バスタブに死すところだった私はイノセントを守ろうとしたのです。(新垣結衣のような舘ひろし)
なぜ、ルキノ・ヴィスコンティー特集なのかっ。・・・はともかくとして、さすがに反応が鈍いのである。ルキノ氏は1976年に逝去されている。それから・・・30年・・・当時15才だった人も45才である。ガッキーが知らないのは当然なのであるが・・・意外と影響されている人は多いのだろう。つまり作り手側にである。
ま、どちらかといえばお耽美というか、貴族趣味な映画監督である。なぜなら、本人が伯爵という本物の貴族だからな。
たとえば「華麗なる一族」(1970)が「地獄に堕ちた勇者ども」(1969)に非常に似ているところなどもその影響力を物語るのである。いつだって庶民はセレブに憧れるものなのだ。
しかし、この物語的に連想されるのはルキノ氏がバイセクショアルだったことだろう。つまり、彼は両刀使いだったわけで、時には男を時には女を愛した彼の作品がパパがムスメにムスメがパパになるドラマに挿入されているのはいたって適切だったと言えるだろう。ちなみにルキノのパパもバイだったので、ルキノ、ルキノパパのめくるめく関係も妄想されるのだが、いい加減にしておくよ。
で、『パパとムスメの7日間・第2回』(TBSテレビ・070708OM9~)原作・五十嵐貴久、脚本・荒井修子、演出・高成麻畝子を見た。視聴率は↘12.8%とやや下げたが、ファンタジーだし、こんなものかもしれない。「心の入れ替わり」の物語はやや、想像力が要求されるので、「なぜそうなったのか説明されない」とイライラしてしまう人が脱落するのである。これに対しては「スーパーナチュラルな存在」という対処方法がある。たとえばP大作戦は「妖精」がこれだ。もちろん「なぜ妖精なんかがいるのか」という追求も予想されるのだが、それは探究心があるということなのである。そういう人は逆に「心の入れ替わり」も気にならない。
さらに、「想像力不足」「探究心不足」の人の対処法に「変身」という手段がある。つまり、「心が入れ替わった」というのは納得できないが、パパがムスメに、ムスメがパパに「変身」したのなら納得ができるという人がいるのである。それはもう幼い頃から「変身」に慣れているからなのだな。
この場合は最初にムスメの服を来たパパと、パパの服を来たムスメという男装・女装のサービスショットがオマケについてくる。まあ、あくまで作り手の工夫の問題でございます。
今回、前半は心が舘ひろしで体がガッキーの小梅(新垣)と高校の健太先輩(加藤成亮)のデートを心がガッキーのパパ(舘)が見守るという展開。恒例のパパとムスメの目隠し入浴タイムをはさんでママ(麻生祐未)にキスして日曜出勤である。会社では問題がもちあがるが、「ちびまる子ちゃん」(フジテレビ)のおかげで難を逃れる。ま、トモダチのトモダチのトモダチが千人いるかどうかは触れないでおく。
デートは「映画」見て「食事」というオーソドックスなもの。すがすがしいぞ。「とりあえずホテルへ」もそれはそれですがすがしいけどな。
ともかく、名画座はヴィスコンティー特集だったのだな。で、パパ(実はムスメ)は「あらら・・・なんかロマンチック・・・」と思いつつ爆睡。健太も爆睡。ムスメ(実はパパ)だけは青春の思い出にひたってじっくり映画鑑賞をしたのだった。
っていか、特集だからな・・・日替わりかもしれないけど・・・ヴィスコンティーの二本立てとか、三本立ては・・・へヴィーだろう。
なんだろう、「家族の肖像」で「ルートヴィッヒ」で「ベニスに死す」かしら・・・。
大体、こんな感じだよな。とりあえず、主人公は貴族。性については開放的で、同性愛とか近親相姦とかに興味があります。妻子があるのにすっごい美人の貴族の未亡人とかと浮気。そのくせ、妻の浮気が許せない。で、悩む。最後は自殺・・・。も、こんなのばっか三本も続けてみたら、気分はすっかりアンニュイになりますよぉ。・・・でもはまる人ははまるでしょう。
で、少なくともパパは若い頃にはまっていたので、本当はムスメの体になってみたいという願望があり、それがこんな事態を引き起こしているのでは・・・と妄想が膨らみます。
ま、この作品がヒットしないとしたら、ただでさえ、うざい父親に自分がなってしまうという悪夢に女子の皆さんが耐え難いのでは・・・ともチラッと思いました。
ともかく、体を入れ替えることで逆にピンチを脱出の展開が続く。来週はパパのデートとムスメのテストである。ま、ほのぼのですな、ほのぼのと『家族の肖像』を描いているのですな。
関連するキッドのブログ『第一話のレビュー』
で、『風林火山・第27回』(NHK総合・070708PM8~)原作・井上靖、脚本・大森寿美男、演出・東山充裕も見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様のレビューが面白いです。今回、かなり入れ込んでます。
で、今回、キッドとしては来週のいわば前半戦クライマックスの前に信州における武田家の野戦を振り返ってみたいと思う。まずは1541年の海野平の合戦である。この時、武田家の当主は信虎であり、甲斐武田・諏訪・村上連合軍が諏訪の家来筋にあたる海野家を滅ぼした戦である。ちなみに村上義清は信濃守を名乗っており、つまり自称信濃守護であった。正当な信濃守護は小笠原長時であるが、すでに名目だけの守護に成り下がっていたのである。ちなみに小笠原家は甲斐武田の分家である。武田の分家の加賀美の分家が小笠原家なのである。甲斐武田は小大名ながら、名家であったことは間違いないのだ。そして甲斐が時にはげしく、時にゆるやかに信濃に侵攻していたことの証なのである。
とにかく、海野平の合戦ははげしい方の侵攻であった。油川武田家や小山田武田家(本来は桓武平氏の名族だがこの頃は武田家とかなり血縁が生じていると推定)との甲斐内戦を勝ち抜いた本家武田信虎の絶頂期でもあったのである。名実ともに甲斐守護となった信虎は神官あがりの豪族・諏訪と婚姻関係を結び、村上源氏とも新羅人の末ともいわれる村上氏と同盟して土豪・海野一族の領地を略奪したわけだ。
そしてその絶頂期に長男・晴信によって追放されてしまうのである。権力闘争のダイナミックスなところである。なぜ、そういうことが起きるのだろうか。
それは主君と家来という概念のマジックなのである。江戸時代に形勢された儒教的な主従の概念は戦国時代にはまったく通用しない。どちらかといえば現代の契約社会の方が近いと言えるほどである。それは基本的には安全保障の話なのである。
信濃の小笠原家が武田の分家であるくらいだから、甲斐には武田はごろごろいるのである。だから、本家だからといって大きな顔はできない。元を質せばみんな武田なのである。で、本家武田としては分家のいくつかと組むのが基本である。本家に近い筋、たとえば先代に分かれたとか、先々代に分かれたとかいう分家は味方になれば強力だが、同時に恐ろしい敵にもなりうる。「俺だって本家みたいなもんだっ」と言い出しかねないからである。だから、時には油川や小山田のように討伐対象になる。
また、人間は出来不出来がある。名君の息子が名君とは限らないし、馬の骨から英雄が生れることがある。こういうのは機に応じて攻め滅ぼしたり婚姻関係を結んでとりこんだりしなければならない。
そうしてゆるやかな同盟軍が出来上がっていくのである。この場合のリーダーは非常にもろい立場なのである。そのもろさがイヤになったら恐怖政治に流れるのも自然な流れなのである。盟主から君主へ。この階段を昇ろうとして信虎は転げ落ちたのだった。
そして後継者となったのが晴信だった。もちろん、晴信に求められるのは「強い君主」ではなく「弱い盟主」なのである。しかし、一方で信虎の作った「強い君主」への流れも残っている。そして、戦国時代が熟成するにつれて、「弱い盟主」の国が滅び、「強い君主」の国が生き残るという「実力主義」の必然も流れ始めている。
そして、晴信が名将として名を残すのはこの流れを逃さなかったという一点にある。彼はゆっくりと「盟主」から「君主」へと成長していったのである。
そのひとつのピークが1541年の小田井原の合戦である。晴信はかって父を追放した時に自分を盟主として祭り上げた武将たちを君主として手駒のように使ったのである。
ついでに「海野平」が「平」で「小田井原」が「原」であることに触れておく。それは「平原」と並べれば山のない土地であることは明らかであるが、「野」という土地を示す言葉と組み合わせると違いが見えてくる。「平野」と「原野」である。どちらかといえば「平」は田畑や開墾地のように見晴らしのいい場所。「原」は草地や林など見通しの悪い場所なのである。
海野平の野戦は攻め込んだ方(遠征軍)が圧勝する。もちろん、戦力差もあるのだが、戦術的選択の余地が守備側になかったのだ。一方、小田井原の合戦は伏兵による勝利である。遠征軍を待ち伏せ、休んだところを急襲するのは常套手段なのだった。
いよいよ、来週は上田原の合戦である。ドラマではいろいろ手のこんだ趣向で敗北を演出する模様だが、晴信はそろそろ彼が「盟主」でなく「主君」であることをイヤがり始めた家来を引き連れて、伏兵攻撃の可能な「原」へと出陣していく。もちろん、突然やってくる「老い」の問題もある・・・。とにかく、ここで晴信が「はじめての体験」をするのはキッド的には当然のことであるように思えるのである。もちろん、それは結果を知っているからだ。であるにしてもだ。・・・来週はたっぷりと見せてもらいたいですぞぉぉぉぉぉぉ。戦をっ。
火曜日に見る予定のテレビ『探偵学園Q』(日本テレビ)ま、『花ざかり』と『牛』は内容次第だな・・・。
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
相変わらずのきちんとした考証と考察。恐れ入ります~。
ただドラマだけ見て記事を書いている私なので、こういう背景があって物語が作られているのか~、という感じで、あまりしっかりしたコメントができないのですが(涙)、読んでいて楽しいです!また書いてください!(とくに来週!)
お待ちしてます!!
投稿: nattan3211 | 2007年7月 9日 (月) 22時36分
舘さんはこのドラマでかなり冒険というか
チャレンジしてきてますねぇ。
最近の舘さんの役柄は今までのダンディーな役を
打破するようなものが結構ありましたが
これはもう最たるものですね。
舘さんのコミカルさがあって
新垣さんの可愛さが引き立ちます。
展開的に読めるとこはありますが
そこが素直に楽しめる面白さはいいですね。
この戦国時代は各豪族達が己の権利というか
生活を守るために始まったようなとこがありますね。
その中で例えば北条氏康や織田信長は中央集権
いわゆる上に立つ者へ命令系統を集中させるやり方をする事で
領内をまとめ上げていたように思います。
武田信虎もそうしようとしていたのでしょうが
結局的に彼は晴信に追放されるのですが
あくまでも、信虎のやり方を快しとしない家臣達の考えが強かったように思います。
その中央集権化の考えは当然晴信にも継がれていた。
しかし、その計画を実行する上で邪魔な人物がいた。
それが甘利と板垣であり
その二人を屠るために上田原の戦いが仕組まれたのではないかと
まぁ今回の内容を台無しにしてしまう程の妄想が頭をよぎります(笑)
来週はそんな妄想を吹き飛ばして
甘利と板垣の最期をしっかり堪能したいですね。
でもってH☆Cですが
ろーじーさんが元に戻ってよかったよかった(^▽^)
これも阪神が勝ってるおかげかな(笑)
投稿: ikasama4 | 2007年7月 9日 (月) 22時40分
巴☀巴☀巴☀nattan3211様いらっしゃいませ巴☀巴☀巴☀
いよいよ、前半のクライマックス突入。
晴信の周囲が激動する場面ですねえ。
できればここ数週はレビューしたいと思っています。
主軸は板垣、甘利になっていますが、
小山田にもさりげなくスポットをあてて
次の哀愁作りの準備に入っているあたり・・・
本当に今回の脚本は素晴らしいと思います。
来週はどのくらい戦の場面を描くのか・・・。
ちょっと楽しみです。
そして、脚本家ならではの
仕掛けが姿を見せているので
そこもまた楽しみ。
キッドも来週が待ち遠しいのでございます。
投稿: キッド | 2007年7月11日 (水) 02時50分
✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥
舘さん、面白いですね。
どんどん、女子高生になっていきます。
きっと、本来、心が女子高生なのだと思います(妄想)
ガッキーもがんばって
オヤジを演じているのですが時々、女の子に戻ってしまい
ま、そこもまた愛嬌ですよね。
脚本もいい感じですね。
ま、「冗談じゃない」の後は・・・御得らしい。
これは戦国時代にもあったわけですよね。
極悪非道の領主の後だと普通の領主が
名君になったり・・・。
そして逆もあるわけです。
・・・勝頼・・・。
ふふふ、信玄の陰謀は想像すると
楽しいのですが
来週はじっくりと楽しみたいですね。
かなり大胆な脚色になっているので・・・
まあ、甘利裏切りは仕掛けとしては
あるわけですが・・・。
それから、常識的な戦史との照合が
また楽しい作業になりそうです。
ムービーはハイライトでございました。
せいいっぱいの特撮でございますっ。
公開中に阪神が立ち直ったのはまさに
好都合でしたーっ。
次回は間奏曲というか、
唯一のラブシーンの予定。
新旧山P登場でございます。
いつもお世話になりますーっ。
投稿: キッド | 2007年7月11日 (水) 03時03分