二宮和也は右手に福田沙紀の唇、左手に乳の重さを感じつつ失神したのだが夢に出てきたのは朱色の黒木メイサだったわけで。
うわーっ。急に面白くなってきましたーっ。視聴率が13.2%、「エラ嫁」11.3%、「きらきら」10.1%だから言うわけではなく、今回の「拝啓」はゾクゾクするほど面白く、一本立ちすることにしました。「エラ嫁」も「きらきら」もそれなりに盛り上がってきているのですが、「拝啓」は突然、嵐のように面白くなってしまったのです。まあ、パターンは昔ながらの手なので当然のことなのかもしれませんが・・・。
義理と人情を秤にかけて、どちらを選択するにしても本人にとっては「我」を通すことになるわけですが、その時、周囲を巻き込んでいく。その時、本人にその気がなくても流されてしまう人がいる。今回、二宮くんは八千草薫の流れに巻き込まれてにっちもさっちもいかなくなるわけで、これが「何も悪いことをしていないのにひどい目にあってしまう」というスラプスティックの王道。「演歌の女王」も同じ展開をしているのですが、天海が「悪い」のでストレートに笑えないという構図になっているのとは差異があるのです。
先週の男のロマン悪ノリに続き、小心者をこづきまわしてエスカレート。さすが巨匠の腕力を堪能しました。
で、『拝啓、父上様・第四話』(フジテレビ070201PM10~)脚本・倉本聰、演出・西浦正記。「私、消えます」と夢子はお金も持たずに家出。東京で家出というのは独特のものがあります。キッドも幼い頃には何度も家出しています。行くあてなどなくてもなんとかなりそうな気もするし、夜の街は明るく、しかもこわいのです。あの開放感と心細さの同居した感覚はクセになるのです。八千草薫はきっと初家出ではありません。キッドはなんとなくそう思う。
娘・律子(岸本加世子)の落ち着きぶりがそれを示しています。まさに「あ・うん」の呼吸。もちろん、心配はありますが娘として母の心は読んでいる。それに対して孫・エリ(福田沙紀)はもうちょっとオーバーにイベントを楽しみたい意向。「おばあちゃんが家出して行方不明になってるのに平気なの(それじゃつまらないじゃない)」と騒ぎ立てます。板場(職場)で家(私事)を持ち出すなと教育的指導の平手打ち。しかし、ここも母と娘の「あうん」の呼吸で自然な情報開示による、問題の共有化を達成。
全員が一致協力して大騒ぎの方向へ。主人公は「夢」とからんで登場する。同居人の時夫(横山裕)の寝言である「あ・・すご」の状況に想像をふくらませ悩むのである。時夫は明らかに性的抑制をかいた性犯罪者予備軍の表情を持つ男を演じていて、かなりこわい。「未成年なのに女性体験は抱負そうね」と仲居にひやかされて「そっちは法律で禁じられていませんから」とうそぶくあたり、モラリストの肺腑をえぐる存在感なのだ。
もしも、主人公がロマンチックな恋がしたいと願っても行く先々で先に性的関係を結んでいそうな気配を漂わせている。これもまたドタバタの重要な要素。一平(二宮)の心のマドンナ(黒木)、乳の気になるエリ、実の母・雪乃(高島礼子)、場合によっては夢子でさえ、ターゲットにしかねない性の狩人・時夫なのである。
さて、「夢子の家出」発覚に沸く、料亭。近所の人々もゾクゾクと駆けつけてきて、夢子捜索本部が設置される。とびの「組」の小頭しゃく半(しゃっくりの半次郎=キレる前にしゃっくりが出るところからついた通り名・松重豊)は「みんな、悠長すぎる。もう死んでるかもしれねえぜ」と外堀(神楽坂は外堀に隣接している町)にボートを漕ぎ出す大騒ぎ。雪乃も夢子の昔なじみに連絡を取る一人。しかし、多くは他界していたり痴呆になったりとにぎやかす。エリの「巣鴨」という手懸りに「骨抜き地蔵」とボケまでする。この躁状態は実は後の伏線になっている。
ともかく、一平とエリは巣鴨でガモーナの夢子を捜索することに。「死んでいるかも」というしゃく半の言葉に涙ぐむ一平にエリは「お兄ちゃん優しいのね」とすでにウキウキおでかけモードへ。すでに祖母家出をイベントとして楽しんでいるのである。今回、エリは一平を奈落の底へ突き落とす張本人なのでフリは徹底して行われる。もう一つ声のトーンを高めてぶりっ子演技をすると完璧なのだが、まあ、本人の演技そのものは及第点。「父(板前=養子・高橋克実)のようにならないでね。あたしはお兄ちゃんをたてるから」と意味深なことを言いつつ一平によりそい巣鴨めぐり。
目当ての夢子御用達占い師は余貴美子である。第三の選択に「八卦」も重要な要素。どっちでもいーよーなことは占いに頼ってもいいのだ。当たるも八卦当たらぬも八卦だからな。どーでもいーよーなこと以外も占いに頼るようになると人間はまずいことになっているのだが。ここで二宮が「悪い」という唯一の「落ち度」が生まれる。夢子を捜しにきているのに「訪ね人」が別にあると言われ「幻の父と幻の女」につい気が向くのである。
そして夢子は行方不明のまま、一平は母に呼び出される。雪乃は芸者浮葉(木村多江)たちを相手に律子の悪口で怪気炎をあげている。その妙なボルテージに乗せられて二階にあがる一平は待ち構えている夢子に捕獲されてしまう。そして指令が下るのである。こっそり忍び込んで私のお金を持ち出してきなさい。というのである。「無事をみんなに知らせないと」と一平は言うのだが。「私と律子どっちが大事なの?」と理不尽な選択をせまられ、任務に就く。
小心者である。ビクビクなのである。その泥棒行為をおそれる一平の尻をたたくのは実の母・雪乃「こういうときのためにおちんちんつけてあげたのよ」とキスを迫る勢いである。そして潜入。大金を目の前にして、震える一平。そこへエリが乱入。うわーっとばかりに一平はエリをはがいじめ、乱れ舞う札束。そして花板・竜次(梅宮辰夫)がとどめを刺す。一平・・・失神である。夢の中では憧れの少女が朱色の着物でパワーのつく赤いパンツを売ってくれるのだが・・・。うわーっ、おもしれーっ。でつづくである。
関連するキッドのブログ『第三話のレビュー』
ここで白状する手もあるのだが、一平は黙秘をつらぬき、来週さらに追い詰められる模様。いいですねーっ。とことん、追い詰めてもらいたい。二人の女。福田沙紀と黒木メイサ。悪くないのだが、どちらかの輪郭をもう少し細めのキャスティングにした方が良かったな。現実の女と夢の女。恋心のウラに眠る二面性の具象化なのだからな。ま、今回、面白かったのでギリギリですけど容認できた模様。・・・お前、何様じゃ。
土曜日に見る予定のテレビ『演歌の女王』(日本テレビ)さあ、モー子だ。モー子だ。
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
そうそう、こんなドキドキハラハラ展開が1回目から出てればなぁ・・・。これから視聴率は盛り返すかなぁ?
今さら遅い気も・・・。
投稿: お気楽 | 2007年2月 2日 (金) 18時21分
✞✞エコエコアザラク✞✞お気楽様、いらっしゃいませ✞✞エコエコザメラク✞✞
ですよねーっ。
でも、まだ四話なのでこのレベルで継続すれば
ウラも弱いだけに18%ぐらいまでは
推移する可能性がありますね。
来週までは
この展開で
竜次「あいつは口を割らなかった」で
オチとして・・・。
父親さがしネタよりも
恋愛ドタバタに行った方がいいような。
微妙です。
とりあえず、二宮くんが
せっぱつまる方向がいいなあと
キッドは思いますーっ。
投稿: キッド | 2007年2月 2日 (金) 18時45分
キッドさま、こんばんは。
琴線に触れたようですね。
ニノのウブで、真面目で、融通の利かない若者を
ドロボーにするには、可哀想でしたよ。
相手役のギャルは二人とも強い線の持ち主でしたね。
どちらもニノには合わないなぁ~・・・
投稿: mari | 2007年2月 3日 (土) 01時22分
❁~✾~❁~~✾mari様、いらっしゃいませ✾~~❁~✾~❁
う~ん。今回は面白かったのですよ。
このシリーズっていうのは
「前略」から始まって「火の用心」を経由して
ここに来てると思うのですが、
いわば裏社会と表社会の境界線のような
場所が舞台になっていると思うのです。
学生やサラリーマンの知らない世界。
それは多数派のようであって実は少数派ですからね。
政治家の利用するような料亭。
その板場。板前さんや仲居さん。
その人たちは何か薄暗い影のようなものを
感じさせる。
そこに哀愁があり、滑稽さがあるわけです。
今回、日陰の花たちにそそのかされて、
のっぴきならなくなる二宮クンは
まさにそのシンボル。
そうですねぇ。
二宮くんの理想は実は雪乃ちゃんですからねぇ。
そういう意味ではあの二人は分からなくもない線なのですが
黒木メイサの正体にもよるけれど
もう少しやわらかいラインの女の子の方が
良かったような気がします。
優しい時間の長澤まさみまでふにゃふにゃしていなくても
いいのですが・・・。
蒼井優とか石原さとみとか・・・。
投稿: キッド | 2007年2月 3日 (土) 16時04分