「お母さんに怒られるからあなたの家には行けないの」と志田未来は言われた。
「もっと大きくなったらお腹を触らせてくれる?」どちらも久保田恵(北乃きい=鈴木杏、邑野みあを擁するフォスターの必殺兵器か?今度こそスマートに育つ予感)のセリフである。偽悪に徹した数回前から、ついに少女らしい感性をのぞかせる未希(志田)との和解の美しいシーン。「あんな子と遊んじゃダメ」と短絡的な交際限定をせまるせつないが愚かな親心に反逆したことを匂わせるタイトルのセリフ。そして「友情の復活」を未希に求めるセリフ。どちらも捨てがたいが、貧相な世間を感じさせる前者のセリフの方がより皮肉が効いていると考える。
生活保護家庭や、ワーキングプア家庭、欠損家庭や、施設の子供たちにとってはまるで別次元の家庭である一ノ瀬家に反発する人々は実にごもっともで主張にも一理あるが、ロマンス(理想)を否定し続けると、日々の生活に潤いも喜びもなくなるので注意してもらいたい。
人々の魂の発達段階は千差万別である。ルールや掟、そして法律に縛られてその発達は規定されたりもする。しかし、人々の不幸を願う魂よりも人々の幸福を願う魂の方が結局、自らが幸福になる可能性は高い。なぜなら人は人々の1人にすぎないからとキッドは思う。
で、『14才の母・愛されるために生まれてきた・第七話・お金で未来は買えますか?』(日本テレビ061122PM10~)脚本・井上由美子、演出・佐藤東弥を見た。ま、志田未来の拘束はギャラ次第なのだが・・・違うでしょう・・・ま、15才の父(三浦春馬)の母(室井滋)が息子の輝かしい未来のための障害物除去保証金として一ノ瀬家に提示したのは「認知の放棄を条件とした出産・養育費を含む慰謝料・金20,000,000円」である。うわあ、高くついたなぁ・・・違うでしょう・・・ま、この金額について言葉を濁すあたりがロマンスですよね。知りたければ、画面を止めてお読みってことです。
いよいよ、後半戦に突入。冒頭で役所を訪れた未希は写メールをバシバシとられながら「母子手帳」を獲得。「14才で年齢制限があったらどうしようか」と思った娘に「そんなことない。誰でももらえる」ときっぱりと言う母(田中美佐子)。キッドはいつになく断定的な母親のセリフにぐぐったなと感じました。その後、これまでのあらすじを回想するのは丁寧で好感触。実の母を含めて全世界を敵にした未希。今や、家族と、理解のある医師、理解のある担任まで味方につきました。その度に「14才の中学生がセックスするなんてダメなの、まして妊娠するなんていけないの、よりによって出産するなんてありえないの全国中絶推奨連絡委員会」の皆さんが「偽善、偽善、我々は偽善を許さないぞーッ」の大合唱。ご苦労様ですーっ。
そしてそういう方々が最も信頼を寄せる15才の父の母が来襲。14才の母の母と雌雄を決します。両人とも雌ですが。「息子は未成年ですからなんの決定権もありません」「娘も未成年ですが自分の未来を決める権利はあるのです」「専業主婦のたわごとね」「生まれてくる子供にも権利がありますから」「じゃ、娘さんに決めさせて」「え」「あなたの娘さんには決定権があるんでしょ。ないと言ったら矛盾でしよ」・・・さすがです。ま、2000万円だから、とりあえず、もらっとけばいいじゃんかぁ。後でゴネようと思えばゴネ方はいろいろとあるんだしーっと思うキッドの魂はやはり腐りきってますーっ。
母(未希)よりも恋する女の子(未希)は裁判(争いごと)なんてイヤだからサインすると言います。そこで一ノ瀬家の単細胞代表のパパ(生瀬勝久)は「お父さんのお願いだ。お金は断ってくれ。お父さんはお前とお前の子供に他人の金をからませたくないんだ。貧乏人には貧乏人の意地があるってこと見せたい」・・・これは男のロマンなのか。だから、金は金なんだからもらっとけってばーっ。
父親の相変わらずの無定見・無思慮っぷりはやや度が過ぎていますが、そういう人が悪いわけではないのですよねえ、父親としては立派なのです。でも、そういうレベルとは違うレベルで娘は悩み、不安を抱え、サインをする。その震えた文字がいたいけない。
そうそう「いたいけない」という言葉についてさる人から質問があったので答えておきます。「いたいけ」は「いたいけである」で「仕草などがかわいらしい」という意味ですが、「ない」ならば「可愛くないのか」ということなんですが、このないは「否定」のないではなくて、物事が充満している様を示す「ない」ですから。つまり「いたいけない」は「かわいさであふれんばかりである」ということです。ついでに「切ない」も同様に「切」は「ギリギリの状態」に「ない」が「満々としている」ということですから。「胸が切ない」は「胸がいっぱいいっぱい」で「張り裂けんばかりの状態」なのですね。
さて、本日の名シーンはもう1人の未希とも、未希・裏ヴァージョンともいうべき柳沢真由那(谷村美月=映画『銀河鉄道の夜』のジョバンニ)から音楽の教科書を託された恵が未希を待つシーン。ああ、少女と少女のうるわしのシーン。こういう場面を作らなきゃダメなんですよーっ。これで1%は確保しましたからーっ。それにしてもBGM、今度はコトーの主題歌にメロディーラインがすりより酔うんですけど。
そして出産・育児教室では新たな味方(若年出産、育児断念の指導者)登場。誰かのリードで拍手っていう定番でこんなに胸がしみたのはのだめのミルヒーブラボー以来だぁ・・・つい最近じゃねえか。
さて、狂人・北村は今回も「本当はまだ心の中では反対している」14才の母の母と15才の父を責めるのですが、この選択が北村らしい。おそらく、なんらかの意図があるはずです。しかし、母の母には軽くいなされ、思わず「お天気予報」を。15才の父には「他に書かなきゃいけないことあるだろう」と反駁され、「相手を挑発して本音を引き出す」という取材テクニックの基本が通じず、「親まかせの君が憎くて憎くてたまらないんだ」と本音を披露。狂人・北村ーっ。何があったんだーっ。お前の過去には何がーっ。ああ、もう、狂人・北村いたいけないーっ。
しかし、編集者・北村は部下に別ルートの取材を・・・。
しかし、北村に動かされ15才の父・キリちゃんは14才の母に会いたい気持ちに。会わない約束したけれど、運命は陸橋とバスで交差する。身を乗り出して、手をふる未希。答えるキリちゃん。キッドとしては「14才の母が妊娠出産育児をするのはまったく問題ない」と思うのですが「走行中のバスの窓から身を乗り出すのは絶対反対」ですからーっ。だって危ないってーの。選挙運動のウグイス嬢の皆さんが身を乗りだすのもキッドは絶対反対ですからーっ。お前らバカじゃねーのーっ。
そして天罰が。未希の子宮が異常収縮。流産流産詐欺シーンへ。もっともこれは認知の放棄から会わない約束をしてしまった人に逢ってしまうという経緯に幼い心を痛めてきた未希の心の葛藤が身体のバランスに影響を与えた模様。それを知り飛び出すパパ。もう、このパパには論理的帰結としての行動はありません。その場その場の思いつき行動。でもそれが未希のパパといえばパパなのだ~。一方、未希は意識を失いつつ、涙。1人きりで流した涙にも「泣かないっていったのに泣いたーっ」という三歳児のような様々なプログでのツッコミがあったのですが、これもツッコまれるのかーっ。
そして、15才の父の母の怪しい不動産業が破綻。負債総額82億円ーっ。ハリポタ映画の映画興行収入100億円と松坂大輔の契約金60億円の間くらいの金額だーっ。それに何の意味がーっ。だから、くれるって時にもらっとけって言っただろう。
ああ、夜逃げ夜逃げ詐欺は詐欺じゃなかったーっ。本当に夜逃げだーっ。債権者よりも早く到着したパパだけど、念書は取り戻せずーっ。気持ちは熱いが行動は無力ーっ。そこがまたいたいけないーっ。
前半は心が振るえ、涙。後半は急展開に絶叫。エンターティメントとしても優れたところを見せる本作品。「のだめ」「コトー」「14才」「僕歩く」と視聴率上位だけでなく、「松子」「たっ恋」「セーラー服」「役者魂」「家族」と捨てがたい作品満載の秋ドラマ。こうなると「夏ドラマ」ぐらいのバランスでよかったなーと思う今日この頃のキッドなのでした。
関連するキッドのブログ『第六話のレビュー』
金曜日に見る予定のテレビ゜『セーラー服と機関銃・最終回』(TBSテレビ)うわぁ、最後は犬と菅野美穂の挟撃ですかーっ。がんばれ、星泉。カイカンかカイカンなのかーっ。
| 固定リンク
コメント
おはようございます。
最近感じるのが、”権利”の主張。”義務”はどこへ行ったの?そんなに振りかざす”権利”って、おかしいんじゃない?
なんて、感じてみています。ヤケに、14才の妊娠をきれいごとにしていませんか?学校だって、あんなに騒ぎになったのに、物分りの良いこと!
慰謝料の金額だって、子供一人の生涯かかる教育費他も、これでは上がらないから、一ノ瀬家は大変なのに!
投稿: mari | 2006年11月23日 (木) 08時56分
14才といえば、反発しつつもめぐちゃんのようにお母さんの言う事を聞くもんなんですぅ~。
なのに未希ったら親の言う事なんて聞きゃぁしない・・・
だから三歳児のような突っ込みをしてしまうんですよね~。現実を知らないくせに大きな事言っちゃって!てな感じ。←おとなげない(笑)
投稿: まこ | 2006年11月23日 (木) 15時52分
>ロマンス(理想)を否定し続けると、日々の生活に潤いも喜びもなくなるので注意してもらいたい。
確かに!(笑
理想もなくなっちゃ砂漠になってしまいますな・・
しかし、理想だけっつーのも苦しすぎる・・
そのせめぎあいで人は生きていくのでしょうか・・
しかし、負債82億(こんなんなるまで何かできなかったのか?)不渡とか・・身につまされます・・
投稿: きこり | 2006年11月23日 (木) 18時42分
キッドさん、こんばんは!
いや~ますます人でなしになりそうなあたしです。
静香にもっと言ってやって~~と声援してしまいますわ。
あと波多野もがんがんやってくれ~~とかね。
ようやくお金の話がきましたね。ウフフ、今の未希じゃ働いても生活できるほどにはならないでしょうし、でもそこを見せてくれることが大事なのよね。母の父が3番目の子として育てると決意したばかりなのに、赤ちゃんか未希か選ばないといけない展開だそうですね??どうなってるの?ますます混沌として井上由美子、血迷ったか~~と叫んだりしてます。でもめぐみの仲直りのシーンはけっこう好き。子供って本来こういうものでしょ?ママのいうことを聞いて未希の家にあがらないのも震えるほどよかったわ~~(爆)でも2000万は貰っとけと私の心も叫んでました・・わお~~!!
投稿: かりん | 2006年11月23日 (木) 20時01分
❁~✾~❁~~✾mari様、いらっしゃいませ✾~~❁~✾~❁
優秀な人間ばかりを集めると、
そのまま全員が優秀のままかというと、
不思議なことに落ちこぼれができるんですね。
ダメな人間ばかりを集めると、
そのまま全員がダメなままかというと、
優秀なリーダーが生まれたりする。
集団というのは奇妙なものなのです。
すべての出来事を自己の責任に帰すという考え方があります。
つまり、北朝鮮人が日本人を拉致するのもキッドの責任なのだ。
そういう考え方です。
確かにキッドは拉致をやめるように金日成にも金正日にも
強制しなかった。
責任は重大です。
でも、まあ、多くの日本人がそうだから
この責任はかなり薄れるわけです。
そして実際の過酷な運命は拉致被害者にふりかかる。
もしも「拉致されるのは本人の責任だ」
という考え方が主流だったらどうでしょうか。
そこには不可抗力という概念はないのでしょうか。
14才の母はありえること。
そしてもしも起きてしまったら
どうするかの判断も人それぞれ。
キッドは殺す決断よりも生かす決断の方が好ましいと考える。
そして生きた人の幸福に出来るだけ責任をとりたいと思います。
もちろん、できることなどないのが普通です。
でもそれが生きてやがて死ぬ。
人の人生というものなのではないでしょうか。
権利や義務はその道具にすぎないのでは?
投稿: キッド | 2006年11月24日 (金) 00時02分
●chocolate●まこ様、いらっしゃいませ●chocolate●
異端の排除という問題があります。
たとえば刑務所ですね。
合法社会から非合法者を隔離するわけです。
一方、バリアフリーという問題があります。
極端に言えば少数者に多数者が合わせることです。
時速200キロを出せる車が
制限速度を守るようなことです。
この制限速度を何キロにするかということが問題です。
アイルトン・セナを基準にすると
とんでもないことになるでしょう。
飲酒運転がなくならないように
14才の妊娠もなくならないのです。
キッドは飲酒運転者は死刑にするべきだと
考えていますが
そんなこと言ったら、居酒屋チェーンのオヤジや
ワイン・メーカーだとか清酒メーカーだとかが
必ずやヒットマンを送り込んでくるでしょう。
子供がいつ大人になるのか。
こんな個人差のあることも
異端の排除によって
ないことにされているわけですよね。
一体中学生のヤワラちゃんに
何人の大人の女性がなげとばされたことでしょう。
めぐちゃんが猫をかぶっている。
大人が子供の現実を知らない。
そういうことはありうることなのです。
キッドは三歳児の時にパパもママもバカだな~。
世の中ってものが分かってないよ。
と考えていた記憶がありますから。
はうぅん。
投稿: キッド | 2006年11月24日 (金) 00時23分
❆❆タキビダタキビダ❆❆きこり様、いらっしゃいませ❆❆オチバタキ❆❆
どんなドラマもある一面しか見せない。
どんな人間も一面しか見せないんですけど・・・。
15才の父の父はどんな人なのか見せないし、
15才の父の母の妊娠出産の課程も見せない。
庶民にとっては彼女のビジネスも謎めいている。
82億円の負債を作るのもなかなか大変そうデス。
不動産業らしいから、土地ころがして、バブルの頃に
逃げ切ったか。どんな不況ゲームにも
勝者はいるわけですからね。
どんなに景気がよくなっても
こんなに貧乏なのにそんなバカなという人がいるように。
しかし、その強運もここまでか状態です。
過去の自分を否定する人。
過去の自分を肯定する人。
どちらが正しいというのではなくて
失敗から学ぼうとすることが大切だと思うのですが。
ま、人は忘れ行く生き物ですからね。
キッドは焚き火の炎を見るように
今はただ志田未来の物語を楽しんでいます。
投稿: キッド | 2006年11月24日 (金) 00時52分
✿❀✿❀✿かりん様、いらっしゃいませ✿❀✿❀✿
既成事実ですねーっ。
なんで生んじゃうのよーっ。
という絶叫は過去のものとなり、
ムチを片手に女王様はご立腹~。
もはや既成事実なのですーっ。
ロシアが北方領土を占領しているがごとく
未希はもはや胎児に占領されているのですーっ。
こうなったらこっちのものだっ。
「私はまだ反対」
とか母の母が寝言いっても手遅れ~。
それでも女王様は最後まで
徹底抗戦をつらぬくのですね。
母のない子。
父のない子。
両親のない子。
天涯孤独の子にみちあふれたこの世界で。
一夫多妻制度なのでお母さんが三人いる
ボビー・オロゴンさんの感想も聞きたいな。
未希~。
しっかり~。
丈夫な赤ちゃんを産んでくれ~。
母体ともども試練を乗り越えろ~。
どっちかだなんて言ってると
『純情きらり』かよって後ろ指さされちゃうから。
それにしても2000万円。
ドラマ空間を突き破り
同情するなら金をくれーっと言ってた
「家なき子」に
寄付してあげればよかったのにーっ。
投稿: キッド | 2006年11月24日 (金) 01時14分