ドキドキしたりヒヤヒヤしたりワクワクしたら心臓に悪いのです。(井上真央)
夏真っ盛りである。台風がやってきました。
こりゃあ、ヒロインがズブ濡れでカンフル剤的に視聴率アップかーっ。
と思ったら、ヒロイン(井上)は心臓病なのでお留守番。・・・そりゃ、設定ミスだろうがーっ。
本題に入る前に恒例の週末の視聴率チェック。「女帝」↘*8.9%(ゲンは原爆のゲンくらわされたけん)、「山田太郎」↘11.1%(子役VS子役貧乏より戦争の方が強しだったんだと硫黄島)、「スシ王子」↘*6.9%(ゲンと無関係に下げてますがそれが不人気気仙沼)、「はだしのゲン~ピカドン編」18.2%、「受験の神様」↘*6.2%(ゲンをくらっているが本来低水位なので目立ちません)、「はだしのゲン~友子はトモダチ一人もできなかった編」↗20,5%、「ライフ」↗11,7%(あげたーっ、ゲンのついでに見た人100万人くらい)、「風林火山」↘17.8%(やはりちょっともどかしかったよなー、勘助抜きでも戸石崩れはちゃんと見せんとなー)、「パパムス7」↘11,9%(いつも見てるけどおそらく鬼太郎に行った人が300万人くらいか・・・)、ついでに「ファースト・キス」↘11.1%(うわぁぁぁぁ、やっぱりなぁ)・・・以上。
で、『ファースト・キス・第六話』(フジテレビ・070813PM9~)脚本・井上由美子、演出・武内英樹を見た。まず、やはり、ここまでかけもちしていた井上脚本はちょっと精彩を欠いていた。だから、今回、お盆に入って・・・こんなもんだろうと思う。武内演出は強風で飛んでくる看板という得意技を披露したがもっととんでもないタイフーンを見せないと期待には応えられない状況だった・・・ということだな。
まず、ここまで妹・美緒(井上真央)はどちらかといえば偽悪的なところばかりが強調されてその裏にある辛さ・切なさが視聴者の想像におまかせだったということを指摘しておく。心臓病ならではの描写が不足しているのも一因だ。今回でいえば発作に対応するためのニトロールRの紛失が重要な要素になってくるのだが、それもいささか手垢のついた展開に終っている。いわば、ベッドの下に落ちた書類を取ろうとしてヒロインが意中の人と頭をぶつけてしまうレベルなのである。
きっと視聴者はもっとゴージャスなものを期待しているのだよなあ。
たとえば台本の練りこみの問題がある。脚本家が優秀な能力を時間たっぷりに使うというのはゴージャスなことだ。これがかけもちで殺がれていることは明らかなのである。たとえば今回、はるな(酒井若菜)は「ニトロがそんなに大事なの・・・」と言うのだが、かって若菜は発作を起した美緒と二人きりだったことがある。その後、美緒は病院にワープするのだが、明らかにはるなは命の恩人だった・・・そうでないという説明がない限り・・・しかし、そのことがあたかも失念されたようなセリフ・・・これが何か重要な仕掛けでないとしたらものすごい脚本ミスである。キッドは甲子園準決勝九回裏一点差の二死満塁でライトフライを落としたくらいの痛恨のエラーだと思いました。勝(阿部サダヲ)に「世界で二人きりになっても絶対あんたとは寝ない」などと言っている場合ではないだろう。
前フリによるシラケといえばやはり、最高に辛いのは秋生(平岡祐太)の心理であろう。ここまで、秋生は蓮子(松雪泰子)に気のある素振りを見せてきたのだが、それはすべて擬態というか、尊敬する先輩医師への憧憬だったという展開である。そして、これまでまったく恋愛対象として見ていなかった患者・美緒の告白に対してそれを受け入れるという態度に出たのである。もちろん、まだはっきりとした恋愛宣言ではないが、もし、そうでないとするとそれはそれで悲惨な展開なのであり、やはり、美緒が秋生が好き、秋生が美緒を好きということになったわけだ・・・それってやはり平岡祐太には荷が重い気がするのですが・・・。
今回、唐突に蓮子の上司(柴俊夫)が登場する。これは蓮子の過去(患者と恋愛、患者死亡)を強調するためのテクニックなのだが、これがまたウルトラデラックススーパー唐突である。このドラマ、出てくる登場人物の第一印象すべて悪しという遊びをしているらしいがそんなことに何の意味があるのだろうか。
同様に兄(伊藤英明)のアシ仲間(蕨野友也)が「話したいことがある」と訪ねてくるのだが、ついにそのエピソードは据え置きである。これは思わせぶりがすぎるだろう。第一、兄に何があろうと興味がない魅力のないキャラにしておいてそんな伏線は無意味だ。
さて、今回は台風である。東京を直撃することは耐えてない台風だが、来たら来たで予想もつかないことが起るはずである。そういう凄いことを見せた上で恋愛ドラマであるという手法は思いもつかないことなのだろうか・・・とキッドは考える。
増水して兄のバイクは河に流される。風でビルが倒壊して秋生の車は下敷き・・・。
そういうことがないんだよなぁ。ともかくシーンは一流(劇団ひとり)の家、病院、台風直撃の街。これだけである。「ニトロ」が消えて、病院にはある。そこで妹思いの兄が一流の家から病院へ。そして突然、美緒に恋した秋生が病院から一流の家へ。このすれちがいを描くだけで、シンプルだが、前フリがうまくできていればなかなかに劇的だった。
しかし、ここまでがモタモタしているので乗れないのである。
途中のアクシデントが象徴的なので言及しておく。バイクで病院へ向かう兄は立ち往生している車を発見して追い越して停まる。そしてパンク修理を決意。車中に病気の子供を発見する。・・・この順序が決定的にダメだ。まず、妹のクスリ確保は一刻を争う事態である。だから、兄はバイクを止めない。そうでなければ兄はバカがすぎる・・・のである。さらに妹の病気の深刻さも無視されるのである。だから、ここはパンク車の女がバイクを無理矢理停めなければならない。それによって転倒して負傷でいいのである。女が謝りつつ状況を説明、子供の病気を知り、兄はパンク修理を決意。車を送り出して、看板に衝突というダンドリでなければならない。兄はお人好しでバカだけれどそれなりに魅力的な人間になるだろう・・・。今回の描写では単なるバカである。つまり、ここに来るまでもこの手の描写にことかかなかったのだな。だからジリジリと客は逃げるのだ。
そして、雨の中を車で一流の家に向かう秋生。ここは走り屋の若きドクターとして「湾岸ミッドナイト」しなければならなかっただろう。前方で追突事故が発生、凄いテクニックで切り抜けるくらいの描写があってよかったのである。そしてけが人を無視してクスリを届けに行く感じ。だって台風でいつけが人が来るかもしれない外科系の当直医が私用で病院を抜け出すというのはそういうことだろうから。そのぐらい押してやらないと秋生はキャラとして立たない。なにしろアユタなのだから・・・。
ま、いいか。とにかく、美緒は恋をして笑顔を見せ、兄もうれしくなった。そしてそれでつづくにすればいいのに、心底萎える兄のナレーション。これは脚本家の孤独な賭けなのかもしれない・・・とふと思うキッドだった。
関連するキッドのブログ『第五話のレビュー』
水曜日に見る予定のテレビ『ホタルノヒカリ』(日本テレビ)
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コメント
こんばんは。
やっぱり合いの手は夏希ちゃんじゃないと、
と思っているシャブリです。あ、いきなり脱線。
>途中のアクシデントが象徴的なので言及しておく・・
ここの説明でスッキリしました。
あそこでパンク修理するのは、単なるバカなアニキだと思ったからです。
よく解釈して、
「アニキは大変なときでも、他人が困っていると助ける優しいヤツ」
を表現したいだけなのか、ぐらいにしか思っていませんでしたので。
なるほど、キッドさんの説明を読むと何故つまらないかが見えてきて勉強になります。
後輩アシの仕事の話も、放ったらかしだし、
良くなったのは、CM入りぐらいかな。
依然として、和樹の語りは邪魔と思っていますけど・・
5円玉磨くくらいのコネタが欲しかった今日この頃でした。
では・・
投稿: シャブリ | 2007年8月15日 (水) 00時02分
初めまして・・・通りすがりの者ですが
すごい的確で感心しながら全部読んでしまいました・・・。
すごいですね。評論家というか・・・ありがとうございました。
投稿: みん | 2007年8月15日 (水) 02時18分
▯▯black rabbit▯▯シャブリ様、いらっしゃいませ▯▯black rabbit▯▯
夏希といえばGO!GO!HEVEN!(テレビ東京)のジュリア
を思い出すキッドです。
まあ、後智恵というか
他人の失敗は見やすいので・・・
あまり自慢できないのですが
「練りこむ」
というのは
初稿から最終稿までどれだけ
改善できるかの勝負ですからね。
もう一手間なのになぁと思うキッドなのです。
映像化には予算がからみますから
理想を言われてもなぁ
という反論もあるでしょうが
傑作とはそういう無理を
突破した時に生れるものですからね。
おそらく脚本の出来が
予想外に悪くて演出家が困っている
という状況なので
きっとコネタにまで力の余裕がないのですよね。
そういう意味で飛ぶ看板は意地の一手では
あったのではと妄想しております。
投稿: キッド | 2007年8月16日 (木) 00時54分
☀☼☀1stkiss☀☼☀~みん様、いらっしゃいませ~☀☼☀1stkiss☀☼☀
コメントありがとうございます。
評論というような大それたものではなく
お粗末な妄想でございますが・・・。
よろしかったら
また遊びに来てくださいね。
投稿: キッド | 2007年8月16日 (木) 00時58分
はじめまして。
「のだめ~」のレビュー以来、読ませて頂いています。
私も良くドラマを見るので、様々な過去の作品のネタが出る度、にやけてしまいます。
「ファーストキス」のレビューを読んで。
井上由美子は嫌いじゃないのですが、キッドさんの指摘どおり確かにかけもちの影響か切れ味が悪く、恋愛モノにしてもコメディにしても不十分な感想を持ちました。
もっとも、阿部サダヲ&伊藤英明のハイテンションっぷりを見ると、部分的に「ぼくの魔法使い」を思い出してしまうのですが…。
「花男」で一気にブレークした井上真央も、ここで一旦停止といったところでしょうか?
投稿: ys_maro | 2007年8月17日 (金) 04時02分
♬♬♬のだめデスヨ♬♬♬ys_maro様いらっしゃいませ♬♬♬のだめデスヨ♬♬♬
コメントありがとうございます。
のだめスペシャル(2008新春)楽しみですね。
今回はちょっと残念な感じが
強かったので少し筆がすべった模様。
暑さのせいもありますが。
「ぼく魔法」での伊藤&阿部
「木更津」のモー子&猫田
「誰ママ」の阿部&ひとり
阿部サダヲがみんなを
まとめてほしいとこころ。
阿部&井上カップルオチなら
キッドは笑います。
共演はしてませんが
「救命病棟24時」では松雪(第二シリーズ)の女医
井上(第三シリーズ)の患者ですれちがい
伊藤は第二シリーズでは研修医でしたね。
ま、井上としては悪くない演技をしているし
これは脚本井上の問題で
それほど傷にはならないのでは・・・。
井上&井上はなかなかオツなので
キッドは後半の巻き返しに期待してます。
投稿: キッド | 2007年8月17日 (金) 17時24分