白黒つけたぜっ!(ゼブラーマン)
白黒マンでも葬式マンでもなくゼブラーマン(しまうま男)なのだが、正体は小学校教諭の市川(哀川翔)である。哀川翔と三池崇史監督といえば『DEAD OR ALIVE 犯罪者』(1999)がのけぞるほどの傑作であり、『極道恐怖大劇場 牛頭 BOZU』(2003)はしびれるほどの大傑作なのだが、この『ゼブラーマン』は脚本が宮藤官九郎なのでさらに腰が抜ける超傑作になっている。
まあ、たぶん、そう思わない人もたくさんいると思うし、三池監督の「TR」(NHK)出演の時に司会者のはなが嫌悪の表情を隠さなかったほどの映像美は刺激が強すぎるかもしれない。しかし、それでもこの作品はかなり甘口なのである。それでもつきぬけたような情感があふれだし、映画の醍醐味を味あわせてくれる。ああ、気が早いのだが、2008年『大魔神』を見るまでは生きていたいと思う。
妻には浮気され、娘は援助交際中、息子はいじめられっ子。そんな冴えない中年男が主人公。彼がやがて横浜をいや地球を救うヒーローになることを哀川・宮藤・三池の黄金のトリオは鬼神の如く描ききる。
で、『ゼブラーマン(2004年公開)』(TBSテレビ070325AM0240~)を見た。主演100作目の哀川はこの作品で28th日本アカデミー賞で優秀男優賞を受賞した。この時の最優秀男優賞は寺尾聰(『半落ち』)である。ま、趣味の問題ですがね。キッドなら哀川を押しますっ。
気が弱く、面白みのない市川は家族から疎外された存在。妻・幸世(渡辺真起子)は浮気しているようだし、娘・みどり(市川由衣)は中学生なのに援助交際をしている。息子・一輝(三島圭将)は父親と同じ学校に通い、父の無能さを理由にいじめを受けている。その事実を知りながら「転任届け」を出し、自分がいなくなればいじめが止むかもしれないと望みをかけるようなダメ親父なのであった。
そんな市川の学校に転校生がやってくる。父親の自殺を目撃して以来、腰が抜け、歩けなくなってしまった少年・浅野晋平であり、母親は看護婦で未亡人の可奈(鈴木京香)である。少年は特撮オタクで「1978年に七話で低視聴率のため打ち切られた特撮テレビ番組・ゼブラーマン」を知っており、ゼブラーマンのファンだった市川は意気投合する。同好の士として彼に「浅野さんと呼んでいいですか」と頼み込むほど。市川は友人もいないらしい。
実は市川はひそかにゼブラーマンのコスチュームを手縫いで作っていた。子供の頃から誰の記憶にも残らないヒーローに何故か夢中だった市川。しかし、現在が2010年という架空の「ゼブラーマン誕生の年」に一致すると気がついた時から、現実と幻想が交差し始める。
実は市川の小学校は地球侵略を狙う宇宙人に汚染されていたのだった。それは世界の軍事関係者には公然の秘密だった。防衛庁の特殊機密課でも対策を講じる必要に迫られるほど宇宙人は活性化を開始していた。防衛庁・職員の及川(渡部篤郎)と瀬川(近藤公園)は上司の神田(岩松了)に命じられ、現地の調査に乗り出す。
宇宙人は地球人に寄生して通り魔のような悪事を働くのだった。市川の娘の援助交際相手・北原(柄本明)もその一人だった。彼はハサミで襲った女性の服を切り裂くカニ男だったのである。
ゼブラーマンのコスチュームを完成させた市川は夜更けに浅野に自慢したくなり、コスプレをしたまま、街へ出て、カニ男に遭遇。そして突然、超能力に目覚める。彼は本当にヒーロー・ゼブラーマンだったのだ。そしてカニ男を必殺技で粉砕する。つまり、彼はこの時から殺人者なのだが、その点は一切問題にならないし、市川も罪の意識に戦いたりはしない。少なくともこの世界では宇宙人に乗っ取られた人を殺すことは悪ではないという明確な思想が貫かれている。この辺が受け入れられない人にはとんでもない映画だが、それを受け入れられない人はキッドにとってはある意味、とんでもない人だな。・・・うーん、表現としてギリギリだな。
現場を目撃してしまった「浅野さん」を緑色のスライムと化した宇宙生物を回収しに来た及川が発見し、マークする。
ゼブラーマン対寄生された地球人との暗闘は続く、放火魔(徳井優)は馬に蹴られたような死体となって回収される。事件の当初は投げやりなアナウンサー(麻生久美子)が取り上げた報道も規制され、事件は秘密裏に処理されている。
ここで小学校の教頭(大杉漣)がキーパーソンとして登場する。彼は小学校の体育館を封鎖したり、重要な秘密を保持したりしている。
汚染は進み、ついに息子一輝も寄生対象に。ナス専門店を襲った小学生暴徒にその姿があった。子供相手に呆然とする市民たち、ゼブラーマンがかけつけ、子供から寄生宇宙人を追い払う。つまり、子供は宇宙人に寄生されていても殺してはいけないのだ。浄化が可能だから。
戦いつかれたゼブラーマンは夢の中で「ゼブラーナース」と出会う。そのバストを強調したコスチュームで鈴木京香は女優魂を爆発させている。この年、『血と骨』で最優秀主演女優賞を獲得する鈴木だが、ゼブラーナースで獲得するべきだと思う。セブラナース、ゼブラナース、アーアーアア~・・・・。
やがて、教頭が死亡し、希望を託された市川は教頭が『ゼブラーマン』の脚本家であり、また「地球を侵略することに異議をとなえた宇宙人の反乱分子だった」と知るのだった。まあ、この辺りで多くの人が脱落すると思うがキッドは胸を打たれました。
秘匿された脚本には最終回の予言が秘められていた。「ゼブラーマンは敗北する。その理由はゼブラーマンが空を飛べなかったから」なのであった。教頭の残した遺言ANYTHING GOES!(なんでもあり!)に従い、「空を飛ぶ修行」に入る市川。実の息子は「がんばって」と言う。しかし、どうしても飛べないのだった。可奈が看護に来て、「無理だと思うけど飛んでね」、及川が「ヒーローなんだからちゃっちゃっとやっつけてくれ」とプレッシャーをかける。(ここで渡部はいつもそうだと言えなくもないが「ケイゾク」の真山にもっとも近いキャラになっていて萌える)
ついに常套手段である汚染地区の中性子爆弾による浄化作戦決行が決まり、街は封鎖されてしまう。隠されていた脚本を読んだ「浅野さん」は小学校に行き、宇宙人に捕獲されてしまう。すべてが破局に向かう寸前、ゼブラーマンが駆けつける。
なんとか、「浅野さん」を救出したゼブラーマンだが、なかなか、飛ぶことはできない。「浅野さん」は自ら不自由な足で立つことにより、ゼブラーマンの精神を解き放つ。ついにパーフェクトボディに進化したゼブラーマン。さらにその最終形態はペガサス・ユニコーン・ゼブラだった。
ついに宇宙人本体を粉砕し、学校を破壊した市川は器物破損で逮捕されてしまう。しかし、護送車を降りた市川は「ゼブラーマン」として市民たちに歓呼で迎えられるのだった。その中に彼の実の家族や、「浅野さん」母子がいることは言うまでもないのだった。
流れ来るメロディーは『日曜日よりの使者』(ハイロウズ)である。
『日曜日よりの使者』には様々なエビソードというか、噂がある。まことしやかなものは「いい加減なウソをついてその場を切り抜けて誰も傷つけない」のは日曜日の夜の松本人志のことだとか・・・だが、キッドとしては「アメージンググレイス」との連想を述べておく。それはともに「神」にまつわる歌である。で、どちらかといえば「悔恨と懺悔」そして「弔い」の歌なのである。このままどこか遠くへ連れて行ってくれないか。なのである。この二つをつなぐものにはカーター・ファミリーの「永遠の絆」がある。キッドの愛するなぎらけんいち版でしめておく。「ある寒い曇りの日 おいらが空を見てると 天国から 母ちゃんを迎えに 車がやってきた・・・」やがて現世は夢となり、夢は現世となるのである。
月曜日に見る予定のテレビ『世にも奇妙な物語 春の特別編』(フジテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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