佳き時を残し悪き時を捨て去ること・・・そうすれば闇に光が灯るのです(高橋真唯)
さて・・・シーズン・オフのテレビ東京である。クールを越える連続ドラマ、週一26分番組という特異な放送形式で視聴率も最高*3.7%から最低*2.2%という地味さ・・・。「ケータイ捜査官7」である。
で・・・今回はほぼ番外編でショート・ストーリーとしては叙情的な味わいになっている。
なにしろ・・・全編「アベ・マリア」(シューベルト)で縁取られた盲目の少女の話である。
そして・・・少女を演じるのが映画「妖怪大戦争」(2005)の川姫でおなじみ高橋真唯である。
一部ファン熱狂間違いなしのゲスト展開なのです。・・・どういう一部なんだか・・・。
で、『ケータイ捜査官7・第22話・こころのひかり』(テレビ東京080917PM7~)脚本・福嶋幸典、演出・辻裕之である。アニメ「地獄少女」の脚本家と映画「修羅の群れ」(2002)の監督である。・・・ものすごく納得の仕上がりになっている。
たとえば・・・「太陽と海の教室」では不慮の事故で恋人を失った少女に教師は「怒りを鎮め・・・前向きに生きよう」と諭すのである。
現在の日本で言えば・・・「汚染米を食べたことは仕方ない・・・怒りを克服し・・・罪人を赦し・・・泣いて耐えること・・・」が大切だ・・・ということです。
ま・・・ふざけるなっ・・・と思う人も多いですが・・・結局・・・多くの無力な人々は・・・虚しく怒るよりも・・・明るく楽しくやりすごす・・・そうして歴史を作ってきたのです。
たとえば・・・シューベルトのアベ・マリアは宗教音楽ではなく娯楽作品なのですが・・・歌詞に「アヴェ・マリア・・・聖母マリア様・・・お助けを・・・」とあり・・・あまりにも麗しいメロディーラインなのでカトリックの教会の方が聖母マリアの祈祷の替え歌をつくり・・・現在に至るなのである。
まあ・・・マリアはイエスの母であり・・・イエスが神の子である以上・・・神の妻なのである。
クリスチャンたちが・・・母に奉げる祈りは・・・いつまでも健やかでいつまでもお守りください・・・ということで・・・これは母を持つ人に共通する祈りなのだ。
人は苦悩に満たされた人生を与えられるのが普通である・・・「アヴェ・マリア」の旋律がシューベルトに限らずグノーでもモーツァルトでも・・・基本的に清らかで心に優しく響くのは・・・それが母の愛への思慕に基づいているからだろう。
今回の背景に「アヴェ・マリア」が使用されるのはそういう意図があります。
・・・・・・宿命の対決を続けるフォンブレイバー7(声・河本邦弘)とフォンブレイバー01(声・坪井智浩)・・・人工知能の癖に「破壊衝動」に取り付かれたゼロワンはほぼ同機能のセブンとの対決で傷み分け・・・姿勢制御装置に損傷を受ける。セブンは主人公のケイタ(窪田正孝)に回収されるが・・・ゼロワンは見知らぬ家の庭先で身動きできなくなってしまう。
その家の娘・・・垣内純子(高橋真唯)は目が不自由な少女だった。純子は携帯電話に偽装したゼロワンを拾い・・・落とし主を装うゼロワンの支援者・間明(高野八誠)からの電話でゼロワンをしばらく保管することになる。
一宿一般の恩に報いるためゼロワンは・・・純子に・・・「お前の望みを叶えよう」と持ちかける・・・。純子が交通事故で視力を失ったことを知ったからだ。その事故を起こしたドライバーへの「復讐」を提案するのだった。
しかし・・・純子は・・・「私は復讐など望んでいません・・・」と答える。
ゼロワン「なぜだ・・・お前から光を奪ったものが憎くないのか・・・」
純子「もちろん・・・目が見えなくなって・・・私は憎しみを心に持ちました。事故を起した運転手だけでなく・・・自由に動ける友人たち・・・その他のすべての人々・・・私に齎された不運を・・・私は憎みました」
ゼロワン「それでは・・・なぜ・・・お前は復讐しないのだ・・・」
純子「・・・時です・・・時が私の心を変えたのです」
ゼロワン「・・・時・・・時とはただ・・・時間が経過していくだけではないのか・・・」
純子「・・・私は・・・光を失ったけれど・・・その後で・・・闇の中でしか得られないものを得たのです」
・・・純子の話を理解できないゼロワンはそっと純子の日常を観察するのだった。援助団体の支援を受け・・・ボランティア(前野恵)に励まされ・・・盲人としての職業訓練を受け・・・盲人としての仕事につき・・・余暇には合唱を楽しむ純子。道に倒れたときには・・・通行人が手を差し伸べてくれることもある。仕事場では無心に仕事をする。そして・・・合唱の会では「アヴェ・マリア」の調べに身を委ねる純子。
そんな・・・純子の母(大西多摩恵)は・・・純子宛のある手紙を純子には渡さず封印していた。
加害者・矢部和成(浪岡一喜)からの謝罪の手紙だった。
矢部は事故を起こして以来・・・罪悪感に苛まれつつ・・・働きづめの日々を送っていた。倉庫作業員として残業の日々である。そんな矢部を案ずる事務員の女性(岩本美佑紀)が純子を訪ねるのだった。
初めて・・・矢部の近況を知った・・・純子は・・・ゼロワンに「お願い」をするのだった。
その頃・・・一人暮らしのアパートに戻った矢部は・・・盲人援助施設からのお礼状が郵送されていることに気がついた。彼の寄付により・・・施設にピアノが購入されたことのお礼である。同封された写真には・・・笑顔の純子が写っていた。
突然・・・携帯電話がなる・・・ゼロワンが中継接続した純子からの電話だった。
事故から六年目の・・・加害者と被害者のはじめての通話。
相手が・・・純子と知り・・・万感の思いをこめて謝罪する矢部。
しかし・・・純子は・・・「お詫びしなければいけないのは私の方なのです。今日・・・あなたのことを聞き・・・母があなたからのお詫びの手紙を隠していたことを知りました。私は・・・暗闇の世界の中で・・・光を見出し・・・立ち直って・・・前向きに生きていたのに・・・その間・・・暗闇の中で苦しみ・・・つらい思いをしている人がいることを忘れていました。いえ・・・そのことに気がつきもしなかったのです。ごめんなさい・・・私を許してください・・・そして・・・私はもう・・・大丈夫です・・・安心して・・・あなたはあなたの人生を生きてください・・・・・・」
矢部は・・・跪き・・・感謝の涙を流すのだった・・・。
その時・・・ゼロワンと純子の別れの時が来た・・・。
ゼロワンは「話は終ったか?」と問う。純子は尋ねる。「あなたのお名前は?」ゼロワンは無言で回路を切断した。
純子は切れた電話にむかって・・・「ありがとう」と囁くのだった。
とにかく・・・史上最悪のサイバーテロリスト・ゼロワンの赤い涙が一瞬停止するほどの・・・心温まるちょっといい話なのだった。
しかし・・・回収されたゼロワンは修理を終え・・・新たなる答えを求めて破壊活動支援に復帰するのだった。
世界の不正を寛容に許すこともシステム・・・断固として裁くこともシステムにすぎないのだから。たとえ・・・人間の心に光があろうとなかろうと。
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ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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