義を見てせざるは勇なきなり(長澤まさみ)据え膳食わぬは男の恥(小栗旬)
って言う感じの大河ドラマでございます。もう・・・腰が抜けましたわ。なんていうか歴史ロマンを愛する気持ちゼロっていうか、歴史音痴丸出しだ・・・。ひょっとしたら・・・真田家が武田家の配下にあった・・・ということさえ知らないで脚本書いているのでは?・・・と疑える内容。さすがですわ~。ここまで現代感覚でゴリ押せるって天才的ですわ~。(注意・絶賛しています)
単純に言えば、上杉謙信は元亀四年~天正元年、越中にて一向一揆と激戦。応援に来た門徒衆の鉄砲隊に大打撃を食らって撤退です。天正二年には上野沼田城を基点に武蔵を転戦。そして迎えた天正三年です。
その謙信が「信長は仏門のものたちと戦をしている・・・それは義に背く」なんて言うはずないのです。この年、謙信が戦をしないのは・・・内政に専念したからで・・・これまで自治を許してきた越後の国衆たちを信長の独裁体勢を見習って締め付け直した一年だったのです。つまり・・・それまでの烏合の衆から上杉軍団を結成するターニングポイントだったと考えられます。翌年、信長の越中侵攻に一向一揆が脅威を感じ・・・上杉に和睦を求めたことにより謙信は対織田戦に踏み切るのです。謙信は電光石火で越中へ侵攻。反上杉勢力を駆逐します。さらに能登・七尾城攻めでは計略を用い、畠山家臣遊佐続光を裏切らせて七尾城を落城させました。戦国最強武将・上杉謙信に義もへったくりもないんですから~。
まあ・・・でも視聴率↘24.2%に何言っても聞く耳持ちませんよね~。(注意・絶賛しています)
で、『天地人・第5回』(NHK総合090201PM8~)原作・火坂雅志、脚本・小松江里子、演出・片岡敬司を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は待ちに待った特製・織田信長(吉川晃司)書き下ろしイラスト公開です。狂気を秘めた魔王の魅力をあますところなく再現です。ついに直接対決することのなかった軍神・謙信と魔王・信長の水面下の戦を表現する幻の樋口兼続(妻夫木聡)、信長様に直接聞いちゃいましたなどの名場面採録にくわえ・・・「これが一向一揆だ」完全解説付きでございます。浄土真宗の名のもとに坊主だけれど戦国大名に登りつめた本願寺一族の野望がマップ付で簡単に理解できる大特集。特に老いてもなお盛ん。少子化対策にかかせない「蓮如スタイルのススメ」付です。これを読めばあなたも「一向専念無量寿仏」でございます。ご苦労様でした~。
で、天正三年(1575年)となったのだった。ちなみに信長は前年に謙信に洛外洛中図を贈り、その返礼を受けていた頃はまだ信玄の死亡、将軍追放、越前侵攻、摂津侵攻と東海と近畿での戦の処理に追われており、同盟国である謙信の使者を闇討ちすることなどありえないことを一言申し上げておきます。そして・・・天正三年・・・彼の怒りはもっと別のところに向けられていたことは歴史上の事実なのである。もちろん・・・実の弟を殺し、叔父を殺し、幼馴染を殺し、妻の弟を殺し、妹の夫を殺し、敵対するものを殺しに殺して天下布武を目指す魔王の心にはいつの時も絶えることのない悲哀と憤怒が渦巻いているわけだが・・・。
樋口一族は上杉謙信の股肱の将、直江景綱の配下である。本来は坂戸城主・上田長尾衆に属したが謙信の登場により直江家と縁組し、陰の忍びから陽の忍びへ転じた。樋口兼続が上田長尾当主で、謙信の嫡子となった長尾顕景の小姓に抜擢されるとその陰の部分は顕景に属するようになっていた。
越後国主・謙信が使う軒猿は宇佐美一族に統括されていたが・・・それとは別に顕景(後の景勝)と樋口一族の忍びの集団が形勢されていったのである。
謙信の命により、越中国境の経営を担当する顕景にとって樋口一族の目と耳は欠かせないものになっていたのである。
一方、北条と上杉が手切れとなり見捨てられた形となった上杉景虎にもお側集として風魔一族がついている。
つまり越後には謙信の使う軒猿、顕景の使う樋口衆、景虎の使う風魔と三種の忍びが暗躍しているのだった。
越後に土着した樋口一族だが信濃の忍びと縁が深く・・・当然、信濃忍びの上忍である真田一族ともつながっている。
その縁で少年忍者・樋口与六は真田忍びのくのいち初音と出会うのだった。
忍びの所以は多々あるが・・・その一つは斥候(うかみ)にある。偵察行動には忍びはかかせない。また適切な諜報には現場で起こっていることを的確に把握する情報収集力が求められる。樋口一族の申し入れにより・・・真田一族は一人の忍びの仕込みを請け負った。
仕込まれるのは樋口与六。仕込むのが初音だった。
越後越中の国境の一つ、黒姫山の山中で身を潜めていた与六はふと・・・腰の忍者刀の刀身が消えていることに気がついた。一瞬、気が動転する。思わず、周囲を見渡す与六は鞘に重みを感じた。消えたはずの忍者刀が戻っていた。・・・面妖な・・・と思う間もなく、目の前に人影が立っていた。それは山の樵のような毛皮を纏った娘だった。娘は符牒を告げる。与六は気を飲まれながら符牒を返した。
「樋口のものよ・・・名を申せ」
「与六じゃ・・・」年若い娘に対し・・・早くも侮る気持ちを芽生えさせながら与六は名乗った。
「ふふふ・・・師に対し、その心か。自分の刀で自分の首をはねてみるかの・・・どうじゃ」
娘の威嚇に与六は屈した。相手の技量がなみなみならぬものであることを悟るほどには与六は修行を積んでいた。その気配を読んで初音は言葉を続けた。
「初音と呼ぶがよい。ついてまいれ」
言葉の終らぬうちに初音は山奥に向けて歩き出していた。与六は無言で後を追った。
山歩きは忍びの修行の基本の一つである。与六も樋口の忍びとして一通りの扱きを受けている。しかし、城での暮らしによって体は鈍っていた。初音は与六の息遣いをはかりながら歩行速度を加速させていた。
やがて日が落ち・・・山中は夜の闇に包まれた。その岩土と木々に覆われた道なき道を初音はまったく休まずに進んでいく。与六は何度も己の限界を味わっていた。しかし、その体力の極みを試すように初音は進んでいく。最初は初音の体力に驚嘆していた与六だがすでにその余裕を失っていた。ただただ初音の後を追う。無心の境地だった。
夜が明け、森の上から陽射しがこぼれ、やがて再び陽がくれた。その間、二人は誰にも会わなかった。人里はなれた山をどこまでも歩いて行くのである。朝日、乗鞍、雪倉、白馬、唐松、五龍、鳴沢、赤岩、槍、穂高・・・後に日本アルプスと呼ばれる山々を初音は行きつ戻りつしながら緩やかに南下していた。
三日目が過ぎ・・・四日目の朝が来た。その朝日を感じながら与六は初音の声を聞いた。
「よかろう・・・ひとやすみじゃ・・・」
与六はその場に崩れ落ちた。
半年ほどが過ぎていた。すでに与六は初音にさほど遅れることなく、山を歩けるようになっていた。しかし・・・初音と日々を過ごすほど・・・忍びとしての技量の桁違いの凄まじさを知る与六だった。
「初音様・・・」と与六は初音を呼ぶことに何の抵抗もなかった。初音はもはや与六の忍びの師であった。「あれが岩村城でございますか・・・」
美濃・信濃国境の霧たちこめる森の樹上から彼方に見える山城の石垣を認め与六が訊いた。
「そうじゃ・・・織田信長にとって怨み強き城よ・・・」そこで初音は城にまつわる物語を聞かせた。うかみにとってそういう情報の積み重ねが情勢判断の正否を決めるのである。
「古には東美濃は遠山一族の支配する土地。岩村城はその要じゃ。永禄年間、信長は遠山氏と縁組した。信長は亡父・信秀の妹のおつやの方を岩村城主・遠山景任に嫁がせたのじゃ。さらに景任に跡取りがないゆえに信長五男坊丸を養子とした。元亀元年から始まる信玄の上洛戦で別働隊となった武田の将・秋山信友は信濃からこの城を攻め立てた・・・しかし・・・この要害じゃ・・・簡単には落ちん・・・元亀二年、景任が病にて死んだ後も正式に後を継いだ坊丸とおつやの方を主として・・・元亀四年まで・・・城は落ちなんだ・・・しかし、三方ヶ原の戦いで織田・徳川軍が大敗した報が伝わると美濃衆にも動揺が伝わった。当時、信長は将軍家、浅井・朝倉、本願寺に武田と四面楚歌の状況じゃ・・・そこで秋山が奇策に打ってでたのじゃ・・・あろうことか・・・後家を文で口説いた・・・」
「なんと・・・」少年忍者・与六は思わず、口をはさんだ。初音は珍しく微笑んで先を続けた。
「そして・・・あろうことか・・・信長の叔母であり・・・信長の実子を養子としたおつやの方は・・・秋山の誘いに乗ったのじゃ・・・」
「それは・・・」初音は今度は与六をジロリと睨んだ。「・・・」
「・・・おつやの方は開城し・・・坊丸は人質として武田方に送られた・・・まあ・・・東信濃の衆が武田の旗色を読んだというわけじゃ・・・しかし・・・直後に信玄が死んだから・・・運命と言うものはあなどれんものよ・・・」初音は信玄の死に深くかかわる己の師・飛び加藤をふと思い描いた。
「それでは・・・信長は・・・」
「ここから岐阜城は目と鼻の先じゃ・・・喉仏に身内から刃をつきつけられたような気になったであろうな・・・」
「・・・」
「信長殿は・・・恐ろしくも悲しいお方じゃ・・・」
初音は飛び加藤の案内で信長に面会した日を想起した。信長のあの・・・神の如き瞳。その美しさは初音の胸を高鳴らせた。
「さあ・・・参るぞ・・・信濃国境を抜け・・・長篠へ・・・信長の戦ぶりを見て・・・うかみの仕込みを仕上げるのじゃ・・・」
二人は再び・・・山中に消えた。
そして・・・二人は見た。織田信長の恐ろしき戦ぶりを。最前線・高天神城から三河を抑えるために長篠城を攻略中の武田勝頼軍一万五千は・・・織田・徳川連合軍三万に設楽ヶ原に誘い込まれ、三千丁の銃撃を受け・・・自慢の騎馬軍団を壊滅させられ・・・信濃へと敗走していったのである。天正三年・・・五月のことであった。
「与六・・・達者でな・・・」三河・信濃の国境で初音は仮初の弟子である与六に別れを告げた。与六はこみあげてくる情念に謝意の言葉を詰まらせた。その時・・・与六の刀がチンと音を立てた。「猿飛び流秘伝・抜刀空鳴りの術」・・・声を残してすでに初音は姿を消していた。
天正三年、十一月、孤立無援となった岩村城は織田信忠軍三万に包囲され降伏開城した。信忠は父におつやの方と秋山信友の助命を信長に願い出たが信長は無言で座を立った。
おつやの方と秋山信友は並んで長良川の河原に逆さ磔となった。
血液が頭に落ちて・・・目穴、鼻穴、耳穴から血液を滴らせ美貌の姫武将は甥の名を呪詛しながら絶命した。
信長はその報告を聞くと「色狂いじゃ・・・あの世でちちくりあうがよかろうず」とつぶやいた。その蒼顔には暗い憤怒が浮かんでいた。(つづく)
関連するキッドのブログ『第三話のレビュー』
火曜日に見る予定のテレビ『メイちゃんの執事』『トライアングル』(フジテレビ)『神の雫』(日本テレビ)
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コメント
蓮如のようなパワーがあればたしかに少子化も怖くないですが
それが出来るのも金持ちで権力もあるからこそで
だからこそ奥さんもついてきたんでしょうけど
当時の庶民の生活を考えると、とても蓮如みたいな
暮らしは出来んかっただろうと格差を感じてしまう今日この頃(笑)
私は布で息を殺しているのに
ドタドタと廊下を音を立てて歩く刺客のセンスに脱帽でした
でもって真田の忍である初音が織田家にいるのも
真田家が今後の天下の動静を考えた上での事なんだという
深謀遠慮がありますのだ( ̄▽ ̄)ウフフ
みたいな事をしたいがための構成にしたかのような
更に与六と佐吉をここで会わせるという
なんとも幼稚過ぎるような見事な伏線の数々でございます(注意・絶賛しています)
そういえば1576年だと
秋山信友の死もあっさりスルーですねぇ。
信長は身内にも容赦なしですからね。
ちなみに秋山信友と共に亡くなったおつやの方
その日は今の期日に直すと12月23日だそうで。
・・・ふと背筋に寒いものが走りました(; ̄∀ ̄)ゞ
とりあえず1582年におつやの呪いが発動するのかどうか
楽しみにしております( ̄▽ ̄)
投稿: ikasama4 | 2009年2月 3日 (火) 00時01分
✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥
なんていうか・・・「そなたはどう思う?」とかも
あえて違和感を狙っているようでした。
与六に不快を感じた場合この時期の信長なら
その場で自分で殺しますしね。
キッドとしては真田幸村の妹をどうやって
妄想に登場させるかで
かなり四苦八苦した時間に対して
苦笑しましたよ。
また面白き時を送ってしまった・・・でございます。
まあ・・・いざとなったら幸村は二人いたという
いつもの手もあるわけですがーっ。
なにしろ20%超の大河ドラマなので
知らない人にも優しく
知ってる人にはそれなりにの
姿勢が欲しいですよね。
「篤姫」には確実にそれがあったのに・・・。
上杉家臣一同大はしゃぎの図って・・・。
まあ・・・結婚できない男の仇を
仙桃院が討っていると思えば
納得なんですけど。
犬丸また登場しそう・・・。
今回は姉小路家と斉藤(道三)のからみ
飛騨忍軍と秀吉の縁などにも触れたかったのですが
長篠の戦あけて翌年と加速がすごいので
おつや信友・愛の劇場が精一杯でした。
おつやの方の怨霊がどうでるかは
お楽しみ・・・というところです。
まずは謙信逝去が一つのクライマックスですね。
おそらく・・・
加藤段蔵の出番もそこが最後かとー・・・。☩☩☩
投稿: キッド | 2009年2月 3日 (火) 11時32分