愛を失えば憎しみも消えるのです(大野智)残されたのは虚無なのです(生田斗真)
おそらく・・・魔王の正体は・・・最後の最後で特典映像付DVDの売り込みをかける人だな。
まあ・・・予想されるのは・・・直人(生田)たちが去った後で・・・真中英雄(竹内寿)に山野(清水優/堀本昴弥)がトドメを刺したってことか・・・もちろん・・・直人を殺人者に仕上げるために・・・そうすれば・・・いじめっ子が排除されるからな・・・。
芹沢麻里(吉瀬美智子)が当時から・・・からんでいるとすれば・・・すべてを仕組んでいる魔女ということになるだろう。謎につつまれた彼女の実家に真の魔王が潜んでいるのだ。
その男(デーモン小暮)がもう一度ハーモニカを踏み潰したのかもしれない。唇の端を耳まで釣り上げて赤い瞳で・・・。
とにかく・・・天使しおり(小林涼子)は任務に失敗したのだ。しかし・・・神と悪魔の戦いに天使の失敗はつきものなので・・・彼女は天真爛漫に笑うのである。
で、『魔王・最終回』(TBSテレビ080912PM10~)原作・キム=ジウ、脚本・西田征史、演出・加藤新を見た。終局に向かいつつある魔王の計画。神と悪魔の戦争は常に一進一退だが・・・局地的には悪魔の一方的な勝利で終焉することもある。
警察がずさんであるのに驚いたお茶の間の人は多いだろうが・・・そもそも・・・芹沢直人が正当防衛で罪を免れたことが事件の発端であることを思い出すべきだろう。
殺人の容疑者である・・・しかも凶器は煙草に仕込んだ青酸カリだ・・・直人の兄・典良(劇団ひとり)の身体検査をしないのは・・・魔王が魔力を使って人々の意識をコントロールしているからである。
・・・大丈夫・・・その男は危険ではない・・・その男は哀れな日陰に咲く花だ・・・と悪魔の声で耳元で囁かれる警官たちは・・・その気にならないのだ。
こうして・・・取り調べ室で一人きりになった劇団ひとり・・・チャン・ドンゴン・・・典良は青酸カリを仕込んだ煙草を一服するのである。もちろん・・・あなた(麻里)のことが好きだからあ・・・である。
もちろん・・・典良の耳元でも・・・死ね・・・生きていても意味はない・・・お前の愛は失われた・・・お前の父はお前を恥じるだろう・・・せめて・・・潔く死ね・・・悪魔の囁きは途切れることはないのだ。
典良が息絶えると地獄の扉が開き・・・殺人者に相応しい地獄の羅刹が禍々しい哄笑を響かせながら・・・俯いた典良の魂を引き立てていくのである。
そして・・・現世では・・・直人が変わり果てた兄の骸を発見するのである。
父・栄作(石坂浩二)に兄の死体を見せる直人。打ちのめされた父は「誰かが幸せになるためには誰かが不幸になるしかない・・・お前たちが一族の繁栄を願わないから・・・芹沢家は滅びることになった・・・だが・・・父として・・・お前たちを責めることはすまい・・・私の指導力が弱かった・・・ただ・・・それだけのことだ・・・これが運命というものなのだ・・・」と父は心の中でつぶやいた。
直人は・・・すっかり・・・気弱になった父を見て・・・自分の愚かさに気がつくのだった。弱いものを滅ぼしたことを悔やむなんて・・・なんて・・・無意味なことをしたのだろうか。弱いものを苛むことを喜びとしていた自分を裏切った報いが・・・この始末だ・・・。
しかし・・・悪魔の囁きは一人になった哀れな父親にも聞こえているのだった・・・絶望だ・・・絶望だ・・・残されたあの馬鹿息子では到底、成瀬領(大野)には敵うまい・・・芹沢一族は終わりだ・・・いや・・・この手で成瀬を殺すという手があった・・・その手があった・・・しかし・・・殺意の興奮は心臓に刺激を与え・・・哀れな父親の寿命は尽きた。
たちまち・・・地獄の扉が開き・・・様々な悪事を重ねてきた栄作の魂はすでに地獄の炎に燃え上がり始めていた・・・栄作の魂はその苦痛に絶叫した。
父の元へ戻った直人は・・・冷たくなった父親を発見する。もはや・・・芹沢一族の最後の一人になってしまったのだ。ようやく・・・直人はこれが戦争であることにきがついた。芹沢一族と真中一族の興亡を賭けた戦争なのだ。殺さなければ殺されるのである。もちろん・・・芹沢がそう考えるのは・・・悪魔が囁いているからである。芹沢は拳銃を無断で装備した。
一方・・・天使しおりの誘惑によって・・・心に乱れを生じた領は・・・葛西(田中圭)の仮釈放の手続きをとる。解放された葛西を目撃した山野は・・・領の変心を嗅ぎつける。
ききき・・・やはり・・・恵まれたものらは・・・オレのようなムシけらの気持ちなど・・・理解できないのだな・・・キキキ・・・ふみつけらされ・・・しいたげられ・・・頭も劣り・・・顔も醜く・・・力も弱い・・・恵まれないもののきもちなど・・・金輪際・・・分らない・・・お前の弟もそうだった・・・正義感ぶりやがって・・・格好つけやがって・・・そんなもので・・・オレの怨みが消えるものか・・・オレの怒りは世界を滅ぼすまで消えないのだ・・・キキキ・・・世界が滅びて・・・オレの怒りだけが・・・残ったとき・・・オレははじめて勝利するのだ・・・キキキ・・・オレは高らかに笑うのだ・・・キキキ・・・キキキ・・・死ね・・・みんな・・・死ね・・・。
もちろん・・・悪魔が囁いているのだが悪魔が囁いているのか本人が叫んでいるのか判別しがたいほど下等な人間なのである。
それは・・・刑事の役目を放棄し・・・犯罪と向き合うことをやめて・・・悪を野放しにすることで・・・心の平安を得たと自分を偽る刑事・中西(三宅裕二)に匹敵する下等さである。
芹沢一族への復讐はほぼ終った・・・後は・・・直人に自分を殺させて・・・真の殺人者に仕立て上げるだけ・・・領は苦悩を顔に浮かべながら・・・夜の街を行く。
悪魔だけの標的は楽だ・・・。悪魔の囁きに身を委ねればいいのだから。しかし・・・領は違う・・・天使と悪魔の双方に愛されているのだ。天使は・・・怨みを捨てよと・・・CMで・・・上戸彩がおでん屋の屋台に乗せる胸に勝るとも劣らない柔らかな胸を背中に押し付けながら・・・復讐をやめて・・・何もかも忘れて・・・私との愛の暮らしをしましょう・・・と囁く。
しかし・・・弟が死に・・・名誉を傷つけられ・・・母が悶死して以来・・・囁き続ける悪魔の声にどうして逆らえようか・・・弟の無念・・・母の怨恨・・・それを晴らさずにどうして生きていられようか・・・。
復讐するは我にあり・・・復讐するは我にあり・・・領は天使の誘惑を退けた。
しかし・・・悪魔の計画は人知のおよぶところではない。すでに・・・生きながら下級悪魔と合体した山野は・・・地獄の呪いのかかったナイフで・・・世界を滅ぼす決心をしている。
敵に死を・・・裏切りものに死を・・・。
山野は領を刺し・・・そして・・・美しい顔を持つ憎むべき葛西を刺した。
たちまち・・・地獄の扉が開き・・・不倫の罪を犯したものに相応しい無数の百足が葛西の魂の下腹部に群がった・・・感じやすい部分を襲うあまりの激痛に・・・葛西の魂は身悶えた。
キキキ・・・死ね・・・キキキ・・・みんな死ね・・・。すでに理性を失った山野は自分が血まみれのナイフを振りかざし・・・通行人の間を走っていることにも・・・銃を構えた制服警官の制止の声も届かなかった。
キキキ・・・何が・・・止まれだぁ・・・キキキ・・・ぶっ殺してやるぅ・・・キキキ。
警官に発砲されて山野は転倒した・・・即死だった。
たちまち・・・地獄の扉が開き・・・無数の小鬼が躍り出た・・・それぞれに小刀や棍棒を持った小鬼たちは・・・山野の魂を取り囲み・・・山野を小突き回しながら・・・地獄の道へ引きずっていく。山野は目玉に針を突き刺され・・・小鬼が眼窩から引き釣り出したそれを食らうのを残った片目で見つめながらキキキーっと叫んだ。
思い出の場所で・・・11年間ずっと廃墟の工場で・・・直人と領は対峙していた・・・。地主にとってはいい迷惑だ。
もはや・・・クライマックスの到来ですでに地獄の扉は半分開いている。地獄の悪魔たちは扉の隙間から這い出て大盛況である。
「俺を撃て・・・そして・・・今度は刑に服してください・・・」と叫ぶ領。
「それはできない・・・俺は死んで罪をつぐなう」と自殺を仄めかす直人。
もみ合ううちに・・・銃弾は直人を貫いた・・・。
罪を謝罪する直人の呼吸が止まった。
たちまち開く地獄の扉・・・一匹の竜が赤い目で直人の魂を睨む。
直人の魂は拗ねて言う・・・俺の地獄行きは決定なのか?・・・龍は吠える。無論だ・・・お前が最初に人をいじめて暗い喜びを覚えたときにな!・・・龍の鋭い棘だらけの尾が直人の体を刺し貫くと直人は叫ぶ間もなく地獄へ引きずりこまれた。
やがて・・・領もついに息絶えた。地獄の扉が開き・・・優雅な小魔王が迎え出た。さあ・・・参りましょう・・・地獄の宮殿へ・・・多くの智恵もって悪の限りを尽くした貴方様には・・・最高の地獄の責め苦が待っていますぞ・・・領の魂は微笑んだ。
天使は二つの魂の抜け殻を見下ろしていた。
人間は愚かなもの・・・そしてあわれなもの・・・。
天使は肩をすくめると110番した。
芹沢麻里は・・・実家に電話をかけた・・・芹沢家の全財産の相続に伴う税務処理を相談するためだ。もちろん・・・悪魔に魂を売った彼女にも地獄は予約済みなのだが・・・それまでには・・・たっぶりとこの世の贅を尽くさねば割りに合わないと麻里は思う。まだまだ楽しまないと・・・まだ若いのだから・・・。
関連するキッドのブログ『第10話のレビュー』
さて・・・最後に登場しなかったタロットカードを一枚紹介しておこう・・・。
大アルカナの15番「魔王」である。DEVILは悪魔であるが・・・THE DEVILと言えば魔王なのである。下級悪魔を束ねる上級悪魔を魔王と呼ぶこともあるが・・・この場合の魔王は魔王の魔王である大魔王サタンを示す。闇の剣で神を狙い・・・逆の星の印で神の呪いを防ぐ。地獄の玉座に座りながら蛇の化身でアダムとイブを誘惑し・・・神に人間を楽園から追放させ・・・地獄と天国の中間点に置いた運命の支配者だ。その御名を口にすることも憚れるのである。もちろんこのカードは神にとって最悪・・・悪魔にとって最高のカードだ。((挿絵はお気楽第四ビル落成記念H☆C特製タロットカード))イラスト・ikasama4様、モデル・サタン=デビル美里、アダム=お気楽様、イブ=ちーず様、尚、このカードによって生じる呪いはすべてキッドじいやが引き受けます。
日曜日に見る予定のテレビ『コードギアスR2』(TBSテレビ)『篤姫』(NHK総合)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
このドラマの根底となる思想は「性善説」
それと生きてきた上での環境によって
人は「悪」に染まってしまう。
こういうのって
以前あった「白夜行」と雰囲気はよく似てます。
山野もいじめを受ける事がなかったら
真っ当に生きる事が出来たはずみたいなとこがありますが
生い立ちや環境とかは
誰しも不満を持ったりする訳で
要はそれに対して自分がどう向き合うべきか
そーゆーとこになっていくんじゃないのかなって気がします。
美しく死んでいく感じはドラマとしては
個人的にアリと言えばアリなんですが
どうも自分の罪を逃れるために死を選ぶというやり方は
ドラマとはいえ、人としては嫌ですねぇ。
ただ、悪魔視点では人が苦しむ様を見るのが好きだから
こういうラストに喜んでいる事かもしれません(笑)
投稿: ikasama4 | 2008年9月15日 (月) 13時11分
✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥
まあ・・・精神医学が発達して
吉外の定義が曖昧になっていき
同時に倫理観がマスメディア主導になると
圧力団体による言論封殺が発生する。
吉外に刃物とか・・・
的を得た言葉まで狩られてしまい
吉外じみた行動を
吉外じみてると言えなくなるわけです。
遺伝子と環境による
嗜好の形成が・・・
すべて運命と考えると
この世に悪人はいなくなる・・・
ということですよね。
しかし・・・庶民というものは
そういう理屈を
へ理屈だと言い切るバイタリティーを
持っていてもらいたいのですね。
たとえば・・・うらみがある
でも今が楽しいから・・・忘れた・・・
とか
昨日はものすごく怒っていたけど
今日はもうそうでもないや~
とか
ま・・・そういうことでございます。
そういう意味で・・・
復讐が趣味になっちゃう人がいたり
苦痛が快感になっちゃう人がいるわけで・・・
そのあたりの倒錯が
面白い!と感じたりもするわけです。
地獄は迷信ですが
それで多くの迷える子羊が
犯罪に躊躇するとすれば
それなりに善でございますからね。
一方・・・地獄は
坊主の商売道具でもある。
まあ・・・キッドは
罪を憎んで地獄を愛す・・・
ポジションで生きておりますーっ。
投稿: キッド | 2008年9月16日 (火) 01時08分