デッドリー・フレンドは電気クッキーの夢を見るか?
おいおい・・・いつのオンエアなんだよ・・・ってくりかえしのギャグか。
まあ・・・気がつくと・・・今年の夏は「魔王」以外はほとんどホラー色がなかったので・・・ってダブルでくりかえすのかよっ。
久しぶりに(タレント名)のないタイトルだなあ・・・。
で、『デッドリー・フレンド(1986米国映画)』(日本テレビ080909AM0229~)原作・ダイアナ・ヘンステル、脚本・ブルース・ジョエル・ルービン、監督・ウェス・クレイヴンを見た。深夜映画の香りは時々異臭がするもので・・・いかにも匂う映画なのである。この映画を見て・・・脚本家が・・・「ジェイコブズ・ラダー」や「ゴースト/ニューヨークの幻」(1990・アカデミー脚本賞)の人だと気がつくと・・・思わずニヤリとすると思う。そして監督が「エルム街の悪夢」や「スクリーム」の人だと気がつくと・・・またも思わずニヤリとするのである。そしてヒロインを演じるクリスティ・スワンソンが「地獄のハイウェイ」(1991)のレイチェルを演じていることに気がつくと・・・さらにニヤリとするのである。しかも・・・ものすごくB級映画で・・・あらためてニヤニヤするのである。まあ・・・人によっては吐き気を催すのでご注意ください。
天才少年科学者ポール(マシュー・ラボートー)は15歳で大学医学部の特待生となり・・・学園に秘書の職を得た母とともに学園都市に引っ越してきた。まあ・・・80年代ではあるが「デスパレードな妻たち」の住むようなほどほどに高級な住宅街です。彼は自分が開発した思考する電子頭脳を持つロボット・BBをペットにしている。・・・どれだけ天才なんだ・・・。
すぐに新聞配達の少年トム(マイケル・シャレット)と知り合い・・・街の不良たちを怪力も持っているBBにより撃退したりします。トムはポールを天才と知りながら・・・普通の友達として接してくれるいい奴で・・・ちょっとおバカさんです。
トムが「巨乳」と呼ぶ・・・ポールの隣家の少女サマンサ(クリスティ・スワンソン)を一目見るなり胸のときめきを感じるポール。サマンサもまんざらではないのですが・・・彼女と二人暮らしの父親は・・・暴力的で・・・酒飲みで・・・かなりイカレています。現在なら間違いなく親権を剥奪されるタイプ。どうやら・・・妻との間には暗い過去があるようです。
さらに・・・お向かいさんは一人暮らしの老婆・エルビラ(アン・ラムジー~1988故人・「グーニーズ」(1985)の意地悪婆さんである)で・・・まったく人を寄せ付けずあやまって庭に入ったバスケットボールを取りに行こうとしても猟銃で狙いをつける悪逆キャラである。
前途洋々のポールだが・・・周囲は悪意に満ちているのだった。
市販のクッキーを持ってポールの家へ遊びに来たサマンサを父親が凶悪な顔で迎えにくる。
その夜・・・サマンサの寝室には父親が忍び寄る。目覚めたサマンサに暴行を働こうとするのである。「パパやめて・・・さわらないで」「へへへ・・・触ってやる触りまくってやるぞ」「キャー」っとサマンサはベッドサイドの花瓶をたたきわり・・・花瓶の首の部分を父親の腹に突き刺す・・・管となった花瓶の首から血液が脈打つたびにほとばしるのである。絶叫するサマンサに・・・父親は「ははは・・・そんなことで俺を殺せると思うのか・・・俺は不死身だ・・・あはは・・・あははははは」・・・夢でした。しかし・・・娘にこんな夢を見させる父親が尋常ではないのは確かです。
そんな・・・不幸な環境にあっても・・・ポールやトム・・・そしてBBと遊ぶサマンサは無邪気な笑顔を浮かべます。日本版なら・・・妄想が広がりすぎたのでやめておきます。まあ・・・山田太郎ものがたりの三人が無難か・・・。しかし・・・巨乳となると・・・やはり・・・やめておきます。
ハロウィンの夜。悪戯に出かけた三人はエルビラの家にピンポンダッシュを仕掛けるが・・・逃げ遅れたサマンサを庇おうとした・・・BBはエルビラの猟銃で無惨にも破壊されてしまいます。発案者のトムは責任を感じますがだからといってなす術はありません。
BBは死んだのです。もう・・・このあたりから・・・家族で楽しむ映画ではないムードが漂いはじめます。
ポールと理解のあるポールの母親にお呼ばれして・・・サマンサが家に戻ると酔って寝ているはずの父親が待ち構えています。父親は娘をなぐりとばし・・・娘は二階から階段を転がり落ちます。痙攣して意識を失った娘に父親は「ふざけるな・・・死んだ真似なんかしても・・・俺はだまされんぞ・・・この売女が・・・」・・・夢・・・ではありません。
救急車で病院に運ばれた時にはすでに脳死状態です。そして父親は「事故だった」と言い警察もあっさりそれで処理します・・・恐ろしい80年代のアメリカです。
悲しみにくれるポール。24時間後に生命維持装置が停止され・・・サマンサは世を去って行くのです。
しかし・・・天才科学者であるポールはあきらめませんでした。ひそかに開発していたBBⅡの電子頭脳を使い・・・サマンサの蘇生を試みることにしたのです。しかし・・・人体実験なので・・・さすがに80年代のアメリカでも公式には許されず・・・トムを誘って死体を盗むことになります。トムはビビりますが・・・BBのことを持ち出され・・・承諾します。
母親に一服盛って昏睡させるポール。このあたりがスタッフたちのある種の暗いテイストです。母親に一服盛るということをしないではいられないのでしょう。特にトムは眠っているだけの母親を「死んでいる」と騒ぎたて・・・目覚めた母親を異常に驚愕したりします。
・・・ともかく・・・父親の要望で予定より早く・・・生命維持装置をはずされ・・・名実ともに死体となったサマンサを二人はなんとか取り戻し・・・ポールは手術によって・・・サマンサの脳に電子頭脳・・・まあ・・・携帯の基盤よりもシンプルな感じのLSI(集積回路)を埋め込みます。電源はリモコンでオンオフできるのです・・・ちなみにギャグではなく・・・マジですから。
そして・・・蘇ったサマンサは・・・かっての快活な少女ではなく・・・生まれたての思考するロボットになったのです。そして・・・指も満足に開けないのにものすごい怪力だったりします。
さて・・・脚本家は後に・・・「ゴースト/ニューヨークの幻」という非常にロマンチックなラブストリーを書くわけですが・・・同時に・・・「ジェイコブス・ラダー」というベトナム戦争で幻覚剤中毒になった男がフラッシュバックによって・・・現実と幻想の境界に飲み込まれていくという恐怖も描いています。いわば・・・この「デッドリーフレンド」はそのカクテルというか・・・分裂前の母体と言えるわけです。
母親の目を恐れ・・・ゾンビのサマンサを物置にかくまうポールは・・・幼い少年と天才科学者が同居した存在ですが・・・表情を失ってもなお美しいサマンサの内部では「何か得体の知れないもの」が成長し始めているようです。
最初は身動きも困難だったサマンサはやがて・・・ポールの留守の間に自分の家に戻ります。地下室で父親を待ち伏せたサマンサはものすごい怪力で父親を締め上げ・・・復讐を果たすのです。
どうやら・・・サマンサの記憶と・・・BBの記憶が混在して・・・彼女を動かしているようなのです。
ポールはなんとか・・・母親の目からサマンサを隠そうとしていますが・・・もはや・・・思春期の少年の願望を大きく越えた存在と化しつつあるサマンサは・・・エルビラの家に侵入し・・・バスケットボールを投げつけエルビラの頭部はスイカ割りのスイカのように砕け散ります。ギャグではなくマジなのですが・・・まあ・・・ある意味爆笑ポイントです。
連続殺人犯となったゾンビ・サマンサを警察が追跡し・・・それをなんとか阻止しようとするポール。しかし・・・目の前で人間をパトカーに向かって投げつけたサマンサを警官たちはもはや化け物としか思えないのです。
ようやく・・・サマンサがポールを・・・愛しい恋人と認識し始めたとき・・・警官の弾丸がサマンサの第二の人生に終止符を打ちます。
ここで・・・終れば・・・それなりに哀愁の結末ですが・・・監督はウェス・クレイブンです。
死体の冷凍補完室に忍びこんだポール。サマンサをもう一度復活させようと意欲満々です。しかし・・・その場で目覚めるサマンサ。突然・・・ポールの首をしめにきます。不意をつかれて愕然としつつ・・・抵抗するポール。サマンサは・・・「ポール」と名を呼ぶと・・・顔面の皮膚がさけ・・・内部から金属的なロボットBBの骨格が現れます。細胞が突然変異してメタリックになったのです・・・もはや・・・超自然・・・魔法の領域に突入したサマンサ/BBは・・・「私のところへきて・・・」とポールに呼びかけます。生と死のはざま・・・夢の領域へ・・・ポールは・・・暗転です。
ああ・・・もちろん・・・フランケンシュタインの怪物の・・・子孫ですが・・・必見のB級映画なんだな・・・これが。
関連するキッドのブログ『メアリー・シェリー』
木曜日に見る予定のテレビ『キャットストリート』(NHK総合)『夢をかなえるゾウ』(日本テレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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