« 幻想の眉毛と回想の眉毛は違いますがそれが何か。(福田麻由子) | トップページ | おじいさんの何に嫉妬しているんですか。(木村拓哉) »

2007年1月29日 (月)

「・・・・・・・・・・・・・・・」(貫地谷しほり)なので涙が止まらないのは何故ですか。

今年の大河ドラマはもはや貫地谷しほりにつきるではないかと思う。主人公に生まれて初めて愛を与えたミツ。武田信虎の狂気に見つめられたミツ。そして青白い骸となったミツ。その後の勘助(内野聖陽)のふるまいの一つ一つ、いや、平蔵(佐藤隆太)を始めとする全登場人物の一言一言がすべて「ミツの不在の慟哭」を物語り、涙で前が見えなくなりましたーっ。すごいぞーっ。貫地谷ーっ。この役にめぐりあえて良かったっ。今週、『花より男子2』で復活していると思うとホッとするぞーっ。

「生きたまま妊婦の腹を割き胎児を観察する」という行為が医師による帝王切開ではなくただの嗜虐的行為であった場合、それをしたものはまさに「鬼畜」の名にふさわしい(鬼さん畜生さんごめんなさい)ものと言える。語るのさえ、おぞましい行為であり、描写のスカシにはうるさいキッドも今回の演出はギリギリに抑制されたもので伝わるものだけに伝わればいいという意図があり、賛意を表する。それにしても「甲陽軍艦」などが伝える「武田信虎」の暴虐残忍ぶりのエピソード「妊婦の腹を生きたまま裂く」を「主人公を初めて愛した女ミツ」に結びつけるとはなんと巧妙な発想なのだろう。キッドも度胆を抜かれました。ちなみに「日本書記」には武烈天皇が「妊婦の腹を割いて、胎児を見る」と記されており、いわば「これ以上なく暴虐なこと」の代名詞のような行為なのである。武烈も謎の死を遂げて継体天皇という別系統の天皇が後を継ぎ、信虎はやがて我が子に追放されて所領を失う。行為があって結果としてそういうことになったのか。結果から行為が脚色されたのかという疑問を抱くに相応しい歴史的題材なのである。犠牲者・ミツ・貫地谷しほりも素晴らしかったが加害者・信虎・仲代達矢も素晴らしかった。これだけ惨く忌まわしい行為を美しくせつなく描くことこそがドラマの醍醐味ではないか。残されたものの「なんてことしてくれたんだ」感はこの上なしである。

で、『大河ドラマ・風林火山・第四話・復讐の鬼』(NHK総合070128PM8~)原作・井上靖、脚本・大森寿美男、演出・清水一彦を見た。鹿狩りで獲物を逃した武田信虎は偶然、鹿を逃したミツに矢を射掛ける。矢は真利支天のペンダントで食い止められるが、凶悪な運命は狂気の信虎の前に震える妊婦を差し出した。それから繰り広げられた武田の歴戦の荒武者たちも戦慄するミツの苦痛、恐怖、いたたまれなさはカットである。とにかく、ミツは生きたまま、腹をさかれ、たとえようのない絶望と苦悶の果てに母子ともども絶命したのである。

そのやりきれなさは山本勘助を絶望の縁に追いやると同時に渇望していた仕官の道を開くのである。残された遺族たちの代表は胎の子の父、勘助。ミツの兄・伝助(有薗芳記)。そしてミツに恋慕していた平蔵。三人はそれぞれに復讐を胸にたぎらせるが、それを実行できる力はない。刀を握るミツの兄を勘助はとめ、武田に仕官をして戦場で信虎を討つという決意を示す。しかし、平蔵は「ただ戦がしたいだけなのでは」と懐疑を示す。勘助は「オレだって素人だ。だがこれだけは真剣だ」と本音を明かす。平蔵は形見(真利支天→勘助→ミツ)を胸に「もしも仇をとってくれたらあんたのために米を作る」と美しい言葉を残して甲斐を去る。あまりにもせつなくおぼろな男と男の約束である。

お坊ちゃま、武田晴信(市川亀治郎-香川照之のいとこ、猿之助の甥)はお坊ちゃまなりに父の悪行に胸を痛める。それをいさめる母・大井夫人(風吹ジュン)も苦しい。「民をいたわる心を忘れてはなりませぬがこの戦の世の生んだ荒みを許す誰かも要るのです」そんなきれいごと、テロリストに通じますか。そこで晴信は仇の子として勘助の前に身を曝す。もしも勘助が復讐にすべてを賭けていたら「仇のわが子」を奪うことは手順としてありえるのだが、本命をうちもらす恐れがあるので討たないという戦略が晴信の心にはあった。そして晴信はそういうことの分かる軍師を求めていたのである。ま、基本は坊ちゃんとしての興味本位70%なのですが。

剣の腕に優れる守護神・板垣(千葉真一)を配置して勘助と面談する晴信。後の主従はそれぞれの思惑を胸についに邂逅する。・・・見事な展開だ。勘助の感想「青二才め、なめやがって目にものみせてやる」・・・復讐の鬼の心が美しいのは大望があるからなのか、目的を見失わないからなのか、キッドは微妙だと思いますが、人の心は複雑なものなので二人の最初の出会いとしては極めてすぐれた場面になっていたと考えます。

しかし、実際に勘助に与えられた仕事は間者役。しかも、仲間を人質にとられた形。ただし、板垣はすでに勘助の器量を認めており、機会を提供したのはいかにも好意なのである。そして、運命の糸車は今川に「花倉の乱」を綾なしはじめる。ミツが去り福島越前守(テリー伊藤)登場。それは代償には程遠いのですが・・・つづくなのである。

関連するキッドのブログ『第三話のレビュー

貫地谷しほり、映画『スウイングガールズ』からドラマ「H2」「刑事部屋」「大奥~華の乱~」「信長の棺」「氷点」と地味に歩を進め、ついに開花・・・そして散ったのですね。いや、これからだーっ。

ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。

皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

続いて『華麗なる一族』のレビューをお届けします。

|

« 幻想の眉毛と回想の眉毛は違いますがそれが何か。(福田麻由子) | トップページ | おじいさんの何に嫉妬しているんですか。(木村拓哉) »

コメント

すごい^^。お詳しいですね^^。TBさせていただきました。ミツ(貫地谷しほり)の演技力!すばらしかったです。

投稿: maro2k | 2007年1月29日 (月) 14時11分

>今年の大河ドラマはもはや貫地谷しほりにつきるではないかと思う。
まだ第4話なんですが、その言葉には同感です。

貧しい中でも凛とした姿と
勘助を外見で判断するのではなく
彼の内面を見ている彼女の姿に
たくさんの方々がヤラれている事でしょうね。

ちなみに千葉さんとの戦いも石橋蓮司さんから
秘剣・村雨を伝授されていれば勝っていた事でしょう(笑)


それから報告です
ギャラリーサイトのProfileに
Staffを追加しました。

と言っても今のところ
私とキッドさんの二人だけですけど(;・∀・)ゞ

また性格等々の紹介についてはアンナさんの記事をそのまま
参考にしております。

月に1、2枚程度の割合で続々追加されていく予定です。

投稿: ikasama4 | 2007年1月30日 (火) 00時30分

心の散歩道~maro2k様、いらっしゃいませ。

すっかり貫地谷しほりのファンになりそうです。
また、遊びにきてくださいね。

投稿: キッド | 2007年1月30日 (火) 09時57分

✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥

いろいろなブログで貫地谷しほりに
心奪われた報告があり、みんな、見てるなーと思いました。
まこ様の、現代劇だと心配・・・という意見がありましたが
本来、上野樹里よりも美人という
設定のスウイングガールズだと
思うので下積み生活を経て
高視聴率の綱渡りをする彼女が
「花より男子2」でどんな演技をするのか
楽しみです。
ABPincという彼女くらいしか
メジャーな人のいない事務所(ある意味弱小)ですから
現在の浮上の仕方がとても好感触なのです。

かっての予算あります状態ほどには
合戦の演出は難しい時代。
しかし、千葉VS内野の剣戟があれだけ
見せられるというのが
今回の演出の素晴らしいところですね。
殺陣と真剣勝負の間を縫うような
リアルな見せ方。
工夫が感じられます。

あの勝負があって
晴信との対面の理が通るという
スキのない演出です。

できることなら
このスタッフで信長様を見てみたいぐらい。

甲斐源氏は基本的には小笠原流に
属するわけですが、
板垣の太刀筋は
それほど洗練されたものではなく
手もでれば足も出るという
体術がらみ。
しかし、足が不自由で隻眼という
勘助はさらにそれを上回る我流。
遠近感にもスピードにも
限界があります。
それゆえ最初の必殺の一撃をかわされた時に
勝負あったのですが、
そのあと板垣は勘助のくりだす執念の刃を
いなしながら、正眼から上段、そして八双と
変化を見せて
勘助の太刀筋を見切り、
最後は余裕を持って寸止め。
見事な展開で勘助もさぞやまいったと考えます。

おニューのキッドじいやメガネもキラリと光って
身のひきしまる思いでございます。
どうもありがとうございました。

キッド加工場はまさに夢の島状態なので
本当は整理したいのですが
新しいサンプルの続々登場で
うれしい悲鳴をあげています。
まさに妄想に加工が追いつかない状態。

ikasama4様あっての妄想ですので
どうかマイペースでこれからも
よろしくお願いします。

投稿: キッド | 2007年1月30日 (火) 10時49分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「・・・・・・・・・・・・・・・」(貫地谷しほり)なので涙が止まらないのは何故ですか。:

» 風林火山 復讐の鬼 [ねぇ、しょーP、こっち向いて♪]
風林火山 復讐の鬼 …光を放つ者は影を負う者が傍にいてこそ安堵して輝けるというもの…。 ミツが武田信虎に殺されてしまいました。 勘助「戦を待つのじゃ。武田の内情を探り、戦を待つのじゃ。戦になれば敵に寝返ろうとも陣中をかく乱する事もできる。戦は謀じゃ。武田を負かすように仕向ける方法は幾らでもある。…武田信虎を討ち死にさせるのじゃ。ワシには出来る…。」 勘助「平蔵…わしにも戦のやり方など分からぬ。しょせんは浪人の戯言じゃ。諸国を経巡り�... [続きを読む]

受信: 2007年1月29日 (月) 07時15分

» 風林火山 第1話 「復讐の鬼」 [渡る世間は愚痴ばかり]
いつものように猟をしてきた勘助を待っていたのはうつむいた様子の村人達。 [続きを読む]

受信: 2007年1月29日 (月) 08時18分

» 大河ドラマ:風林火山 第4回「復讐の鬼」の感想。 [いーじすの前途洋洋。]
第4回 「復讐の鬼」 1月28日放送  勘助の思い人・ミツが武田信虎に惨殺された。 ミツに惚れていた村の男・平蔵(佐藤隆太)は武田を倒すと叫ぶが勘助は冷静になれと諭す。 しかし武田の重臣・板垣信方が村にやってくると抑... [続きを読む]

受信: 2007年1月29日 (月) 09時05分

» 大河ドラマ「風林火山」 第四話 [多数に埋もれる日記]
ミツに向けられた矢は当たってしまうのか? 第4回 「復讐の鬼」 山本勘助(内野聖陽)が狩りに出かけていた間に、悲劇が待っていました。 鹿狩りに行っていた武田一行と山菜とりに出…... [続きを読む]

受信: 2007年1月29日 (月) 09時15分

» 風林火山4勘助武田のスパイになる [ぱるぷんて海の家]
おおっと、始まっていきなり狂気信虎の矢がミツを襲う!! 矢が刺さる? ヤーねぇ って、 先ほどの番組笑点で林家木久蔵師匠がおっしゃってたのを思い出したり・・・。 などとアホなこと云ってるばやいではないのです。矢は摩利支天像に当たり大事はなかったが、そ....... [続きを読む]

受信: 2007年1月29日 (月) 10時42分

» 風林火山 第4話 [心の散歩道]
 今回の「風林火山」ホントに感動しました。 思わず涙があふれ出してきてしまいまし [続きを読む]

受信: 2007年1月29日 (月) 14時06分

» 風林火山〜第4話・ミツの死と仕官! [一言居士!スペードのAの放埓手記]
風林火山ですが、やはりミツは武田信虎に殺されてしまいます。出演者の名前が出るところで、ちょうどミツの貫地谷しほりの所で花が池に落ちるわけです。ミツは、山本勘助(内野聖陽)と最後の言葉も交わすことなく遺体での再会となってしまうのですが、もっと酷い話もあるわけです。(風林火山、第4話・復讐の鬼、感想は以下に続きます)... [続きを読む]

受信: 2007年1月29日 (月) 16時07分

» 大河ドラマ 風林火山 第4話「復讐の鬼」 [オタク戦隊3バるカん]
「戦とは、謀じゃ。ワシは必ず、信虎を討ち死にさせる!」 やっと見つけた、守るべきもの… それはあまりにも儚く、呆気なく無くなった… 仇は遥か遠く、とても及ばない相手… だからこそ、静かに、何もなかったかのように暮らす他ない… そんな選択を選べない男が... [続きを読む]

受信: 2007年1月29日 (月) 20時37分

» 風林火山(1月28日) [今日感]
弓で殺したのではなく、助かるはずのミツをわざわざ殺しに行った信虎(仲代達矢)。 いにしえより、暴君には妊婦の腹をさくという逸話がありますが、信虎もその類。 それにしても、ミツは子供をまもろうとしたのでしょう。それを知り、あえて殺す信虎とは・・・... [続きを読む]

受信: 2007年1月29日 (月) 22時45分

» 【風林火山】第四話 [見取り八段・実0段]
ミツを信虎に殺され、ミツの兄や平蔵らは武田への復讐心を募らせる。もちろん、勘助も。口封じか、自分たちを召し抱えると提案してきた板垣の元へ訪れる勘助たちだったが、そのまま信晴の元へ連れて行かれる。ミツの死を悼む間もなく、晴信と勘助の初対面。武田に潜り込ん...... [続きを読む]

受信: 2007年1月31日 (水) 03時30分

» 「風林火山」第四回。 [リリコ雑記]
信虎によって惨殺されてしまったミツへの復讐に燃える勘助と、父の所業に心を痛める晴信。いよいよ初対面〜!な今回。さて、両者の第一印象如何に??? [続きを読む]

受信: 2007年2月 3日 (土) 00時15分

« 幻想の眉毛と回想の眉毛は違いますがそれが何か。(福田麻由子) | トップページ | おじいさんの何に嫉妬しているんですか。(木村拓哉) »