賢者はサイレントヒルへの道をたどらないが母親は行く。(ラダ・ミッチェル)
年末にホラー映画が似合うのはなぜなのだろう。今年は「エクソシストビギンズ」があり、「サイレントヒル」がある。「天国の本屋・恋火」も「阿修羅城の瞳」も「下妻物語」だって考えようによってはホラー映画なのである。
人間にとって最大の恐怖は「死」であるが、「死」とは「謎」である。人間はその恐怖を克服しようと「宗教」を生み出すのだが、信仰なきものにとってはどんな宗教も「虚構」にすぎない。
イエスが「天国」を語り、ブッダが「涅槃」を諭しても恐怖が去ることはない。
カレンダーという虚構が一年の終焉を迎えようとするとき・・・人々は恐怖におののきながらフィクションの「死」と「再生」に身を委ねたくなるのかもしれない。
で、『サイレントヒル(カナダ・フランス映画2006年劇場公開)』(TBSテレビ081230AM0109~)原作・ゲーム『サイレントヒル』(コナミ)、脚本・ロジャー・エイヴァリー、監督・クリストフ・ガンズを見た。
幼い養女シャロン(ジョデル・フェルランド)の母親ローズ(ラダ)は・・・シャロンが夢遊病で死の危険に晒されることに苦悩していた。夜中に家を抜け出したシャロンが崖から身を投げようとしたこともあり、ローズは愛しい娘を失う恐怖におびえるのだった。
シャロンは覚醒すると何も覚えていないが、夢遊病の症状を呈しているおりに「サイレントヒル」という名を口にする。日本にも静岡はあるが・・・アメリカにもサイレントヒルが実在することを知ったローズは・・・霊的な予感にとらわれ・・・その地に赴くことを夫のクリストファー(ショーン・ビーン)に提案する。しかし、現実的な夫は医学的治療の続行を望むのだった。
しかしホラー映画の常道として愚かな女は危険に向かって直進するのである。
そのためローズは夫に無断でシャロンを連れ・・・実在するサイレントヒルに向かう。
実は・・・その場所は大火災によって廃墟と化したゴーストタウン(幽霊街)だったのだ。
サイレントヒルは火災から30年が過ぎた今でも地下で火災が続き・・・危険があるため封鎖されている。
しかし・・・謎にとりつかれたローズは婦人警官シビルの制止をふりきり、封鎖を突破してサイレントヒルへの道を爆走するのであった。
そのあげくに事故を起こすのだった。
事故による失神から目覚めたローズはシャロンが消失していて・・・自分が空から雪のように灰が降る異様な風景の中に取り残されていることに気がつく。
しかも・・・退路は断崖絶壁になっており・・・ローズは魔界の入り口を通り過ぎてしまったらしい。
あわてて・・・夫に携帯電話で泣きつくローズ。「私がバカだったわ・・・」・・・まさにである。
夫は現地にかけつけるが・・・現実のサイレントヒルとローズが踏み込んだサイレントヒルは別次元に存在し・・・夫婦は再会することができない。
魔界サイレントヒルは怪物たちが彷徨するまったくの異世界(あの世)なのである。
ローズはシャロンを探して・・・魔界の深層へと乗り込んでいく。
この世の夫は・・・妻子の行方を求めるうちに・・・養女のシャロンがサイレントヒル出身であることに行き当たる。そして・・・サイレントヒルの災害にはこの世のものではない何かが関与していることに気がつくのであった。
一方、ローズは怪物たちから逃げ惑いつつ・・・サイレントヒルにかってローズと瓜二つの少女アレッサがいた事実をつかむ。
そして・・・アレッサが迷信的な人々によって「魔女」とされ火あぶりにされたことを知るのだった。
ローズを追跡してきたために魔界に侵入した婦人警官シビルと合流したローズは・・・アレッサの母親ダリア(デボラ・カーラ・アンガー)やその姉で邪教の教祖クリスタベラ(アリス・クリーグ)に出会う。そして・・・サイレントヒルのホテルに悪魔がいることを教えられる。
決死の覚悟で単身、悪魔のホテルに乗り込むローズ。
しかし・・・ダリアとクリスタベラこそがアレッサを火刑にした狂信者だったのである。
困難を乗り越えて悪魔と面会したローズは・・・それが復讐の怨念によってダークサイドに落ちたアレッサであることを告げられる。
全身を生きながら焼かれたアレッサはシャロンとダークアレッサに分離し・・・シャロンは時空を越えて・・・隣町の教会に捨てられ・・・ローズの養女になったのである。
復讐に燃えるダークアレッサだが・・・邪教の人々が聖域である教会を占拠しているために決着がつけられない。そのためにシャロンを呼寄せたのである。母親のローズの胎内に潜伏し・・・教会内部に入り込むというのがダークアレッサの計画だった。
その頃、教団にとらわれたシャロンとシビルは邪悪な人々によって火刑にさらされようとしていた。
悪魔のホテルから邪教の教会へ・・・ダークアレッサを体内に隠してローズが帰還すると、クリスタベラはナイフを振りかざす。
しかし、刺されたローズの傷口からダークアレッサが出現し・・・凄惨な復讐が開始される。しかし・・・それはすでに過去に行われた惨事の追体験でしかない。
アレッサの肉体はすでに滅び・・・邪教の人々も自分たちがすでに悪魔の業火により焼死していることに気がついていないだけなのだった。
すべてが終り・・・帰宅するローズとシャロン。しかし・・・この世に取り残された夫には二人の姿は見えない。
すでにローズもシャロンも魔界にとりこまれ・・・この世のものではなかったのである。
とにかく・・・美しく計算された映像で生きながら地獄めぐりをする楽しさは充分に堪能できる。やがてお茶の間の人々はふと・・・気がつくのである。はたして・・・このお茶の間はこの世のものなのか・・・いやいや死者のまどろみの中にある幻想なのかもしれない・・・と。
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ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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