氷点。何度目だ。・・・・・・でも、また泣いた。
飯島直子の夏枝、石原さとみの陽子である。内藤洋子から40年であるか。この時の夏枝は新珠三千代。それから養女いじめの名コンビが映画にテレビに登場し続ける。南田洋子・島田陽子ペアとか、三田佳子・紺野美沙子ペアとか、浅野ゆう子・末永遥ペアとか、自分の娘を殺した男の娘を育てながらいじめる母親とそれに耐えながら気高く美しく育つ娘。このテーマはまだ持つのである。すごいな。
氷点といえば笑点であるが、テレ朝(当時NETテレビ)VS日テレとはいえ、このテーマをパロディーするなんてまさにお笑いの神様に命を捧げたものにしかできない振る舞いだな。さすがのキッドもじっくりと考えるとちょっとたじろぐもの。
少女時代の陽子は森永永依(ちびまる子ちゃんからここ)である。二枚目も三枚目もできるところが達者だ。そして演技力には定評ある石原さとみ、静御前を上回るような妙なる演技でした。
で、『スペシャルドラマ・氷点(後編)』(テレビ朝日061126PM9~)原作・三浦綾子、脚本・野依美幸、監督・藤田明二である。第二次世界大戦前後のどさくさの中で、三歳の娘を殺された北海道旭川の医師(仲村トオル)はその時、妻(飯島)が男(北村一輝)と不貞をしていたことを怨み、復讐のために犯人の娘を引き取り妻に育てさせようとする。陰湿である。そして、それを知った妻は養女(森永→石原)をいじめていじめて苛め抜くのである。給食費をあげなかったり、学芸会の衣装を与えなかったり、答辞を白紙にしたり、事情を知る実子(手越祐也)もあきれるほどで、美しく成長した娘のボーイフレンド(窪塚俊介)を寝取ろうとまでする。そしてついには「あんたは娘を殺した犯人の娘なのよ」と暴露。それを知った娘・陽子が長い絶叫をあげるまでが前編である。
この他にも仲村トオルと本上まなみの恋情、岸本加世子の粋なねえさんっぷり、など見所満載なのだが、とにかく、水が氷になる氷点があるように、人の心が凍りつく氷点があるという話なのだ。原作発表は昭和30年代後半。北海道はロマンの大地。そして舞台は当時のエリート(今もか)医師の家庭。なんだかうっとりして見ていた物語のはずだか、なぜか、今もうっとり見られるところが不思議だ。40年前の女たちをしっとりと演じる女優陣が抜群である。
そして、後半。陽子の自殺未遂から物語は始まる。雪野原で薬を飲んで自殺。北海道でなければ不可のうっとりである。いわば、氷点である。しかし、凍った心が溶け出すのもまた氷点なのであった。兄によって助けられた陽子。自分のために自殺しようとした娘にとけかかった母の心を一機に沸騰させるのがアカネとダブルブッキングの陣内孝則である。親のない子を里子プロデュースする彼はまったくの別人の娘を殺人者の娘として渡していたのだった。自分がいじめていたのはまったく罪のない子だった・・・もちろん、殺人者の娘にだって罪はないのだが・・・ことを知った母は生死を彷徨う娘にとりすがって詫びる。
息を吹き返した娘に真実「戦時中に夫を戦地に送り出した銃後の妻が不倫してできた子供があなた」が告げられる。殺人者の娘じゃなかったけどそれはそれでどうなのよと娘の心はグレイゾーンに。いわば氷のような水のようないわば氷点なのである。
「氷点」「続・氷点」を盛り込んだドラマ。エピソードもたっぷりで消化不良にもなりかねにいところを・・・唐突な部分やもやる部分もあるが・・・ジェットコースターのようにすっとばし、大学生となった陽子たちがドライブで聞く音楽がビートルズの『涙の乗車券』だったりと余裕さえ見せている。岸本ねえさんは本上を叱って「人の旦那に手を出しちゃダメだよ。そんな泥棒猫のような女は嫌いだ」が印象深い。
スペクタクルの大地震を境に兄と妹と兄の親友の三角関係が清算されたり、夫と妻が最終的に和解したりと人生ドラマ盛りだくさんなのだが、見せ場はやはり母娘。
まずは実の母(賀来千賀子)と育ての母の戦い。実母「あなたのいじめで自殺未遂をしたそうですが」育ての母「いじめましたよ。憎んで憎んでいじめていじめて、でも、憎いだけじゃ、20年間もそだてられませんよ」実の母「あんなに立派に育ててくれてありがとうございました」号泣・・・キッドが。
次に娘と育ての母の戦い。「おっしゃいよ。文句をおっしゃいよ。いじめられてつらかったって、ひどい母親だっておっしゃいよ」「できない。もしも私だったら娘を殺した人の娘を育てるなんてできない。お母さん。育ててくれてありがとう」またも号泣である。
そして捨てた母と捨てられた娘が娘の自殺未遂現場で「お母さんはお前を捨てて、自分のことだけを考えて、自分ばかりが幸せに生きてきた。許しておくれ。許しておくれ」「私はあなたのことは許さない。一生許さない」・・・・・・・40年後に石原さとみが竹下景子にチェンジすると許すのだが。
北海道といえば流氷である。一人流氷を見に来た石原さとみが暗雲から差し込む一筋の光に母なる自然から啓示を受けるシーンはキリスト教も仏教も越えた原始宗教の匂いがたちこめるのだが、きっと説明不足・・・あるいは分からない人には分からないシーンであるだろう。ずーっとローテクできて、ここでハイテクなのだが、まあ、技術がお手軽になったということですかね。その代償に人が失ったものが何かあるのだろうとは思いますが。
メロドラマとしては極上の原作なのだなあ。発端が幼女殺人、そして夫の偏執的な復讐欲というところが、戦後20年という空間に素晴らしくマッチしている。これを現代にスライドしようとするとかなり無理があるような気もする。こういう現代になって良かったのか、悪かったのか微妙だけど。いろいろと複雑なものがよぎるよな、14才の母とか、代理出産とか。オウム真理教の娘とか。
関連するキッドのブログ『花村さん、花村さん、花村さーん(石原さとみ)』
火曜日に見る予定のテレビ『火曜ドラマゴールド・警視庁鑑識課<第9班>ミッドナイトブルー』(日本テレピ)
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コメント
こんにちは!
氷点見ました!山Pと同じNEWSの手越くんが出てるからという単純な理由で見ましたが、前日より盛り上がって面白かったです。やはり私も母対決で号泣しました。
その後に陽子に謝る飯島ママもよかった。
産みのママ@賀来さんをなかなか許せない陽子が流氷の光を浴びて許すことを知るのも確かに宗教的ですね。ほんと厳かなシーンでした。心洗われました。
ただ一点、兄より北原を選ぶというのがわからなかった。
経緯が見えなくて突然に心が変わってしまったように感じます。同情が本気になったということなんでしょうか?
平成キャンディーズ(仮)結成の軌跡を辿ってみました(笑
これを見て思うのは一番ノリノリなのはキッドさんではないでしょうか?やはり実写がネックですね(爆)
投稿: かりん | 2006年11月27日 (月) 16時03分
✿❀✿❀✿かりん様、いらっしゃいませ✿❀✿❀✿
とにかく、すっとばしましたからねえ。
飯島ママの七変化であれよあれよと
見せちゃう感じでした。
つきつめると有閑マダムのよろめき夫人が
微妙な背徳の果てにすぐ近くにあった青い鳥に気がつく。
という・・・「アトランタ、そう私にはアトランタがある」
ドラマなんですよね。
そういう意味で心の空白を
何かを失った者への献身でしか埋められない
陽子の愛の結末は非常に分かりにくかったですよね。
ま、お兄ちゃんはお兄ちゃん。
恋人は恋人で。
大事なものを二つキープしたい
よくばりさんと考えることも出来ますが。
平成(ムーン)キャンディーズまとめ。
メンバーは
平成ランちゃん(アンナ様)
平成スーちゃん(かりん様)
平成ミキちゃん(まこ様)
コンセプトは
デビュー直前のアイドルグループ
「平成キャンディーズ」(マネージャー・お気楽様)
しかし、彼女たちはもう一つの顔を持っていた
「美少女ブロガーセーラームーン21」に変身して
悪いドラマをお仕置きするのである。
イラスト担当ikasama4様。
デビュー候補曲『ドラマとあなたに夢中』
カップリング曲『ごめんね名前間違えて』
メンバーの設定については各所で増殖中。
ムーンキャンディーズの誓い
「他のブロガーたちにあまり引かれないように注意する」
現在のところ以上です。
キッドは平成キャンディーズを心から応援しまーす。
投稿: キッド | 2006年11月28日 (火) 04時28分