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2008年12月28日 (日)

自分で自分が許せないあなたにトンスラ頭上の煙草の煙輪(吉高由里子)

今年最後の連続ドラマのレビューが「トンスラ」である。

こういうのもひとつのめぐり合わせなのだな。

年末に謎の死を遂げた美人がいて・・・美人薄命なのであるが、その人と実際に会ったことがあるのかどうしても思い出せない。実際に会った人々と一緒にいた気もするし、それはモニターの向こうの出来事だったような気もする。袖触れ合うのも他生の縁というが、袖振り合うのも他生の縁である。触れ合えば出会いであり振り合えば別れである。そういう縁が今生であったかどうか思い出せないというのは不義理なことだ。

もしも袖触れ合っていて覚えていないとすれば不義理を感じる。

自分で自分が許せないのだが、袖触れ合っていないとすればその責めの気持ちが空振りでみっともない。

それはそれで許せないのである。

自分で自分を追い込むというシステムがある。普通の人が普通の人以上の働きをしようとするときに役に立つシステムだ。心の火事場の馬鹿力である。ふりかえって「よくあんなことができたなあ」と思うようなことを為すシステムである。

しかし、心のシステムというものは常にコントロールが効くものではない。特に「自分で自分を追い込むシステム」はかなり危険だ。何しろ普通でないことをするためのシステムなのである。

それが「自分を苛む」方向で発動すると・・・かなり危険なのである。

ここに「なまける」を挿入してみよう。もう自分で自分を怠けさせる方向に追い込むのである。なまけてなまけてなまけてなまけまくるのである。必死になまけている。

それなのに人からは「なまけもの」にしか見えないのだ。

これは・・・ものすごく苦しいです。そしてそんなことで苦しんでいるのはいかにも愚かに見えることなのである。少なくともあえてなまけることのある人には理解しがたいことなのだな。きっと。

で、『トンスラ・最終回』(日本テレビ081228AM0020~)原作・脚本・都築浩、演出・仁木啓介を見た。「トンスラ!」と銀河万丈がタイトルコールをするこのドラマ。トンスラとはキリスト教徒に見られる頭頂部を剃髪したヘアスタイルのことである。もちろん、ハゲた教会のえらい人が自分だけハゲているのがいやなので信者に強要した結果である。

この物語の登場人物・文芸誌編集者のヤブ(温水洋一)はキリスト教徒ではないがただトンスラ風に禿げている。このヤブを書けなくなった元女子高校生作家のミカが自暴自棄の一貫として監禁し、擬似同棲生活を送るというシチュエーションである。

ミカは世間に追い込まれ、自分で追い込み、自己破壊衝動にむかってまっしぐらなのであるが・・・ヤブというどう考えても追い込まれるべき人間と接することで心のバランスを保っている。

「書けなくなった作家はおしまいなんだよ」とミカは常に死の誘惑にさらされている。

もちろん・・・そうなるためには複雑な背景があるのだが、ミカの場合は怪しい新興宗教の幹部の娘として生まれたことがすでに十字架となっている。生まれついての病や、不幸な生い立ち、そして若気のいたり・・・こうした「あやまち」と「不可抗力」の狭間の出来事は人に時には深刻なストレスやダメージを与えるものだ。

ころんでも打ち所が悪くて死にいたることがあるように・・・ほんの些細な出来事の心の打ち所が悪ければ致命傷になるのである。

本来、宗教とはそういう人々の心を癒すためのものだが、当然、宗教自体が新たなトラウマ発生源になることもある。

「さわらぬ神にたたりなし」というのはまことに真理なのである。

さらにミカは「失恋」という普遍的な打撃を受けている。ミカの失恋相手はもうすぐ別の女性と結婚する予定である。

「仕事」と「恋愛」の両方から裏切られたミカは「なんとか作品を書こう」「なんとか恋人を取り戻そう」と足掻くが水底は深く・・・ミカの心の力は「もう限界」なのであった。

「ふられた適齢期を過ぎた女に未来はないんだよ」なのである。

こうやって追い込まれていくミカはいわゆる「鬱」の病になっていく。

現代では薬品投与によってある程度、鬱の症状は改善するが・・・それには限界がある。

薬品投与によって改善されるのはいわばハードの領域である。

ソフトの領域は一時、沈静化してもすぐにぶり返すだけの病としての抵抗力がある。

そして、複雑なソフトを持つものほど、その治癒は困難なのである。ソフトのお医者さんは知性的に問題を解決しようとするが・・・多くの場合、重病な心の患者はお医者さんをはるかに凌駕する知性を持っているからだ。厄介なことだ。

そして内面的に追い込まれたミカを外部から激しく攻撃するのが現役女子高校生作家・マイ(加護亜依)なのであった。マイは汚れた現実とたやすく寝ることのできる女として描かれ嗜虐の喜びをもってミカに引導を渡そうとする。神々しいばかりの悪逆キャラクターである。最初の父親役だった加瀬大周が現実というフィクションの中で逮捕され羽場裕一にチェンジしたようにスキャンダルを反映するフィクションの中でキッパリ!したキャスティングである。

とにかく・・・ミカは自分自身とマイによって心の崖っぷちに絶たされたのだった。

そこにまったくやる気もなく立ち向かうのがヤブなのである。

職場の自分のデスクの引き出しにお子様ランチを詰め込まれるほど愛されるべきいじめられっ子キャラであるヤブは・・・立場をわきまえないマイペースぶりでミカの心のしこりをほどきにかかるのだった。

そのマイペースぶりは心霊現象によって他人の乳首を移植されてもそれほど動ぜず、東に親に殺されそうになる子供があれば成り行きで助け、西に子供に殺されそうになる親がいればババ抜きで救うのである。

ある意味・・・超人なのである。その超能力は人々に「こいつでさえ生きているのに・・・」とある種の諦念を喚起させるのだった。もちろん・・・「・・・もう死のう」という引き金になる場合もある。

しかし・・・「家族殺し」予告たてこもり犯人に精神的に同調し、シンクロ率が限界を超えようとしたミカを現場で偶然事件に巻き込まれたヤブが救う。

現場の出来事の「真相が知りたい」という人の生きる原動力を回復したミカは・・・煙草の煙が輪になってヤブの頭上に浮かんだとき・・神秘的な体験をする。

ヤブに天使を見たのだった。

真っ赤に染まったミカの心に白い光が差し込み・・・ミカは死の淵から這い上がる。

少なくとも・・・今日のところは・・・。自分を責めるのを忘れ、誰かに手を差し伸べてみたりして・・・。昔の自分に目をつぶって。良くも悪くも人は『染まるよ』(チャットモンチー)と思いつつ。

大人だから一度くらい 煙草を吸ってみたくなって

月明かりに照らされたら 悪い事してるみたいだ

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ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。

皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

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受信: 2008年12月29日 (月) 19時50分

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