だって私たちロミオとジュリエットじゃなくて広道と樹里なんだもーん。(長澤まさみ)
であるか。ふにゃふにゃっとそう言われたのではもう許しちゃうもんねーっ。やはり、ロミジュリの方が解釈楽なんだよなーっ。昨日と比べたらまったく問題ないもんなーっ。ついでに言っておくと「リア王」の正当な日本版のパクリは「恍惚の人」最近では「拝啓、父上様」の八千草薫である。繰り返すが痴呆の狂気がリア王の本筋ですから。ここをそらすといかに設定を模倣してもリア王にはならないとキッドは考える。それにくらべて心中しなくても「障害のある恋愛」がからめば「ロミジュリ」は成立します。
ま、「たったひとつの恋」でテンメイ様とさんざ、ロミジュリ話をしたので原点との比較は最小限にとどめておきたい。
そこで出演者たちのロミジュリ歴をば。まずは樹里(長澤)の父(三浦友和)である。なにしろ、彼は「百恵の夫」だ。だから実人生そのものがロミオとジュリエットなのである。彼と結婚して山口百恵は死んだのだから・・・おいおい。冗談はともかく、友和が日本中の男を敵に回したことは間違いない。その二人の共演した作品はテレビドラマの赤いシリーズを始め、どれもロミジュリ的要素を持っているのだが、ここは映画「泥だらけの純情」(1977)をあげておく。吉永小百合・浜田光夫コンビのリメイクであるが、お嬢様(百恵)とチンピラ(友和)の恋である。最後は二人とも・・・されるのだが、お嬢様は処女だったのである。ちなみに実在の友和はおまわりさんの息子だ。
次は広道(滝沢秀明)である。「魔女の条件」(1999)では教師・松嶋菜々子と生徒でロミジュリである。続いて「太陽は沈まない」(2000)で医療事故をめぐり加害者の娘(優香)と被害者の息子でロミジュリである。さらに「ストロベリーオンザシヨートケーキ」(2001)で義母の連れ子の義妹(深田恭子)とロミジュリである。三年連続のロミジュリなのでタッキーはロミオ王子なのであった。
広道の母(田中美佐子)は芸歴長いのでロミジュリ歴も長いのだが、デビューまもなくでヌードも披露した「ダイヤモンドは傷つかない」(1982)をあげておく。中年講師(山崎努)と女子大生でロミジュリである。不倫だって立派なロミジュリなのである。障害のある禁断の恋はすべてロミジュリなのですからーっ。
最後に広道の父(山下真司)なのだが、彼はどちらかといえば根性のない若者をたたきなおす役柄であった。「オレはこれからお前たちを殴るっ」と言って体罰していたのであるが、今回は「お前の根性をたたきなおさんかっ」という役柄でキッドはちょっと面白かった。ちなみに彼のロミジュリといえば「トリック劇場版」(2002)の芳本美代子との兄妹かもしれないので忍ぶ恋であろう。二人の愛の結晶で文字通りの隠し子役は成海璃子(当時・塚本璃子)だった。
で、『夢二夜・シェイクスピアドラマスペシャル・ロミオとジュリエット~すれちがい』脚本・井上由美子、音楽・菅野祐悟、演出・大谷太郎を見た。火曜サスペンスじゃないのかっという展開なのだが、長澤ジュリエットがふにゃふにゃっとぽよよんと哀愁ある女子大生を展開するので、ま、いーんじゃねっという気分になるのである。とりあえず映画『世界の中心で愛を叫ぶ』で難病がらみのロミジュリを可憐に演じ、最近では『セーラー服と機関銃』というやくざと女子高生というストレートなロミジュリを果敢に演じた。そんな長澤とロミオ王子のロミジュリである。もう何しても大丈夫だろうと思うのだが、さらにもう一つのロミジュリを内包させて、二段ごしらえのロミジュリにしてる。胸焼けしそうだぞ。しかし、昨日はちょっと辛かった井上由美子。今回はほぼよどみなく、着地している。やはり、ロミジュリの方がフリが優しいのだなぁ。
おなじみ、昭和公園(東京立川)の銀杏並木で運命的な出会いをする広道と樹里。広道は廃品回収業者。樹里は女子大生である。小道具として「ロミオとジュリエットの英文テキスト」が使用される。一目で恋に落ちた二人。「ロミオとジュリエットは四日間の話。一日目で恋をして、二日目でキスをして、三日目にはかけおちするの」という樹里の解説よろしく、二回目のデートで二人は海辺でキスをする。
銀杏は効果的に使われ、銀杏の落ち葉かけっこ(なんじゃそりゃあだが、ま、波打ち際で水のかけっこしなかった替りね)、落ち葉でしおり、落ち葉のビン詰め、落ち葉にキス、落ち葉で暗号なのである。
「オレなんか、高校中退だし、母親入院中だし、父親行方不明だし・・・」と身の上を語る広道の言葉を冗談だと思う樹里の件は秀逸である。やがて、障害が二人の前に現れる。広道の父親は医療ミスで逃亡した医者でさらに殺人事件の重要参考人なのである。そして樹里の父は逃亡者を狩る刑事なのだった。
重病で入院中の広道の母親をマークする刑事たちを指揮する樹里の父。二人の交際を知った二人の親は交際に反対する。特に樹里の父は「容疑者の息子と刑事の娘が交際するなんていうことは警察では認められないのだ」と告げるのである。「今回はあきらめるんだ」という父に「次なんかない」という樹里。
二人は駆け落ちへ。思い出の海辺に来た二人の思いは・・・すれ違う。「犯罪者の息子」として広道は樹里を幸せにできないと感じ、樹里は「それでもいい」と言っているのに「あなたの思いはそんなものなの」と落胆する。「帰れ」「帰る」である。二階からはだしで飛び出した樹里ははだしで海から家まで歩いて帰ってきたようなつなぎになっていてちょっと面白かった。いや、できればこの一時の別れは帰りの車でもうワンクッション欲しい感じ。
しかし、それが時間配分的にできないのはもう一組のロミジュリが飛び出すからなのである。樹里の父と広道の母はかって愛し合った恋人同士なのであった。病院の跡取り娘と派出所勤務の警官だったかっての二人。周囲の反対に合い、かけおちしようとしたが、待ち合わせの場所に彼女が現れなかった。駆け落ちはやめようと彼から伝言が届いた。・・・という謎の現象で二人は別れ、広道の母は共通の友人の広道の父と結婚し、樹里の父もまた死別した樹里の母と結婚したのであった。ま、こういう過去のある二人で樹里の父が捜査の指揮をとっていることはすでに問題なのだが・・・。
やがて、妻に一目会おうとして失敗した広道の父は広道に呼び出され、広道の母と樹里の父が結婚しようとして果たせず、広道の母と自分が結婚した教会にやってくる。
「オレはお前の母さんを好きになって、友達からお母さんを奪ったんだ。お母さんには友達が別れたいと言っていたと言い、友達にはお母さんが別れたいと言っていると言い、二人の仲を引き裂いた。だから、お母さんを幸せにしようと思った。友達と結婚するよりオレと結婚してよかったと思ってもらいたかった。しかし、病院の経営は思ったより上手くいかないし、無理して未経験の手術したら、患者死んじゃうし、患者の遺族から責められて、逃げたら、発見されて、逃げようとしたら、たまたま、遺族が足すべらせて死んじゃうし、これじゃ、オレが殺したみたいだし、もう、こわくてこわくて逃げるしかなかったんだよぉ。警察に行ったら友達に負けたことになっちゃうだろう」
「そういう問題かーっ」と言って殴りかかる広道。止める樹里をもつきとばす。「お前のせいで、高校やめて、家なくなって、母さん病気になって、世間から責められて、恋人とも別れさせられそうになって、・・・でもそんなみじめな親父でもオレは会いたかったんだーっ」本心かっ。広道、本心なのかっ。どれだけ父親思いなんだーっ。
張り込んでいた樹里の父が登場。広道の父を確保。「自惚れるな。お前が俺と彼女をひきさいたんじゃない。俺の愛が足りなかっただけなのさ。その証拠にここに樹里と広道くんがいるだろう。お前は彼女に選ばれたんだ。お前が勝つべきなのはお前自身だったんだ」
情にかられ、警察に連行する前に夫婦を再会させる樹里の父。妻は「あなた待ってますから」と言い、かっての恋人には言えなかった「さよなら」を言う。かっての恋人も「さよなら」と応じる。広道は「俺も彼女と待っているから」と言う。樹里は父に「事件が解決するまで彼とは会わない」と約束する。頷く樹里の父。恋人を奪った男の息子に娘を奪われているわけだが、百恵を奪っているから仕方ないのだった。
一年後。公園のベンチで目を閉じている樹里。その手には白い錠剤らしきものが。かけよる広道。「じゅりーっじゅりーっじゅりーっ」と抱き起こす。笑って目覚める樹里は錠剤らしきものを広道の口にあーんである。「ラムネかよっ」と広道。「だって、私たちはロミオとジュリエットじゃないもーん」オチである。手をつないで銀杏並木を立ち去る二人。ちくしょうこんにゃろめ的なハッピーエンドなのであった。ま、ロミジュリのパクリとしては「愛し合う二人が障害を乗り越えて結ばれる」という初歩的な逆転の発想で、もちろん、これはアリでいいと思う。
関連するキッドのブログ『長澤まさみとマシンガン』『長澤まさみとタッチ』『長澤まさみとマシュー』
月曜日に見る予定のテレビ『この胸いっぱいの愛を』(TBSテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
キッドさん、こんばんは♪
見るつもりなかったんですが見ちゃいましたよ~このドラマ。。。
一言で言うならば、翠は美青年が出てればいいや、と(笑
タッキーは久しぶりにドラマで見たので嬉しかったデス♪(そ、そんな感想、、、
H☆Cの映画も予告だけでかなり面白そう、、、ポスターなんかもあって本格的で楽しみなのデス!
投稿: 翠 | 2007年4月 9日 (月) 00時38分
まぁ一夜と二夜の違いはおじさんと若人の違いって事で・・・。主演の女の子が逆だったら、どうなっていた事か・・・。
まぁ1クールだときついけど、単発なら許せる範囲でした・・・。
投稿: お気楽 | 2007年4月 9日 (月) 00時40分
こんばんは。
ふにゃふにゃ喋りには勝てません♪
静止画だとボチボチ程度にしか思わないのに、
動画だと百倍可愛く見えてしまって、お手上げです(^^ゞ
原点ロミジュリ話、店じまいですか。
僕はそればっかでお茶を濁しましたけど、何か♪
それにしても、小文字の部分に教養があふれてますネ。
これぞ生きる・・いやいや、生き字引☆
正体はデータベース、なんてオチを期待しちゃうほど。。
リア王は見てませんが、今回の井上由美子はよどみなく
着地してますよね。小ぎれいにまとめたって感じ。
でも、裸足で海から帰宅ってのは、のけぞりましたよ^^;
ホントは車で後を追うシーンがあったんじゃないかな、とか、
編集ミスを疑ってしまうほど。。
もともと流し見だったこともあって、もう一組の
ロミジュリはほとんど無視しちゃいました。
まずあり得ない展開だし、あぁ、こうゆう工夫しないと
見てもらえないのか、大変だなぁって感じの傍観。。
また血のつながりが出るのかと思って、
目と耳をふさいでたところも。
山下真司はやっぱり体罰係の方が似合ってるし。。
ま、それをのぞけば、十分アリの初歩的逆転。
全体として、ロミジュリの現代ヴァージョン、
ひと恋の春休みSPはOKでした♪
やっぱ、美男美女のハッピーエンドは強いですネ☆
P.S.そうそう、TB不能問題は解決したわけですか。。
投稿: テンメイ | 2007年4月 9日 (月) 00時41分
☆☆✫ポイント✫☆☆翠様、いらっしゃいませ☆☆✫ピーピー✫☆☆
いよいよ、ライバル長澤まさみ偵察でございますか。
予習体勢に余念がないのでございますね。
ついでにタッキー萌えとは根っから浮気体質か・・・。
明日公開予定の予告にはお待たせっ。
ゴスロリラビット★翠ちゃん登場です。
悪の限りをつくすのです。
例によって前編ですけど。
プログラムとか、チラシとか
グッズ展開もしたいのですが。
ただ今、本編予告で手一杯なのでございますーっ。
投稿: キッド | 2007年4月 9日 (月) 02時52分
✞✞エコエコアザラク✞✞お気楽様、いらっしゃいませ✞✞エコエコザメラク✞✞
まあ、キッドは西ヤンにも
少なからず思い入れがあるので
なんとか、クリアしましたが
第一夜はちょっと技巧に走ったというか。
自己満足色強すぎでしたね。
第二夜もその気配はあったのですが
長澤まさみがふにゃふにゃの
ゆれゆれパワーで
押し切ったという感じでしょうか。
キッドはタッキーも
好きな俳優なので
第二夜は結構楽しめました。
投稿: キッド | 2007年4月 9日 (月) 02時57分
○-○)))テンメイ様、いらっしゃいませ。○-○)))
ココログフリーは大メンテ以後、
結構、調子よくなっています。
TBはココログ同士だと
まだ不具合が生じることがあるのですが
今回はすんなり貼れましたよ。
第一夜が首をかしげる内容だったので
どうなることかと思いましたが
前半、ラブコメで
後半、火サスという
不思議な展開。
結局、長澤まさみが揺らせば
心も揺れるという
非常にストレートなロミジュリで
楽しめました。
半クールのセーラー服の後で
まあまあスケジュールに余裕があったのでは・・・
と思います。
キッドのウンチク部分は
思いついたことを書いて
時間があればウイキなどで補強や確認を
するという感じですかね。
重要な部分はたとえば映画ならば
キネ旬のバックナンバーをあたったりしますが
基本的には「妄想」を旨としているので
ウソでもいいかぁとイージーな部分もあります。
キッドは捏造は美徳と考える悪魔主義者ですから。
たとえば大林監督に直接聞いた
「アメリカロケで
一日オフを作り
百恵と友和にディズニーランドでの
デートをプレゼントした」
などというエピソードをまぜて
百恵と友和のロミジュリを
補強したりもできるのですが
本当のことなので
書くのをやめたりもします。
・・・今、書いてますけど。
今回は恋愛ドラマとしての原型としての
ロミジュリが主題なので
細かい部分はどうせ
テンメイ様が書くだろうと
・・・書いてますよね。
手抜きしましたーっ。
知的分業ということにしておいてくださいませーっ。
ロミジュリという原型を越えるのは難しい。
たとえば「ローマの休日」という原型も
あるのですが、これも「ロミジュリ」と言えるし
「シンデレラストーリー」も「ロミジュリ」
「風と共に去りぬ」も「ロミジュリ」に
なっております。
男という種族と女という種族の恋愛は
すでに「ロミジュリ」の呪縛にかかっているわけです。
もちろん、同性愛だって「ロミジュリ」ですから。
逆に「ロミジュリ」の片鱗も見えない
恋愛ものを書けばそれは革命なのですが
キッドはそれは不可能に思えてなりません。
たとえば「羊たちの沈黙」はすごい物語ですが
レクターとクラリスのロミジュリにすぎないとも
言えるわけです。
ああ、ロミジュリ、それはどうしてロミジュリなの・・・。
と、キッドは叫ぶのでした。
せめて斬新なロミジュリはないかと考えます。
天使と悪魔のロミジュリは「デビルマン」だし
そうなると聖書は基本的にロミジュリ。
ブッダとマヤ夫人の結婚もロミジュリだし
マホメットは・・・こわいのでやめておきます。
パッチギはもとより
半島と列島の人々が、世界の東と西が
世に対立と恋愛のある限り・・・世に
ロミジュリの種は尽きまじですからっ。
投稿: キッド | 2007年4月 9日 (月) 03時32分
キッドじい。
今回のロミジュリは、判利安いと言うか、単純で
あまり悩まなくってヨカッタです。
まさみちゃんの、3人称的会話が少し気になったけど
恋愛症候群は、自分のことを他人に見立てて話す方が
楽なんでしょうね。
タッキーが小さく見えたロミジュリでした(笑)
投稿: mari | 2007年4月10日 (火) 03時55分
❁~✾~❁~~✾mari様、いらっしゃいませ✾~~❁~✾~❁
>タッキーが小さく見えたロミジュリでした(笑)
まさみが大きく見えたロミジュリでした(笑)
ユーミンの「5センチの向こう側」という
チビな男の子とノッポの女の子が
恋をして
ノッポの女の子がその背丈の差を
越えられない・・・という悲しい恋の歌。
を思い出しました。
今回は乗り越えたよ~。
アングルとかいろいろ工夫して
なんとかなったよ~。
・・・という感じでした。
ノッポだっていいじゃないか。
チビだっていいじゃないか。
素敵な恋をしてほしい!
とじいやは思います。
投稿: キッド | 2007年4月11日 (水) 20時28分