二宮和也はちょっとぐらいなら許されるのだが、ちょっとぐらいってどのぐらいなのか、わからないくらいにぶくてかっこわるい子なわけで。
今日は一平(二宮)と時夫(横山裕)で始まり、また二人で終るのである。朝、例によって「ここまできたんだからもっといこう・・・楽しいよ」という時夫の夢の中身が気になってしょうがない一平。夜そして「オレを犯そうとしたのか?」と時夫に疑われる一平である。ともかく、まだ師走です・・・。しかも、クリスマスもまだなのです。ゆるゆると時が流れていくのです。このペースなら来年の春なんていつまで待っても来ないな。永遠にもうすぐつぶれる坂下が続き、結局、坂下はつぶれないのではないかと思うキッドです。
今回は客商売の難しさを訴えつつ、一平の恋がつつがなく前進するのです。つつがむしにさされると死ぬこともあるのですが、つつがなくてよかったのです。
でも、一日の物語ではなく、一日目、日常を離れて恋の序章にスキップをする一平。2日目、母親に「あんたどこまでにぶいの」とやりこめられる一平。こらっ、中学生が酒飲んだらだめだろっと注意してはいけないのです。二宮くんは成人だし、一平は23才なのですからーっ。たとえ、どんなに童顔でもーっ。ともかく、2日たったーっ。
で、『拝啓、父上様・第七話』(フジテレビ070222PM10~)脚本・倉本聰、演出・宮本理江子を見た。一平は時夫の足の匂いを嗅ぎつつ、目覚める。その心には竜次(梅宮辰夫)が料亭・坂下から身を引くという予想から重たいものがあったのだが、時夫の奇妙な寝言に気をとられ、そればかりが気になってしまうのである。他人の夢ほどどうでもいいことはないだろうにな。いや、キッドは美しい女の人が「昨日、こんな夢見ちゃったんだけど・・・」なんて打ち明けてくれれば、次の日の朝までとことん夢の分析をいたしますけれど・・・。
いつものように市場の買出しから、ちょっと腹ごしらえ。おっと。穴子丼なのか、穴子の天ぷら山盛りなのか。築地の食堂で寿司でもつまみたくなるではないかっ。いや、ここは保(高橋克実)の不在を強調するシーンなのだな。
その保は妻で若女将・律子(岸本加世子)とともにとある会合に出席。不穏である。
板場に律子から全員集合のふれがかかる。そして・・・。「実はまだいろいろなことが決まってないのだけれど、はっきりするまで黙っていたかったのだけれど、いろいろウワサもとびかって、もう隠し切れないので、今、決まっていることだけ伝えます。今、昔ながらの古い商売じゃつぶれる店が多いんだけど、ウチも経営が苦しくなって・・・来年の3月で店じまいすることになりました。後のことはちゃんとするから、みんなはあんまり他所でこのことを話さないようにお願いします」と頭を下げるのである。ああ、セリフは長いので適当に簡略化してあります。
ここで「わかりました」というのは松子(律子派の仲居)だと思うのだが、澄子(夢子派)と顔の区別がよくつかないキッドにはよく分かりませんでした。もっとメリハリのある配役がよかったなーっ。いや、キッドに限ってのおねだりですけど。他の仲居が意外(怪訝)な顔で見るので「なによ、あんたは若女将の手先のくせに、勝手に了解しないでよ」というシーンであったと思うのですが、澄子が気風のいいところを見せて、「女将さん、あんたには言いたいこともあるけれど、頭を下げられたんじゃ、ここはひとまず胸におさめておくわ」というシーンでもよかったわけで、ハリセンボンくらい見分けのつく配役なら見るのが楽なのになーっと思うキッドなのです・・・そんなわがままについていけるかっ。
お昼休み。つまり、夜の料亭なのでランチタイムは準備と準備の間の休息時間になるわけです。近所の蕎麦屋に集まった従業員一同。お座敷で今後についての腹の探りあい。松子が槍玉にあがるのですが、新しい部屋を若女将に借りてもらう約束の一平にも飛び火してきます。そしらぬ顔でかわす一平。おびえる小動物です。ならではっです。「いや、給料から天引きされるけど・・・」うーん、このあたりがかっこ悪いのか。うんうん、いーんだよ。それで、もめごとは気が重いもんねーっ。
大女将・夢子(八千草薫)は猫にえさをくれました。近所迷惑だけど、猫は大喜びです。さっそく、現代的に地域環境を考える最近の近所の人が夢子を罵倒します。猫に言葉が分かるならひっかいてやるところですが、とにかく今は食欲が大切です。偶然、通りかかった一平は見て見ぬフリです。そう、そう、君子危うきに近寄らずだから。お世話になった女将さんを助けるなんて無理なのです。ああ、かっこ悪い。
ああ、そうですよ。生きていくのはかっこ悪いのですよーっ。でも悪いところはみんなまだ見ぬ父親の遺伝のせいにできる都合のいい男なのです。しかし、その夜、マンション反対の地域の皆さんが糾弾にやってくる。若女将の裏切り行為にゴネにきたのである。しかし、一平たちにできることはない。と、もやもやした一平は夢にまで思い描く月水金・フランス語の怪しい女・ナオミ(黒木メイサ)の働くケーキ屋に張り込み。閉店まで師走の街角にへばりつくのであった。しかし、待った甲斐があってナオミをキャッチ。そして、家路を共にする幸福を味わうのである。・・・お、いやな顔しないし、サウンドを共有してくれるし、別れ際に「フレンチ、メールするね」(12時過ぎて火曜日になったので日本語解禁である・・・あーっ、面倒くせーっ)と言われて・・・もう、うひょーっなのである。階段で一人スキップである。もう、小動物のかわいさ爆発である。全盛期のミニモニ。かっ。
翌日、新規の客がやってくる。銀行の紹介である。はぶりのいい客である。しかもヒルズ族であるらしい。好奇心かっ。成り上がり者の好奇心なのかっ。若女将としてはぜひ贔屓にしてもらいたいのだ。すべては新・坂下のためにっ。一方、パイプ同好会である。これは煙モクモク前世紀の馴染み客・大女将の大切なお客様だ。客商売としてはどちらも大切だ。ああ、新旧激突の予感たっぷり。
そして、昼休み。若女将に呼び出された一平は新・坂下の設計図を見せてもらい、まんざらではない気分に。若女将の一平取り込み工作進行中である。店を出ると大女将が待ち構えている。反目を装いながら裏では繋がっているのか、連携プレーである。一平はウキウキ気分をひっこめて何もできなくて申し訳ないモードに。「反対同盟を裏切ったんだからあやまるっきゃないでしょ」という大女将「・・・そんなことより、エリのことよろしくね。将来のことでなやんでいるから。高校卒業したら芸者に出るのか、お嫁に行くのか、保さんと律子も23と18で結婚したんだから。クリスマスにアタックしてきても許しちゃダメよ。ちょっとぐらいならいいけれど・・・ムフフ・・・一応監視はつけておくけど・・・」なのである。ま、そこまで言われるといい加減気がつくものだが、一平は心身ともに中学生なので気がつきません。
そして、夜。いかにも乗っ取りでベンチャーでバブルでやくざなご一行様は芸者三人あげてのご乱行。エリ(福田沙紀)をはじめ仲居たちも「最低っ」と客の品位を疑います。竜次がいさめに行きますが、聞く耳持つような輩ではないようです。一方、香りを楽しむ会の上品で知性的な老人たちは神をも怖れぬ「路上禁煙とかいう前にクルマ文化をなんとかしろよなぁ。タバコすって即死する奴はいないが、排気ガスなら死ぬんだから、どっちが毒性が強いか小学生にだって分かるだろう。車運転しながら禁煙なんて言うヤツは知性のかけらもないですな」ぐらいのことをおっしゃるのであった。しかし、ご老体(山谷初男)は廊下でやくざに轢き逃げされてしまう。大騒ぎとなる坂下。救急車が飛んでくる。ご老体は骨にひびの入る重傷。
「これはとんだことを・・・」の侘びの一言もなく、その後のバカ騒ぎを続けるヤクザな人々。その帰り際についにキレる大女将「名刺いただけますかっ」攻撃である。ヤクザな酔っ払いは逆ギレ状態で「客にむかってなんだその口の利き方は」で名刺投げつけ行為。イエローカードです。客を選んじゃいられないんだよぉ若女将は笛を吹きません。大女将を制止します。一度、両チームがベンチに下がり、事態が収拾したと思った瞬間、するすると時夫が飛び出します。「うちの女将さんに無礼な真似しやがってーっ」胸元で両襟つかんで威嚇です。さあ、・・・先になぐらせましたーっ。これは確信犯。出ました、不気味な笑い。ニッコリ笑って人を斬る。定番です。しかし、回し蹴りだーっ。これは効いた。ゴロゴロ転がる柔道三段。「さあ、何人でもかかってきやがれーっ」これです。これがゴロマキです。ゴマキではないのです。さあ、盛り上がってきたーっ。しかし、止めに入る板前軍団。保、失敗。一平失敗。しかも、塀に手をぶつけて痛いから点検中。それをしっかり見ているエリ。うわぁ。かっこ悪い。かっこ悪いよ。一平。ついでに大女将も品定めをする目で一平を見る。そこへ竜次が登場。平手打ちで時夫をいさめ、やくざに「もう、いいでしょう」しかし、女ヤクザが傘でさらにからんでくる。「客に向かって何様よーっ」竜次「無作法な客は客じゃありません。女だって同じだ・・・」凄んだか、凄んだのか、カメラ目線でないところで、やくざがスゴスゴとタクシーで退却するような不気味な光線を発射したのかーっ。
かくて、時夫はヒーローに。「男だね」「男をあげたねー」とモテモテ状態に。一平はエリにもかまってもらえません。・・・か、かっこ悪い。いいんだよ。一平。ケンカは良くないからね。ま、イザっていう時に役に立たない男はもっと良くないけどね。
ああ、なぐさめてもらいたい一平は母・雪乃(高島礼子)の元へ。しかし、母は「律子にいいようにとりこまれてあんたって本当にかっこ悪い子だね。えーっ、婿さん候補にされているって気がついてないのかい。まったくどこまで鈍いんだかっ」とけちょんけちょんである。オカン、オカンも味方してくれんのね・・・いや、それどころではなく、突然指摘されたエリとの結婚の可能性に蘇ったのか、あの下乳の感触が。もう、飲まずにはいられない一平である。そして千鳥足で帰った部屋では時夫が包丁をにぎりしめ、「切腹する気かっ」と思わず飛びついた一平は時夫に「男色家疑惑」の眼差しで見つめられつつ、つづくなのである。うわーっ。傑作だった。
関連するキッドのブログ『第六話のレビュー』
これで一平が男を下げたかというとそうでもないのです。エリは「お父さんみたいにならないで」というのですが、保を選択するのが坂下のシステムなのです。無難であればあるほど、小動物を捕獲しようとするアミの目は狭まっていくとキッドは考えます。
土曜日に見る予定のテレビ『演歌の女王』(日本テレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
キッドさん、おはようございます。
今週のニノはいいところなしでしたねえ。
でもいいの、優柔不断でポワンポワンのところがニノのかわいいところなんですぅー。
しかし、坂下のシステムには爆笑でしたねえ。そうか保を見ればわかるわけですね。ママに教えてもらって愕然とするニノ。嗚呼・・パリは遠くなりゆく・・涙。
でもきっと諦めないのでしょう。
時夫ってば暴力ふるっちゃって。しかもニノをホモにしちゃうなんて・・面白すぎですわ~~。
スーはなぜかこのドラマにとりこまれているんでスー。
投稿: かりん | 2007年2月23日 (金) 07時40分
✿❀✿❀✿かりん☆スー様、いらっしゃいませ✿❀✿❀✿
じいやもこのドラマ、久しぶりに倉本作品として
楽しんでいます。
最近、なんだか、格調高くしようという気配が濃厚で
実際のスタッフとズレていた気がしていたのですが
・・・今回も序盤はその気配が。
しかし、今はすっかりいい意味でダラダラとしたいい感じの
ドラマになっているんですよね。
エラ嫁とかきらきらとかでは到底味わえない完成度と
言い切れるほどです。
二宮・横山も名コンビになってきましたね。
キッドの中では二人あわせてショーケンと考えています。
キッドはどちらかといえばエリを応援してしまうのですが
だってじいやはお嬢様の味方だから。
来週は妄想でないとクリスマスにナオミを選択してしまう
一平のようです。
うーん、お嬢様を裏切るなんてもってのほかなので
ございまスー。
投稿: キッド | 2007年2月23日 (金) 08時46分
かっこ悪い男がかっこよく見えた時代・・
いろんな幻想が入り込む余地がいっぱいあった、
そんな時代を倉本先生もひきずってるのでしょうか・・
今じゃ、かっこ悪い男はホントにただ「かっこわるい男」となってしまうのです。
で、ニノ問題です。
私はかっちょわるい男が好きなんでいい傾向だとおもっております。だから、今回上げ株だった時夫はおよびぢゃないのです。ニノにはもっともっと情けなくみじめになって、
その道で輝いて欲しいのです。
投稿: きこり | 2007年2月23日 (金) 16時02分
しかし律子はなんで一平を取り込んだのかなぁ?雪乃ちゃんの事は嫌いそうなのに・・・。まぁ婿養子になったら好きに操縦出来そうだからなぁ・・・。
エリをフってナオミとデートしてる所を見つかってオロオロする一平が早く見たいっす。
投稿: お気楽 | 2007年2月23日 (金) 18時52分
キッドさん、こんばんは。
>うわーっ。傑作だった。
はい、私もそう思いました。
今回特に面白かったです。
一時間があっという間。
あそこで「続く」と言う終わり方がまた何とも言えず、思わず笑みがこぼれてしまいました。
無作法な客も受け入れなくてはならなくなりそうな「新・坂下」のことを思うと、何だか不憫でなりません。
投稿: さくらこ | 2007年2月23日 (金) 21時47分
❆❆コタツミカン❆❆きこり様、いらっしゃいませ❆❆チョコレート❆❆
たとえば暴力の全否定の問題がありますよね。
昨日は大前が
今日は時夫が
暴力で解決するのですが・・・いや、時夫は解決してないが。
確かに力にものをいわせるのは気持ちのいいことではない。
でも、それができるのが人間なのです。
それを全否定するのも気持ちが悪いのです。
「ケンカはダメー」
とみんなが止めるのは正しい。
でも「よくぞやった」と
ケンカした人をチヤホヤするのも正しいのです。
このあたりが分からない人は
「えーっ」と思ったりして・・・。
キッドは傘女の態度にむかつくのが
正しいと思うのですが・・・。
「えーっ」と思う人の中には
傘女の方に共感してさらに
「えーっ、なに、このドラマっ」
と感じる人がいるのでは。
そういう人がどんどん増えているのでは・・・と
ゾゾーっとしたりもするのです。
そういう人たちには
キッドは忸怩たる思いでいる
一平の好ましさもわからないのではと
心配になったりします。
二宮くんはキュートです。
もう抱きしめたいくらいです。
いや、別にキッドは犯したいとか
そんな気持ちでは・・・違うってばっ。
投稿: キッド | 2007年2月24日 (土) 03時17分
✞✞エコエコアザラク✞✞お気楽様、いらっしゃいませ✞✞エコエコザメラク✞✞
キッドの妄想では
律子・・・妾の娘として母親に複雑な気持ちがある。しかし、実の娘なので跡取りとして前女将に頭の上がらない部分もあり、また当代としてのプレッシャーもあり、キンキンしているのだが、母の愛を独占したい気持ちもあり、母に芸者仲間として可愛がられる雪乃にはツンツンする。
雪乃・・・芸者として先輩の前女将には可愛がってもらい、前女将が女将になってからは世話になっているので、心のお母さん的な思いもあり、また、未婚の母としての共感もあり、実の娘である律子がちょっとねたましくツンツンする。
実はツンツンしながらも
二人は親友なのではないかと予想しています。
見たいよねーっ。
早く見たいよーっ。
見せてくれるかなーっ。
倉本先生、スカシはなしでお願いしたーい。
とキッドも期待でワクワクなのでございます。
投稿: キッド | 2007年2月24日 (土) 03時45分
❀❀❀✿❀❀❀~さくらこ様、いらっしゃいませ~❀❀❀✿❀❀❀
ねーっ、傑作でしたよねーっ。
おーっ、つづくなのか。
つづくなのですかーっと思いましたよ。
ま、包丁の時夫を発見したところで続く・・・。
という姑息な手段もアリですが・・・。
そうすると来週の冒頭でギャハハだったのですが
オチまで見せてもらってよかったです。
まあ、来週は「どっちにする、どっちにするのオレ」
的な展開を予感させるので
あえて時夫でひっぱる必要のない展開だったわけですけど。
無作法な客もねぇ、作法を習いたい客ならいいのですけどねぇ。
いわゆる初心者歓迎というか・・・。
ま、お金を落としてくれるお客さんは神様と
割り切るしかないのですがねぇ。
先輩が後輩にこの店はこういう遊び方なんだよ・・・。
と伝えていくから一見さんお断りなんですけどね。
本当は紹介した銀行がお目付けするべきじゃないの・・・。
でも、「接待されるのはイヤだから紹介だけして」
なんていう困った客もいたりして
困った客だけに困ったことになるわけで
本当はこわいお兄さんの出番だけど
客の方がこわいお兄さんだったりして
ま、躾されてない素人の方がこわいというのは
昔からあるわけですけど・・・。
ま、そういうわけで不憫なんですよねーっ。
投稿: キッド | 2007年2月24日 (土) 04時22分