追い詰めないでください。何をするかわかりませんよ。(麻生祐未)
連日の年上の女、年下の男の恋である。原田知世・松山ケンイチペアより年齢的に上の二人であり、不倫になってしまった。お相手は小泉孝太郎(1978)なので1978-1964=14で少し歳の差が縮小した。ま、そんな計算にはあまり意味がないですけど。30を過ぎた男が中学生と付き合うようになった程度である。
原作は結構、パクリターゲットであると思う。若い男と美女、そして年老いてどちらかと言えば醜い夫の三角関係。様々な模倣が成立するので、またかよ。と思われる人も多いだろうが、原作が1959~60年発なので、それ以降のこれはこちらが本家なのである。
原作者はどちらかと言えば美男子ではなかったので美男美女に対する憧憬と嫉視は情熱と冷徹で語られる。もちろん、けして二人を幸せにしたりしない。キッドとしてはそこが面白いのである。
で、『松本清張ドラマスペシャル・波の塔』(TBSテレビ061227PM9~)脚本・竹山洋、演出・大岡進を見た。かっては加賀まりこ(1974「銀河テレビ小説」版)もやったヒロインが青木ケ原で自殺するのだが、この作品によって自殺の名所であることの周知がなされたとも言われる。キッドとしてはそこもちょっと面白い。
ああ、いきなりネタバレじゃないか。っていうか、この作品は死ぬほどリメイクされているのでしょうがないじゃないかと思う。知らない方がバカなのだ。・・・それは言いすぎ。
ドラマはナレーション(蟹江敬三)がちょっと異様だったことを覗いては麻生祐美がラブシーンや入浴シーンを展開し、その美しさを見せ付ける展開。とにかく、冒頭の偶然の連鎖をのぞけば、若い検事とインサイダー取引事件の黒幕の妻とが、それと知らず不倫関係になり、家宅捜索で対面してしまうという話である。周辺をかぎまわるどちらかと言えば美男でない新聞記者を武というか、棚田というか、辺見なのだが田口浩正が演じている。
寝取られ男・朝倉は津川雅彦。検事の上司に柳葉敏郎。灰色役人に風間杜夫。その妻・中田喜子、娘・高橋かおり、朝倉の愛人に小松千春、江波杏子と豪華な布陣。特に朝倉は原作よりも大きく複雑な男に仕上がっている。まあ津川さん的にだが。
メロドラマのサスペンスなのか、サスペンスのメロドラマなのかと考えると、まあ、燃えるような愛はそれなりに燃える理由がいるのであるという結論に至る。
季節はずれの赤い薔薇が一輪。麻生から小泉へ、小泉から津川へとリレーされ、津川は取調べ室で花びらを握りつぶし、面会に来た妻の前で顔をおおい「狂い咲き」とつぶやくのである。
正体を明かさない年上の女との恋に溺れる若者。女は若者のために死を決意する。思い出の場所・京都で女を待つ若者はそれを悟り、「死なないでーっ」と叫ぶのだが、女は富士の樹海で静かに朽ち果てていく。甘美である。
麻生祐未の美女ヴァージョン。コミカルの麻生の方がキッドは好きだが、こういうことができるから、コミカルが光るのである。小泉は芸達者な夫婦の間で翻弄される役柄で精一杯清々しかったと思います。作品としてはまあ、昼メロで延々とやれる素材なので名場面集という感じはしましたけど。
関連するキッドのブログ『モロボシ・ダンVSキケロのジョー』
金曜日に見る予定のテレビ『大奥スペシャル・もうひとつの物語』(フジテレビ)深キョンのおまん(女中)である。深夜には『怨み屋本舗ベストセレクション』から『恋の門』(テレビ東京)の強力リレーがあり、『ピンポン』(TBSテレビ)もある。年の瀬って感じ。
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コメント
キッドさん、こんばんは!
すっごい面白かったですね。昔の映像は見てないですが、原作は読んでます。麻生さんがやたら出てましたね。シャワーシーンも。この方もう結婚されてるのよね・・大丈夫でしょうか?
でも小泉さんもかなり頑張ったと思います。確かに清々しい検事でしたね。全部なげうつなんて潔いけれど結局相手の死で元通りになるでしょう。世の中ってそういうもの。でも愛は美しいって言いたいのね。あはは・・確かに昼ドラマにぴったりの素材だったかもしれません。
投稿: かりん | 2006年12月28日 (木) 23時57分
✿❀✿❀✿かりん(スーちゃん)様、いらっしゃいませ✿❀✿❀✿
麻生さんはキッドの中では宮本信子さんの仲間なんです。
やはり、くせのある役が合うと思うのですが、
こうして真面目に薄倖の美人をやっても
似合うのですよね。
華奢で背中がなんとも色っぽく・・・。
フォッホッホ・・・これは私めといたしたことが。
はしたない。
小泉クンは薔薇を持って仁王立ちになったところが
迫力でした。
石原プロのオーディションに身長不足で
落とされたという話ですけど
今回は大きく見えた。
ああいう気迫を出せれば
いい役者になると思いますね。
「波の塔」は「愛の劇場」でも確かやってたと思います。
最初の連載は婦人雑誌だったし・・・。
ま、かりん様としては小泉クンが
もう少し翻弄されても良かったですよね。
投稿: キッド | 2006年12月29日 (金) 07時09分