愚かさが罪であるように賢さも罪なのです(大野智)愛も罪なのです(小林涼子)
麻里(吉瀬美智子)は夫の典良(劇団ひとり)に「あなたは私を愛していない」と主張する。
自分が夫を「愛していない」のではなくて夫が「愛してくれなかった」のが悪いと言うのである。
サイコメトラーしおり(小林)は領(大野)に「あなた自身を愛してください」と忠告する。
自分が領を「愛している」とは言わないのである。
このあたりが女性の魔性を暗示しています。
で、『魔王・第10話』(TBSテレビ080905PM10~)原作・キム=ジウ、脚本・西田征史、演出・坪井敏雄を見た。この世の善悪は「弱肉強食」と「平和共存」の織り成すタペストリーである。自然では生存競争に勝つことが善でもあり・・・生存環境に調和することも善である。しかし・・・食物連鎖の頂点に立つ人類は共食いをするしかテリトリーを拡大できなくなる。そのために勝者と敗者が生まれ・・・お互いに善悪を交換しあう。
芹沢一族の長である栄作(石坂浩二)は一族を守るために・・・直人(生田斗真)と領の弟の間に起きた不幸な出来事・・・直人は事故を主張するが状況的には過失致死や殺害の可能性を残す・・・を直人の正当防衛と変換する。
このために・・・犠牲者である領の弟は・・・一転して殺意を持った悪人としての立場に置かれてしまう・・・兄弟の母はショックのあまり死期を早め・・・領は絶望の末に怨みを生じ復讐鬼として悪魔に魂を売ってしまう。
栄作の直人への愛が・・・領の敵意を生み出したのである。
領の敵意は領に力を与え・・・力によって滅ぼされた領の一家・・・真中一族・・・の復讐の炎は燃え上がる。その炎にさらされて・・・芹沢一族は炎上の時を迎えようとしている。
直人は・・・罪をつぐなおうとした・・・苦しんだ・・・と主張しつつ領に謝罪するが・・・領は死んだ弟がすでにその言葉を聞く耳を持たないことを知っている。
栄作は・・・領の力を知り・・・領を消去しておかなかった自分の手抜かりに舌打ちしつつ・・・謝罪して・・・間違いは誰にでもあるので過去を清算し・・・未来志向で生きようと提案するが・・・領は死んだ弟に未来がないことを知っているのである。
第三者であるしおりは・・・「復讐に心が縛られていては・・・喜びは暗い愉悦の中にしかない」と変心を諭し・・・「自らの戒めを解いて・・・新しい快楽に身を委ねなさい」と領を誘惑するがすでに悪魔と契約している領には「天使を愛する資格」がないのであった。
すでに・・・領の瞳は空洞となり・・・地獄へまっしぐらなのである。
天使に残された道はただひとつ・・・領とともに地獄へおち・・・その翼を焼くことだけだろう。
しかし・・・それは神を裏切る行為でもあり・・・天使はジレンマに陥るのだった。
領を救うためには・・・力なき言葉を使うほかに道はなく・・・力なき言葉では地獄への通路は閉じないのである。
魔王の計画は常に完璧であり・・・神の無力を常に証明する。そんなバカなと思う人は広島に行って原爆ドームを見学するといいだろう。
さて・・・今回は・・・直人に二枚のタロットカードが送られる。これまでは・・・一枚が直人に・・・一枚が復讐の標的に送られていたので・・・最後のターゲットが直人であることが明らかになる。
領の復讐は・・・弟のために直人を・・・母のために栄作を最終目標にする二重構造になっているのだが・・・最後は直人の命を奪い・・・栄作から息子を奪い取ることでショック死させるという「目には目を歯には歯を」という罪と罰の基本を押さえているのだ。
もちろん・・・領が復讐のセオリー通りに行動するとは限らないが・・・来週はいよいよ最終回・・・決着の時を迎えるのである。
キッドとしては「悪は滅ぶ」式の甘口ラストではなく・・・計画を全て完遂し・・・「わははははははははは」と悪魔の哄笑を響かせながら・・・地獄へ続く一本道を不敵に笑いながら去って行くラストシーンを期待している・・・ないと思うぞ。
さて・・・直人に送られたカードは大アルカナの十番「運命(の輪)」である。「運命」の女神はテュケーだが・・・テュケーの別名は「ラッキー(幸運)」であり・・・何人かの親を渡り子した娘だ。産みの親は美の女神アフロディテと忍びの神ヘルメス・・・才色兼備であることを幸運と言わずして何を幸運と呼べるだろうか。育ての親は森と泉の神オーケニアス・・・幸運は隠れ潜むのだ。そして彼女は養子となる。神罰の女神ネメシスの・・・。そして彼女は妻となる健康の神アガトダイモンの・・・。神罰には不発は許されぬし、健康こそが最高の幸運だからである。
しかし・・・善の悪魔である・・・アガトダイモンと夫婦になってから・・・彼女の幸運には蔭りが現れた。つまり敵の幸運は・・・味方の不運であるからだ。
かくて・・・テュケーはlucky(幸運)の神から・・・fortune(運命)の神へと昇華したのである。
幸福と災厄の両輪がテュケーの手に委ねられた。
人々は時には・・・テュケーに感謝し・・・こいつはついてるぜ・・・時には呪詛する・・・なんてついてないんだ・・・もちろん・・・ギャンブルにはテュケーがつきもので・・・カードの中心にこの女神が位置するのは当然の成り行きだ。もちろん・・・占いとは・・・運命そのものに関わることであろう。
そして・・・テュケーの真の姿は・・・地獄の貴公子アシュタロトなのである。
実は・・・小アルカナのすべてのカードはこの「運命(の輪)」に支配されている。地水火風の4大元素は運命に従って・・・規則的とみせかけた不規則を行うのである。それを最近では不確実性と呼んだりするわけだ。
「運命」はシンボルとして大アルカナの21番「世界」と対になっている。「運命」が時間で「世界」が空間である。この二枚のカードは四次元の扉の鍵なのである。
もちろん・・・「世界」の正体が魔王ルシファーであることから・・・サタンの部下であり・・・競争者であるとされるアシュタロトが地獄と天国の分岐点で悪魔的な笑いを浮かべていることは明らかなのである。
「運命(の輪)」が回転するとき・・・吉と出るか凶と出るか・・・それはルーレットをこの世に齎した。そして・・・ゴンゾウがリボルバーに弾丸を一発いれてロシアン・ルーレットを楽しむ時にも「運命(の輪)」はゆっくりと回転するのだ。
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日曜日に見る予定のテレビ『コードギアスR2』(TBSテレビ)『篤姫』(NHK総合)『Tomorrow』(TBSテレビ)『氷の華・第二夜』(テレビ朝日)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
2008年9月9日(火)9:00から15:00までの約6時間、メンテナンスを実施いたします。
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