私のこと、どう思っているの?(麻生久美子)VS・・・男と女が間違わないなんて・・・がっかりです。(小出早織)
物語作者たちはふと「千夜一夜物語アラビアンナイト」のことを思うときがある。「もっとおもしろい話を」と要求され、ちょっと疲れた時とかにね。
ちょっと面白い話をして、「もっともっと」とせがまれたときに次の話がないのはせつないものだ。
今回は最終回なので、そういう愚痴のような部分がある。
「千夜一夜物語」は夜のお相手を殺してしまうシャーリアール王に愛妾シェヘラザードが御伽噺をして「この話のつづきはまた明日・・・」と言い、つづきを聞きたくなった王が殺せなくなるという骨格を持っている。語られるお話は「シンドバッド」とか「アリババ」とか「ランプの精」の物語である。今回、「話がつまらないから殺されそうになる男」の話なので「アリバイとアリババ」は似ていたり、そーぶくんはランプの精だったりするのである。
1001夜は気の遠くなるような長さだが、ブログも基本は「ちょっと面白い話」だ。連日更新するとおよそ2年と9ヶ月である。ブロガーは一年は続けようと思ったりするのだが、それを過ぎたら次の目標はそのあたりなのかもしれません。ま、面白くなくても殺されないから続けるだけなら続けられますけど。
で、『帰ってきた時効警察・第9話・最終回』(テレビ朝日・070608PM1115~)脚本・演出・三木聡、音楽・坂口修を見た。エンディング近くにテーマソングを霧山(オダギリジョー)がスパニッシュギターで披露する。本当になんでもできるな。
やはり、広大な領土を誇る総武市。南総武まで電車で二時間なのだ。そして三日月くんは今回、食べすぎです。出前で満漢全席、駅弁二回、元カレの九紋竜(神保悟志)とお食事二回、枝豆、もなかなどである。三日月くんはサルなのだが、今回はサルのポーズ、猿は犯罪を犯しません(サネイエ=江口のりこのセリフ)、そしてラスト近くの猿の惑星とそこそこ尽くされていた。
今回、霧山はいかにも三日月くんを受けいれている。九紋竜にちょっと嫉妬したり、来てくれない三日月くんにすねたり、「夫婦」みたいって言ったり、乗馬シーンで背後から犯すポーズをしたりと大胆である。もちろん、淡いムードを壊しては第③シリーズがぶちこわしなので夜の地震は二人のムードを壊すのである。
真加出(小出)は今日は煙草銘柄紙バックを多数持つのだが、「ゴールデンバット」のグリーンは素敵。煙草は安くてまずいのだが。マンホール、餃子井戸、主のツボとつづくミステリも尽くされていた。
フランスの二本の足であるスペインとイタリア。青の洞窟は交差する下半身である。キッドはイタリアのオリーブオイルより、スペイン産の方が美味しいのである。
スズメにつづく、電線の遠き山に日は落ちて。諸沢(光石研)ネタは他の演出陣は軽視なのだが、この演出家はこだわるのだな。
今回は「米は米蔵に隠せ」ということで「フラメンコにフラメンコ」「前衛舞踏に白塗り」「除虫菊のひよこまんじゅうに十文字」である。ダンサーにご注意なのである。真加出くんは「かわいい新人」として「真似したり」「食べられたり」「おつゆをこぼされそうになったり」「ちょっと心配だけど」「くんできて」「がっかり」なのである。初心に戻ったのだなあ。初々しく初々しいというのは本当に困難なものだ。マイムマイムマイムで三日月くんと真加出の心の交流がひそやかに交わされるほどに。
さて、このドラマはおそらく「へんてこ」なのである。「へんてこ」は初歩的なボケなのですぐに「へんてこ」でなくなる。「へんてこ」であり続けるのは難儀なのである。演出家を変えて、やり続けるのはそういう計算があるのだな。一周回って「へんてこ」なので「安心して」「新鮮な」「へんてこ」を楽しめるわけなのである。
被害者が清助(岡元次郎)でスケキヨ(犬神家の一族)のように死に、金田一耕介のような第一発見者だったりするのも、昔のアングラ劇団ごっこで「時の番人」や「幻想売り」が登場しプロポーズ大作戦をおちょくるのも三日月くんと真加出くんが劇団のヒロイン一番手、二番手っぽいのもなんだかとても爆笑できるのであるよなぁ。
「話が面白い」のと「話がつまらない」の境目はとても難しい。熱賀(室井滋)と雪谷(升毅)とが水と油なのに対し、雪谷と九紋竜は「アメリカンジョーク」なのである。そして三日月くんを「ブースっ」と言うエンドー(松尾スズキ)は「二等辺三角形のように美しい」という雪谷よりも淡いカップルには楽しいのである。蜂須賀(緋田康人)のバミューダパンツトライアングルは謎の消失点だしな。
「時効」では「残念にならないようなお約束」がある。十文字(豊原功補)は「残念だから」面白いのである。残念でなかったら不死身のヒーローになってしまう。話を思い出して飛んできてもその話はのらないのだ。
熊本(岩松了)も「つまらなさ」には定評があるが、熊本は「つまらなさ」の自覚がある。それが年輪なのだな。「あんたは面白いけど、オレにもそういう時代があったよなぁ」という感じである。だから、一番「面白い」霧山をそう仕向けるのは熊本なのである。熊本が頭の後ろで腕を組み、時効課職員が次々に「すぐやる」中で三日月くん、霧山と主役たちがいつ、やるのか、やらないのか・・・もう、そんな単純な面白さなのである。「まちがい」は「面白い」のでいつか「終る」ものなのだなぁ・・・。
霧山が三日月が面白すぎるのを止める言葉は「また、よけいなことを」「そんなことはいいから」「うるさい」なのであるが、これを各人が使いまわして、独特のノリを作っていくとき、「なつかしい珍しさ」が形成される。
たとえば「フーテンの寅さん」は果てしないリフレインである。役者もスタッフも「いつまでもこれでいいのか」と悩む。しかし、時にはそれでいい時はある。湾岸署の青島以外に織田裕二が面白くなくなるのは本人にとっては困ったことだし、オダギリジョーがいつまでも霧山くんでないと言われたら困るのである。しかし、もうそうするしかない役柄というものはあるのであり、そうするべきなのだが・・・だってあたり役なのである・・・しかし、本人がそう思えないところが・・・幸せというものの難しさなのだな。
ま、キッドとしては忘れた頃に戻ってきてくれたらいいよ・・・霧山・・・という他はないのだな。ま、言っちゃいますけどそういうことなのだな。足元が片足おろそかな林田巡査(笹野高史)・・・。そして、つまらない男は自分のつまらなさに耐えて生きていくしかないのだ。そこが面白さのポイントなのだから・・・。ボケは楽しいさ・・・それに対してツッコミは痛みを伴うし、意味のないツッコミは時には致命的という物語なのである。
又来(ふせえり)のかえるちんは微妙だが、真加出の「アチュー」は可愛かったりするものだから・・・。
関連するキッドのブログ『第8話のアチュー』
日曜日に見る予定のテレビ『風林火山』(NHK総合)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
「つまらない」事が時として「面白い」に変わる
「つまらない」があるから「面白い」が引き立つ
この演出がこのドラマの魅力なんでしょうね。
この辺りの差っていうのは個々によるものですからね。
九紋竜って書かれてますね。
本当は「九門竜」みたいなんですが
普通はやっぱ「九紋竜」ですね。
どうせならば個人的には林冲とか花栄とか
登場させてもらいたかったです(笑)
今回も色々な映画を思わせる演出が満載ですねぇ。
まぁこれで終わってしまうのは少々淋しいですが
「さよなら」はまた逢うための約束ですから
また逢える事を期待して待つ事にします(^▽^)
投稿: ikasama4 | 2007年6月 9日 (土) 23時24分
✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥
「面白さ」とは何かということでは
いいテキストなんですよね。
この番組って。
「万人受け」の困難さと
でもあきらめたらつまらない
ということでもいいテキストです。
九門竜はきっとikasama4様なら
つっこんでくれると思いました。
やはり、クモンリューときたら史進ですものね。
ま、万人受けは遠い・・・のです。
ま、キッドは、あと、黄信とか、阮三兄弟とか
解珍・解宝兄弟も好きです。
何の話だか・・・九紋竜にするか九紋龍にするか
迷いましたよ。
ああ、おしゃれだったなー。
猿の惑星はもうすぐ
砂に埋もれた自由の女神を
発見する寸前で間違いないのですが
「渡り鳥シリーズ」とも
とれる微妙な味わい。
ギターがらみでしたし。
九門竜の別れの敬礼はちょっと
スパニッシュでしたね。
まあ、サードシーズンはガチだと思いますが
これだけフッておいて
やらない・・・というのもそれはそれで笑えます。
やるとしたら真加出くんが残るかどうか・・・。
微妙なワクですよね。
犬山と母娘にしたのも含みを残しているしなあ。
新人入れて、ゲスト処理もありだから・・・。
それはいやだなぁ。
毎週、真加出くんに会いたいものなあ。
ああ、来週はもう会えないのかっ。(´・ω・`)ショボーン
投稿: キッド | 2007年6月10日 (日) 03時09分
キッドさん、こんにちは~♪♪
ネムイ~。あと少しでおうちに帰れる~。
今日は、お昼休みに草むしりしました。
なんでOLが草むしり・・・。
OLは可愛いお財布もって社食行ったり
近所のパスタやさん行ったり
近所のイタメシランチ食べたりして
キャッキャキャッキャ笑う生き物なのに
なんで炎天下の中
汗だくで草むしり!!??
我が社の方針だからですが。
毎日だったら気がおかしくなりますが
たまにこういった行事があるのです。
「時効」の皆様みたいな楽しい行事は無いYO!
温泉行ったり皆で電車乗ったりさ、
でも正直言うと、会社の皆で行きたくもない。
「時効」の皆はあのノリだからいいけれども。
実は「時効警察」(帰ってきたじゃない方)
のケラさんの監督作品が未視聴なので
楽しみすぎて見れません。
見るのがもったいなくってー。
三木様のは全部観たな、
りょうさんゲストの最終話も見たし。
あれ?そういえば、「帰ってきた」の初回見てない、
誰が演出だったのかしら??
ゲストも知らない。
キッドさんのレビューで見てみよ~。
DVDになったらすぐレンタルしよ~。
それにしてもギター・・・かっこいい・・・。
すっかりギター弾けるようになりたくなった。
「アルハンブラの思い出」とか・・・
(これは神様の「Love Story」より)。
投稿: ヤマト | 2007年6月12日 (火) 16時26分
☆*⋄◊✧◇✧◊⋄*ヤマト様、いらっしゃいませ*⋄◊✧◇✧◊⋄*☆
ヤマト様、またもや
暴飲暴食浪費三昧に
お走りになったのでございますね。
キッドとしては
若いって素晴らしいと思いますが
じいや根性としては
ほどぼどになさいませ~でいっぱいでございます。
草むしり、大いに結構。
健康的でございます。
ただし、腰を痛めないように
整理運動よろしくでございます。
充分ストレッチングしてくださいますように。
まあ、毎日だと
それはもはやオフィスレディーとは
申しません・・・きっぱりと。
もんぺを買わねばっ。
時効に遠出はつきものですが
園子温と違い、三木監督は温泉以外にもお出かけです。
帰・時効の一回目も三木監督ですよ。
キッドも昔、「禁じられた遊び」が
弾けるのに憧れました。
もう、20年くらい弾いてませんが・・・。
このブログという奴は
他のあらゆる趣味を凌駕していきます。
果てしないのでございます。
その気になると24時間やれますからね。
き、危険ですっ。
ゲーム、楽器いじり、観劇、スポーツ・・・。
あらゆるものが遠ざかっていきます。
お、恐ろしい。
今夜はピアノでも弾いてみるかーっ。
と思っても
ふと見ると黒鍵盤がなく
文字列の並ぶキーボードをたたいているので
ございますーっ。
これはもはや・・・呪い?
投稿: キッド | 2007年6月13日 (水) 02時20分