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2008年10月 8日 (水)

ありがとう、オカン。(戸田恵梨香)えへへ・・・(大竹しのぶ)

「信じる」とはないものをあると思うことである。

たとえば・・・「愛」・・・たとえば「親子の情」・・・そんなものはないのだが・・・あると思うのである。

そういうことができるのである。人間の「心」が・・・である。

もちろん・・・「信じない」というのはあるものをないと思うことである。

あるのか・・・ないのか・・・それは本当はわからない。

しかし・・・人は哺乳類を観察していて・・・ひょっとしたら人間にも・・・「愛」があるかもしれない・・・と考える。

しかし・・・愛を考えるということは・・・すでに愛を疑っている証拠なのだ。

人間は面倒くさい生き物だ。

俳優の緒形拳が亡くなって株価が大暴落である。・・・関係ないだろう・・・と思う人は関係というものを分っていない。関係とは運命であり・・・この世のすべてのことは生死と無関係ではないのである。強烈な個性の喪失は世界の気分を大きく変えるのだ。残されたものは歯をくいしばって耐えるしかないのだ。

で、『ありがとう、オカン』(フジテレビ081007PM9~)脚本・金子ありさ、演出・三宅喜重を見た。視聴率は*9.5%・・・微妙である。朝ドラマで里親問題をあつかった「瞳」があって・・・比較すると・・・脚本家のいつものリアリティーのなさが際立つとか・・・主役である・・・いっちょかみ(世話好きの方言)の未亡人・華子(大竹しのぶ)の死んだ亭主が小日向文世(遺影のみ)で縁起が悪かったとか・・・配役的には主役は幸也(渋谷すばる)と虎太郎(村上信五)なのだが無理があった・・・華子の実の娘・紀世子(戸田恵梨香)とその恋人・弘明(吉沢悠)はとってつけられた存在だったとか・・・まあ・・・またしてもとんでもないドラマ一丁上がりである。・・・もういい加減気がついてほしい。

しかも・・・冒頭・・・大阪の路面電車・阪堺電気軌道のロングショットから「天王寺駅前行き」の車輌の中の親を失った幼い少年と福祉課のベテラン職員・長谷川(大杉漣)そして新人・永坂(石田ゆり子)の三人のショットは妙にこだわっていて・・・仏作って魂入れずの予感がプンプンしたのである。

この脚本家の失敗は・・・「ロマン」を説明しないことであるが・・・つまり・・・基本的にスカシなのである。だから・・・「ナースのお仕事」とか「電車男」とか「がんばっていきまっしょい」・・・構造がしっかりしているものをそこそこおしゃれに展開するときは問題ないのだが・・・そうでないと・・・きゅうりの入っていないかっぱ巻きを食べたような気分になる。

路上で血を流して死んだ父親の記憶を残す少年を引き取った里親は町工場を経営する華子だった。孤児であった夫・・・片親だった自分の体験を生かして里親を引き受けている華子。夫の死後も親のない子を引き受けている。実子の紀世子は口には出さないが・・・自分の食い扶持が減っていることを密かに不満に思っている。

華子の家にはすでに旅立ちの日(18歳になったら里親は続けられないという制度)が近い幸也と虎太郎の他に幼い兄妹の里子もいる。少年を加えると母一人子供6人の大家族である。しかも・・・華子は単なる経営者ではなく・・・工場で汗を流す作業員でもある。

このあたりの際どさが・・・聞き流せる人とそうでない人がいるのは充分に想像できるのである。

かなり・・・無理があるだろう。

しかし・・・育てるのは「親のない子供」なのだ。充分なケアが必要だという考え方と・・・いないよりいた方がマシという考え方がもつれるわけである。

長谷川は・・・どうやら華子の人柄を見込んで・・・難しい子供を預けているニュアンスがある。しかし・・・人柄で解決しない問題もあるはずである。けれど・・・もちろん・・・この脚本家は・・・そういうところに深入りしないのである。

下請けの部品工場の経営は思わしくないし・・・子供たちはそれぞれに心の闇を潜ませている。毎日が修羅場のはずなのであるが・・・もちろん・・・そういう描写もない。

ただ・・・幼児退行を起した新入りの少年が・・・食事を庭に投げ捨てお皿を割りまくってもひたすら優しく見守るのが華子の子育てなのであった。もちろん・・・キッドなら折檻するのが正しいと思うが・・・民間におまかせの役所の人である長谷川は「子育てに絶対はないから・・・」と優しく諭すのだった。

そうなのである・・・すべてが淡々と・・・そういうのもありじゃないの・・・という展開で進むのがこの脚本家の持ち味なのである。まさにお茶の間におまかせ気質なのである。

で・・・どんな育て方をしようと・・・人はそれぞれに育つ・・・というお話しである。

虎太郎は明るく前向きに育ち・・・幸也はちょっと拗ねた目をしていた。

で・・・虎太郎は華子の工場に就職・・・幸也はミュージシャンになりたかったのだが・・・レストランに就職。

しかし・・・幸也は明らさまに嫌われ役の上司を殴って退職である。

そこで・・・連絡を受けた華子は工場を飛び出していく。他にも子供が家出したり、子供が将棋の駒を飲んだりすると飛び出します。

ここで・・・とてもある種の人々には耐えられない場面になる。

幸也は路上でライブをしていた。それを見守る華子は・・・雨も降っていないのに赤い傘と紙袋に入った手作り弁当を持って立っている。やがて・・・振り出す雨・・・華子は唐突に紙袋を幸也の側に置くとそれに傘をさしかけて去って行くのである。天気予報見たなら自分の分も持ってくるべきだろう。

とにかく・・・そんなことやっているので・・・工場は傾きます。とにかく・・・技術開発とか・・・設備投資とか・・・営業努力とか・・・そういう努力とは無縁な華子です・・・趣味の子育てで手一杯なのです・・・とも言えるわけだが・・・底辺というものは結局・・・そういう意味不明な善意で支えられている側面もあるわけです。・・・まあ・・・いかにも危ういのですが・・・もちろん・・・そういう人を脚本家は描きたいのですから仕方ありません。

そうした・・・様々な問題を暗示しつつ・・・突然・・・二年経過です・・・おいおい。

すごいのは・・・二年たっているのに子役たちはそのままである。栄養失調なのか。

まあ・・・メルヘンの世界にとやかく言ってもな。

そして・・・里子を卒業した二人にも転機が訪れていた。

虎太郎の前には実母(山下容莉枝)が現れ金の無心である。虎太郎は工場のお金を使い込んでしまう。

幸也は恋人(中村ゆり)と同棲中・・・恋人が妊娠して・・・なんとなく気が重い。

幼い頃の幸也(吉川史樹)は実父から家庭内暴力を受けていた・・・その古傷が疼くのである。そんな父親を激しく求める幼い頃の自分を・・・幸也はまだ心に飼っているのである。

ここで・・・工場の資金を盗んだのは誰だのドタバタがある。

「お母さんは立派だけど・・・里子は裏切る・・・もうやめてよ」と実子である紀世子の本音を聞かされる華子・・・そして・・・工場の倒産も回避不能に・・・。

華子はすべてを投げ出しました・・・。

そして・・・幼い里子たちは・・・新しい里親のもとへ去っていきます。路面電車の駅での別れ・・・「オカン・・・いい子にするから・・・置いといて・・・」・・・「ごめん」・・・とにかく・・・演出家は路面電車にこだわっているようです。

引っ越しの整理で華子の里親日記を発見する紀世子は・・・細かく書かれた日常にちょっと感動します。・・・多忙を極めているのに日記まで・・・まあいいでしょう。

里子の家族たちが消えたがらんとした部屋。職を失った従業員の庄内(六平直政)が「いれば鬱陶しい、いなければ淋しい・・・それが家族ってもんでさ」と紀世子の心情を代弁します。まあ・・・正論です。

そして・・・なんとなく・・・成り行きでパパになった幸也に紀世子は日記を渡すのです。

日記を読んだ幸也は・・・そこに愛があると信じ・・・幸せになりました・・・そして背中で泣くのです。

これに対応して・・・華子は感極まると別室に泣きにいくという描写があるのですが・・・そういう演出はなかなか・・・好ましい。

それにもかかわらず・・・工場が売れた日・・・結局、資産家だったのです・・・虎太郎が全員集合をかけて・・・華子の前に集結。新しい家族・・・里嫁・・・里孫を披露して・・・華子を泣かせて幕です。

一応・・・孤児への行政の対応について永坂が軽く反省を口にする場面がつけたされ体裁を整えます。まあ・・・終わりよければすべてよし・・・ということなのでしょう。

まあ・・・なんだかなあ・・・と微妙な気持ちになることは間違いないと考えます。

とにかく・・・キッドとしては戸田恵梨香が「バナナ食べる?」などの珍セリフを連発していたので楽しかったです。

関連するキッドのブログ『戸田恵梨香のコード・ブルー

木曜日に見る予定のテレビ『七瀬ふたたび』(NHK総合)『夢をかなえるゾウ』(日本テレビ)『風のガーデン』(フジテレビ)・・・三本立てか・・・逃げられないのか・・・。

ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。

皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

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