占いなんてアテになりませんね。私はどうすればいいんでしょうか。(涼風真世)
占い師が主役のミステリー。犯人を占いでは当てないことが占い師にとっていいことなのか。悪いことなのか。だからといって占い師がインチキだとはキッドは言わない。不真面目な占い師もたくさんいるだろうが、中には真面目な占い師もいるだろう。当たるも八卦、当たらぬも八卦であり、根本的にインチキなのであるから、仕方ない。
時にはインチキだって人を救うことがあるし、何かの役に立つものだ。そう想わないとブロガーなんてやってられないしーっ。
ドラマの中で「宿命と運命は違う」という占い師にありがちな論理展開がある。これは人間に自由意志というものがあるという前提で行われるジャンル分け。「宿命」はたとえば、父と母から自分が生まれるということ。男だったり女だったりすること。こういう定めは変えられない。それに対して「運命」は人間の選択によって変えられる定めだというのが論理の中核である。朝ごはんを食べるか、食べないか、誰かに話しかけるか、かけないか。あらゆる機会に人は何かを選択している。その選択の結果、起こることは選択者の責任の生じるところという考え方です。つまり、人が選択権を持っているということですね。キッドはそれはおごりであり、結局、定められた時間にそって人は選ばされているという考え方を心にとめつつ、ま、何かは自由にできると思っていないと人間なんかやってられないんだよなぁ。と考えます。
で、『火曜ドラマゴールド・カリスマ占い師殺人鑑定』(日本テレビ061212PM9~)脚本・宇山圭子、監督・松島哲也を見た。脚本家はすでに80期を越えた脚本家連盟の脚本教室の37期生なのでベテランである。よどみない脚本だが、それぞれの過去を女優たちが演じるという展開に何か工夫があればなあと想ったりする。ま、脚本家の仕事ではないけれど工夫ってそういうものだから。
故・伊丹監督のなんとかの女シリーズの大女優・宮本信子(妻ダカラ)、宝塚のトップスターの中でもキッドにとって独特の風情が魅力の涼風真世。角川映画三姉妹の渡辺典子の顔合わせ。ま、二時間ドラマの常連の皆さんだが、豪華な顔合わせなのである。で、主役の宮本さんが「渋谷のお母さん」と呼ばれるカリスマ占い師すずこ(55)。子宝に恵まれない妻(36)役の涼風さん。そして怪しいブティック経営者(32)が渡辺さんである。ここからはネタバレ全開です。
被害者発生までおよそ30分。涼風妻の夫(梨本謙次郎)は妊娠したという愛人渡辺と密会後、刺殺死体となって発見される。部屋は指紋がふきとられており、それに使ったカーテンと凶器の洋バサミが付近の川を浚うと発見される。夫は妻の母の経営する不動産会社の婿養子。妻の母は脳梗塞でリハビリ中だが、その付き添いで病院にいたというアリバイ。密会の目撃者があり、愛人は事情聴取を受けるが犯行を否定する。
もはや、妻か愛人かどちらかが犯人。いや、妻が犯人としか思えない展開だが。一応、容疑者として愛人の元・愛人(唐渡亮)が浮上する。ダーツバーの店長なので女に暴力を振るうし、街角の占い師にインネンをつけるし、人を殺してもおかしくないという断定である。全国のダーツバーの店長・・・かわいそう。
占い師にとってすべての人がお客様。本来は彼女も客だった。若い頃、不倫の子を宿し、未婚の母となった占い師は子供が四歳の時に、体を壊し、里子に出した過去があり、自棄になっていたところを亡き先代「渋谷のお母さん」に救われ、跡継ぎになったのである。今はワケあって甥(杉浦太陽)と二人暮らしなのだが、・・・若い頃のやつれた占い師はスッピンで老婆にしかみえず・・・痛いのである。
ともかく、被害者とその妻もお客様で「子供に縁はない」「生涯妻も夫もただ一人」と占うのだが、現代は不妊治療も進んでおり、「どちらかが原因と判明してギクシャクするのがイヤという」二人の建前を喝破し、医師の治療を受けさせなかったことが悲劇を生む。「ああ、一番大事なことを忘れてた」と占い師は後悔するのだが、ま、根がインチキだから仕方ないとキッドは思うのである。
被害者は死ぬ前に「旧姓」に戻ったらどうなるかを占いにきたのだが、占い師は被害者の手相に凶相を見出し、不安に襲われる。この時、被害者は浮気が発覚し、愛人の妊娠の真偽を疑い検査を受けた結果、自分に子種がないことを知っていたのである。それを聞き出せなかった自分の未熟に占い師は愕然とするのだった。
その夜、愛人と会った被害者は愛人が自殺しようとして取り出したはさみをとりあげる。そして、愛人が帰った後に妻が、夫としては自分に子種がないこと、それでも夫婦であることを認めてくれるかどうか・・・という意味で「愛犬」がいることを口にするが、愛人に子供ができたことを知っている妻は自分が不妊症の原因だと思いこんでいたため激怒。気がつくと夫を刺していたのだった。これを目撃した愛人の愛人は強請をかけるという展開。
占いではつきとめられなかった真相を顔なじみの警官(矢崎滋)や常連客(角田ともみ)からの情報によって知った占い師は自殺を決意した妻の元へ駆けつける。そこは夫婦が知り合った想い出の展望台。七年前の回想シーンで妻は七年前の自分を演じるが、ま、これはそれほど痛くない・・・とにかく、自殺はくいとめられ、真相を知って崩れる涼風はそこそこに自首をすすめる占い師だった。
結論、占い師なんてものに頼る夫婦は殺しあう可能性があるので注意しましょう。
関連するキッドのブログ『夜なんて来なければいいのに・・・(菊川怜)』
口は災いの元というが、うっかり「オレたちには犬しかいないけどいいかな」と言うところを「犬がいるからいいだろう」なんて言ってしまうと殺される可能性があるので、国語力を養うことは大切なんですね。それにしても人は常に助言を求め、生きるものなのだなあ。しかし、助言に耳を傾けることは大切なことなのだ。それは自らの愚かさを認めることなのだから。たとえ、占い師でも助言をしてくれる人がいるのはありがたいことなのだなあ。キッドは世界で自分が一番正しいってことを疑ったこともないから、誰も助言してくれないけど必要ないし。
木曜日に見る予定のテレビ『おみやさん最終回スペシャル』(テレビ朝日)
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