風のガーデン幻想結婚式に呼ばれない愛人たち(黒木メイサ)美辞麗句大賛辞の宇宙(小西真奈美)おみやさん(遊井亮子)
故・緒形拳はテレ朝で「迷宮課刑事おみやさん」(1985)で鳥居勘三郎を演じている。ちなみに洋子は小手川祐子だった。さらに「六本木ダンディーおみやさん」(1987)でも鳥居勘三郎を演じている。ちなみにタマは園佳也子だった。人に歴史ありなのだが・・・最後のドラマの番組表に「おみやさん」があるのは不思議な宿縁を感じる。すでに原作者の石ノ森章太郎が「あのよ~」に逝ってから10年の月日が過ぎ去っている。
最終回の連打となった「小児救命」↗*7.0%、「風のガーデン」↗17.6%である。「風」は08年秋ドラマの暫定・首位。「流星の絆」がどこまで追い上げるか・・・その差*0.1%弱である。
渡瀬恒彦の「おみやさん」は↘10.9%、「夢をかなえるゾウ」は↗*3.6%である。ちなみに「ゾウ」は今季の日テレのドラマでは一番脚本が安定している。キャスト数がシンプルだからか。ついでに「渡る世間は鬼ばかり」は↗14.4%で「小児救命」を最後まで楽にさせてくれなかった。
視聴率的には2008年のヒロインベスト10は暫定で次のようになっている。
①宮崎あおい(篤姫)24.4%
②仲間由紀恵(ごくせん)22.6%
③加藤ローサ(CHANGE)21.7%・・・意外だ。だから深津絵里だろうがっ。
④八木優希(薔薇のない花屋)18.6%竹内結子だろうがっ。いや本仮屋ユイカだろうがっ・・・もめるなよ。
⑤長澤まさみ(ラストフレンズ)17.7%・・・上野樹里だと思う人もいます。
⑥新垣結衣(コード・ブルー)15.7%・・・比嘉愛未だと感じる人がいます。
⑦黒木メイサ(風のガーデン)15.7%
⑧戸田恵梨香(流星の絆)15.6%
⑨観月ありさ(斉藤さん)15.5%
⑩村川絵梨(ROOKIES)14.8%・・・ある意味キセキである。
数字ってマジックですね。でも面白い。ちなみに連続テレビ小説のヒロインは除外しました。数字的には三倉茉奈 ・佳奈、貫地谷しほり、榮倉奈々でベスト10下位にからんできます。除外理由は年度がまたがったりしていて計算が面倒なので・・・です。「相棒」と「渡る鬼」については言及をさけます。
で、『おみやさん・第7話』(テレビ朝日081218PM8~)原作・石ノ森章太郎、脚本・塩田千種、演出・吉田啓一郎を見た。ゲストは「コードブルー」の網タイツのオペレーターでお馴染み遊井亮子、犯人は藤真利子である。洋子は櫻井淳子、おたまは菅井きんだ。
今回の犯人は横恋慕している宮大工の棟梁の夫人を殺害し放火。棟梁の娘の母親代わりとして何食わぬ顔で生き、犯行発覚しそうになると刑事を殺害(未遂)する女(藤)の話である。
女「だって棟梁の奥さんは浮気していたんですよ・・・それにもう少しで棟梁の夢だった仕事が完成するんです・・・」
右京さんならガクガクブルブルしながら「だからといって殺していいことにはならないんですよー」と恫喝するところだが。
おみやさんは「まあ・・・やってしまったことはしょうがないよねえ」なのである。
この緩さがおみやさん。ちなみに事件のために一夜にして白髪になってしまった娘の渾名「白いカラス」とギリシャ神話に登場する密告者の代名詞としての「白いカラス」を刑事殺人未遂にもう少し上手にからませることができたはず・・・。
女「あの刑事はかわいい棟梁の娘を・・・白いカラスって言ったんです・・・キーっ」
おみやさん「そりゃ・・・違うよ・・・刑事はあなたのことを言ったんだ・・・密告者としての白いカラス・・・奥さんの浮気を棟梁に告げ口しようとした・・・あなたのことを・・・」
女「え・・・」
おみやさん「だって・・・刑事と棟梁の娘は好きあっているんだぜ・・・」
・・・みたいな。今年のおみやさんの最高視聴率はここまで15.0%の第二話。ゲストは貫地谷しほりである。
で、『小児救命・最終回』(テレビ朝日081218PM9~)脚本・龍居由佳里、演出・片山修を見た。なんて言うか・・・ずーっときれいごとなのである。すべての登場人物が歯の浮くようなセリフを言い続ける・・・それがもう・・・ひたすら心をすり抜けていく脚本になってしまっている。なんだろう・・・かっては「誰が一番いい人か決定戦ドラマ」の「星の金貨」で心を打ちまくった脚本家なのに・・・ふと気がつきました・・・「星の金貨」の主人公・倉本彩(酒井法子)は・・・「小児救命」の主人公・宇宙(小西)と同様に捨て子だが・・・さらに耳と口が不自由なことを・・・。
一番いい人がしゃべれない・・・これです。これが欠けているのです。
宇宙は・・・自分がネグレクト(育児放棄)された過去の傷心をひめつつ「子供の命が何よりも大切なのです」と自己主張を展開する。この正論に周囲がケチをつければまだしも・・・全員が宇宙に感化され・・・自己犠牲の阿修羅と化して行く・・・。
なんじゃ・・・こりゃ・・・なのです。
前回「現場の苦労とかを知らずにすぐたらいまわしって言う」とマス・メディアを小児科医の立場から批判した宇宙。
そのため・・・敵意満々で取材にやってきた雑誌記者・結城広美(ゲスト・高橋由美子)も宇宙をインタビューした途端に宇宙の虜になってしまい・・・宇宙を絶賛する記事を書きます。なんじゃ・・・そりゃ・・・。
レギュラー陣で唯一、宇宙の病的な「なにがなんでも小児救命」を批判した医師・相馬(正名僕蔵)は早々に物語から退場し・・・最終回でひっそりと皮肉を口にするだけです。
本来、「他人の子供の命よりも自分の生活が大切だ」という宇宙の対抗馬として相馬がずっと戦うべきだったと考えます。
しかし・・・結局・・・たどりついたのは・・・経営困難によって細々と営業を続ける宇宙・俊介(塚本高史)夫婦の青空クリニック。そして影からそれを支える志高いすべての小児科スタッフです。・・・予算がないので結婚式はカットです。
もちろん・・・産婦人科の次に小児科があって・・・様々な医療の果てに終末医療がある。
この人生の序盤の医療の問題点に焦点をあてたこのドラマは正論を展開するのですが・・・正論すぎて面白くないという・・・エンターティメントとしての最大の欠陥を克服できなかった模様。なにしろ・・・最後は人海戦術です。何の資格もないボランティアがケアレスミスをして・・・子供の命が危機にさらされる未来が簡単に予想できるのです。
まあ・・・貧乏が最大の敵・・・というのが・・・もう少し描ければなあ。
給料のない宇宙・俊介夫婦。子供たちの命には代えられないと・・・住居を追われ・・・ホームレス医師に・・・パンの耳をかじり・・・公園の水道の水を飲み・・・いざ出勤・・・白衣の下はハダカ。だって究極的にはそういう話になるじゃないですか。そうなるともう少し変な視聴率がとれたはずだ・・・とれるかっ!
で、『風のガーデン・最終回』(フジテレビ081218PM10~)脚本・倉本聰、演出・宮本理江子、タイトル題字・緒形拳、音楽・吉俣良を見た。たとえば・・・人間は病院で死ぬべきか、家庭で死ぬべきか・・・という主張があったりはする。しかし・・・ドラマの魅力というものはそれが主眼ではない。そういう隠し味を使いながら・・・魅力的な息子・・・魅力的な娘・・・魅力的な父親・・・魅力的な祖父・・・魅力的な人間の集う魅力的な家庭を描くと・・・もう魅力的なドラマにならざるをえないのである。こうなるともう・・・うっとりと見ます。うっとりと見るしかないのです。そして・・・緒形拳は先立つ息子を持つ父として・・・厳格な祖父として・・・地方の名もない医師として・・・輝く笑顔を残して去っていきました。うっとりと寂しさを感じます。
今回は・・・その魅惑的な家族になれるのは家族だけ。他人は介入を許さないという貞三(緒形)と貞美(中井貴一)の父子の絆が美しく描かれていきます。発達障害のある息子・岳(神木隆之介)は疎外されますが・・・それもはっきりと理由がしめされています。岳の繊細な精神は父の最期の戦いに参戦するにはデリケートすぎるからです。
そして・・・祖父と父の願いは・・・男の考える理想の母親像としての・・・娘(黒木メイサ)の訓練に注がれるのです。母は子供が便秘になれば口で吸出し、親が便秘になれば指で掘り出す・・・それがあるべき姿という主張です。口でしてもらった後キスをこばむような男は根性なしなのです。
そのために・・・数々の不始末をしでかした貞美は女のもうひとつの形・・・愛人に決別を余儀なくされます。家族よりも愛欲を選んだ男が誘惑に負けた自分よりも愛人に苦渋をあたえる展開は男の我儘ですが・・・それを許さないのは女の罪と相場が決まっているのです。
第一の刺客はダブル不倫看護師長・一人愛の残り火・妙子(伊藤蘭)。もはや貞美の心は残酷なまでに妙子を女としては見ていないのですが・・・最初から最後まで妙子はそれを悟ろうとはしません。「不治の病に冒されたから私を悲しませまいと遠ざかっている」くらいは平気で考える愛のヒロイン体質です。もちろん・・・人として貞美は妙子とすごした愛の日々には感謝しているので決別のための最後の手紙をしたためる優しさをみせます。「君とはもうこれきりだ」という手紙です。しかし、自分の愛の誘惑に絶対の自信を持つ妙子には通じません。ついには北海道になにもかも捨てる覚悟で来襲です。
それをやんわりと受け止める貞美の姉(木内みどり)と貞三の防御ライン。
家には一歩も踏み込ませず・・・近所の喫茶店で穏やかに門前払いです。
妙子「一目逢いたいのです」
貞三「お気持ちはありがたいが・・・バラバラだった家族がようやく一つになろうとしているのです・・・あなたは邪魔なのです」
妙子「・・・私が来たって伝えてよ」
貞三「伝えます・・・しかし・・・息子もあなたには逢いたくないと言うでしょう」
妙子「・・・・・・・・・(退場)」
すでに死期を迎えた秋の貞美。死神・二神(奥田瑛二)の死への誘いは数cmの距離まで接近しています。
それを現世につなぎとめるのは献身的な介護をする最愛の娘ルイ(黒木)です。どうしてもギャグを言いたいのです。
貞美「夕陽のガンマンだ・・・」
ルイ「末期ガンの男ってこと?」
貞美「夕陽が顔にって言ってるだろ・・・夕陽の顔面だよ・・・」
ルイ「私・・・その映画・・・見たことないや・・・」
貞美「・・・映画のタイトルって分るだけで・・・うれしいよ・・・」
ルイ「さあ・・・芋ほりすっぺ」
貞美「・・・(やや赤面)」
すでに・・・生臭い性生活からは足を洗った貞美ですが・・・最後の愛人・氷室茜(平原綾香)のことはちょっと心残りです。妙子と違ってまだ飽食したわけではないからです。いろいろと考えますが・・・娘が父親の愛人をどう思うか心配です。しかし・・・と思います。相手が芸能人だから・・・特別にOKかもと思います。
「お母さんのカンパニュラの押し花を・・・私が死んだら贈ってほしい人がいる」
娘は躊躇しますが・・・相手がヒット曲の歌手だと知ると快諾です。人間、ミーハー気質が基本だからです。
そして・・・自宅で療養を始めて一月たらず・・・貞美は旅立ちました。
貞美「もしも生まれかわったら・・・またあなたの息子になりたい・・・一緒にテレビでも見ましょう・・・」
貞三「いいとも・・・」
貞美「僕は病気を治す医者じゃなくて・・・麻酔医であることを・・・今は・・・麻薬増量お願いします・・・」
貞三「・・・いいとも・・・」
そして風になった貞美は・・・この世とあの世の狭間に住む息子・岳の心を吹き抜けていきます。
息子の死後・・・貞三は寂しさを胸に息子の最初の愛人に理容師の洗髪を受けます。
エリカ(石田えり)の女優魂炸裂です。
貞三にとってエリカは息子が世間にむけて悪いことをした最初の存在。エリカの父親があの世で待っているかと思うと今でもドキドキします。
貞三「キミのお父さん・・・許してくれるかなあ・・・」
エリカ「・・・男と女のことは・・・どちらがいいとも悪いとも・・・韓国なら姦通罪がありますけど・・・ここは北海道だし・・・私にとっては・・・みんな・・・いい思い出です」
貞三「ありがとう・・・ありがとう・・・」
そして・・・雪虫とか雪とかプロモーションビデオとか・・・あって・・・仔犬が大地から生れる春。北海道ではよくあることです。
そして・・・テクラ・バダジェフカ作曲「乙女の祈り」に包まれて岳とルイは旅立った父親からの最後の贈り物・・・エゾエンゴサクの秘密の花園にうっとりするのでした。
もちろん・・・その頃・・・あの世では正妻に地獄の拷問を受ける貞美を到着したばかりの貞三が呆然と見つめているのでした。
関連するキッドのブログ『先週の木曜日のレビュー』
土曜日に見る予定のテレビ『ブラッディ・マンデイ』(TBSテレビ)『南沢奈央の赤い糸』(フジテレビ)『トンスラ』(日本テレビ)『藤沢周平の花の誇り』『アグリー・ベティ』(NHK総合)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
こちらは 私の米滞在10うん年初の大雪で、閉じ込められております。
風のガーデン、この脚本家さんのドラマを通して見たの、実は初めてです。と申しますのも 今迄、この方のテンポと、多分、笑いの相性が悪い感じだと勝手に思い込んでいたので。
しかし、このドラマの貞美には かなり惹きこまれました。叉 元来、SF、ホラー、ファンタジー好きの私には 生と死というテーマも入り易かったのかも。
白衣、不倫、悪い男(なのに憎めない)花言葉、ピアノ、名曲、可愛い障害のある男の子と 女がメロる部分も盛り沢山な一方 日本の男の 理想の生き方と死に方みたいなものがメロウで淡々としていて 非常に興味深かったです。
投稿: Juellie | 2008年12月20日 (土) 07時03分
東京もしんしんと冷えておりますよ。
しかし・・・やはり亜熱帯ですからね。
大雪、くれぐれも転倒、遭難、凍死などにご注意ください。
しかし、北海道を舞台のこのドラマを見るには
最適かもですな。
今年降るはずの雪を見れるファンタスティック。
キッドは若い頃から倉本聰に笑わせてもらってました。
前略おふくろ様とかは今でも思い出し笑いを
することがあります。
「サブちゃん・・・使ってる香水教えて」
「ヘチマコロンっす」
みたいな。
そうですね。人間ドラマは生(性)と死(妄想)。
死に傾けばSF、ホラー、ファンタジーに
自然と向かっていくもの。
物語には
こういう洞察は必要でございますものね。
まあ倉本聰がSFを書いている意識があるかどうかは
別にしましても。
ふふふ・・・メロる記号満載なのですな。
人はよからぬものに萌えますからな。
不実だからロマンなのですな。
まあ・・・日本に限らず
マザコンで始まり娘萌えで終る。
これが男の性生活というものでしょう。
女なんて常に母や娘の代替物なのです・・・おいおい。
つまり・・・娘を持たない男は人生半分損したも同然。
・・・というようなドラマでしたね。
まあ・・・娘にウザいと言われるのも快感という
男性も含めてですけれども。
投稿: キッド | 2008年12月20日 (土) 19時40分
この作品は最後まで楽しませてもらいました。
この作品を見てると過剰な演出や過剰な見せ方や
説明的な台詞回しに頼らなくても人の心を動かす事が出来る
こうした作品を作る事で
今の医療の現状を憂う貞三の言葉が
今のテレビドラマの現状を憂う思いが感じられると共に
こうした作品の心は
まだ役者にもスタッフにも息づいているという事が感じられます。
だから今までの流れを受けてエリカと貞三の会話が
濃密なものに見えてくるんでしょうね。
実はエリカと貞三が男女の関係だったら
それはそれですっごい面白かったりしたんですが(笑)
それだとドラマの雰囲気が壊れてしまいますかね(; ̄∀ ̄)ゞ
投稿: ikasama4 | 2008年12月21日 (日) 17時37分
脚本は設計図でございますから
部品の精度というものを念頭に置く必要があります。
もちろん・・・どんな部品でも
それなりに機能する脚本も素晴らしいのですが
この部品の精度があれば
限界性能の上限を極限までひきあげることができる
というような特殊な設計図を書くのが名人芸。
貞三と妙子。
貞三と貞美。
貞三とエリカ。
この三点は究極の仕上がり具合でした。
ルイと貞美
ルイと茜
ルイと岳
・・・はギリギリ・・・ト書き押しです。
茜の部分は唯一・・・筆がすべりかけたけどセーフ。
歌唱力が計算されていますからね。
もちろん・・・役者魂の輝きは
太陽となって惑星や衛星を輝かせるのですな。
ふふふ・・・貞三とエリカの性生活についは
秘すが花というものでございましょう。
まあ・・・もう一人のえりとの関係だと
風のガーデン炎上でしょうが・・・。
凶器の魚介類が散乱してたりして・・・。(*´Д`)
投稿: キッド | 2008年12月21日 (日) 19時54分