銭は力ズラ・・・銭は愛ズラ・・・銭がすべてズラ。(松山ケンイチ)
すごいな・・・この時代に「銭ゲバ」を復活させるとは・・・恐ろしい企画力だ。
冬ドラマは・・・意外に凄い爆発力である。
(月)「ヴォイス」【死体】(火)「メイちゃんの執事」【弱肉強食】(水)「相棒」【犯罪】(木)「ありふれた奇跡」【鬱】(金)「ラブシャッフル」【乱交】(土)「銭ゲバ」【拝金】(日)「天地人」【戦国】・・・一日一本に絞ってもかなり殺伐としている。
ついに・・・世界は地獄の闇に覆われたか。
なんとなく・・・微笑みたくなる今日この頃てある。
で、『銭ゲバ・第1話』(日本テレビ090117PM9~)原作・ジョージ秋山、脚本・岡田惠和、音楽・金子隆博、演出・大谷太郎を見た。まず最初に思うことはかってはこれをたくさんの小学生が平気で読んでいた時代があったということである。
原作の初出は1970(昭和45)年であり・・・連載されたのは「週刊少年サンデー」である。原作者はほぼ同時期に人肉食の描写のある「アシュラ」を「週刊少年マガジン」に連載している。まあ・・・センセーショナルといえばそれまでだがそういう時代でもあったのだ。
銭ゲバのゲバはおそらくドイツ語のGewalt(ゲバルト)の略である。ゲバルト本来の意味は①権力 ②暴力 ③威力とほぼ英語のpower(パワー)と同義であるが・・・日本人はこれをことさらにバイオレンス(無法な暴力)の意味で訳すことを好んだ。
当時はまだ世界同時革命の幻想が余韻としてくすぶっており・・・その中核となる思想「暴力革命」が強く影響していたのである。
だから革命を熱望する学生たちの武器である角材や鉄パイプは「ゲバルト棒・・・略してゲバ棒」と呼称され、理想主義にありがちの分裂による内部抗争(殺人を含む)を「内なるゲバルト・・・略して内ゲバ」と呼んだ。
テレビは流行には貪欲なのでお笑い番組に「ゲバゲバ90分」(1969年~)などというタイトルをつけている。
さらに言えば・・・キューバ革命の英雄・チェ・ゲバラの存在もある。ゲバという語感がリアルにかっこよかったのである。
そういう空気の中、日本テレビ系では「細うで繁盛記」(1970)が人気を博していた。原作は花登筺の小説『銭の花』で・・・物語の舞台は静岡県だった。このドラマの冒頭では「銭の花の蕾は血の色云々」というナレーションが入り・・・ヒロインを虐げる敵役の冨士眞奈美が「~ズラ」という方言を連発して一世を風靡するのである。
「銭ゲバ」の生い立ちがなんとなく匂いたつのである。こうして・・・時の流れをこえ・・・あの名セリフ「この世は銭ズラ・・・銭がすべてズラ」が復活するのである。
どす黒い過去を持ち・・・公権力以外の殺人が許されないことを単に法律の問題としか考えない・・・非人権主義者・蒲郡風太郎(松山ケンイチ)は・・・世界資本主義の独走が生み出した出口なき格差社会に突然、蘇ったのだった。
ワーキングプアと呼ばれ、非正規雇用者と呼ばれ、人間外労働者と呼ばれる携帯登録式派遣人材1112号こと風太郎は・・・密かにためた金を盗みにやってきた同僚(田口トモロヲ)を問答無用で殺害する。(ついでに派遣切りを告知する現場監督官は石丸謙二郎・・・「世界の車窓から」と「プロジェクトX~挑戦者たち~」のナレーター華麗なる共演である)
左目周辺に無惨な傷跡を残す若者は「死ぬのか・・・これで不幸から逃げられる・・・お前は生き残ってかわいそうに」と遺言して息を引き取る男に「弱い奴は死ね・・・俺は死なない」とつぶやくのだった。
その記憶の果てに母・桃子(奥貫薫 )の面影があった。
病弱だった母は・・・貧困のために子供(齋藤隆成)の給食費も払えず医者にもかかれなかった。
母は関東では安いベラの煮付けを子供に与えるのが精一杯だった。
母は「大切なのはお金じゃない・・・人の心・・・清く正しく生きていれば神様が守ってくれると」子供に教えた。
そんな母子に金を無心にきた父親・健蔵(椎名桔平 )は暴力をふるい、息子の顔に醜い傷跡を残す。
とある日・・・高級車に水しぶきを浴びせられたのが縁で三國造船の令嬢・緑(森迫永依→ミムラ)と知り合った風太郎は・・・ふるまわれた菓子・マカロンを持ち帰ろうとして幼い緑に泥棒呼ばわりをされる。
呼びつけられた母は謝罪するが・・・風太郎の心を悟り・・・「貧しいのはなんだか口惜しいねえ・・・同じ人間なのに・・・口惜しいねえ」と語る。
そしてその口惜しさを胸に病が高じて・・・風太郎が医者を呼びにいく間に息を引き取る。
孤児のための施設を脱走した風太郎は金を盗み・・・現場を目撃した親切な若者・宏(近藤公園)に説諭され・・・激情にかられ・・・宏を撲殺してしまう。
金のために人殺しをした小学生は闇に吠えるのだった。
キッドの心の中には傲慢さゆえの殺人許可証発行所があるのだが・・・妄想においては風太郎にはこれを無期限で発行します。
やがて・・・どんな時間を過ごしたのか・・・成人した風太郎。
そんな風太郎を・・・宏の兄の萩野刑事(宮川大輔)は疑わしく思っているらしい。
やがて・・・交通事故を装い、命懸けで緑に接近する風太郎。
そして・・・緑には顔の醜い痣に歪む美少女の妹・茜(木南晴夏・・・公式の相関図・・・晴香になっていますよ日テレちん・・・090121修正済みを確認)がいたのだった。ハルハルついにきたーっ。
緑の見守るベッドで蘇生した銭ゲバは・・・天使のように微笑むのだった。(つづく)
関連するキッドのブログ『セクシーボイス アンド ロボ』
月曜日に見る予定のテレビ『ヴォイス・命なき者の声』(フジテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
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コメント
こんにちは~。
「ゲバ」ってそういうことですかぁ。。。
そして「ゲバゲバ90分」なるほど~。
あ~、冨士真奈美さんの「~ズラ」に聞き覚えが!
ケンイチクンの「~ズラ」では思い出せませんでしたわぁ(^_^;)
>傲慢さゆえの殺人許可証発行所がある
キッドさん、上手いですね。
これ認めます(笑)ヾ(゚∇゚*)ダレガ
お陰様で、もっと楽しめそうで嬉しいズラ♪
投稿: mana | 2009年1月18日 (日) 09時32分
ほえ~すっごいマンガだったんですねぇ~。
想像もつかない時代と思ってますが微妙に現代の世相とマッチしていて
過去と現在も混乱してしまいます。
重苦しくてもたれそうですが、
銭と言ったらやっぱりアタシは興味ありますね。
それに乗っ取りだとか面白そうだし。
恐いもの見たさで見たことない世界を見せてもらいたいですね。
そうそう、じいや広尾のお店で買ったマカロンよ。
コーヒーいれてきますね
投稿: エリ | 2009年1月18日 (日) 12時21分
ふふふ・・・まあ、あくまでも
妄想の上のことですが
キッドは死刑や戦争を悪とは考えないので
当然、殺人を悪とも考えません。
もちろん好んで堵殺をしたいとも思いませんが
殺して食わねば死ぬのが命ですからな。
戦争を禁じれば
他国に子供を誘拐され殺されても
耐えがたきを耐え
忍びがたきを忍ばねばならない。
それはそれで無情で無惨なことでございます。
そういう意味でドラマでは
「お前は人殺し」になっても
文句が言えないや・・・
という造形がなされるわけです。
もちろんキッド自身が相手となると
ただでは殺させませんが。
最近では「白夜行」のヒロインとかね。
キッドが知り合いならなんとしても
逃がしてあげたいタイプです。
そういう意味で風太郎は愛おしい。
もちろん茜も愛おしい。
幸せゆえの正義・・・
幸せゆえの説教・・・
幸せゆえの順法精神・・・。
それがまったく育たない社会というのも
ちょっとイヤですけど・・・。
とにかく松ケンの風太郎・・・素敵だと思います。
投稿: キッド | 2009年1月18日 (日) 19時51分
お嬢様には無縁の世界でございますな。
第一にあんな当り屋の接近を許すようでは
お嬢様周辺のガードマンは全員切腹です。
お嬢様がサイクリングをなさる時などは
周囲1キロ四方は完全封鎖が前提でございますからな。
時代はくりかえすと申しますからな。
好景気と不況もサイクルでございます。
平等主義と実力主義の力加減も変転いたします。
現在は弱肉強食と平和共存の衝突の時代。
環境問題などがいい例ですな。
金持ち「CO₂出しすぎたから押さえましょう」
貧乏人「オレたちもかよっ」
というこってす。
そういう意味で「銭ゲバ」は
まったくルネッサンス(再生した)!
と申せましょう。
これはマカロンを・・・。
それではどら焼きやロールケーキなど
じいや秘蔵の甘いものもお出ししますぞ。
食べたら歯磨きしないと虫歯ですぞ~。
投稿: キッド | 2009年1月18日 (日) 20時03分
これは面白いですねぇ( ̄▽ ̄)
久々に日テレらしい作品ですね。
昔あった「家なき子」の成長版ってやつでしょうかね。
その彼女は今もって大変みたいですけど(; ̄∀ ̄)ゞ
さて、こちらの方は
主人公が女性に近付いて何をしていくのか
なんとも野島さんの香りを感じさせるとこが
ありますが、これがどのような方向に向かっていくのか
楽しみな事でございます。
それにしても今期は
男性主演&男性主題歌が多い事。
御嬢様方も喜んでおられます( ̄▽ ̄)
投稿: ikasama4 | 2009年1月19日 (月) 20時00分
まあ・・・1億中流意識の時代に
自分の家庭が普通と考えられない
子供のいじけた心にフィットするストーリーですよね。
だから当然俗悪に指定されるわけです。
今、これだけすべてにおっかなびっくりの時代に
コレをやるというのは
相当にせっぱつまった感じがしますね。
ある意味ロボチームだし。
冒険するズラ。してやるズラ。
というつぶやきが聞こえてきます。
まあ・・・逆に言うと
野島ドラマというのは
どこかジョージ秋山の香りがしていた
ということでございます。
男たちの中の紅一点という考え方が
昔と微妙に違うのは
男社会の中の女ではなくて
ホストクラブのお客的要素が強い気が
キッドは最近ものすごくいたします。
まあ・・・お茶の間を支配するのが
誰か・・・ということなんですが。(; ̄∀ ̄)ゞ
投稿: キッド | 2009年1月19日 (月) 23時11分
昔は可愛かった初代ちびまるこちゃんもだんだんと風貌が(以下略)。
しかし松山ケンイチ(の演じる登場人物)は一種の「永遠のチヤンピオン」なのではないかと思う今日このごろです。Lもロボも銭ゲバも、すべて永遠に転生しつづけるひとつのワタシ空想生命体なのか。
合板工場なのに巨大コンビナートみたいだったところが、観ていて一瞬否認しましたが結局受容です。あのくらいでなきゃあね(笑)。
投稿: 幻灯機 | 2009年1月24日 (土) 16時09分
いやいや・・・この役の
視野のせまい一人よがりのお嬢様役としては
ピッタリですな。
ま、ちびまる子ちゃん自体がそういう役柄ですし。
銭ゲバのモチーフは
ガマガエルだと思うのですが
そういう意味では松ケンは
ちょっとトイプードルすぎる気もします。
しかし・・・原作キャラの実写化に
あたっては天才的な役掴みをしますからね。
今回もかなり・・・銭ゲバずら。
ふふふ・・・狭い世界を
世界の普遍と思ってしまうのは
人間の常でございますからね。
キッドは異常な自分とのおりあいを
常に意識しているので
異常な事件に対する世間の
「信じられない」という声が
信じられなかったり
ビクビクしたりするポイントになります。
そうかあ・・・世間は
そんなことも信じられないのかぁ~みたいな。
投稿: キッド | 2009年1月25日 (日) 01時04分