夕暮れの街の中・・・私は迷子になりそう。(上戸彩)
・・・フィナーレの前編である。
前回から今回の間に・・・秋葉原・日曜日の惨劇があって・・・どんなドラマも色褪せてしまう勢いなのだが・・・このドラマの場合・・・すでにかなり退色していて・・・ほとんど透明に近くなっている。
ある大学教授が「この犯罪を・・・善悪の判断能力や・・・殺人の是非・・・などでアプローチすれば解読を誤る」と述べていた。また「自己顕示というありふれた言葉では示しがたい・・・有終の美を飾るような・・・最後の一花を咲かせるような・・・思いがあったと考えられる」とも語っていた。
これに対し・・・意見を求めたニュースキャスターは「共感できない」と不快感を表情で示していた。
別のコメンテーターは「犯人はあまりにも的確に自己分析をしすぎた・・・そんなことをしても得にならないのに」と述べた。
とにかく・・・社会の底辺でひっそりとうずくまっていた人間が「時の人」になったのである。
もちろん・・・この犯人に共感する人は多いはずだし・・・同情する人も多いだろう。しかし・・・そういう発言を公式にできる人間はけしてそういう発言をしないのである。・・・あまりにお得でないからだ。
なにしろ・・・まったく偶然に命を奪われた人間が七名もいて・・・それぞれに突然・・・家族を失った遺族の皆さんがいるわけで・・・とてもじゃないが・・・犯人を肯定する方向に言動することはできないのである。
しかし・・・「彼」が「自分」を分析したように・・・「世間」も「彼」を分析せずにはいられない。
キッドは「しでかしたなぁ・・・」と思うのだが・・・そういう言葉を使うことにもいささか躊躇する。
しかし・・・「彼」が・・・土浦の無差別殺人を想起したように・・・次なる模倣犯出現は否定できないので・・・「でかけるときは忘れずに・・・」ということは言えるのである。・・・交差点では青信号でも安心してはいけないし・・・背後は時々振り返らなければならない。どんなに「彼」を否定しても・・・世界の受けた打撃は大きいのだ。その証拠に今週の秋葉原の歩行者天国は中止だ。ニューヨークでも「規制緩和が日本の安心を破壊した」と報道されるのである。経済的なマイナス効果は計り知れないのである。
自社のカメラマンが現場を抑えた日本テレビは万歳しながら誘惑的な映像をリピートする。
ある評論家は・・・警官の打撃により額に巨大なたんこぶを作り・・・惨めに逮捕される姿を示すことは・・・予備軍に対して抑制力があると言う。
しかし・・・「どんな姿であれ・・・無視されるより・・・見つめられたい」と願うものにとってはまったくの無意味であろう。
人々は膨大な虚しい言葉を積み上げる。「彼」を裸にしようとあがく。「彼」のすべてを知りたいと願う。
まさに・・・「彼」は何かを成し遂げている。もちろん・・・それはこういう底辺でひっそりとうずくまったメディアだから言える言葉である。たとえば・・・世界新記録を達成した水泳選手と・・・「彼」を同じ次元で語ることさえ憚りつつできるのである。それはニュースの構成を見ても明瞭だ。「加藤」「加藤」「北島」「加藤」である。
少なくとも・・・「彼」を一切肯定しないワイドショーは・・・彼の夢を実現させ・・・「彼」でほぼ独占されているのである。
とにかく・・・キッドは「彼」はフィナーレの前半を「ホカベン」より華やかに実行したと感じてしまうのだった。たとえ・・・拘束された「彼」が・・・すっかり後悔し始めているとしても。
で、『ホカベン・第9回』(日本テレビ080610PM1030~)原作・中嶋博行、脚本・秦健日子、演出・佐久間紀佳を見た。これまでも何度か書いたことだが・・・すべては肯定から始まる。たとえば存在である。「ある」のである。「生きている」のである。「問題がある」のである。もちろん・・・「改善」などの場合・・・「現状の否定」が必要になるわけだが・・・この場合も「現状」があり、「現状の否定」があるのである。
そういう意味ではキッドは「ホカベン」を肯定します。
そして・・・「ダメ」とか「死ね」とか「劣った」とか「弱い」とか「悪い」とか「幼い」などの否定的な態度を克服しようとするわけです。しかし・・・もしも「彼」が幼いなら・・・「ホカベン」も幼いと思うし・・・「彼」が「道を誤った」のなら「ホカベン」も「道を誤っている」と考えるわけです。
ケンカして泣きながら誰かと別れて帰る道は・・・悲しいつらい道だよなあと思いながら。
さて・・・優秀すぎる弁護能力で・・・「婦女暴行犯」という憎むべき犯罪者の罪を軽減し・・・そのために・・・被害者を自殺させてしまった杉崎(北村)はそのショックで自我が崩壊し・・・そのトラウマから・・・正常な判断力を失っています。
彼は優秀な自分と・・・罰せられるべき自分に分裂し・・・覚醒していても夢を見ているような状態なのです。
しかし・・・非常に知能が高いので・・・危うい精神状態を抱えたまま・・・弁護のプロとして社会生活をするという離れ業を演じています。
新人弁護士・堂本灯(上戸彩)が信じられないほどの苦境に会うのは全てこの限りなく発狂者に近い上司の部下だからだったのです。
・・・なるほどそうだったのか。
しかし・・・ついに・・・彼にも限界の時が訪れました。
「苦しい・・・苦しい・・・ボクはいい子だったのに・・・すごい弁護士になれたのに・・・仕事も生活もバッチリだったのに・・・ボクは何にも悪いことをしていないのに・・・あの女の人が自殺なんかしたりして・・・まるでボクが殺したみたいに思えてきて・・・人は死ぬの・・・死体は冷たくてこわいの・・・筋肉が弛緩すると体の中の汚いものが・・・ドンドン流出するの・・・すごくいやな匂いがするの・・・それが・・・ボクのせいに・・・ボクが悪いことしたみたいに・・・ボク自身がそう思うの・・・イヤだ・・・イヤだ・・・自分で自分を責めるのはイヤだ・・・どうして・・・どうして・・・弱い奴・・・悪い奴よりも・・・いい子のボクが苦しめられるの・・・分ってる・・・それは社会が悪いからだ・・・悪い奴が多すぎるんだ・・・仕事のできない警察官が多いから・・・犯罪者は野放しになるし・・・政治家が変な法律作るから・・・悪い奴が許されちゃう・・・ボンクラな裁判官は悪い奴らを見逃しちゃう・・・ようし・・・ボクがそういう奴らをやっつけちゃうよ・・・ボクがそういう奴らの罪を背負って・・・十字架にかかっちゃうよ・・・ボクが罪を背負って・・・世の中のすべての犯罪を撲滅するのだ・・・あはは・・・こんなこと・・・他の誰にできる・・・ボクが重力に縛られた悪しき人類を粛清するのだぁぁぁぁぁぁぁ」
まあ・・・ある意味ものすごい精神年齢の低い正論ですが・・・
これをこれだけまくしたてる脚本家の精神年齢の低さが・・・う、撃たないで~。
もちろん・・・ヒロインは灯ですから・・・。
女の子の胸の中・・・なんにも分ってくれないの・・・と春風のいたずらのような上司の心にガツンと一発入れてくれるはずです・・・入れないのか・・・まあ・・・前編だからな。
ところで・・・上司は最後に上戸に二つのアドバイスをします。
一つは「質問して答えが得られるのは小学生までだ」
二つは「オレに構うな」です。
キッドはこれは順番間違いだと考えますね。
「一つ目はなんですか?」「オレに構うな」「二つ目は?」「質問するな」が
「流れ」としては「正解」です。こういう点ひとつとってもこの脚本家の適正が・・・う、撃たないで~。
まあ・・・とにかく・・・どうやら・・・「法曹界を粛清するために」・・・原告と被告が手を組んだ出来レース展開。不破(勝村政信)は「私はあなたには興味がない・・・」と工藤(りょう)を完全否定・・・「あなたには興味津々だ・・・」と灯をいやらしい目で見るのだった。・・・違うと思うぞ。
さらに弁護士が敵対弁護士を暗殺という・・・稚拙な妄想展開。
そして「裁かれたい被告」杉崎と「裁きたくない原告側弁護士」灯のアクロバットモードに突入。
もう・・・この脚本家は・・・自分の腕前に酔いしれることだけがしたいのだなあ・・・。
寒いわ・・・寒いわ・・・寒いわ・・・。
お茶の間の胸の中・・・少しも察してくれないのであるな。
来週が・・・こわいわ・・・こわいわ・・・こわいわ・・・・。
こんなとき・・・佐藤嗣麻子(アンフェアの脚本家)にいてほしい・・・。
関連するキッドのブログ『第8話のレビュー』
金曜日に見る予定のテレビ『パズル』(テレビ朝日)『Around40・注文の多い女たち』(TBSテレビ)『キミ犯人じゃないよね?』(テレビ朝日)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
何がなんだかさっぱりわからなくて何度もリピしましたわ。
デッキが壊れそう><
灯は敵対しちゃうのね。十字架を背負った杉崎公認で。
杉崎は理想を言ってくれたけど灯にそこまで期待していいのかしら?
でも灯の流儀は間違ってないとエリも肯定します。
で、今回は杉崎の部屋にしおりがいたことが一番の
ポイントだったと(笑
それしか見るところがなかった気がします。
投稿: エリ | 2008年6月12日 (木) 13時06分
✿❀✿❀✿かりん☆スー☆エリ様、いらっしゃいませ✿❀✿❀✿
ふふふ・・・お嬢様・・・
新型デッキをご用意しました。
自動リピート方式で
音声認識・・・ご命令いただくと
好きな場面まで
じいやロイドが巻き戻ししますぞ。
とにかく・・
もう・・・
奇想天外な展開でございますね。
まあ・・・この脚本家としては
いつものことですが・・・
まあ・・・灯たちは
最後まで人権擁護的弁護士の
本流を進み・・・最後は
プロボノメンバーで独立・・・
というところでございましょう。
とにかく・・・話としては
杉崎はモテモテということでございますね。
工藤、しおり、灯の
三つ巴になりますと・・・
杉崎好色一代男の巻になってしまいますね。
伊佐山ひろ子やかとうかず子なんかも
全部・・・杉崎にメロメロで・・・。
中村麻美(自殺した娘役)なんかも
加わるとにぎやかでよろしいのでございますよね。
まあ・・・もう・・・
まったく違うドラマでございますが・・・。
とにかく・・・じいめにとってお嬢様が
ご覧になっているのだけが
救いのドラマでございますよ。
投稿: キッド | 2008年6月13日 (金) 15時57分
OLがストーカーに殺害された事件を引用して
ストーカーの相談をまともに取り合わなかった
警察の罪を問うべきではないかと
このドラマでは言っておりましたが
秋葉原の事件の場合では
全てを他人のせいにする犯人の思考にたいして
先ほどの思想を適用するならば
どこまで適用するのかが問題になりそうです。
小説「手紙」の主人公も
この理論を適用すれば裁かれる可能性が高そうです(苦笑)
自分がやろうとしていた思いとは別に
現実はあらぬ方向へ流れていくものですからね。
そういう意味では最後で妄想が過ぎました。
WOWOWでの「パンドラ」と比べると
月とすっぽん、天と地の差があります。
とりあえず個人的には
倉木に泣きすがる杉崎を見たかった
ここが特に残念でなりません(笑)
投稿: ikasama4 | 2008年6月14日 (土) 12時53分
✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥
まあ・・・世界をどうととらえるかというのは
作家にとって重要なポイントなのですが
この脚本家は
いつも頭のいい小学生くらいの
世界観で勝負です。
警察にだっていじめっこはいるはずだ。
先生にだっていじめっこはいるはずだ。
鉄板焼き屋にだっていじめっこはいるはずだ。
弁護士にだって・・・。
なのです。
まさにいじめられっこの被害妄想が
大人になった感じ。
グリンピースで捕鯨船に危険物を
投げる人たちの匂いがします。
まあ・・・たまに
そういう人だって存在自体が面白いときがありますけど。
なぜか・・・スタッフがそこに同調して
ずーっと繰り広げられると
魅力的なキャストの皆さん・・・
たまったものではありません。
ただし・・・オレザクの場合・・・
もはや・・・シャアごっこという
独特な世界に没入しているので
キッドとしてはそこだけは
素直に堪能しております。
もう・・・誰がナナイで
誰がララァ
誰がハマーンで
誰がクェス・・・。
甘えん坊だからな・・・甘えん坊さんだから・・・。
投稿: キッド | 2008年6月15日 (日) 10時57分