・・・オカン、今度、連れてっちゃるけん。(速水もこみち)
ああ、その約束が・・・。という問題のシーン。これまで普遍的だった母と子が特殊な状態に移行する回である。ここで、少し視聴率が下がるのは不思議ではない。子供が上京して母が故郷で気を揉むのは普遍的だが、子供が母を東京に呼び寄せるのは特異なことなのである。もちろん、一家を構えてある程度、成功した者が老い先短い老母を引き取るのはあることだが、この物語はそうではない。その孝行ぶりに引く視聴者がいてもおかしくないと思う。しかし、物語はいよいよ佳境に入るのであり、ここからが本番なのだ。なぜなら、東京タワーが視界に入ってきたからである。
「そしたらねー」でキッドは「じゃあまたね」を連想し、作詞家・安井かずみ的世界をこの物語に強く感じるのだが、たとえば屋上から見る東京タワーもまた「人生がキラキラと近付いてくる」ので『不思議なピーチパイ』なのである。安井かずみは1994年に肺がんのために早逝したのだが、ドラマの舞台は今、1996年である。
もちろん、このドラマや原作と安井との関連はただキッドの漠然とした連想にすぎないのだが、そうした連想がドラマをより魅力的なものにするのである。ついでに音楽は澤野弘之と河野伸が担当しているのだが、どちらのスコアなのか、メインテーマの旋律が呉田軽穂(ユーミン)作曲のポップスも連想させる。「なぜ、知り合った日から半年すぎてもあなたって手もにぎらない・・・」(赤いスイートピー/松田聖子)である。その歌詞は松本隆だが、「I will follow you あなたについてゆきたい」なのである。この世でもっとも強く結ばれた女(母)と男(息子)の物語。東京タワーは赤いスイートピーなのである。
本題に入る前に恒例の週末視聴率チェック。「花より男子2」↗21.0%(類、司、つくし、滋の四角関係白熱)、「わるいやつら」↘*7.2%(だから日曜日でお腹いっぱいなんだって)、「只野」↗13.9%(わるいやつらに少し分けてあげてー)、「演歌の女王」↘*8.2%(もはや挽回不可能の模様、唯一の平均ヒトケタだし)、「風林火山」↘19.3%(落武者狩りだけの地味回だけど義元、三条のキャラクター造形斬新、ますます面白い)、「華麗」↘21.2%(上戸彩のチャイナドレスに微量食べられた模様)、「李香蘭」*9.1%↘*8.5%(まあ、上戸彩の胸だけではこんなもんかな)、そして「東京タワー」↘12.9%(上戸彩の・・・もういいか)
で、『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン・第六話』原作・リリー・フランキー、脚本・大島里美、演出・久保田哲史を見た。今回、オトンは冒頭、「東京に行く覚悟をしたか・・・」とオカンを見送るシーンに登場。キーワード「そしたらねー」をオトンはいつも「そしたらな」と言うのだが、今回は「そしたら・・・」で言葉尻を飲み込む。キッドはここでもう少し涙ぐみました。さあ、東京へ。オカン60才過ぎていきなり渋谷区民です。田舎の人から見るともうズバリ東京ど真ん中の境遇に。
バカボン(柄本佑)は快調に飛ばします。「失って初めて大切な人だったと知る」というのはバカ坊ちゃま・マーくん(速水)のこと。マーくんはアパートをバカボンに譲り、やや、身分不相応なマンションもどきに引越しています。そして、母を迎え、新生活を始めるのですが、たちまち、新環境になじめない苛立ちを発症。ま、ないものねだりは人間の基本ですから「いなけりゃ淋しいいれば鬱陶しい」のおりあいをつけねばなりません。まあ、甘えん坊マーくんにはなかなか難しい。
一方、オカンはマイペース。つけものをつけ、お惣菜を作り、訪問者にはすべてご馳走する態勢。さらにバカボンの評価するところの中の下のマーくんの彼女・まなみ(香椎由宇)を家に誘います。マーくんとしては「そげなことないっちゃないと」と心の動揺まるだし。彼女に「田舎ものの母を見せるのが恥ずかしい」「母親に彼女を見せるのが恥ずかしい」という二つの恥ずかしさの奥には禁断の三角関係への恥ずかしさも秘めているのです。
そんなマーくんのうろたえをよそに母と彼女は親密に。もちろん、オカンはどこにでもいそうで滅多にいないオカンですから、たちまち彼女もオカンを好きになってしまうのです。さあ、マーくんの中によからぬ九州男児の血が騒ぎ出します。日月連続お坊ちゃま「甘えていいのはボクだけなのです」シンドロームです。オカンに甘えていいのはマーくんだけで、オカンが甘えさせていいのもマーくんだけなのです。困った奴よのぉ。最初の犠牲者は親友(平岡佑太)、オカンが来たのを口実に頭をもたげたマーくんのさぼり癖で原稿入稿がおくれ、叱責される羽目に。しかも、本人がデートしているのを目撃。さすがのアユタも堪忍袋の緒が切れたのです。
仕事を切られ、諸経費振込み催促のプレッシャーにマーくんはオカンにやつあたり「もう帰ればよかとにっ」ってどこに帰る家があると言うのでしょう。このあたりがマーくんならではですねーっ。で、家を出たマーくん。東京の先輩(石黒賢)の元へ。そこで石黒はとっておきの話。「母危篤でも帰らなかったんだ。なんとなく死なないと思ってたんだ。・・・でも死ぬでしょ。・・・危篤だもん」である。
このエピソードで反省しなかったら人間じゃねえ。なのでマーくんは家へ。一方、マーくんの留守中に彼女は「がめ煮(筑前煮)のコツをアドバイスしてください訪問」一口で「干ししいたけの戻し汁入れ忘れ」を見抜くオカン。そして二人で大量のおにぎりを。思わずキッドもおにぎりを食べます。帰ってきたマーくんは無人の家でオカンの大事なものを探索。そこには自分の思い出の品々が。心の岸部に咲いた赤いスイートピー。そこへオカンが帰宅。「どこに行っていたのですか?」「家出ですよ。でもどこにも行くところがなくて困ってしまいました」「ここは僕とお母さんの家ではないですか。死ぬまでずっと一緒にいてくれなければ困ります」・・・そして東京タワーを見る二人。オカンは東京タワーに行ってみたかったんだ。どうしてそんなことを分かってやれないのーっ。と思ううちに涙で東京タワーが見えません。
来週はスキャンダルで男を落とした高岡蒼甫の立ち直り企画の模様でつづくである。
関連するキッドのブログ『第五話のレビュー』
水曜日に見る予定のテレビ『ハケンの品格』(日本テレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
またココログフリーによるとスパムによる高負荷により断続的にコメント及びトラックバックでエラーが発生しています。影響のあった皆様に重ねてお詫び申し上げます。
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コメント
キッドさん、おはようございます~♪♪
キッドさんからTB来ないから、あれれ??
と思ってました。
そして今日、キッドさんのとこにTB送ってみたら、
何度トライしてもダメでした。
ヤマトね・・・ココログに愛想をつかしそうなのです。
おうちで記事(自分のも人のも)見れない。
TBおくれない。
TBもらえない。
楽しいブログライフが滅茶苦茶なのです。
ポイントは、
「他社のブログは何も障害がおきない」とこ。
友人情報によるとスパムも少ない模様。
ちょっと、他社のブログに乗り換えを考えている
ヤマトです。。。。
でもでもー、今まで頑張って書いてきたこの記事は
どうなるのかな・・・
キッドさんのオモシロコメントもどうなるのかな・・・
なんてカンジでココログに縛られっぱなし・・・
あー!!!あー!!!
ストレスがヤマトをダメにする!!!
あー!!!まー君について何も書けてないし!!!
ココログめ~。。。
投稿: ヤマト | 2007年2月14日 (水) 10時32分
あんな重そうなヌカ漬けのツボ抱えて・・・
てか、周囲の人は臭くは無かったのだろうかなどとは
突っ込んではいけないのですよねーーーっ!
今回、手塚さんのノックダウンと大活躍したヌカ漬けですもん!功労賞を授与なのデス♪
オカンのタンスは、田舎の祖母の家に似たようなのが
あったなぁと懐かしく思い出しました~。
そしたらね~!ε=ε=ε=ε=ε=(o*゚ー゚)oブーン
投稿: まこ | 2007年2月14日 (水) 14時05分
手塚さんの言葉は予告でも見ていたので
あの爆撃では耐えれましたが
東京へ出てきたオカンが持ってきたものは
予想がついていたのですが、
マー君の思い出を見せられて
「これがオカンの全財産」ってフレーズによって落城寸前。
序盤は何気ない笑いのシーンがあって
その中に後半に繋がる大きな伏線を持ってくる。
わかっていてもそれにハマった私は
そしていつものようにコブクロにトドメを刺されます(;▽;)
もう全話(;▽;)も現実化しそうです。
>来週はスキャンダルで男を落とした高岡蒼甫の立ち直り企画の模様でつづくである。
彼の中での「人間の証明」が何なのか見せてくれたらいいんでしょうね。
投稿: ikasama4 | 2007年2月14日 (水) 18時16分
☆*⋄◊✧◇✧◊⋄*ヤマト様、いらっしゃいませ*⋄◊✧◇✧◊⋄*☆
困りましたよね~。
キッドは臨機応変が信条なのですが
裏には執着心もあって
特にもはや若者ではないと断言できる年齢ですから
再スタートには抵抗があります。
日本は法治国家ですが
ネット世界はフロンティアつまり無法地帯です。
キッドとしては西部劇のイメージが
一番しっくりくるのですが
流れ者としてココログの町に
たどりつき
そこが盗賊団のターゲットにされている
町長や保安官はたよりないけど
一度腰を落ち着けたので
町を捨てるにしのびない一市民というところでしょうか。
贅沢を言うとドクホリデーで。
でも若い娘さんには
輝かしい未来があるので
旅立ちをほろ苦い気持ちで
見送ることはやぶさかではないですけど。
ブログをいくつか持っている人はいるので
ふたまたかけて乗り換えていく手もあると
思いますが、
過去ログについてはセレクションとして
コビペしてもいいし、
キッドのつたないコメントも
大事にしてくれるのなら
ついでにお願いします。
まあ、どちらにしろ手間暇かかりますよね~。
キッドとしてはヤマト様が嫁に行くまでは
寿命の許す限り、ここでがんばろうと思います。
ま、ココログフリーの町が壊滅したら
それまでですが・・・。
ヤマト様がどのプランを利用しているのか
分からないのですが、
ココログもフリー以外のプランは
わりとセーフティーみたいですよ。
ま、フリーの代償が大きいのは
世の常ですからね。
パスワード了解していますから
どうぞ、ご安心を。
キッドはここにおるけんね。
それにしても自宅でアクセスできなくなったら
困るよな~。
投稿: キッド | 2007年2月14日 (水) 19時42分
●no choco●まこ☆ミキ様、いらっしゃいませ●no choco●
ヌカ漬けは母の手の細菌が隠し味ですから
もう「ならでは」の味になるんですよねえ。
もちろん、空気中の細菌も関係しているので
引越したら味はちょっぴり変わるんですけど・・・。
まあ、キッドの母はどちらかというと料理の嫌いな方だったので
自分でつけたりつけなかったり
おふくろの味が近所の八百屋の味だったりして
八百屋がつぶれたらおふくろの味も変わったりする
微妙さをともなっているのですが・・・。
昔の家の台所の床下にあったヌカ漬けのツボ・・・。
ああ、三丁目の夕日の世界でございます。
タンスは近所の年寄りが死にそうになると
形見にもらってくれないかと
持ちかけられ
処分に困るという東京の下町でございます。
ま、亡くなったら粗大ゴミ処分ですが。
知らぬが仏ですから。
そしたらねー。
投稿: キッド | 2007年2月14日 (水) 19時54分
✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥
月9が落涙注意報ワクと化しておりますね。
視聴率のなだらかな下降が気になるところですが
やはり若者はもう少し華やいだ空気が欲しいだろうなぁ。
でもオカンのようなオカンに恵まれていないと
正直、つらいのかもしれない。
身の回りにああいうオカンが見当たらない気もして。
ま、家の中ではオカンなのかもしれないので
気のせいかもしれないのですが。
オカンはねえ。
大切にしてくれますよぉ。
どうでもいいものをね。
でもそれがたまらなくたまらなく
うれしいんですよね。
どうでもいいものを大切にしてくれない
オカンなんてオカンじゃねーっと叫びたいほどです。
もう、来週は「再発」というか「進行」ですからね。
一回分を「その後」の回想責めという手もあるので
爆涙は避けられないかと・・・。
役者でどうしようもない不始末をしでかす人はいます。
でもその中から何かをつかんで立ち上がればいいのです。
テレビは虚像でありながら容赦なく善悪を映します。
そういう意味で彼まだ手負いの顔をさらけ出していますが
それもまた味ですからね。
キッドはちょっぴりエールを贈るのです。
投稿: キッド | 2007年2月14日 (水) 21時02分