母親の前でさのばびっちと言われた二宮和也はもうどうしていいかわからない仔犬なのでその通りなわけで。
因果応報なのであるが、先見性のある人とない人がいて、先見性は不確定要素を直感的に排除する超能力なので、普通の人間にとっては多くの場合、因果がめぐるのは結果論なのである。エリ(福田沙紀)は高校一年生。一平(二宮)は外見は中学生でも成人男子である。しかもエリは経営者の娘で一平は従業員。エリの祖母からデートをお膳立てされて、それを拒絶できずに結果的に逃避するのだが、本人としてはまったくそのつもりがないということはありえるのだろうか。
それはありえるのである。前回、一平は母(高島礼子)から「婿養子として狙われている」という推測を聞かされるのだが、それは自分がエリの一族(八千草薫と岸本加世子のW女将)から狙われているということに気がついただけで「エリ」が自分に好意を持っているということには気がついていないのだ。恐ろしいことだがそうなのである。鈍さにもほどがあるのだが、注意力散漫というよりは一種の記憶障害だな。一平、ミフィーちゃんのぬいぐるみ買ってないしな。っていうか、プレゼントしてね。と言われたと思ってないのだ。
なぜなら、一平は外見は中学生だが、中身は仔犬なのである。リンゴを投げられたら、拾ってきて尻尾を振りたいのである。ナオミ(黒木メイサ)から「ほら、ひろっておいで」といってポーンとりんごを投げられるのをハッハッハと舌を出して、ワクワクテカテカで待っているのだ。他のことなんか、知ったことかなのである。まったく犬ってやつはバカだにゃー。
で、『仔犬の一平じゃなかった拝啓、父上様・第8話』(フジテレビ070301PM10~)脚本・倉本聰、演出・西浦正記を見た。朝、「けじめをつける」という時夫(横山裕)「そんなこと軽々しく言うな」と竜次(梅宮辰夫)の受け売りでたしなめる一平。今夜の夢は「大きさじゃない形だ」であってどういう夢か一平にも分かったらしいのだが。おそらく、トマトとか、じゃがいもの話だと思われる。いや、一平が「分かる」ことだからな。
買出しはほうれん草で「虫食いの方が安全だ」ということなのだが、七年も板前修業していて「それ」か、「それ」なの。「それ」も盗んでないの。・・・いや、知能が特殊な人にそういうことを言っては人格を疑われるからな。富良野ではきっとそれは絶対に人々に伝えなければいけない情報なのかもしれないし。
そして、ボーナスである。時男はもらえないし、「お客に手を出すな」という不文律を破ったためにちょっとした「お声」がかりもない。「気持ち」ももらえないのである。律子(岸本)にとってはちょっとした躾なのである。妾の娘であることで苦渋をなめてきた律子の身分感覚は先鋭的だ。飼い犬に手をかまれるようなことは我慢ならないのである。
一平は父親候補の花板・竜次を酒に誘い、竜次の進退について聞き出す。「包丁を捨てる」という竜次に動揺。「だってまだほうれん草の虫のことしか教わってないし・・・」という気持ちになるが、竜次はとりあわない。「保(高橋克実)から盗め(技能を習得しろ)」と言われてしまう。養子の件については「利害で決めるな」である。・・・いゃ、そんな抽象的な助言をされても子犬には理解できないと思いますが。
一方、おにいちゃんとイブにデートしてミフィーちゃんをもらえると思っているエリはムフフである。時夫の不始末のせいでダブルデート案は消えたのだが、もともと、デートという認識のない一平は「時夫」との約束が果たせないことに立腹する始末。「監視がつく」というその監視者が誰かということにも頭が回らない。
先輩である保とパチンコ屋で合流した一平は保のちょっとした過去を知る。由緒正しい料亭の息子だった保の斜陽話であり、仔犬にはちんぷんかんぷんでうんざりなのである。
そして、ナオミがイブの「ゴスペル」鑑賞をメールしてくる。「利害を考えるな」とかそういうレベルではなくて、時夫にエリを押し付け、・・・つまり、時夫にも顔が立つし、エリも一人よりはいいだろう・・・という認識で、「リンゴをポーンと投げてくれるかも」とシッポをふりふり、出かけていくのである。
ああ、いつの間にかクリスマスだったのか・・・。ようやく来たよ。クリスマス。クリスマスの話が出たの前々回だよ。フルなーっ。ナオミは「あれはやくざもびびって敬遠する鋭い眼差しの持ち主、親はヤクザの大親分」と時夫が推定する鋭い眼差しで一平を睥睨するのだが、リンゴは投げてくれないのだった。その代わりに手をつないでもらい、一平は変な姿勢に傾くのだった。しかも、来年、鎌倉でフランス料理デートの約束までしてもらう。期待で一平の尻尾はちぎれそうだ。「一緒にいて楽しい」と云われ楽しいけどクタクタなのである。そりゃ、尻尾の振りすぎだと思う。
今度こそ、リンゴを投げてもらえるかもと来年(来るのか、その日が来るとこまでたどりつくのか、うーんと全11回ならなんとか)の期待に尻尾をふりふり、家に戻るとしゃく半(松重豊・キレる前にしゃっくりをする痙攣体質)がすでにしゃっくりをしているのだった・・・。
デート監視者だったしゃく半は時夫とエリが行方不明だと告げる。コンサート会場からエリが泣きながら飛び出したので見失ってしまったのだという。一平「あれれ、何やってんだ時夫のヤツ、お嬢さんはなんか悲しいことでもあったのかな」レベルのバカ・・・いや、仔犬なので、うろたえるのだが、ようやく、なんだか、まずいことになってきたぞという気分にはなったらしい。デートしていたことを告白するとしゃく半は予想外の態度に。過去に「保を脅迫して律子と結婚させた」ことがあり、寝覚めが悪かったらしい。
夢子(八千草薫)、律子、保の前に引き出された一平。「少年院帰りの男に娘をあずけるなんてどういうつもり」とつめよる律子に「まったく手をださないどころかすっぽかすなんてどういうつもり」と呆ける夢子。とにかく、組(鳶ですけれど)の若いものを動員して大捜索開始である。一平も捜索に加わるが、心当たりを捜すのに、まずもっとも怪しい母親の店を訪ねないのは仔犬だからである。っていうか、犬ならまず匂いで嗅ぎつけられるのでは。
連絡が入り、雪乃の店にかけつける一平としゃく半。この時点でも一平は男としての自覚は一切ないのである。とりあえず、早とちりでしゃく半が時夫をなぐるお約束の展開あって、「悪いのは一平で時夫はなぐさめていた」だけの勘違いと知ったしゃく半はすごすごと退場。時夫は明日しゃく半にコーヒーを奢られることになると思われ・・・ともかく「エリにあやまりなさい」と云われ「どうしてかな」と思いつつ頭を下げる一平。エリはクリスマスプレゼントを差し出す。でもミフィーちゃんはないのである。「私のことそんなに嫌いなの」と云われ口ごもる一平に母親として情けなくも可愛いとも思う雪乃。そこへ律子参上である。「なんてことしてくれたの」と激怒。矛先は雪乃に向かい「どうして私はあんた(出入りの芸者)にもあんたの息子(使用人)にもよくしてやっているのにあんたは恩を仇で返すようなことするの」人の口に戸は立てられないので「この前はお母さん、今度は娘、あんた私に怨みでもあるわけ?」そしてとどめは「あんたは息子に人の道をこれっぽっちも教えていない」・・・ま、私生児の娘が私生児の母に言っているので相当に複雑な心情があることを岸本はよどみなく表現しているなぁ。
そういう気持ちのやりとりなどまったく理解できない一平は「さのばびっち」と言われて「仔犬だもん」と思うのではなく、とにかく、これで店をやめる理由ができたとホッとすると同時に「母親を侮辱されたこと」はなんとなく分かるのでちょっぴり屈辱的な気分を感じるのだった。帰り道、人として思いやりのある時夫が思いやるほどではないにしてもである。だって仔犬なんだもんでつづく。である。来週、ベッドシーンあります。なのだが、ナオミか、エリかと目をこらすと、なにやらぬいぐるみをベッドに発見。え゛ーっである。富良野塾やりたい放題だな。ついでに痴呆もかぶる模様。
関連するキッドのブログ『第七話のレビュー』
まったくエリには魅力を感じない一平(竜次や坂下の店構えに比較して話題にも上らない)なのだが、エリもなぁ、リンゴをなげてやればいいのになーっ。一発なのににゃーっ。
土曜日に見る予定のテレビ『演歌の女王』(日本テレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
読みながら笑ってしまいました・・
いつもどんな修羅場にいてもニノが??と首をかしげるのは
そういう訳だったのですね。
こういう子は誰かが守ってあげなきゃ・・
って結局、いいように使われる訳ですが・・
てか、一平ちゃん、少しづつ自分でも考えられる子に
ならなきゃだめじゃん!やればできる子・・になれるかもしれない・・・し・・・
投稿: きこり | 2007年3月 2日 (金) 16時24分
キッドさん、こんばんは!
そうかそうか、ニノは中学生で仔犬だったのね。道理でつぶらな瞳がかわいいと思ってたわ^^
でもはっきりしないのは中学生でもだめだわ。
夢子がなにやら嬉しそうにあれこれ指南していましたが、
中学生相手じゃね、意味もわからないようですし。
で、ラストの律子のきつい台詞にはそれまでの悲哀が
全部鬱憤となって詰まっていたのね。
律子もいろいろあったわけだ。でもそれを向ける矛先を間違えてはいかんのよ。
この展開で中学生の一平はどんな断り方をしてくれるのか楽しみのような・・
なぬ?予告にそんなシーンがあったの?
見落としてしまいました・・相手はどっちよ、わからんわ・
投稿: かりん | 2007年3月 2日 (金) 18時48分
こんばんは~!
子犬・・・高校生にしか見えない→中坊にしか→とうとう子犬にまで^^;。
成人男性で就職もしていると言うのに、色々経験値の少ない一平ですね。
同じ女性の目線から見て、今回のエリは可哀相でしたよ。
エリが自分に好意を寄せていること、一平は全然気が付いていなかったんでしょうか。
投稿: さくらこ | 2007年3月 2日 (金) 22時05分
❆❆コタツミカン❆❆きこり様、いらっしゃいませ❆❆シバレルネー❆❆
東京は少し春の気配漂ってきましたが
拝啓、正月もまだです。
ネコとしましては犬はしょうがないねーと
思うのですが人間には
またそこが魅力だとおっしゃる方も多いようです。
もう残りもわずかなのに
ナオミの親が誰かとか
大女将が恍惚とか
あらたに問題発生。
一体どうなるんだっ。
と思うキッドでございます。
それにしても視聴率あがらないーっ。
やはり、若者にはちんぷんかんぷんなのかしら。
キッドとしてはとにかくエリが芸者になるまで
ダラダラとやってもらいたいくらいなのですが。
投稿: キッド | 2007年3月 4日 (日) 02時35分
✿❀✿❀✿かりん☆スー様、いらっしゃいませ✿❀✿❀✿
そうですよねぇ。犬じゃなくて仔犬なのです。
もうじいやの目から見ても
必ずやエサをあげてしまいたくなる可愛さです。
先週あたりから可愛さ爆発してます。
今週はナオミとよりそってヨロヨロと
しているところがたまらなかったっ。
それにしてもこれだけにぶい男なんて
リアリティーが問題になるきずなのに
二宮クンには全く違和感がない。
それはそれですごいと思うのでございます。
とにかくムッとしたわけなんですが
来週というか、翌朝まで怒りが
持続できるのかと
いらぬ心配をしてしまうほどのキャラですからね。
養子の件は消えたのかどうか微妙ですし・・・。
相手は・・・ヒミツでございますよ。
かなり激しいシーンでしたとだけ申し上げておきます。
投稿: キッド | 2007年3月 4日 (日) 02時42分
❀❀❀✿❀❀❀~さくらこ様、いらっしゃいませ~❀❀❀✿❀❀❀
ええ、どんどん可愛くなっていきます。
もう、大人の気配はまったくございません。
でも母親に感謝しているところは立派な大人。
自分が不甲斐ないのを自覚しているのも大人。
けれどそこから一歩踏み出してこそ真の大人。
がんばれ~と応援したくなるのも
可愛いからですけどねー。
とにかく、キッドとしては
エリがミフィーちゃんのぬいぐるみを
買ってもらえないまま
最終回を迎えるのだけは許せないっ
と思うのでございます。
いや、おそろしいことですが、
「私のこと嫌いなの?」
と言われても
まだ
気がついていない可能性もあるのでございますよ。
ひえ~っなのです。
投稿: キッド | 2007年3月 4日 (日) 02時49分