あなたからいただいたアドバイス一つ・・・さりげない愛情が感じられました。(上戸彩)
たとえば・・・ハードボイルドは浪花節である。・・・言われても何のことかわからない人は多い。分ってもらうためには①「ハードボイルドとは何か?」と②「浪花節とは何か?」を説明し・・・③「両者にはこのような共通点がある」と指摘するのが基本だろう。
①「タフでなければ生きていけない優しくなければ生きていく資格がない」などと無理難題を言う文学のジャンルがハードボイルド。
②「人の情けにつかまりながら折れた情けの枝で死ぬ」などという女の人生が浪花節である。
③まあ・・・義理と人情の隙間に生じる人間の美学・・・その「言葉」に酔うところが・・・ハードボイルドと浪花節の相似性なのである。
・・・まあ・・・完全に失敗に終った説明の後でなんだが・・・「ホカベン」の視聴率が↘*6.3%で「爆笑レッドカーペット」が19.3%である。ハードボイルドだなあ~。そして浪花節なんだな~。
とにかく・・・「ホカベン」は限りなく傑作に近い失敗作として・・・なかなかに含蓄のある作品だと思う。
で、『ホカベン・第四回』(日本テレビ080507PM10~)原作・中嶋博行、脚本・阿相クミコ(他)、演出・吉野洋を見た。世の中というのは「冬の色」に染められているものだ。もちろん・・・冬にだって・・・クリスマスツリーのイルミネーションとか・・・一面の銀世界とか・・・鮮やかな色合いや濃いコントラストはあるが・・・おおむね・・・それはくすんだ灰色である。
影は薄いのである。で・・・日常というのは・・・くすんだ灰色なのだ。日中首脳の合意も灰色だし・・・高級料亭の高級感も灰色だし・・・納税力のない高齢者に高級官僚が長生きしてもらいたいと思っているのかもどうかも灰色だ。
そういう日常の灰色さ加減から逃避するために・・・ドラマは色鮮やかであることが求められたりする。たとえば「ごくせん」は「流血一筋20%」だし、「篤姫」は「青春一筋20%」なのである。
しかし・・・そういうドラマばかりだと逆に鮮やかすぎて目立たないっという事態が生じるのである。・・・そういう時・・・人はふと誘惑にかられるのだな・・・この原色満開の中で・・・一人だけ「灰色」だと逆に目立つのではないか・・・そして・・・大抵は単に埋没するのだ。
それが・・・「ホカベン」である。
大手の企業組織である弁護士事務所「エムザ」・・・その弱者救済社会奉仕部門である「プロボノ」に就職した新人弁護士・堂本灯(上戸)の苦闘を描く・・・このドラマ。
すでに・・・灯の立場がお茶の間にものすごく届きにくい。
「弱者救済を主張するのに・・・なぜ大手事務所に・・・」
「激しい競争を勝ち抜いたエリートのくせに・・・なぜきれいごとばかりを・・・」
「同僚や上司に対しては妙に強気なのに・・・なぜ現場ではおどおど・・・」
ヒロインが・・・ものすごくかっこ悪いのである。そのかっこ悪さがいい・・・のだが・・・現実にはありえないストレートさでほどほどの高視聴率を獲得した「斉藤さん」のワクなのである。これは・・・相性悪いよね・・・きっと。
灯は孤独な女だ・・・。母子家庭である。彼氏がいないのはまだしも・・・女性主人公のドラマには絶対つきものである・・・女友達が登場しない・・・プライベートは・・・なんだかちょっと頭の緩い母親とペットの犬と仏壇で支えられている。・・・ただでさえ・・・特定宗教団体との関連でバッシングされている女優にこの設定は・・・酷ですよ。
もちろん・・・百恵なら許されるのだ・・・では百恵にあって・・・彩に一番不足しているものは・・・何なのか・・・それはヒット曲であるが・・・ないものねだりはやめにして・・・前回も書いたが・・・・それは・・・トーンの抑制だと思う。
彩の声のキーはややハイの傾向があり・・・それは結局ハイ・トーンを形勢する。やや甲高い印象を誰もが持ち・・・CMではその元気の良さが売りなのである。
ところが・・・今回のドラマではそれが完全に裏目に出ているのだ。
演技プランとしては次の三点の使い分けが有効だと思える。
①自宅 早口で甲高いいつもの基本的な上戸(くつろぎ)
②オフィス 早口またはゆっくりとした口調で低音を意識する(緊張)
③見せ場 ゆっくりとした口調で高音域を意識する(興奮)
現在の「叫び」と「つぶやき」の変化だけでは・・・このドラマの持つ深みを表現できないのだ。
例としては①現場で遭遇する困難に対しまったく無理解な母親に明るく楽しく「まったくお母さんは呑気でうらやましいよ・・・」
②職場で面倒見の悪い上司にどうしてもアドバイスをしてもらいたい場合・・・低くせっぱつまった感じで「それでは・・・私は・・・どうしたら・・・いいのですか」
③最悪の依頼人に捨てゼリフ・・・はっきりとゆっくりと大きな声で「私は・・・あなたなんか・・・大キライだっ」
・・・まあ・・・そういう演技でもう一度・・・見てみたいのです。
今回の依頼人は・・・借金返済に追われる無職のイケメン男性・佐々木(黄川田将也)である。イケメンだが・・・ちょっと発達障害のところがあり・・・悪い女に騙されても気がつかないという分りにくいキャラクターである。
杉崎(北村一輝)のトラウマに関係する謎の男(大倉孝二)なのだが・・・キャスティング的には逆の方が分りやすかったと思うぞ。
でも・・・そうなると影で糸ひく悪女・美香(入山法子)で「ジョシデカ」臭が強くなりすぎ・・・ですけどね。
とにかく・・・借金男が・・・灯に自己破産のアドバイスを受け・・・免責を勝ち取り・・・しかし破産者名簿によって就職に失敗・・・灯を弁護過誤で訴えると恐喝・・・その裏に悪女・・・さらに借金を重ね・・・また灯にすがる・・・というどうしようもない底辺の人々の展開。
それにイケメンなのに女に手玉にとられるという分りにくさは邪魔だ。
なにしろ・・・今回の善玉は・・・灯を殴って「刑法204条によって傷害罪に問われる」ことになったチンピラとすべてを飲み込んで依頼人の借金をチャラにしたチンピラの兄貴分なのである。
さらに言えば・・・ここが一番の見せ場なのだから・・・新人のためについ手が出てしまったチンピラの演出はもう少し丁寧にするべきだったと思う。兄貴の教育的指導の清々しさとかもお茶の間には伝わらないのでは・・・と危惧するのである。
まあ・・・ヴェテランの演出家のせいではなくて・・・脚本とプロデュースのツメの問題の方が大きいと推測しますけど。
とにかく・・・お茶の間の好む勧善懲悪で言えば・・・①拳銃不法所持までしているヤクザが一番善良だ ②返済能力もないくせに借金を重ねるバカな男が救済される ③男からお金を巻き上げた法学部学生兼夜の女が丸儲けである・・・などと受け入れがたい結末なのである。
さらに言えば・・・借金男を封じ込める渉外担当弁護士のりょうも恫喝っぽいし・・・「暴力団相手の時はなにもしないことだ」というアドバイスももう一つ難解なのである。目標は「相手に手を出させる」ことなのだから・・・暗黙の了解のおしゃれさよりもお茶の間に「灯はどうやって相手になぐられようとするか」を期待させた方がサービス感が生じるはずだ。
とにかく・・・まあ・・・いろいろと・・・問題があるのだが・・・とにかく・・・「本当は優しい」上司によって「やればできる子の」灯はまた一つ・・・大人の階段を昇ったのである。
いつでもあなたが悲しい時は・・・私もどこかで泣いています・・・的な先輩・後輩なのであるが・・・杉崎の事件の前フリは必要がないような気がしてならない。
杉崎の行動はそれほど不可解なものではないからな・・・。杉崎と灯の心が通い始めた段階で杉崎の過去の事件に触れ始めた方がずっと見やすいと思われる。
まあ・・・悔やんでももう遅い・・・のはいつものことですが・・・。
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ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
ありゃ?キッド様
私はてっきり今回
「ぶちましたね。これは刑法204号傷害罪です」
ってところに反応するかもと思ってました。
ちょっと残念です~。しくしく。
投稿: みのむし | 2008年5月 9日 (金) 13時13分
闇金が弁護士に暴力振るったらオシマイ
ボスが知っているのであれば
当然の事ながら部下に対しても
周知・徹底されているはずなんですけどねぇ。
これって原作ですよって言えばそれまでなんですが
どうも今の時代と比べるとちょっとネタが古いですかね。
自己破産は自分の借金を簡単に清算してくれる便利な法律と
認識してるとこがあるみたいですね。
こういうのは
黒電話を今まで使っていた人が携帯電話を使う事で便利さを知り
最初から携帯電話を使ってる人はその恩恵が分からない
その部分の差がこういう認識を生んでいくんでしょうね。
そういう点ではなかなかに面白かったんですがねぇ。
全体的に見るとどこか・・・惜しいです(; ̄∀ ̄)ゞ
投稿: ikasama4 | 2008年5月10日 (土) 01時06分
*simple*life*みのむし様、いらっしゃいませ*simple*life*
ふふふ・・・
オチを「大キライ」にとるか
「ぶったね」にとるか
悩ましいとこでしたが
今回は技巧的なことに注文をつけたかったので。
冒頭「予知夢」としての「悪夢」があり
どことなく霊的要素のただよう脚本。
そういう・・・見当違いのこだわりでは
なくて・・・きちんとドラマの核心に
触れてもらいたいとじいやは思うのですねえ。
今回は上戸が「ぶたれる」ことにより
法的勝利をおさめるのが
ポイントなので
その「ぶたれ方」が問題です。
あんなに簡単にぶたれたのでは
面白くもなんともないのでございます。
あそこはチンピラも用心していたのに
つい手がでてしまう・・・という仕掛けがなくては。
そして・・・もっとボコボコにされなくては。
上戸がボロボロの血まみれの裸同然なのに
クラインアントが借金チャラになって
「やった~」とヘラヘラしているぐらいが
面白いのに・・・と勘考つかまつるるる。
投稿: キッド | 2008年5月10日 (土) 08時01分
✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥
でございますよねーっ・・・。
原作のアレンジを男を女に変えてホイホイ・・・
というあたりが・・・いつも気になるところです。
黒沢明の「用心棒」では
三船敏郎がギタギタにされて・・・
そこからが核心に入るわけです。
ちっ・・・
手を出してしまったのなら
しょうがねえ・・・
こうなりゃ一発なぐるも
二発なぐるも一緒だ
お前たち・・・やっちまいなーっ
という想像を満足させる展開が欲しかったですねえ。
もうアニキ分があずみを見ていて
ファンだったとしか思えない・・・
上戸彩オチ・・・。
しかし・・・まあ・・・
ドラマとしては許容範囲です。
今回もいくつかのショットが
「ああーっ百恵ちゃんだ」
という主人公・・・。
セリフでガックリくる落差が
逆に可哀想なほどです。
もちろん・・・何処までいっても
上戸彩は上戸彩なのですが
過去の人のワザを盗むのも大切なのに・・・
と毎回毎回思っています。
「存在しないことをイメージする」
・・・まあ・・・
そういうことができない人に限って・・・
無理な借金してしまうものなんで
ございますよね・・・。
いろいろな意味で残念です・・・。ヽ('A`)ノ
投稿: キッド | 2008年5月10日 (土) 08時13分