・・・さて・・・「篤姫」と「Tomorrow~陽はまたのぼる」の二本立てである。
・・・これはかなりハードでございますっ。
とにかく・・・「Tomorrow」は「ハタチの変人」「佐々木夫婦喧嘩」「猟奇的な筋立て」と三本続いた大失敗にくらべたら・・・ものすごくまともなドラマである。
まあ・・・現場では・・・何か・・・すごいことをしたい・・・と思いついたり・・・思い込んだり・・・思いつめたりするのだが・・・それが変な方向にいくということはありえる。しかし・・・仏の顔も三度まで・・・なので・・・さすがに普通に作る気になったらしい。
素晴らしいこと・・・というのはいつもすぐ側にあるものなのだ。もしも・・・また変な方にいきたくなったら・・・日曜劇場のスタッフはモーリス・メーテルリンクの「青い鳥」を読むべきだと思う。
で、『Tomorrow~陽はまたのぼる~・第一回』(TBSテレビ080706PM9~)脚本・篠崎絵里子、演出・山室大輔を見た。「家族~妻の不在・夫の不在~」(2006年・テレビ朝日)以来の竹野内豊である。この時は妻・石田ゆり子でした。
竹野内の相手役(ヒロイン)を連続ドラマでふりかえると・・・「輪舞曲」チェ・ジウ、「瑠璃の島」成海璃子、「人間の証明」夏川結衣、「ヤンキー母校に帰る」相葉雅紀・・・じゃなかったSAYAKA、「サイコドクター」市川実日子、「できちゃった結婚」広末涼子、「真夏のメリークリスマス」中谷美紀、「氷の世界」松嶋菜々子・・・まあ、前世紀に入ったのでこのあたりにしておくか・・・なんていうか・・・バラエテイーに富んでいるよなあ・・・。
で・・・今回は菅野美穂なのである。菅野はここのところ・・・「働きマン」で失恋、「わたしたちの教科書」で離婚、「あいのうた」で自殺未遂、「愛し君へ」で死別・・・もういいか・・・とにかくろくでもない人生の役ばかりを演じてきたのだった。なぜだ・・・なぜなんだ。
ともかく・・・今回もバツイチである。そして・・・竹野内は元医者の市役所職員というある意味・・・ドロップアウトしたポジションなのであった。このあたりの設定が考えようによってはちょっと危険な匂いがする。・・・つまり・・・狙いすぎている・・・ということなのだが・・・ともかく・・・第一回は・・・なんとか・・・逃げ切った・・・。
「深刻な社会問題」がテーマである。キッドは「氷の世界」の竹野内と・・・「あいのうた」の菅野をあえてあげたのだが・・・それはこの二人が「普通の人」役だったからだ。今回は「普通の人」が「普通でない世界に巻きこまれていく」というスタイルが適切だと思うからである。
さて・・・今回のドラマのもう一人のキーパーソンは遠藤紗綾(緒川たまき)ということになるだろう。とにかく・・・美貌の女優なのに・・・「トリビアの泉」で「ウソつき・・・」と締めるぐらいしか露出がなかった不思議なポジションである。映画「静かな生活」(1995)からほとんど変わらぬ美貌なのもなんとなくスーパーナチュラルなのである。恐ろしいのでこれ以上の言及はさける。
よって・・・「深刻な社会問題」については脳外科医でありながら・・・米国で「経営」を学んできたという遠藤がエキセントリックに撒き散らしていけばいいと思う。
もちろん・・・国家が犯しつつある医療制度のミスを・・・医者で経営コンサルタントの遠藤と・・・元・医師で地方公務員である市民窓口課の森山(竹野内)がタッグを組んで・・・悪戦苦闘するというのは問題ない。
ただし・・・森山の過去の記憶や・・・再生の問題などはよほどの計算がない限り・・・かなりムダな要素になるだろう。
少なくとも・・・「変な医療制度のせいで医者が犠牲になる」という遠藤の言葉が森山の過去にリンクしていなければ・・・ということです。単なる医療ミスだと・・・ドクター・コトーには負けると思うので。つまり・・・主人公の情けなさでです。ああいう・・・情けない役は北の国出身の鬼太郎にまかせておけばいいのです。
もちろん・・・竹野内も挫折した男は得意分野ですが・・・もう・・・そういうのはいいのではないでしょうか。しかし・・・まあ・・・とにかく・・・もう挫折しているのでそれ以上は言いませんが・・・このポイントは程々がいいと思うのでございます。
さて・・・「地方行政」の問題です。舞台となるのは伊豆地方を思わせる海辺の地方都市・西山室市(架空です)・・・夏祭りの準備に忙しい市民たちですが・・・活気にはとぼしい。どんつく祭りなのに凛々しくないのです。ちょっと恥ずかしい巨大なナニも見当たらないようですし・・・。かってリゾート開発計画に乗らなかった後悔というようなものが市民の間に漂っています。
しかし・・・人々の暮らしは平穏そうにみえていた・・・。
市役所で大学生の妹(黒川智花)のために戸籍謄本をとりにきた愛子(菅野)と市役所の職員・森山との出会いも出会いがしらの衝突というトーストをくわえていてもいいぐらいののどかさです。
森山はスクーターで通勤。愛子は自転車で来訪。二人の経済格差・・・エコ格差も微々たるものです。
挫折した市役所職員(37)とバツイチの看護婦(30)。ロマンスの発生としては手頃でございます。
しかし・・・この時・・・二人の女の闖入者が・・・二人の運命を大きく変えようとしていたのです。
一人は・・・1999年・・・森山の運命が大きく変わった8年ほど前にこの街を出て行った安田涼子(大沢あかね)・・・美容師だった彼女は妊娠9ヶ月・・・一人で出産するために産み場所を求めて故郷に帰ってきたのでした。
森山は涼子の母親・早苗(松田美由紀)とは顔見知りですが、彼の挫折の前に街を出て行ったために涼子とは面識がありません。
市の招いた客の歓迎のために駅に出向いた森山は電話ボックスで倒れ苦しむ涼子とともに救急車に乗りこむ羽目になります。
そこで・・・平穏に見えた市民生活が実は破綻の寸前にあることの兆しが見え始めるのです。
その象徴が涼子の運ばれた「市民病院」で・・・森山と愛子は偶然の再会をします。
しかし・・・それが単なる偶然ではなく・・・運命だったことが明らかになっていきます。
①「病院は涼子受け入れを拒否する」
理由は担当する産婦人科医の不在です。内科医の片岡(田中実)は「30分で産婦人科医が到着する」と食い下がる看護婦の愛子に「その30分の間に何かあったら責任とれるのか・・・賠償金1億円払えるのか」と情けないことを言います。
しかし・・・ここに市民病院の建て直しのために「市」が招聘した経営感覚のある医師・遠藤が到着し・・・応急処置を受け入れてもらえるのです。
②「救命はするが分娩はさせない」
家出同然に故郷を捨て未婚の妊婦として帰郷した涼子は・・・分娩の病院が未決定でした。都会には身元の不確かな女性を出産させるような産婦人科は皆無だからです。しかし、それは故郷に帰っても同じことでした。涼子は母親に顔向けが出来ず・・・家に帰ることができず・・・公衆電話で出産させてくれる産婦人科を捜すうちにストレス性胃炎を発症し倒れたのでした。
③「市民病院には負債が30億円ある」
原因は医師不足でした。我が国の厚労省はこの春まで「医師は偏在している」という言い方でこの問題を処理してきました。それは「CHANGE」のレビューの中でも簡単に触れましたが「大都市や・・・特定の専門課・・・そして特定の病院などに医師が偏って存在しているだけで医師の絶対数が不足しているわけではない」ということです。
医師も職業で・・・本人は労働者ですから・・・待遇がいいのはうれしいにきまっています。
偏るのは待遇がいいところにあつまるからで・・・自然の理です。
そのために待遇の悪いところに人材が不足する・・・これはある意味困った問題です。
そして・・・厚労省としては待遇の悪さを改善すればいいだけの話として・・・この問題を放置してきたのですが・・・この夏・・・厚労相は「もはや医師不足だ」と前言を翻したのです。ようするに無策だったということです。
④「少子化だから小児科は儲からないし、難しい病気も多いので面倒だ・・・子供を失った親はすごく怒るし、裁判になったりする・・・まして出産はさらに危険である。だからお金持ち相手の専門病院に特化するしか地方の病院は生き残れない」
市の要請で病院再建を依頼された遠藤はこう宣言し・・・病院関係者を唖然とさせます。
親の代から市民病院の看護婦である愛子には聞き捨てならないセリフだ。
「じゃあ・・・商店街の店(開業医)で不足でデパート(大学病院)では贅沢・・・だから地元のスーパー(市民病院)で間に合わせている患者さん(顧客)はどうすればいいんですか」
愛子に喧嘩を売られた遠藤は眼光するどく「じゃ、あんたはホームレス相手に無料奉仕で看護師さんでもやってればあ・・・」とやりこめるのだった。
まあ・・・優秀な看護師の確保は経営戦略的にも重要ですから・・・この発言はどうかとも思いますけどね。
とにかく・・・医師不足で・・・患者を受け入れられず・・・ベッドはガラガラ・・・設備の維持だけで病院は赤字の連続。当然・・・医師への待遇は改善されず・・・医師不足と・・・悪循環に拍車はかかるのである。
人情紙風船である。
もちろん・・・経済は生き物であるから・・・景気がいいときも悪いときもある。そして景気のいい場所もあれば悪い場所もあるのである。工夫でピンチをチャンスに変えることは可能なのだ。楽天だってAクラスになれるのだ。
こうして・・・余所者のドクター遠藤と・・・地元のナース愛子の勝負は開始されたのだった。
この時点では・・・市役所職員である森山は遠藤のお手伝いにしかすぎない。
さて・・・祭りの夜・・・どんつく様のナニが怒張しすぎたのか爆発事故が発生する。
商工会議所の主催とはいえ・・・市役所が無関係であるはずはなく・・・その責任の所在問題も大変なはずだが・・・とにかく・・・負傷者多数の大惨事なのだ。
街を彷徨っていた涼子も爆発に巻き込まれ重傷・・・お守りを目印に森山が発見し・・・またしても市民病院へ・・・。
病院はてんてこまい・・・涼子は気道熱傷で呼吸不全に陥るが・・・医師がいないのである。愛子は気道を確保するために禁断のメスを握ってしまう。この決断で命をとりとめる・・・涼子・・・しかし・・・遠藤がそれを発見・・・「看護婦が医療行為をするなんて許されない・・・」・・・そこで森山がついに腕をまくり桜吹雪を・・・「俺がやった・・・俺は医者だ」と仮面をとるのだった。
脳の損傷治療と帝王切開出産の同時手術展開で母子の命を救う遠藤・森山・愛子・その他チーム。
提供ベースで事故現場での母親の悲痛な叫びはひどかったが・・・熱傷でしゃべれなくなった娘と母親の・・・お守りでつながれた再会の演出は巧である。
これにより・・・ヒロイン看護婦のルール無視、八年のブランクを感じさせない主人公の手際のよさは不問にふされるらしい。
静けさを取り戻した病院の廊下で震え始める愛子。火事場のバカ力が喪失したのである。
その手をやさしく握りしめる森山・・・。もう愛し合ったも同然なのであった。
遠藤VS愛子・森山の構図が浮上してきました。
ここで・・・やめておけばいいのに・・・「俺には資格がない」で引くのか。まあ・・・おそらく心情的なもので・・・医師免許がないわけではないと思いますけどね。
まあ・・・それは普通にやってもいいのだが・・・日曜劇場のここまでの失敗はこの引きの強引さに一因があると思うので・・・ちょっとドキドキします。初回視聴率は16.8%と猟奇的な最終回*7.2%と比較すればまずまずでしたけどね。(つづく)
ごっこガーデン・どんつく祭りセット。お気楽「竹野内さんは格好いいよね。瓦礫の下から救い出すところは救助犬みたいだけどね。どんつく祭りのアレはどこかなあ?」ちーず「あらすじ的にはとてもよかったのです。正しいものと正しいものがぶつかりあう・・・それもまたドラマなのです。どちらがより正しいのか・・・見守りたい・・・」シャブリ「平成財閥医師団長シャブリとしては気になる医療制度問題。掘り下げが肝心なのですけれども。吉田里琴が幼少の七海(黒川智花)らしき人なのでありました。救急隊員は誰が誰やらなのでありましたーっ」みのむし「これはマジに面白い・・・マジオモ。Tをとったらオモロー。近所の病院・・・診療科目がどんどん減少しています・・・マジ恐るるる」翠「そろそろぽぎゃぁぁぁんといきマスかーっ?!」芯「このりんごあめ食べ終わるまで待ってネ・・・」
ごっこガーデン・市民病院の長い廊下セット。mari「航平が救えなかった人は誰・・・航平の大切な人だったのかしら・・・でも病院で泣いていたのが愛子の妹だとしたら・・・航平は愛子のママの愛人・・・そんな・・・それはそうとしてまこちゃんずっとスタンバイしてますよ」ikasama4「まだ新型竹野内ロイドはシルエット段階なのです・・・将軍の寿命が尽きるので・・・ご遺影が急務だったのです・・・ともかく大阪の市民病院の赤字342億円・・・ぶっこきーっ・・・です」
ごっこガーデン・市民病院の短い廊下セット。まこ「ひえー・・・じいやが・・・お呼びしたのですか・・・お忙しいところをすみません・・・もう・・・大好きデス・・・Σ(=∇=ノノヒィッッー!!で震えがとまりまセーン・・・医師免許って有効期限はないのデスでございマスでありまヤンスか?・・・もう少しほのぼのになったらよろしいかと存知たてまつかどまつ十姉妹・・・」エリ「ヤンキー先生でも・・・瑠璃の島のお医者さんでも・・・双子のドクターでもなかった・・・でも航平はもう一度医者になってほしいのyon・・・それはそうと・・・まこちゃん・・・大人しい人に・・・なってまスー」アンナ「本当だぴょん・・・でももうすぐドクターにカムバッグ~とか言い出すぴょん。金にならないので小児科なくすなんてダーの啓太が許しませんぴょんぴょん」
関連するキッドのブログ『家族~妻の不在・夫の不在~』
で、『篤姫・第27回』(NHK総合080706PM8~)原作・宮尾登美子、脚本・田渕久美子、演出・堀切園健太郎を見た。怒涛の純愛ドラマである。もう・・・泣かせやがる夫婦日本一大賞決定であるな。例によってシナリオにそったレビューはikasama4様を推奨します。今回は・・・家定書下ろしイラストついに登場。笑わせてくれる将軍から・・・涙涙の将軍へと華麗なる変身を遂げた家定(池の鯉ではない)・・・。その憂いを含んだ微笑を見事に切り取ったすばらしい出来の作品に仕上がっておりましたーっ。来週の視聴率は・・・どんなことになってしまうのかーっ。龍馬はいつになったら出番がくるのかーっ。
さて・・・ついに1858年に突入。今から150年前ですぞーっ。分りやすい区切りの年です・・・。この年・・・家定は・・・。そして・・・大老・井伊直弼誕生でございます。ほぼ同時に島津斉彬も・・・。これは赤忍者大活躍の年だったということなのです。しかし・・・天才くのいち・篤姫がついていながら・・・なぜこんなことに・・・妄想してまいりましょう。
徳川幕府の大名家はおよそ・・・四種類に分かれる。将軍家に連なる徳川御三家などの特別な親藩。一橋はより将軍家の家族に近い存在だが・・・紀州徳川家などもこれに含まれる。それに順ずるのが松平春嶽などの親藩である。そして・・・井伊直弼などの譜代大名。さらに薩摩藩などの外様大名である。徳川封建制は将軍家による軍事独裁でもあり・・・緩やかな連合国家でもあった。
攘夷か開国かで分かれた天皇家と将軍家。
一橋か紀州かで分かれた親藩・外様連合と譜代・直参連合。
幕末の権力闘争は貿易の利蓮をめぐる闘争だが・・・倒幕維新に至る闘争の複雑さは・・・この攘夷・開国・尊王・佐幕の政治方針が複雑に組み合わさることによって敵と味方の判別不能な泥試合になっていく。尊王攘夷と開国佐幕の争いが尊王開国に帰着する不思議さをあるものは絶妙と感じ・・・あるものは面妖と感じるのだろう。
二律背反はこの世の常なのである。
江戸城大奥・・・御台所の間。人払いをした幾島は篤姫と対峙していた。
幾島「では・・・姫は・・・薩摩を裏切るとおっしゃるのでごわすか」
篤姫「・・・・・・」
幾島「薩摩の大殿のお気持ちを踏みにじりますのか・・・」
篤姫「・・・島津の父は・・・私に賭けたのじゃ。私に託されたのは・・・島津一国の未来ではない・・・この大八嶋の命運じゃ・・・」
幾島「なんと・・・恐れ多いことを・・・幾島には・・・とんと合点できませぬ」
篤姫「島津の父は・・・きっとわかってくださる・・・老いては子に従えという理をな・・・」
幾島「それは・・・思いあがりと申すものでございまする・・・姫は・・・あくまで手駒・・・」
篤姫「・・・戦国時代なら・・・他家に嫁いだ姫として実家に殉ずることも・・・あるだろう・・・しかし・・・わらわは・・・将軍家の妻じゃ・・・薩摩一国のことではなく・・・すべての国の未来に対する責任が生じておる・・・」
幾島「なんと・・・大言壮語を・・・家定にたぶらかされただけではないですか・・・」
篤姫「・・・ふふふ・・・幾島・・・女の道は一本道なのじゃ・・・愛も政治もひとつに融合して萌えるのじゃ・・・」
幾島「・・・幾島には・・・分りませぬ・・・」
家定が宵の口から・・・大奥に渡り・・・御台所と過ごして数刻。
決意を秘めた幾島は大奥の燈籠のともる回廊に出た。ただ一人・・・音もなく・・・廊下をすべる。
公方寝所の手前に差し掛かったとき・・・ようやく行く手をさえぎる人影があらわれた。
「・・・滝山殿か・・・」
「幾島殿・・・なりませぬぞ・・・」
「滝山・・・命が惜しければそこを退け・・・」
「ふ・・・くのいち相手に命の駆け引きなど・・・むべないことを・・・」
「そうか・・・では・・・冥府に行くがよい・・・伊賀のくのいちなど・・・この藤原の忍びの奥義を受け・・・薩摩くぐりの秘儀をきわめた幾島の敵ではなかったことを・・・閻魔に申し伝えるがよかろう・・・」
言い終わる前に必殺のくぐり棒手裏剣が滝山の顔面を射抜く。眉間を割られた滝山はのけぞるが・・・それはすでに・・・人形だった。
「・・・む・・・陽炎の術か・・・味なことよ」
その言葉の終らぬうちに幾島には伊賀十字打ちの八方手裏剣が襲い掛かる。しかし・・・手裏剣は虚しく廊下に十字の印を残しただけである。
すでに・・・廊下に人影はない。
瓦を突き破り組み合った幾島と滝山は大奥回廊の屋根から庭園へと落下する。
幾島はましら落しを仕掛けるが自分の腕の中にあるのが人形と知ると身を交わす。
滝山の人形は地面に落ちると爆散する。
「微塵がくれとは古風な・・・そこじゃ・・・」
小刀を構えた幾島は今度こそ滝山の本体の背後を突いた。滝山はギダンの術の間合いでそれをかわす。幾島が突く。滝山がかわす。激しく移動しながら・・・滝山はついに防戦一方となった。滝山の息は乱れつつあった。幾島の攻撃。滝山の防御。一方的な攻防の終わりが近付いていた。
(もはや・・・これまでか・・・さすがは・・・天下の幾島殿じゃ・・・)
滝山が覚悟を決めた刹那・・・幾島の殺気が消失した。
滝山が跳躍して振り返ると・・・松の木に張られた一本の縄に足をとられ逆さづりになった幾島が目に入った。
縄をあやつるのは・・・篤姫だった。
「幾島・・・もうよい・・・」
「姫様・・・」
自害を図った幾島の小刀が・・・その喉仏に到達するよりはやく・・・篤姫の邪眼が幾島を捉えていた。
「幾島・・・もうよいのだ・・・幾島・・・すまぬ・・・幾島・・・わらわは・・・徳川の妻・・・そして・・・お前は・・・わらわの忠実な老女・・・幾島・・・逆らってはならぬ」
幾島は・・・恍惚とした表情を浮かべ・・・逆さになったまま・・・頷いた。
その手から小刀が落ち・・・庭の池に水音と波紋を残した・・・。(つづく)
関連するキッドのブログ『第26話のレビュー』
火曜日に見る予定のテレビ『モンスターぺアレント』『シバトラ』(フジテレビ)『カウラ捕虜収容所からの大脱走・トイレットペーパーって言うな』(日本テレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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