いくら目ん玉ひんむいても見えねえものは見えねえ・・・。(ビートたけし)
北野武の映画は評価しにくい。タレント・ビートたけしによりかかった部分があると同時にそのために曇る部分もある。海外の評価が高く、日本での興行成績がそこそこというのも頷ける気がするし、かといって海外の客がお目が高いというものでもなく、日本の客が目がないというわけでもない。
「冗談じゃないよ~」と場末の江戸弁で話すビートたけしと「芸術映画」を撮る「北野武」の空隙をみんなもてあましているのではないだろうか。
そういう中で『座頭市』はそこそこヒットしたし、銀獅子賞も獲得している。なんとなく発言が許される映画のような気がするのだな。
で、『日曜洋画劇場特別企画・座頭市(2003劇場公開)』(テレビ朝日・070603PM9~)原作・子母沢寛、脚本・監督・編集・北野武を見た。もちろん、勝新太郎の「座頭市」があっての作品である。たけしさん本人が「勝さんは越えていない」と語ったそうだが、まあ、そうとも言えるし、「勝負してたのか・・・」という気持ちにもなる。
いくつかの差異があるが、まず、勝の市は「本当に目が不自由」、北野の市は「ニセメクラ」と言う点が決定的だろう。付随して「カラーコンタクト」で「金髪」である。あ、申し遅れましたがネタバレが基本となっています。
たけしさんにもオーラはあるが、生前の勝さんのオーラはとんでもない輝きを放っていた。・・・いえ、別に見えるとかそういうものではなくて、話の綾ですから。勝さんはオーラを放ちながらとぼけているのである。とぼけることに全力投球のたけしさんとは明らかに・・・違うと思う。
だから、北野の市は金髪でカラコンなのであり、勝の市は本当に人を殺してしまうのだと考えてもよい。たけしさんの歌はろくでもないが、勝さんの歌は聞きほれるぐらいの差があるのだなぁ。
しかし、実質においてその天衣無縫さはいい勝負だと思うし、パンツの中に麻薬を隠したり、出版社に殴りこみをかけたりして凡人たちをあたふたさせるはた迷惑ぶりも似たもの同志なのである。・・・そして魅力的なのだな。
どうしても勝市と北野市を比較してしまう。だから、たけしと武の違和感を忘れることができる。やや、屈折しているけれどそういう意味で見やすい映画なのだった。
殺陣はすばらしい。特に「刃物は凶器になる」という哲学は徹底している。「刀を抜くだけで人を斬ってしまう」と云うか「人が斬られてしまう」シーンが二回ある。一回はニアミスだが。「こわくておかしい」というエモーションが沸きおこる。特に最初の「やくざものがあわててドスを抜いたのでとなりの奴を抜きながら斬ってしまう」シーンが凄い。二回目はやりすぎなのだがニアミスにしているところが計算だ。
ここで圧倒的な実力差があるためにやくざものたちが逃げ出すのだが、逃げ出す前にタメを作りたくなるところを作らないのも計算だろう。タメ(放心)、きっかけ(気付き・・・誰かが腰を抜かすなど)、逃走(行動)というダンドリではなくて、驚愕、逃走というスピード感を選択する。耕作、大工仕事、祭りのタップダンスと続く、リズムが通底しているのだな。
狂言回しとして進吉(ガダルカナル・タカ)が善良な庶民を演じるのだが、ちよっとコントな部分のさりげなさ不足はともかく、おきぬ(吉田絢乃-大家由祐子)とおせい(早乙女太一-橘大五郎)の身の上を知り、昔を思い出して暗い表情になったおきぬにほだされて泣いてしまうシーンは名場面である。もちろん、フリとしておうめ(大楠道代)の抑えた演技がものを言っているのだが・・・とにかく忘れられない素晴らしい部分であろう。
一方、浅野忠信演ずる浪人とその妻(夏川結衣)はやや、ものたりない。彼と彼女は偶然、心中するというたけしさんの主題ともいうべきものを負っているのだが、ちょっと解釈不足だったのではないか。たとえば夏川は喜びに満ちた顔で胸をついたりしてもいいのだが。ま、たけしさんはやりすぎないのだな。
勝の座頭市VS用心棒は相手がミフネだけにすでに爆笑なのだが、浅野でも弱いと感じるのが巨匠すぎる男の悲劇なのだな。
後半、悪党一網打尽というか、ボスキャラ連続征伐で、岸部一徳が逃げられないのは座頭市が盲目ではないからなのだが、筋が通っているのか、ふざけているのか分からないのである。
そしてラストシーン、もう転びたいから転ぶのであるが、石でよかったのか、バナナの皮がよかったのではないか・・・とささやくものがいる。もちろん、世界のキタノなのでそれはしないのだな。やりすぎないのである。やりすぎと思う人は開きメクラだと思う。
関連するキッドのブログ『この胸いっぱいの愛を』『THE 有頂天ホテル』
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ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン
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コメント
映画・座頭市は見て無いですが、
子供の頃、目をつぶって棒切れを杖代わりにして
座頭市ごっこで遊んだ記憶が・・・
でも、何も見えないと怖いから、
薄目開けてズルしてたのは内緒デス♪
ぎゃぁぁぁ~~~!!!mariさんたらプッチーニの
親分だったとはっ!!!羨ましいぞ。
撮影はでっかいどうの北海道かぁ・・・
プッチーニさんのサイン貰いに、北海道まで
行かねばっ!!!なのデス!( ̄ヘ ̄)
投稿: まこ | 2007年6月 6日 (水) 15時43分
●no choco●まこ☆ミキ様、いらっしゃいませ●no choco●
するってぇとなにかい・・・
おめえさんがた
あっしを
おきりなさるのかい
そいつは
およしになったほうがいい・・・
ってなことを言って
バシュ、ドシュと
お斬りになっていたのでございますね・・・。
じいやとしては
将来が心配になる一瞬でございました。
案の定っていうか、やっぱり・・・。
いえ、なんでもございません。
ハンデがあるのに強い・・・。
このヒーローを思いついた
子母沢寛先生は天才でございますね。
ま、実在したのかもしれませんが・・・。
ikasam4様も天才でございます。
じいやとしては下書きヴァージョンを
加工しようと思っていたのですが
完成版をいただき
とても感動しました。
ねー。いい出来ですよねー。
まこ様との共演も考えておきますです。
北海道編のあとは
いよいよ、ムーン☆キャンディーズ
始動でございます。
変身ポーズの練習は大丈夫でございますか・・・。
投稿: キッド | 2007年6月 7日 (木) 00時35分