せられないでくださいね。
火曜日に見る予定のテレビ『スペシャルドラマちびまる子ちゃん』(フジテレビ)
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