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2007年4月10日 (火)

実業と虚業のはざまでこの胸いっぱいの愛を・・・。(ミムラ)

原作者は熊本のガソリンチェーンの経営者である。彼は後継者として育てられたが文学者の夢捨てがたく、SF作家としてもデビューした。その作風には父との葛藤が指摘されており、この映画ではヴァイオリニストの娘(ミムラ)とそば屋の父(愛川欽也)が想起される。実生活では原作者の父は原作者の作家活動に冷淡であったと言われてり、「ボクのやることにもっともっと優しくしてくれても良かったじゃないかよぉ。あんたの理解が足りなかったからボクは苦しんだんだよぉ」という心の声が映画の中の理解ある父親像に結晶しているようだ。

この映画で、キッドはようやくミムラと吹石一恵の区別がつくようになったのだが、スターダストプロモーションという老舗に所属し、竹内結子との組み合わせで仕事をすることが多いミムラ(映画「黄泉がえり」と本作品、「いま、会いにいきます」の映画・ドラマの展開、映画「サイドカーに犬」(07年夏公開予定))における共演など)だが、この映画で共演した金聖響と結婚したこともあり、大学卒業後、活動を活発にした吹石が「華麗なる一族」(冬ドラマ)から「バンビ~ノ!」(春ドラマ)と露出が増えているためもある。どちらかといえばローカルな事務所の吹石と大手のミムラとの対決は「着信アリ」と「着信アリ2」ですれ違ったりするわけだが、どちらがどちらのそっくりさんになるのか、予断を許さない。・・・と、キッドだけが妄想しているわけですが。

監督は「どろろ」の人である。デビュー作が「月光の囁き」であり、黒沢清門下なので、変態路線であり、佐伯日菜子の「ギブス」などマニアしか見るかっ!という作品も作ってしまうのだが、前作品「黄泉がえり」あたりから、変態だけどエンターティメントというギリギリの線を見出したらしく、ついに「どろろ」に至るのである。

この映画の最大の見所は十八代目中村勘三郎(五代目中村勘九郎)と宮藤官九郎のカンクロー共演であるが、鉢を割ったことを謝りに来てまた鉢を割ったらダメじゃないかとキッドは思いました。

で、『この胸いっぱいの愛を(2005年公開)』(TBSテレビ070409PM9~)原作・梶尾真治、脚本・鈴木謙一(他)、音楽・千住明、監督・塩田明彦を見た。ジャンルとしては死後の世界ファンタジーと平行世界・多次元宇宙・時間旅行SFの融合という趣向である。なお、今回はネタバレ満載なのでご注意ください。・・・いつもだろう。

鈴谷比呂志(2006年の大人になったヒロ・・・以下デカヒロ・伊藤英明)は九州に向かう飛行機から気がつくと少年時代を過ごした祖母の経営する旅館の前に立っていた。しかも1986年にタイムスリップしたのである。少年時代の自分(1986年の鈴谷比呂志・・・以下チビヒロ・富岡涼)と遭遇したデカヒロはチビヒロが祖母の誕生日にケーキを焼こうとして失敗し火事騒ぎを起したことを思い出し、消火しに行って恩を売り、旅館の居候となる。祖母(吉行和子)は死んだ息子(ヒロの父)の面影のあるデカヒロを夫の隠し子と疑っていた。

父と死別して母と別れ祖母の家に預けられた10才のチビヒロは鬱屈していた。東京から転校した田舎の学校では友達もできず、祖母ともソリがあわなかった。そんなチビヒロの心の支えは近所のきれいなお姉さん・和美(ミムラ)であった。ヴァイオリニストとして将来を嘱望された和美はしかし、脳に腫瘍が発見され、余命いくばくもないのだった。手術をすれば助かる可能性があるのだが、後遺症を怖れた和美は手術を拒んでいた。そして、デカヒロの知る歴史では和美はまもなく死去するのである。それはチビヒロの心にさらに深い傷を残すことになるとデカヒロは知っていた。

やがてデカヒロは町でタイムスリップした他の乗客に会う。布川(勝地涼)はチンピラでこの世ではまだ出産されておらず、母(臼田あさ美・・・可憐!)の胎内にいた。彼女はレイプされて妊娠し周囲の反対を押し切って出産を決意したあげく産褥死するのである。布川はまだ見ぬ母に会いに行く。光男(宮藤)は数学教師だが、中学生の頃、他人の家の花壇を荒らしたことがあった。彼はいつか、あやまりたいと思いつつ大人になってしまったのだ。そして彼は乗客の老婆の運命を見た。盲目の老婆(倍賞千恵子)は死に目に会えなかった盲導犬を訪ね、再会すると消失したのであった。彼は「過去の清算をすると未来に戻るのではないか」と推測する。

デカヒロはチビヒロの心を秘めて和美に会う度に恋心を深めていった。そして彼女がやがて死ぬことを受け入れられなくなる。

しかし、デカヒロは海岸で焼け焦げた旅客機の座席を発見する。直後に布川に刺されるデカヒロ。しかし、傷は残らない。「俺も昨日、刺されたけど死ななかった」と布川は言い、「俺たちはもう死んでいる。飛行機事故で死んだ幽霊なんだよ」と推測する。

ここでこの作品内の死後の法則が明らかになる。「死者は時間外の存在」となる。「この世への未練を断ち切ると消滅」するのである。ま、四人の人間がほぼ同じ時間に未練の根を持っていることはややご都合主義だが目をつぶる。

やがて、美しい母に再会して「生んでくれてありがとう」を言った布川と過去のささやかな犯罪を詫びた光男は消滅してしまう。

取り残されたデカヒロは和美に手術を受けさせ、「生き続ける」ことを選択させようと説得を始める。和美に舞台でオーケストラとの共演をさせるデカヒロ。和美が「手術を承諾する」のが「音楽への未練」だったのか、「デカヒロへの恋」だったのかは明らかにされないが「なぜ、人は生き続けるのか」に明解な答えなどもともとないのかもしれない。

デカヒロがいつ消えたのか、「障害は残ったけれど手術が成功した」あたりなのだろう。それまでに和美とデカヒロが一夜を共にしたのか、幽霊もそういうことができるのかは謎につつまれている。このあたりが監督の成長というものかもしれない。

やがて、2006年。チビヒロの死体が回収される。デカヒロの歴史では死んでいた和美は生存し、その知らせを聞く。「また、生きる希望が消えた。しかし、生きろとあの人は言うのだろう」暗いキッチン。不自由な体で落とした果実を拾いながら20年後の和美は心の中でつぶやく。それは嘆きなのか・・・それとも。

関連するキッドのブログ『ドラゴンヘッド』『亡国のイージス』『学校の怪談

週末の視聴率チェック。「リア王」10.1%、「ロミジュリ」11.4%、「鬼平」15.7%、「京都花見小路殺人事件」13.7%、「あらしのよるに」10.4%、「風林火山」↘16.0%(時間枠変更の余波か? それとも男二人で温泉なんか入ってるからか)、「男たちの大和」16.8%である。キッドがもっとも心を打たれた政見放送をした桜金造は落選した。

水曜日に見る予定のテレビ『その時歴史が動いた』『熱中時間』『SONGS』(NHK総合)をなんとなく流れで・・・。

ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。

皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

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