死ぬるんか?・・・死なんといて・・・死んじゃらいけん。(蒼井優)
オカッパ頭とお下げ。両方の蒼井優を見ることができる。この映画の皮肉なところはほぼ主人公の少年兵・神尾(松山ケンイチ)と同級生の少女・妙子(蒼井)の運命だろう。特攻作戦に出陣した神尾が戦後60年を生き、無事を祈った少女は終戦前に被爆死する。つまり、近代戦が総力戦であり、前線も銃後もなく、生死の分かれ目は天運にすぎないという象徴なのだ。
キッドは何度か書いたが、誤爆という言葉の無意味さをもう一度確認しておく。総力戦である限り、特定の軍事施設とそれ以外の目標には攻撃効果の有無があるだけであり、女性や子供だから殺してまずいというのは情報戦の項目にすぎない。誤爆という言葉は無意味なのである。正爆なんて言わないだろうから。
だからといって無能な軍人や、無能な軍事官僚が、無能な作戦を行った場合、結果から、それが正解だったのか、不正解だったのか判断することはできるのである。しかし、戦争映画は娯楽であるから、そのあたりはイージーでもおもしろければいいと思う。
で、『日曜洋画劇場40周年記念特別企画・男たちの大和 YAMATO(2005年劇場公開)』(テレビ朝日070408PM9~)原作・辺見じゅん、音楽・久石譲、脚本・監督・佐藤純彌、製作・角川春樹を見た。なんていうか、久しぶりの角川映画なのである。ちなみに原作者は製作者の実姉である。テレビのスポットCMで蒼井優が「大和は沖縄に行くんじゃろ?」と問いかける。それ以上でもそれ以下でもない映画。見せ場はたっぷりあるが、トータルすると雑然とした印象だけが残る映画。まさに角川映画ならではである。それも一つの個性であり、キッドは凄いと感じる。
たとえば、軍事機密である「戦艦大和」が一般国民に知られていたのかどうか・・・というあたりの疑問から始めると到底、容認できなくなってしまう名ゼリフなのである。しかし、記録上はそうでも、人の口に戸は建てられないので、噂としては知っている人は知っていたという憶測もできる。ポロっと一人が言えば、たちまち伝わるという場合もあるだろう。食料事情が悪くても飲酒することはあり、酒が入ると人が変わることもある。「本当は日本にはすんげー、大戦艦があるんよ。そりゃ、長門よりもすんげーんよ。大和って言うんよ」「大和ね。そうね」「武蔵もあるんよ」「大和と武蔵かーっ」「すんげーのよ」「すんげーのね」などという会話が軍機もへったくれもない状態で交わされなかったとは断言できない。まして、唯一の身内のようなものである少年兵の恋人が知っていたっていいだろうとも考える。
昭和17年、15才の神尾は海軍に志願する。同級生の妙子は「じゃけど15才の子供が戦争いかんでも・・・」と神尾の身を案じるところからドラマは始まる。海軍特別年少兵となった神尾は訓練を終えて帰郷。軍港呉に近い漁村。故郷の遠い友人・西(内野謙太)を連れて帰る。西は絵が得意で妙子の姿をスケッチする。「ぺっぴんに描いてね」と微笑むあどけない妙子。長男はすでに出征し、家には母が残るばかりの神尾家。「船があっても乗る人がおらん」とつぶやく妙子。すでに戦況の悪化が物語られるのである。
大和は昭和17年にミッドウェイ海戦に参加。その後は19年のマリアナ沖海戦を経てレイテ沖海戦となる。神尾はこの作戦で初めて実戦を経験する。戦史上の謎とされる栗田艦隊の二度の反転などがあり、帝国海軍は武蔵を含む戦艦三隻、空母四隻、重巡六隻、駆逐艦八隻喪失という壊滅的な打撃を受ける。大和も損傷して寄港するのである。
帰郷した神尾は兄が戦死し、母も空襲で死んだことを知る。昭和20年、大人びた妙子は「大和は沖縄に行くんじゃろ。死ぬるんか。いやじゃあ。いやじゃーっ。・・・死なんといて。死んじゃらいけん。・・・なんも分かっとらん。・・・死んだら、死んだら、うち、どーすんの。・・・好きじゃー、好きなんじゃー・・・」と取り乱すのである。しかし、翌日は「・・・昨日はごめんね」と気をとりなおし、「これ厳島神社のお守り、武運長久じゃ。うちも来週から広島の軍需工場に行くんよ。うちも負けんようにせんと。・・・待っちょるけんねー」と神尾を送り出す。
実際、大和の特攻が決まるのは四月五日である。連合艦隊先任参謀の神大佐のほぼ独断的発令であった。六日、第二艦隊の司令長官伊藤整一(渡哲也)はこの命令に抗したがついに説得され、午後には徳山湾を出航している。神尾と妙子の会話は成立することはまずありえないのだが、これはあくまでフィクションなのである。
海上特攻隊の陣容は戦艦大和。軽巡矢矧。駆逐艦冬月・涼月・朝霜・初霜・霞・磯風・雪風・浜風の十隻である。すでに暗号を解読されていたので、作戦計画そのものが筒抜けであり、特攻隊は出港から連合軍潜水艦に水上レーダーで補足され、敵偵察機の接触が開始される。どのような勝負も時の運に支配されるが、この作戦の無謀さは数字に現れる。四月七日。正午すぎから、敵航空機の波状攻撃が開始される。激闘二時間、目的地沖縄のはるか東で大和は爆沈する。日本軍の死者3721名。連合軍の死者16名である。残存した四隻の駆逐艦は沈没艦の生存者を救助して四月八日、佐世保に寄港した。その中に神尾の姿があった。
一説によると大和生存者は隔離されたと言われる。もちろん、大和沈没を秘匿するためである。とにかく、神尾が妙子と再会するのは終戦の前後なのである。妙子は広島で原爆投下に直面し瀕死の負傷。痛々しく血まみれの包帯姿であり、臨終の間際だった。「生きて会えたんは厳島神社のお守りのご利益じゃね。私が元気になったら二人で働いて船を買うんじゃ。名前も決めとる。明日香丸じゃ。明日に香ると書くんね。明日に咲く花という意味もあるんよ・・・・・・・・・・・・・・・」
60年後、神尾は77才なので仲代達矢になっている。悪夢にうなされ、意味不明な言葉をつぶやきながら、今日も明日香丸で沖へと乗り出すのだった。死者たちの眠る海を見つめて。すべては忘却の彼方に去って行くのだから。
画面上は他にも多数の登場人物があったり、結末は違う解釈も可能だが、レビュー内容については例によってキッドの妄想が責任を転嫁します。
関連するキッドのブログ『沖縄戦の成海璃子』
火曜日に見る予定のテレビ『セクシーボイスアンドロボ』(日本テレビ)『花嫁のパパ』(フジテレビ)もとりあえず見るけどね。『サラリーマンNEOシーズン2』(NHK総合)もついでにね。
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
←クリックするとTVスポットCM版『H☆C THE MOVIE アイドル戦士キャンディー☆ムーン』第3弾アリマス。(ロボット工場襲撃の巻・前編デス)
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コメント
キッドさん こんにちは!
大和は見てないんだけど。。。(苦笑)
MOVEの予告がすごい!カッコイイ~!
工場襲撃ですか!
本厚木って。。。(うちから近い・笑)
その工場はS○NYですか?←伏字になってない・笑
なんか斬新でカッコイイ!
アクション映画大好きアンナランは満足です。
ワクワク度100%!きゃいん!
投稿: アンナ | 2007年4月 9日 (月) 15時46分
キッドさん、こんにちは!
戦艦大和のお話は涙なくして見られませんでした。
戦争の話は好きくないですが、それでも残された女たちを思うことで泣けるのかもしれません。
獅童がどうやって生き延びたのかが描かれてませんでしたが駆逐艦のどれかに助けられたということでしょうか。
その時には神尾の船とは接触がなかったということなんですね。ともあれ60年も孤児を育てた彼には脱帽でもあります。
ところでH☆Cムービー・・元厚木・・なんだか先の戦争に結びつきそうな場所ですね。(苦笑
でも某ソニーなんですね(某になってない・笑
ikasama先生の作られるロイドが闊歩する工場。
本編がいつになるか楽しみで~す。
投稿: かりん | 2007年4月 9日 (月) 17時20分
☁Building☁アンナ☆ラン様いらっしゃいませ☁Building☁
本厚木は温泉に入ろうと思って
ロマンスカーに乗ると
通り過ぎる気になる駅。
高速で厚木のインターチェンジも
通り過ぎてしまう町。
じいやの妄想の中では怪しい町ベスト10に入ります。
なんだか、変な工場が一杯建っているような気がして・・・。
地元なのですがアンナ様の出番はおあずけ。
アンナ様の次の活躍の舞台は
ミマム様、aki様の待つ北海道。
はたして先生コンビは敵か? 味方か?
乞うご期待なのです。
投稿: キッド | 2007年4月 9日 (月) 21時08分
✿❀✿❀✿かりん☆スー様、いらっしゃいませ✿❀✿❀✿
内田二等兵曹(中村獅童)が
本当に生きているのかどうか。
キッドの妄想脳は疑っているのです。
それは養女・真貴子(鈴木京香)の年齢なのです。
2005年なので
1942年に15才だった神尾が77才になっているわけです。
それに対して真貴子は40才前後。おそらく三十代です。
話の中で孤児を引き取って育てたと
真貴子が言いますが
真貴子は戦後20年以上経って生れた子供。
つまり、戦友たちと直接の関係はあまりない。
もちろん、平和な時代の単なる孤児なのかも
しれないのですが
流れから言えば孤児の多くは戦中から戦後まもなく
多かったわけです。
そうすると60代以上になっているわけで
あえて30代の京香をキャスティングするなら
そのあたりの説明があるべきなのです。
それをしないのは京香そのものが
幻影である可能性があるとキッドは思います。
おめおめと自分だけ生きて帰ってしまった・・・。
愛する人たちを誰一人守れなかった・・・。
そういう自分をせめる気持ちに苛まれる神尾。
彼が救いを求めて
命の恩人・内田の生存を幻想し
その娘である真貴子を幻想し
あの頃の自分の年齢の少年を幻想し
死に場所を求めて
沖へ向かう。
キッドは現代の神尾(仲代)は
すべて夢の出来事なのではないかと考えました。
戦艦大和の物語が現代の多くの日本人に
夢物語であるように・・・。
キッドの妄想の世界では
たとえ敵と味方に別れても
楽しく遊んでもらいたいと思ってます。
そうか・・・厚木といえば基地の町だったので
ございますね。
うっかり忘れておりましたよ。
さてさて、イカサマガンダムVSマンモスイノシシ
勝負の行方はどうなるのでしょう。
実は来週(ロボト工場襲撃の巻・後編)は
かりん様も登場します。
どうか、お楽しみに。
投稿: キッド | 2007年4月 9日 (月) 21時34分
【男たちの大和】は、原寸大の大和ロケセットは尾道まで
見に行ったんじゃけどねー。
映画も、今回のテレビ放映も見てないんよー。
このロケセットを見に行って初めて大和が広島と
関わりがあった事を知ったんじゃ、てへっ♪
で、MOVEですが・・・
ゴスロリラビット vs イカサマガンダムの戦い、
どちらが強いんだろ?ドキドキで~す!!!
そして、チラチラとお姿が見えるあんぱんちさんは
こちらの工場で働いていらっさるの?
それともあれはアンパンチロイド??
それとも、取材があると聞きつけて、写真に写りこもうと
駆け付けただけ???
とにもかくにも、ドラマ開始前だというのに、
もうフジッキーロイドが完成してて、はぅ~ん♪なのデス!
じゃぁの。
投稿: まこ | 2007年4月 9日 (月) 22時10分
●no choco●まこ☆ミキ様、いらっしゃいませ●no choco●
じいやは蒼井優萌えでございますが
広島弁の蒼井優は萌え度倍増でございます。
不思議じゃのー。
やはり幸薄さの魅力なのでしょうか。
遠い将来、極妻をやってもらいたいのー。
と思うのでございます。
二番手くらいの役どころで
最初は口数少なく、いじめに耐えて
ある日、ついに爆発っ。
「亭主とられてこらえて笑うなんてのー、
できんのじゃーっ」
ダダダダダーッ(妄想)はうぅん。
あんぱんち様はもちろんエキストラ出演でございます。
ただし、台本に役名ありで
博士の助手 あんぱんち
とシナリオにのってます。
この他にも出演なさる模様です。
さあ、いよいよ春のシーズン開幕でございますねーっ。
一週間後のプロポーズ大作戦。
フジッキーロイドも
P先輩もまずは視聴率で安心させてくれる
とよろしいのでございますが・・・。
といいのですが・・・。
まこ様、アルバム作成ご苦労様でした。
投稿: キッド | 2007年4月 9日 (月) 23時19分
御見舞いメール有難うございました。
お礼に来るのが大変遅くなりまことに申し訳ありませんでした。やっと熱も上がったり下がったりする回数が少なくなってきました。
それでもまだ鼻声の時があり夜寝るとまだ鼻づまりすることがあります。でも回数や状態が良くなってきてるので苦しくてしんどいと言うことはなくなりましたが仕事に行ってるためやはり仕事終わると体力的に限界きてたり頭が痛かったりすることがありますが日々良くなっております。
爺やには取材の時お世話になっただけなのにありがたかったです(笑)。
今回は出演無しのご配慮のおかげでゆっくりクィーンデビルは休ませて貰ってバカンスに旅行に行っております。
どうやって戦士達をコテンパンにやっつけるか今後どう侵略するかゆっくり考えてさせてもらいますわ。おーほほほほ。
このムチにかけて(この後のセリフ考えてくださいませ。かっこいいセリフをお願いします。)
投稿: 結城 美里 | 2007年4月10日 (火) 21時58分
卍Wunsch卍~結城美里様、いらっしゃいませ~卍Wunsch卍
お加減、快復に向かっているようで
よろこばしいことでございます。
季節の変わり目は寒暖の差が
はげしいですから
脱いだり着たりの体温調節が肝心ですぞ。
それから、うがいは
治癒してからも続けるとよろしいでしょう。
ウイルスは水と熱によわいのでございます。
デビルミサトクイーンの
決めゼリフは
「このデビルクイーンのムチにかけて
聖なる地獄をこの世に在らしめようぞ・・・」
というような感じにいたしますです。
それではごゆっくりバカンスを
お楽しみください。
次回のデビルクイーン登場は「北海道・大雪山編」の予定です。
投稿: キッド | 2007年4月11日 (水) 20時40分