銭ゲバの子供は銭ゲバズラ(松山ケンイチ)ノック、ノック、ヘヴンズ・ドア(木南晴夏)カニ食って裏表(椎名桔平)
警官三代の軌跡を描く「警官の血」で敵役の悪徳警官を演ずる椎名桔平・・・ダブルブッキングすぎるだろう。
まあ・・・悪の華のやることなので仁義もへったくりもないのだった。
それはそれで・・・ステキ!である。しかも戦場恐怖症のために倒錯同性愛で殺人鬼の刑事だ。そして善人面した江口洋介、吉岡秀隆、伊藤英明をなぶりまくるのである。・・・テレ朝は変態かっ。
で、『銭ゲバ・第4回』(日本テレビ090207PM9~)原作・ジョージ秋山、脚本・岡田恵和、演出・大谷太郎を見た。現実には殺人事件は毎日のように起こっているのだが、刑事が殺人事件を追うドラマは問題なくても、主人公が殺人を犯すドラマはいろいろと差し障るのが広告の付録にすぎないドラマの限界である。虚構から殺人について学ぶ時は有料のソフトを購入すべきだというのが資本の論理である。
しかし・・・競争主義と平等主義の狭間で・・・社会が安定を保つには安全保障の論理を広く知らしめる必要がある。
勝者は常に少数者であり、多数者の脅威にさらされている。脅威の核心は自暴自棄の爆発である。たとえば、死後の世界を設定する宗教は「死んだら帳消し」という危険な思想を呪縛する枷である。しかし、宗教は「殉教者は天国行き」という逆の手段も有している。
アメリカ同時多発テロが物語るように・・・暴発の結果は勝者と敗者を無差別で殺傷する。
このことから・・・敗者を「生かさず殺さず」の状態に保つことは勝者だけではなく敗者にとっても重要だ・・・ということを告知することは勝者にとって必要不可欠なはずだ。目先の利益にとらわれず、テロリストの論理をひもとくことは企業にとっても有益であることを申し上げておく。
というわけで・・・殺害方法や死体運搬・処理方法は明示されないが、行く手を阻む特権階級の御曹司・白川(田中圭)を殺害し、三國社長(山本圭)宅の広大な裏庭に埋葬したらしい風太郎(松山)。三國社長に取り入るための狂言・傷害事件の真相を追究するものを排除して・・・ついに三國社長の次女・茜(木南)から「風太郎さんと結婚させてほしい」という父へのおねだりを引き出すことに成功する。
三人目を殺すというリスクをおかして、手にいれたリターンである。迎え入れられた朝食のテーブルで・・・対面する社長の気持ちを考慮しながら・・・風太郎はこみ上げる笑いをこらえて言う。
「それは・・・無理ですよ・・・茜さん・・・僕はあなたを愛しているが・・・結婚となると話は別なのです。第一・・・あなたのお父様がそれを許すはずがない。あなたの生れた世界と・・・僕の生れた世界は違うのです。僕は母親を亡くし、父親は行方知らずの放蕩者です。そういう境遇で育った僕にはあなたの世界で生きていく術がないのです。第一・・・そのことで茜さんとお父様の仲がこじれるのは僕の本意ではありません」
茜は風太郎の真意を測りかねたように反論する。「それでは・・・私は・・・この家を出ます・・・あなたの世界へ私を連れて行ってください・・・」
「それが・・・無理だと言うのです。あなたは貧乏の恐ろしさを知らない。貧乏はあなたの美しい心を歪ませることもできるのです。そして・・・貧乏な僕にはあなたを守ってあげることもできないのだ・・・僕にはそれが耐えられない・・・茜さん・・・僕はあなたを愛しているから言うのです・・・あなたはあなたの生れた世界で・・・お父様に守られて・・・あなたにふさわしい方と結ばれるべきなのです・・・そうでなければ・・・あなたは幸せになれません」
「そんな・・・そんなことはない」と美辞を連ねようとする長女・緑(ミムラ)を制止、風太郎はターゲットの三國社長に土下座をする。
「こんなことになるとは・・・僕の本意ではありませんでした・・・どうか、許してください。そして僕がこの家を出ることをお許しください・・・」
「風太郎さん・・・」生れて初めての恋の叶った相手の予想外の行動に呆然とする茜や・・・自分の言いたいことを相手に言われて言葉のない三國社長・・・そして父と妹の間に入って呆然とする緑を残して風太郎は悠然と去って行くのである。
「ふふふ・・・どうだ・・・三國社長・・・あんたはこういう貧乏人がお好みなんだろう。従順で謙虚、そして無欲。奴隷としての分を弁え、けしてあんたの領域を侵そうとしない。実に模範的な貧乏人じゃないか。分るよ・・・金持ちは臆病なものさ。自分の金を盗まれまいといつもアコムしているのだから。持っている金が大きければ・・・大きいほど・・・心配も大きくなるのだものな。もちろん・・・そうして心配してきたからこそ・・・先祖代々、お前たちの金は守られてきたんだろう。しかし・・・金持ちの娘がいつも賢いとは限らないし、いつも美しいとは限らない。いっそ・・・醜い娘を愛せないほどのあんただったら善かったたろうに・・・あんたは醜い娘を愛しているようだ・・・そしてその娘は俺を愛しているようだ。貧乏人にとって愛など一文の価値もないが・・・あんたにとって愛は金にもまさる宝なんだろう。それがあんたの弱みさ。そして持つものの弱みにつけこむのが持たざるものの唯一の強みなんだぜ。さあ・・・おかね・・・いや・・・あかね・・・俺のために愛の証をみせておくれ・・・そして三國社長・・・あんたは愛のために・・・俺に屈することになるズラ・・・」
そして・・・風太郎は待機期間に入った。三國造船での派遣労働をしながら愛に溺れる茜が「なんらかのリアクション」を起すことを待つのである。
その結果がどうなるのか・・・風太郎にも確信はない。しかし、愛するものを失いかけた時、人間が何かをしないではいられないことを風太郎は知っている。タイムカード(出社)・単純作業・タイムカード(退社)のリフレインを味わいながら・・・風太郎の想いは彷徨う。
愛する母親(奥貫薫)が危篤となった時・・・風太郎は医者に走った。しかし・・・医者を連れて戻った時には母親は冷たくなっていた。母親は一人で死んだのだ。
果報を待つ苛立ちに・・・心が冷えた風太郎は・・・母の温もりの残滓である「おふくろの味」・・・「ベラの煮付け」を出す食堂・伊豆屋を訪れる。
それよりも一瞬早く・・・伊豆屋には風太郎そっくりの真一が立ち寄っていた。妹の由香(石橋杏奈)の心配を他所に新規事業のための金の無心をしに現れたのである。
新・ビジネスモデルの提案
恵まれないカップルに愛の手を・・・
コインパーキング型ラブホテル
「ラブホテルは高いから嫌・・・」
「車の中じゃ誰かに見られちゃうし・・・」
そんなカップルたちの救世主 !!
☆完全に守られたプライバシー
☆二人の愛を盛り上げるBGMCD貸出可能
☆お腹がすいた時には・・・充実のフードサービス
お値段はコインパーキング並みに格安・・・
居心地はラブホテル並みに安心快適・・・
その他、様々なサービスを展開予定 !!
現在、出資金を募集しています !!
・・・甥の頼みになけなしの売上金を出資する兄妹の叔父で店の主人(光石研)だった。
真一と入れ替わりに入店した風太郎はその顛末を聞かされる。
「お店のお金を使って大丈夫なのですか・・・」と問う風太郎に店の主人は応える。「大切なのは・・・お金じゃない・・・心だってことでさ」
風太郎の心に母の教えが蘇る。「お金よりも大切なのは心だよ・・・心があれば人間は生きていける」・・・「じゃあ・・・母さん・・・どうしてあんたは死んだんだ」
鬱屈した風太郎は店を出た後で・・・店の前に札束を捨ててみる。それを発見した伊豆屋一家がネコババをする様を見学しようという趣向である。
しかし・・・伊豆屋一家は通りすがりの警察官に落し物を届けるのだった。
「貧乏人の上に・・・馬鹿ズラ」
風太郎の心に賭けに対する不安がよぎる。ちょっとした座興に失敗したので本命に影響するのではないかという杞憂である。自分はついていないかもしれないというギャンブラーにありがちな心の迷いを発したのだった。
しかし・・・その頃・・・茜は風太郎恋しさで自殺未遂をしていた。
ようやく・・・風太郎を迎えに来る緑(ミムラ)・・・妹がそうなる前になんとかしないのが緑である・・・「父の許しも出ています・・・どうか・・・妹と結婚してあげてください・・・」
風太郎は賭けに勝った。三國の家に戻り、茜の婚約者となった風太郎。
野末の花を一輪・・・埋葬した白川の名もなき墓に添える風太郎。
「天国の暮らしは楽しいですか・・・僕はこちらで元気にやっています・・・あなたのお望み通りにはいかず・・・乞われて三國家の一員となりましたよ・・・あなたの世界からあなたが消えて代わりに僕が迎えられたのです・・・計算合ってますよね」
しかし・・・持つものになった以上・・・持たざるものからのターゲットになるのである。早速、三國家に訪れるハイエナは・・・風太郎の父・健蔵(椎名桔平)だった。
「いやあ・・・めでたい・・・私の息子は・・・辛い境遇を生きて来ました・・・幼くして母に死に別れ・・・そのために・・・私は呆然自失になってしまい・・・親らしいことを何一つしてやれなくなりました・・・それどころか酒に溺れた私は息子の顔に傷跡を残すほどの折檻をする始末です・・・それなのに・・・親の私が言うのもなんですが・・・息子は真面目で立派な男になりました・・・私はもう少し楽しく生きてもらいたいと願うほどです・・・しかし・・・皆様のような立派な家族を与えられて・・・風太郎もやっと幸せになれる・・・そう思うと・・・私は絶っていた酒を飲んでもいいような気持ちになるのでございます」
健蔵は如才なくふるまい・・・三國家の高級な酒にもありつく。風太郎の心はかき乱されるのだった。
その夜・・・風太郎の部屋に宿泊した健蔵は本心を吐露する。
「よくやったな・・・流石は俺の息子だ・・・どんな手を使ったんだ・・・あんな金持ちどもをたらしこむとはな・・・」
「何しに来たズラ」
「もちろん・・・あいつらの金を全部奪うつもりなんだろう。見たか・・・あいつらの顔を笑いながら俺たち貧乏人を軽蔑して・・・いや・・・軽蔑どころか・・・ゴミあつかいしてやがる・・・あいつらにこの世の苦しみを味あわせてやる・・・そう思っているんだろう・・・俺にも一口かませろよ・・・」
「金をやるから・・・とっとと出て行ってくれ・・・」
「ふふふ・・・冷たいねえ・・・風太郎ちゃん」
風太郎は・・・眠った。しかし・・・健蔵は夜行性だった。
その頃・・・緑は連絡のとれない白川の携帯電話を呼び出していた。
その着信音は怨念の風に乗り・・・家政婦の春子(志保)の耳に届く。
誘われるように・・・音源を求める春子。それは裏庭の土の中にあった。暗い予感にせきたてられて・・・土を掘り返す春子。そして・・・土の中に人間の指が埋まっているのを・・・家政婦は見た。
それを見たために蒼白になって屋敷に戻る春子の姿を健蔵は見逃さなかった。
「あの時・・・殺していればよかった・・・」と悪夢にうなされる風太郎。しかし、夢の中で健蔵は囁く。「他人を殺すのと親を殺すのでは一味違うだろう・・・俺だってお前を殴った時、ちょっと嫌な気分になるものな・・・ふふふ・・・ははは」
翌朝・・・健蔵は消えていた。緑と茜とともに結婚式の衣装合わせに出向く風太郎。
ウエディング・ドレスを試着する茜を待ちながら・・・緑は風太郎に説教をする。
「風太郎くんは・・・お金持ちの世界とか・・・貧乏人の世界とか・・・区別するのはよくないと思うの・・・お金持ちにだっていろいろな人がいると思うのよ。この世にお金持ちなんて名前の人はいないのよ・・・これは姉から弟へのアドバイスなの」
「僕はお金持ちの世界を外からしか見ていなかった・・・でも・・・緑さんや茜さんに出会ってお金持ちの人にも素晴らしい人がいることを知りました。ありがとう・・・お姉さん」
しかし・・・風太郎の目には痣のある少女の晴れやかな笑顔も・・・純白のウエディング・ドレスも・・・ただの札束にしか見えないのだった。「一人、一人のあんたらの名前・・・そんなもの意味はない・・・だってあんたらは俺の目にはお金にしか見えないズラ」
その頃・・・警察には匿名の電話がかかっていた。「三國家の裏庭には死体が埋まっている」
その情報により・・・三國邸を訪れた刑事たち。
「悪戯だと思うが・・・気持ち悪いので調査してください」と応じる三國社長。
発掘作業が始まり・・・風太郎の心は絶体絶命の境地にたどり着く。
その風太郎の顔色を窺う・・・家政婦の春子。そして弟を風太郎に殺されたと疑う荻野刑事(宮川大輔)・・・。
ドラマ版の風太郎の顔はマンガ版の風太郎の顔にどんどん変形していくのだった。
「誰が・・・誰が・・・通報した・・・誰が・・・それを知っていた・・・やめろ・・・それ以上・・・掘るな・・・もう充分じゃないか・・・それ以上・・・掘ったら・・・だめだぞ・・・グロテスクなものが出てきてスポンサー全社撤退だぞぉぉぉぉ・・・やめて・・・もう・・・やめて・・・地獄極楽ド畜生・・・南無阿弥陀仏の人生さ・・・誰だ・・・誰が・・・俺の人生をメチャクチャにしようとしているのか・・・許さんズラ」
しかし・・・埋まっていたのは死体ではなく一枚のへのへのもへじだった。
「馬鹿が見るぅ・・・・」
「オヤジ・・・」
その頃、健蔵は息子からせびった金でカニを食っていた。
「ふふふ・・・風太郎ちゃん・・・お前の首ねっこをお父ちゃん・・・つかまえちまったよぉ」
健蔵はとにかくカニを食うのだった。(つづく)
関連するキッドのブログ『第3回のレビュー』
月曜日に見る予定のテレビ『ヴォイス・命なき者の声』(フジテレビ)
ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。
皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。
| 固定リンク
« やるときはやるのがラブシャッフル(玉木宏)いや~ん(香里奈)おっきい(吉高由里子) | トップページ | 間違った戦国時代が語られています、正しい歴史認識のために天地人総とっかえしてください。(妻夫木聡) »
コメント
マスコミさんが格差だと騒いでいるよりも
このドラマの言葉の方がとってもこの世の
真理を突いているような気もしてしまう
病み付きにさせるような魅力を感じさせる
このドラマ。
彼らの言葉で語られる過去の出来事は真実なんだけど
それは金持ちを同情させるための道具でしかないという
金のためならば犯罪だろうが子だろうが何でも利用する
これがなんともいいですねぇ(゚∀゚)
とりあえず只今風太郎ロイドを作成してるんですが
油断するとこっちがヤラれそうなのでとっても注意が
必要です(; ̄∀ ̄)ゞ
さて、もうひといきで
(;゚д゚)ァ.... しまっザク・・・グフ
こ、これがひ、秘剣「鬼の爪」か・・・・・バタッ
投稿: ikasama4 | 2009年2月10日 (火) 21時43分
✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥
どど~ん!と新作松山風太郎が来ましたな~。
あの瞳に映るものは銭なのでございましょうか・・・。
悲しみを秘めた「悪」の目。素晴らしい出来です。
父親に椎名桔平を配したときから
父と子が重要な要素となるとは思いましたが
今回はまさにしたたかな父子共演。
そしてみすぼらしく見えた父が
息子が眠ってしまった後も
目を光らせて
悪の機会を見逃さないというそそる展開でした。
もはや「愛」なのか「悪」なのか
見定め難い勢いでございます。
お金持ちを見下す風太郎は
まだ若さに酔っている・・・。
父のドス黒さは
その甘さを見下しているかのよう。
そして息子の金でカニを食うのです。
女を買うのですなーっ。
・・・おおっ・・・ソースケロイドを
完成させたikasama4博士とも
あろうお方が
風太郎ロイドの毒牙にかかるとは・・・。
こ、これは禁断のオメガ因子の設計図。
まさか・・・この開発に手をお出しになるとは・・・。
緊急配備ーっ。
非常呼集ーっ。
警備ロイド最大展開。
悪のダークロイドが闘争中。
射殺を許可するーっ。
投稿: キッド | 2009年2月13日 (金) 00時20分