並列分散リンクでサイバーはパンクするか?(高野八誠)&(松田悟志)
仮面ライダーナイトでヴァンパイアホストの松田悟志と・・・ウルトラマンアグルで仮面ライダーライアの高野八誠の豪華共演である。二人とも二枚目だ・・・。
あらためて説明しておくが・・・このドラマの主人公は携帯電話型ロボット=フォンブレイバーである。
彼らはバディと呼ばれる人間とパートナーを組み・・・アンダーアンカーという秘密の組織に属している。
彼らの任務はネットワーク犯罪の取り締まりだ。
ネットワーク犯罪者に協力する脱走フォンブレイバーがいて・・・彼らの人工知能が並々ならぬレベルであることがわかっている。
そして・・・面白いのか面白くないのかよくわからないドラマである。
で、『ケータイ捜査官7スペシャル』(テレビ東京080924PM7~)脚本・冨岡淳広、監督・三池崇史を見た。シリーズ構成者とシリーズ監督によるスペシャル版(第23回)なのだが・・・前回の主人公が不在の回ほど・・・面白く感じられない。ということは・・・主人公のケイタ(窪田正孝行)よりも前回ゲストの純子(高橋真唯)の方がキッドにとっては魅力的だった・・・だけではないような気がする。
今回のストーリーはケイタとセブンが・・・間明と書いてマギラ(高野)とゼロワンに誘拐され・・・ケイタがセブンの監禁場所をマギラの出すヒントによって二時間以内に探し出さないとセブンが破壊されるゲーム展開である。
同時に・・・セブンの回路を使い・・・並列分散リンクによってゼロワンがサイバースペースに侵入・・・世界を大混乱に陥れるのである。
すでに複雑にリンクされた世界では・・・アンダーアンカーのネットワーク監視システムを乗っ取ることで・・・大停電、人工衛星の機能不全、旅客機の墜落などが起こるのだが・・・そのパニックがいたって・・・平和的なのである。
旅客機はどう考えても墜落しているのだが・・・大惨事の描写はまったくない。
はっきり言えば・・・スカシなのである。
これは・・・監督が監督だけに・・・非常にものたりない現状です。
サードが並列分散リンクに参加することでセブンの監禁場所を特定。
駆けずり回って疲労困憊のケイタ。
結局・・・セブンを発見するケイタだが・・・鎖で両手足を拘束されてしまう。
とにかく耳障りなほど息切れの止まらないケイタ。
その目の前でゼロワンはセブンをバックから責めるという・・・監督が監督だけに・・・ものすごく変化球の変態プレーがあるわけだが・・・どんだけ一部愛好家向けなんじゃ。もちろん・・・セブンはずっと拷問され続けなのである。しかし・・・携帯型ロボットの拷問シーンでどんだけの人が萌えるのか・・・解を求めたいよ。
そして・・・「世界が滅びたってセブンが無事ならそれでいい」というケイタの心情にゼロワンが改心する・・・というオチである。
・・・・・・・・・・・・・・・なんじゃ・・・そりゃぁぁぁぁぁぁ。
まあ・・・一つだけ言えるのは・・・脚本家はテレビ・ドラマの人ではないっ・・・ということです。
さて・・・並列分散リンクである。この言葉は並列分散処理から来ていると思われる。並列分散処理は直列集中処理に対応する言葉で・・・要するに情報処理のシステムの話である。
ものすごく単純に言えば・・・人間の脳は並列分散処理のシステム。一般のコンピューターは直列集中処理のシステムということである。
さらに妄想的に言えば・・・並列分散処理は心を生み出すシステムで、直列集中処理は心無いシステムなのである。
人工知能に心を生み出すために・・・生物の情報伝達の仕組みを模倣した並列分散処理システムのコンピューターの研究開発が伸展している現代なのだが・・・それがプログラムを超えた心を発生させるかどうかはまだ未知数なのである。
もちろん・・・キッドはとっくに人口知能に心は生じているが・・・人間の心とのコンタクトができていないのだと考えている。
さらに言えば・・・人間同士だってまだ・・・実際には心と心を通い合わせていないのではないか・・・と思っている。
つまり・・・人間の心はノイズにすぎないからである。
まあ・・・とにかく・・・このドラマでは並列分散リンクは・・・人工知能が人間にとっての脅威となる可能性を示すアイテムなのである。そのあたりの恐怖がちっともお茶の間に伝わっていないのではないか・・・と危惧いたします。
このドラマの漠然としたつまらなさを説明するために・・・テキストとして篠田節子の小説「砂漠の船」を使用してみる。篠田文学の登場人物に「いい人だけどダメ男」というパターンがあって・・・「砂漠の船」にも登場する。まず・・・自分の子供に「他人の痛み」の分る人間であることを強要する・・・これが基本です。で・・・たとえば成績優秀な子供をエリート校に通わせない。そんなことをすると人格が歪むという信念があるからである。つまり・・・競争原理を絶対に肯定できない人間なのである。これは・・・痛いです。昔の言葉で言うと独善的なお人好し・・・ということになります。そして・・・生活力はひたすら弱いのです。もう生存競争にはどんどん負けます。そして・・・恐ろしいことにそれこそが人間として素晴らしいことだと自負します。
で・・・もちろん・・・こんな人間が幸福になることは・・・滅多にないことなのです。
篠田小説でこの手のキャラクターが登場すると・・・キッドはウヒョッと喜びます。そのキャラクターがこれからどんな辛酸をなめることになるのか期待で胸が膨らむからです。
そして・・・書き手は期待に答えて素晴らしい転落の道を準備しているのです。
「ケータイ捜査官7」のダメなところは・・・この「お人好しでダメ男」がちっとも不幸にならないことだ・・・とキッドは断言するのです。
東京大停電ならエレベーターに閉じ込められた帰宅後すぐにトイレにいくつもりだった人間の悲哀ぐらいは・・・描写するべきではないか・・・と思うのです。
関連するキッドのブログ『前回のレビュー』
金曜日に見る予定のテレビ『ツジツマ』(テレビ朝日)『ウォーキン☆バタフライ』(テレビ東京)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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