タロットカードの魔王は誰ですか?(大野智)・・・この人です!(小林涼子)
今回はタロットカードなしである。・・・日本全国には雷雲がたちこめていて・・・とてもムーディーだ。
SFXかよっ・・・という勢いで稲妻ピカピカ雷鳴ゴロゴロである。
魔王の名を冠にした恐れを知らぬドラマも終盤戦である。
まあ・・・わが主の敵にヨイショするドラマだと思うが・・・もう少し魔的でもいいのにな・・・と思う今日この頃だ。
で、『魔王・第9話』(TBSテレビ080829PM10~)原作・キム=ジウ、脚本・西田征史、演出・加藤新を見た。まあ・・・基本的に悪魔との契約に基づく犯罪なので・・・立証困難な犯行が基本である。人を殺しておいて刑事やってる直人(生田斗真)が「真犯人」は成瀬領/真中友雄/雨野真実(大野)だといくら叫んでも超自然現象=悪魔の仕業は裁けないのだ。
だから・・・領は偶然に頼りすぎているとか思う人は・・・しつこいようだが・・・このドラマの本質を誤解しているのである。
たとえば熊田正義(二宮和也)の父である弁護士・熊田哲夫(森下哲夫)が林(きたろう)に刺殺されるときも・・・二人の耳元では悪魔が絶えずささやき・・・二人の足元には小悪魔がまとわりついていたのだ。
金貸しの石本(脇知弘)が取立て相手の多恵(奥貫薫)に悶絶死させられた時も悪魔が耳元で囁いていたし・・・雑誌記者の池畑(六平直政)が転落死した時も悪魔は・・・耳元で・・・囁いていたのである。
今回も悪魔は囁きまくっているわけで・・・ご苦労様です。
魔王という名は悪魔の王と言う意味だが・・・悪魔そのものでもある。神が遍在するように魔王も偏在するので魔王そのものを特定することは困難なのである。
この世に存在する・・・ありとあらゆる悪と呼ばれるものに・・・魔王は影を落としている。
地獄の支配者としての堕天使ルシファー(サタン)は魔王であり・・・すべての悪魔の王・・・すべての魔神の総帥である。
もちろん・・・ルシファーが愚かでみすぼらしい人間のいたいけない復讐劇に自ら関与することなどまずありえないのだが・・・6666ある魔王の軍団の・・・それぞれに属する6666の悪魔・・・その末端の小悪魔にも魔王の影はさしているのであり・・・この復讐が魔王の支配下にあるといっても誤りではない。
悪魔に魂を売った領には地獄の扉が開かれるのだが・・・ともかく・・・その契約の果たされるまで・・・闇の力は領の望むままに・・・この世に苦悶をもたらすのである。
さて・・・ダンテの「神曲・地獄篇」で・・・ダンテが考える「悪」の基本は「裏切り」である。ルシファー(光の子)がサタン(敵)となったのも・・・神を裏切ったためだ。「裏切り」こそが「大いなる罪」なのである。
人はこの世に・・・最小のものが何か・・・最大のものが何かも・・・知らぬ哀れな存在だが「裏切る」ことは知っている。それゆえに・・・無数の「約束」がとりかわされ・・・お互いを「愛」で結ぼうとするのだが・・・それは常に「裏切り」という「大罪」の起爆装置なのである。
直人の兄・典良(劇団ひとり)の妻・麻里(吉瀬美智子)もまた・・・「約束」を交わしながら・・・耳元で囁きかける愛の天使(エロス)の誘惑にさらされる・・・典良以外にすばらしい快楽を齎す・・・素晴らしい男性がそばにいて・・・思いもかけぬ悦楽をあたえてくれる・・・直人の友人であり・・・典良の秘書である葛西(田中圭)もまた・・・闇の天にむかって自分の欲望をほとばしらせるのであった。二人は「裏切り」の鍵を鍵穴に差し入れ・・・つかのまの宴の後で・・・地獄の業火に身を投げるのである。少なくとも悪魔のルールではそうなっている。
「裏切り」は「裏切り」を呼ぶ。もちろん・・・悪魔がそう仕組むからだ。
「人が人を殺さない」のは暗黙の了解である。妻の裏切りによって怒りに我を忘れた典良は・・・青酸カリをタバコに潜ませ・・・葛西への友情を裏切った宗田(忍成修吾)に一服させ・・・この世の罪を・・・葛西になすりつけるのだった。己の罪を隠し・・・他者を罪に陥れるものはすでに悪魔の手のうちにあるのである。
仇なすものを許さない・・・これは不寛容の罪である。神は神の子にそう告げさせている。正直者は馬鹿を見ない。なぜなら・・・天国の扉が開かれているからだ。しかし・・・人は目には目を歯には歯を・・・にも公平という「善」を見るものだ。時にはそれが悪魔の差し出すカードであったとしても。
直人は戸惑う・・・一度罪を犯したなら逃れる術はないのかと・・・悔い改めれば許されるのではないかと・・・天使であるしおり(小林涼子)は囁く・・・すべての運命を乗り越え・・・明日を佳く生きよと・・・しかし・・・すでに・・・悪魔の住処となった領には・・・神の光は届かない。届いたとしてもすべてのものを飲み込むブラックホールのように・・・光はただ闇に消えるのみなのである。
さて・・・本編に新しいカードが投入されないので・・・主題歌に挿入されるカードについて触れておこう。冒頭・・・領を示すタロットは大アルカナの16番「塔」である。こちらは「第六話」で述べた。「塔」は神への挑戦を示し・・・それは「破滅」に通じている。もう一枚は大アルカナの9番「隠者」である。「隠者」は正義の天使とサタンの弟ミカエルをつなぐ導師である。清浄であるためにこの世の穢れを捨て・・・そのために無力となったものの象徴でもある。その大いなる智恵こそが正体を隠した運命であるとも考えられる。隠者は正しい道を示すが曇った目にはそれが映らない。「復讐に燃える知性」・・・その組合せは領そのものであるといえる。
一方・・・直人には大アルカナの18番「月」である。こちらは「第二話」で述べた。「月」は運命の変転を示し・・・それは「希望」に通じている。もう一枚は大アルカナの12番「吊るされた男」である。これが「罪と罰」のカードであることは明らかで・・・時には冤罪を示すことがある。また「吊るされた男」は「秘められた最後の剣」でもある。それが悪魔の示すものなら男の名は「ユダ」である。男は時に後光を示す場合があるが・・・それは救世主の犠牲を成就させるための犠牲として「彼」の役割を神が評価している場合もあるし・・・単に救世主を売った銀貨30枚が零れ落ちている場合もある。このことから・・・「執行猶予つきの人生」が浮かび上がる。もちろん・・・苦痛と忍耐と不自由はこのカードにとりついている。「運命に縛られて身動きできない」・・・この組合せは直人に相応しいだろう。
この後・・・大アルカナの13番「死神」(破局)・・・小アルカナ「剣の8」(悲報)・・・と続き・・・しおりを示す大アルカナ3番「女帝」(愛・「第三話」)が示される。もちろん・・・この後もカードは続くわけだが・・・また・・・本編でカードが示されなかったときのために・・・とっておくことにしよう。
タロットは謎の言葉とされている。しかし・・・悪魔の名で言えば・・・それはアスタロットに通じている。アスタロットはアストロ(星)であり・・・夜の闇天を支配する闇の大天使の御名である。
もちろん・・・この世を神が支配しているのか・・・神の敵が支配しているのか・・・それは人それぞれの胸の内の話にすぎない。
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ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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