マドンナリリーの花言葉は無垢です。(大野智)
マドンナリリー(白百合)とは聖母マリアを例えた花である。無垢で純潔なのは処女懐胎をした乙女だからだ。
母親が汚れなき乙女であるという幻想は・・・幼い子供の無垢をも示す。
まあ・・・汚れちまった悲しみには今日も小雪がふりかかるのであるが・・・夏だと南半球に行かないとな。
原作者が「詐欺だ」と叫んだという噂の「ゲド戦記」もオンエアされているのだが・・・ま・・・暑いので気力がない。
地獄の釜をしのびながら・・・わが主の名を語るドラマにしておく。
で、『魔王・第二回』(TBSテレビ080711PM1005~)原作・キム・ジウ、脚本・前川洋一、演出・加藤新を見た。成瀬領(大野)は11年前に弟を殺害されたが・・・犯人である芹沢直人(生田斗真)は裕福な実業家の父親(石坂浩二)の雇用した有能な弁護士によってでっちあげられた正当防衛で無罪となる。
弟の葬儀の夜・・・母を病で失い天涯孤独となった成瀬は優秀な弁護士となったが・・・心は空虚で復讐の青白い炎を燃やした孤独な魔王の虜と化していた。
今回、魔王が用意したタロットカードは大アルカナの18番「月」(THE MOON)である。(挿絵はお気楽第四ビル落成記念H☆C特製タロットカード)・・・物語の中でものにさわると「なんかみえる」と言い出す心の病んだ孤独な少女・しおり(小林涼子)の説明によれば「月」は「待つ・・・ことを意味する」ということなのだが・・・この場合に暗示されるのは「月夜」ということである。夜の闇の中では月明かりがあっても危険は大きい。やがてくる朝を待つのが得策だという話だ。もちろん・・・やがて朝が来るという意味では希望のカードなのである。しかし・・・過去・現在・未来という時の流れを考えると・・・今が夜となっているということは・・・過去に昼という栄光があったことを暗示もするので・・・「没落」の象徴にも読める・・・不安定なカードなのである。だから・・・しおりは「動けばうごくほどに混乱する」と相談に訪れた直人に告げるのだ。
ちなみに月には顔が描かれるのが一般的だが・・・その顔は女神である場合と天使である場合がある。女神は月の女神・・・ヘカテ・ルナ・アルテミスのシンボルである。アルテミスの場合はアポロンの妹であるから・・・太陽と月のシンボルとなり・・・太陽の陽に対して陰の要素が強くなる。天使の場合はガブリエルである。ガブリエルは聖母マリアに受胎告知をつげる天使であり・・・「希望」の象徴の価値が強まる。もちろん・・・母をマリアになぞらえる成瀬にとって・・・「月」のカードは希望の象徴なのである。もちろん・・・来るべき望みはおぞましい復讐劇なのだが。
そして・・・「月」のカードには二本のハサミをもったザリガニ、二匹の犬、二本の塔と運命の二重性を示すシンボルが示されている。明暗、善悪、正邪といった岐路がバランスにすぎないことを物語るのである。
そして・・・「月」のカードの隠された真の意味は「敵」である。地獄に通じる闇の海から「危険」が這い上がり・・・運命の川に接近している。もちろん・・・「月」の正体もまた・・・魔王であるということなのだ。月の天使はガブリエルからミカエルに転じ・・・そしてミカエルの兄であり、天使の中の天使であるルシフェルに変転する。
そして・・・ルシフェルが敵(サタン)と化した時・・・左右の塔は門となり・・・二匹の犬は地獄の番犬ケルベロスとなるのだ。
図書館で・・・ゲーテの「ファウスト」を立ち読みした成瀬は・・・小悪魔メフィストフェレスが行う神との賭けに心を奪われる。小悪魔は「神に愛される人間」への嫉妬から誘惑を試みる。かって魔王がヘビとなってアダムとイブを誘惑したことのコピーキャットである。ゲーテは下っ端の死神を妖精の王(魔王)と読んだりする大袈裟な奴だが・・・まあ・・・かわいいところもあるものだ・・・と心を失った人間に侵入したわが主の触手は思われるのだった。
成瀬は孤児としてすでに心を闇にとらわれているしおりに共感を覚える。
もちろん・・・心を喪失している成瀬にそんなことはありえない。しおりと成瀬の心に巣食う闇の触手が反応しただけの話である。
直人の無実のために偽証した共犯者の一人、石本(脇知弘)に狙いを定めた成瀬は・・・債権回収業である石本に借金の返済を迫られ苦境に陥っている女・多恵(奥貫薫)に接近する。
多恵の娘にテディ・ベアをプレゼントし・・・多恵に拳銃を贈るのである。
そして多恵の娘を誘拐し・・・石本にもテディ・ベアを宅配するのだった。
成瀬の別名である雨野真実は贈り物が大好きなのである。
娘の身を案じ逆上した多恵は石本を射殺するのであった。
銃撃された人間はショックで失禁・脱糞する場合があり、死亡した人間はさらに内臓からすべてのものを放出する。死体は我慢しないからだ。そのため・・・死体は常に異臭を放つのである。不倫現場でチャイム鳴らされてドアを開けちゃうようなありえない描写があるくせにこういうところだけ写実的なのはスタッフの趣味が悪いからなのだろう。
付け加えると銃弾が貫通し・・・致命傷だった場合は血液がどんどん流れ出す。すると人間はしぼむのである。血管がしぽむからだ。だから・・・どんなデブでも少しは縮まるのである。そんなこと言うのは悪魔も趣味が悪いからなのだ。
こうして・・・哀れな迷子の母親の手を血で汚した成瀬は復讐鬼の道をまっしぐらなのである。
もちろん・・・その先にはかわいい二匹の仔犬が口から炎を吐きながら待っているのだが。
もはや・・・父を殺してから子を殺すのか・・・子を殺してから父を殺すのかは明らかなのだが・・・ゲーテの魔王に心ひかれるなら・・・息子を奪う方がよりわが主の好むところなのだがね。
もちろん・・・成瀬が誰を一番の悪と考えるかという問題である。
もちろん・・・わが主にとって成瀬の心の中に眠る早世した父親への複雑な気持ちを憎悪に一本化することなどたやすいことなのだ。
そうすれば・・・生田→石坂という順もあるのになあ・・・。
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ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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