純情可憐と混浴。(相武紗季)VS厚顔無恥と御御御つけ。(蒼井優)
御味噌汁のことをおみお付けと最近は呼ぶ人は少ないと思うが・・・キッドとしては発達障害的なこのくどさが好きなのだった。つまり、みそ汁のことを「つけ」とも呼ぶのだが・・・これに丁寧語としての「お」をつけて「おつけ」・・・で「おつけ」が馴染んでしまい・・・もっと丁寧にしたくて「み」をつけて「みおつけ」、「みおつけ」が馴染んでしまい・・・さらに丁寧にしようとして「おみおつけ」である。漢字で書くと「御御御つけ」になるこの・・・ある意味頭の悪い展開が「粋」なのである。
ある意味・・・究極のおもてなしの心の言語化なのである。
おせん(蒼井優)が「よっちゃんさん」と言うのと同じで・・・さらにおもてなそうとすると「よっちゃんさん様」になるのであり・・・ニュアンスとしてはちょっとおちょくりというか・・・慇懃無礼というか・・・蔑みがまじっていくところがこの重ねる面白さなのだな。
と・・・このように・・・なかなか・・・刺激的な内容の「おせん」なのであるが・・・視聴率的には苦戦なのであった。
火曜日のドラマ対決は①「絶対彼氏」↗15.1% ②「おせん」↘*8.7% ③「無理な恋愛」↘*6.9%
「ごくせん」「篤姫」と「おせん」「無理な恋愛」に横たわる壁を分析することはなかなかワクワクする作業だが・・・時間不足で無理なのが残念だ。
で、『絶対彼氏・第三回』(フジテレビ080429PM9~)原作・渡瀬悠宇、脚本・根津理香、演出・佐藤源太を見た。砂糖菓子のようなスイーツな女の子の心は・・・いつも甘い甘い夢を見ている。そこには大切な三点セットがある。自分に忠実な下僕。ちょっと意地悪な友達。そして運命の王子様である。
運命の王子様は・・・不運な場合が多い。なぜなら・・・女の子が本当にお嬢様だったり、抜群の器量よしだったり、成績優良・健康発育だったり・・・する場合は少ないからである。バランスなのである。夢だってつりあいが大切だから・・・そのために王子様は追放されていたり、カエルにされていたり、かかしだったりするのである。
創司(水嶋ヒロ)が御曹司でありながら・・・兄に虐待されて不遇なのは彼が「王子様」候補だからである。
ちょっと意地悪な友達は・・・時には「悪い王妃」だったのする。「継母」も定番だ。これは友達母子の原点なのだな。で・・・今回は美加(上野なつひ)である。その行動は・・・常軌を逸しているが・・・実はひどく常套手段で無理がないのである。もう馬小屋で寝かせるし、毒リンゴ売りつけるレベルだ。
そして・・・実はナイト(速水もこみち)に・・・工夫があるのだな。彼は「ロボット」なので・・・奴隷・・・忠実な下僕なのだが・・・「恋人型ロボット」なので擬似王子様でもあるのだ。
夢見る女の子である梨衣子(相武)は戸惑いを隠せないのである。
梨衣子は「ナイトは人間ではない」と主張する。「人間」でない「機械」のやることに一々激しく反発する。イライラするのである。なにしろ・・・相手は「理想の彼氏」なのである。そして・・・「ナイト」の裸を見ると「きゃーっ」と言ったりするのである。「人間でない」のに・・・。
それが・・・女の子と言うものなのだな・・・。
ナイトは「忠実な下僕」と「運命の王子様」のハーフである。
自動的に物語は二つのゴールを持つことになる。一つは「忠実な下僕を犠牲にして運命の王子様と出会う」・・・一つは「忠実な下僕が運命の王子様に生まれ変わる」である。
そのどちらもほろ苦いハッピーエンドであり・・・だから欲張りな女の子心を満足させるためには永遠に二つのゴールの間を彷徨うという手もあるわけだ。
梨衣子「どうしてロボットなのに嫉妬するのよ?」
ナイト「だって・・・梨衣子の設定でしょ・・・ちょっとヤキモチ焼きな彼氏」
このギャフンな展開は因果応報なのだが・・・アンケートをその場のノリで書く気まぐれな女の子がしっぺ返しをくらうというドタバタでもある。
まあ・・・そういうことはよくあることだ・・・100回のデートで99回遅刻してくる女の子が相手が一回遅刻すると「絶対許さない」なんてことは常識であり・・・なにしろ・・・女の子にとっては自分が遅刻するのは細かいことで・・・相手が遅刻するのは「信じられないほどの裏切り行為で巨悪このうえなし」なのである。
ま・・・人と場合によりますでしょうが・・・。
とにかく・・・そういうわけで・・・この御伽噺は・・・ストレートに面白いのである。
そして・・・次から次へと繰り出されるナイトの「試作機」ならではの問題点。
「キスをしたら・・・初期化されて・・・別の女の子のものに・・・」って「回収されて・・・記憶がなくなったら・・・可哀想って・・・思った私の思いやりの行き場なしじゃん・・・復元してちょうだい・・・今すぐ・・・データ・・・サルベージして復元してちょうだい」なのであった。
二人の王子の物語が同時進行というのも・・・シュガーベイブたちの心にとろりとしみこむのである。
で、『おせん・第二回』(日本テレビ080429PM10~)原作・きくち正太、脚本・神ひとえ、演出・南雲聖一を見た。一方・・・女の子が許せない存在と女の子が憧れる存在は紙一重なのである。とにかく・・・蒼井優版のおせんは・・・若くて可愛くておしゃれのセンスが抜群で老舗料亭の箱入り女将でしかも・・・愛情のこもった御味噌汁を手間暇かけた上に手早く作ってしまう・・・タイトロープである。もう反発爆発のギリギリを渡っているのだな。
しかも・・・不気味な覆面脚本家だ・・・まあ・・・限りなく「ニコロボ」の香漂いますけどね。
キッドとしては・・・とにかくメガネッ娘モードを追加して・・・反発爆発を消火するべきだと思うが・・・これがまた火に油を注ぐ可能性があるからな・・・。
さて・・・とにかく・・・おせんのキーワードは「時代」なのである。
ところが・・・この「時代」というのはくせもので・・・危ういのだなあ・・・。
同時にセリフで言うと「思想」もある。おせんの脚本の中でセリフにすると強烈に浮き立つ「時代」と「思想」・・・。無理があるのだなあ・・・。
ともかく・・・キッドが感じた「おせん」の「時代」のここまでの解釈はこうである。
まず・・・前時代は「年功序列型社会」であった。そこでのキーワードは「敬語」だ。
「目上の人(お客様)は敬うのが当然」である。
これに対し現時代は「実力優先型社会」である。キーワードは「タメ口」だ。
「目上の人(お客様)は対等なフレンド」である。
お笑い芸人もかなりの階級社会だが・・・先輩後輩の礼は厳しい・・・同時にお笑いは価値の逆転という主題も持っている。そのために・・・あえて下克上という場合がある。
たとえば・・・タモリとダウンタウンとか・・・タモリとナインティナインとか・・・タモリと爆笑問題を考えてみると・・・本来はものすごく敬語が求められる関係なのだが・・・上が「対等であることで下に追従する」という関係を求めるので・・・あえてタメ口になっていくのである。
もちろん・・・その一点だけが全てではない・・・他にも・・・支配階級の言語である英語のyouが「あなた」「おまえ」「きみ」「てめえ」「なんじ」「あんた」「あなたさま」などのニュアンスの差がないと信じられる・・・というような要素もある。
ともかく・・・「若い奴が口のきき方をしらない」のと「いい大人がきちんと注意できない」のが複合して・・・身分関係が崩壊した・・・虚構世界というものが出現しているのである。
その象徴が・・・よっちゃん(内博貴)のセリフだろう・・・キッドなどは雇われ職人が主人に対して敬語を使わない・・・という時点で異次元空間なのだか・・・もはや・・・そういう時代なのだという・・・気分がおせんにはあるらしい。
母の千代(由紀さおり)は「あんな・・・職人として心がけのコの字もない・・・ヤクザでクズでゴミでカスなんて・・・ダメ袋に包んでとっとと捨てちまいなっ」とアドバイスするのだが・・・。
おせんは「・・・もう・・・よっちゃんさんとかを捨てたら・・・人材不足になっちまうんです・・・そういう時代なのでありんす・・・」と言うのであった。
これは・・・まあ・・・ありとあらゆる職場・・・ありとあらゆる現場で・・・次々に送り込まれてくる「ゆとり世代」の人材に対する・・・悲鳴にも似た・・・正直な感想なのかもしれません・・・。
もちろん・・・千代もバカではないので・・・ため息つきながら・・・「面の顔の厚いのだってトリエと思うしかないのかもねえ・・・それだって才能だものねえ・・・」と機転を働かせるのであった。
まあ・・・江崎ヨシ夫が「グリコ」でなく「よっちゃん」だったり・・・帳場係でなくて板前見習いだったりすることに・・・なんとなく・・・力関係とか・・・違和感を感じる人も多いと思うし・・・それが生む不自然さに・・・グダグダになっている部分もあり・・・視聴率はそれを端的に示しているのであるが・・・「ニコロボ」のよっちゃんゲストでよっちゃん先輩後輩だったりして・・・ちょっと面白かったりもするので・・・キッドは気にしない・・・。
そういう意味で罰ゲームのようなキャラクター設定を・・・よっちゃんさんは中々・・・見事に演じているような気もする。
キッドにとっては・・・機知外にしか見えないキャラクターだが・・・時代的には標準的なキャラクターなのかもしれないのである。まあ・・・正気と狂気のボーダーがどんどん曖昧になっていくのが・・・複雑系社会というものでございますからね。
「褒められてうれしい・・・そのうれしさをお返しする」これがよっちゃんにもできるようになりますように・・・と願うおせん・・・キッドはその谷間は意外に深いような気もするし・・・そうでありながら・・・未来はそれを飛び越えて作っていくしかない・・・というのも分かります。
まあ・・・昔で言うと・・・よっちゃんさんは老舗を食いつぶすお嬢についたヒモに一番近いタイプですけどね・・・。
怒りを箸のつまみ食いで表現するおせんとそれに応対する板長・精二(杉本哲太)の細やかな表情・・・渋い・・・。この魅力的な主人と有能で忠実な下僕こそがオールドファッションラブ絆でございますとも。
関連するキッドのブログ『先週の火曜日のレビュー』
木曜日に見る予定のテレビ『バッテリー』(NHK総合)『ラストフレンズ』(フジテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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