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2009年3月31日 (火)

毎回、殺されるために主演してますが何か?(谷村美月)トリハダ5(佐藤千亜妃)

トリハダの季節です・・・いつだよっ。

意外なことに一度もレビューしていないのだった。ホラーで、谷村美月で、深夜なのにだっ。

それは「世にも奇妙な物語」の後の深夜ということにも関係している。今回も「輪廻ノ村」(伊藤美咲)と「真夜中の殺人者」(相武紗季)と美女と恐怖の二編が「春の特別篇」にあって・・・そちらについて書きたい気持ちもある。

けれど・・・前回の「トリハダ4」あたりから・・・かなり練れてきて・・・というかこの形式にこちらも慣れてきて面白みが高まってきたので・・・トリハダにチャレンジしてみたい。

で、『トリハダ5』(フジテレビ099331AM0135~)脚本・演出・三木康一郎を見た。オムニバス・ホラーであるが、メイン・ストーリーとサブ・ストーリーが混在するスタイル。メイン・ストーリーはつなぎの役目も果たす。このメイン・ストーリーの主役がトリハダ、トリハダ3、トリハダ4、トリハダ5と谷村美月である。ちなみにトリハダ2は佐津川愛美だ。

基本的に谷村美月は一人暮らしで、危うい少女である。そして・・・ストーカー的なものに狙われる宿命であるらしい。

道具立てとして電話あるいは携帯電話はかかせない。春は「はじめての一人暮らし」のシーズンであるから・・・お茶の間のそういう漠然とした不安をベースにしている。本当に一人暮らしを始める人を中心に・・・その家族も恐怖の標的になるし・・・多くの人々が「その頃」の記憶を持っているところも「恐怖の普遍化」を即すのである。

「トリハダ」では深夜のテレビの砂嵐から「寿命」コードが携帯電話で読み取れると知った主人公が試みると残り時間一分だったりするし、「トリハダ3」では窓から主人公をずっと監視していた向かいの家の住人が首吊り死体だったりする。「トリハダ4」ではコインランドリーから暇つぶしに悪戯電話をしていた主人公が「死亡時刻」を指定され・・・オムニバス・ドラマの最終話でヒロイン(佐津川)が出会い系で知り合った狂人に狙われるところをリンクした展開で人違い殺人の犠牲者になったり・・・となかなかおしゃれなのだった。

そして、「トリハダ5」では崎山里香(谷村)となった主人公。一人暮らしのアパートに戻る途中で知人の女性から携帯に電話がある。「あなたの個人情報がインターネットで流出している」と告げられるのである。部屋に戻ってネットにアクセスするとそこには盗撮された彼女の写真と誹謗中傷・・・そして彼女を殺害した者へ賞金を出すといったメッセージが。里香は交際中の男性に電話をして助けを求めるが留守電である。

このメインストーリーをはさみながら・・・ショート・エビソードが語られていくのだ。

ホラーの基本は「死」である。「死」が恐怖の源であることは疑いようのないことだが、そこから湧き出る泉はいくつかの種類がある。その一つは「不安」である。「死」の向こう側は基本的に未知の領域である。そこに何があるのか不明だから恐ろしい。次に「死」を「存在の終わり」と漠然と考えればそこには自己の消滅の恐怖がある。「生」を素晴らしいと感じる人ほどそれを失うことへの恐怖は大きい。そして「死ぬ苦しみ」として語られる「苦痛」への恐れがある。「死ぬほど痛い」ってどれだけ痛いんだ・・・である。

その「死」へ主人公を導くのは様々な運命であるが・・・その一つが「愛」だ。殺したいほど「愛される」というのは実に迷惑な話てある。次に「憎しみ」である。「殺したいほど憎まれる」のには・・・多くの場合、「愛」が介入してくる。そして、最後は「偶然」なのである。「偶然」ほど恐ろしいものはない。それを回避する方法を見つけにくいからである。

人は生きていることに気がつく。それは死ぬことに気がつくのと同時である場合が多い。何かに気がつくのは恐怖の始まりなのである。

若い男(阿部進之介)の部屋に恋人が訪ねてくる。男の卒業アルバムをネタにしておしゃべりに興ずる恋人。男がふと窓から外を見ると路上の電話ボックスに少女が一人立っている。

トリハダではスーパーナチュラルホラーの要素は薄い。どちらかといえばナチュラルな生身の狂気がベースである。その中で、この話はスーパー要素が強い。

それは少女を演じるのが身長138cmの24才、笹野鈴々音だからである。

「ねえ・・・この中であなたが好きだった人いる?・・・じゃ、あなたのこと好きだった人は?」

その他愛もないおしゃべりから男は恐怖を見出す。電話ボックスの少女が少女でないことに気付くのである。そして・・・少女は電話ボックスから男を見上げて微笑むのである。

逆上した男は部屋を飛び出し・・・電話ボックスにかけつけるが・・・そこに少女はいない。

少女は部屋にいた。この素早さがスーパーである。唖然とする男を少女は部屋から見下ろしながら哄笑である。その不気味な顔立ちは血まみれで・・・部屋には恋人が倒れている。卒業アルバムには少女の写真がある。その日から愛している愛している愛している愛している愛している愛している・・・殺してやるだったらしい。

その頃、里香は何度も恋人に電話をするが・・・留守電。思いあまって知人女性に電話をすると駆けつけてくれるという。

無力や弱さは「死」に直結している。安定した社会はそれを隠蔽するが本質は弱肉強食である。

若い女(清水美那)は町会長(鈴木砂羽)から呼び出される。町会の仕事について会話していると突然、ブザーがなる。それは室内のインターフォンのようなものから聞こえるがただならぬ切迫感がある。しかし・・・町会長はまるで何事もなくふるまうのである。

鳴り続ける警告音に若い女は恐怖を感じるが町会長はとりあわない。

やがて・・・ブザーは鳴り止み・・・静寂の中で町会長は別室の扉を開き、中の様子を確認する。おそらく・・・そこには要介護者がいる。いや・・・いたのである。

「あなたは何も聞かなかったわよね・・・」

町会長に告げられて若い女は立ちすくむのだった。

その頃、里香は・・・知人の女性の到着を待っていた。

人は自分の言葉に力があればいいと考えることがある。しかし、言葉に力があると知るのは恐ろしいことである。

ライブチャットでアルバイトをする女子大生(石橋杏奈)は不気味な客に戸惑う。しかしネット越しに会うのは安全であると女子大生は思う。何度か、無言の対面を重ねるうちに・・・女子大生は一方的な身の上話をする。「むかつく女(長谷川恵美)がいてさ・・・死ねって感じよ」・・・そして次のチャットで・・・女子大生は「むかつく女の死体」とご対面である。「あんた・・・何してんのよ・・・警察に言うよ・・・」すると血相を変えた客はライブチャットの画面から遠ざかる。するとそこは女子大生の部屋の前の廊下である。たちまちノックされるドア。

愛の示し方は人それぞれなのである。

そして・・・里香は不安に苛まれながら恋人に何度も電話をする。

花粉症の季節である。おそらくネット通販で入手した瓶詰めのカプセル薬を常用する花粉症の女(佐藤千亜妃)・・・。郵便受けに連日、封筒入りの奇妙な写真が届く。玄関にロックのないマンションの恐怖である。「焼死体」「白骨」「白骨を粉砕」と開ける度に写真を取り落とす花粉症の女だが・・・写真にストーリーを見出すのだった。やがてそれは「白骨の粉」「粉とカプセル」「カプセルと瓶」と続き・・・花粉症女は常用しているクスリの正体を知り吐き気を感じる。しかし・・・もはや成分は彼女の骨肉と化しているらしい。

日常的なものの意外な正体を知ることは恐ろしいことだ。

里香のアパートの前にバイクが停車して見知らぬ男が降り立つ。そこへ知人女性から電話があり「あなたの部屋のベランダに・・・急いで部屋を出て・・・」とせきたてる。あわてて部屋を飛び出した里香は知人女性の車の中で安堵の息を吐く。しかし・・・ドライバーズシートの女の目は闇に光るのである。

夜の電車の中で老人に席も譲らず、携帯ゲームに熱中する男。深夜の路上で突然ロール・プレイング・ゲームが始まる。好奇心は猫を殺すという人生の基本が分っていないのである。コマンド指示は路上にガムテープで装着された紙に手書きで書かれている。「姫を救え」という指示に誘われて、ゲーマーは公衆電話に置かれたサイフ(金貨)、バスストップのベンチで指輪(魔法のリング)、歩道橋の上でくぎ抜き=バール(聖なる剣)を入手する。

やがて・・・地下道で待っていたのは血まみれの死体となった里香だった。

そこで通りがかった女性は「人殺し」と叫ぶのである。ゲーマーの手にあるのが里香のサイフ、里香の指輪、里香を殺した凶器であることは言うまでもない。その証拠に癖で無意識に頬を撫でた男の顔は血塗られたのだった。

気がつかない間に殺人犯に仕立てられた男はパトカーのサイレンを聞く。その音は現場を立ち去る真犯人の女の耳にも届いていた。

なかなか小粋なのである。人々は愛という欲望に燃えて恐怖を生み出し、信頼という誤解に気がつき恐怖するのである。春の夜の恐ろしい夢です。

関連するキッドのブログ『着信アリ Final

水曜日に見る予定のテレビ『湯けむりスナイパー』(テレビ東京)・・・まあ「ショコラ」とか「ドリフ」とか「はねる」とかいろいろありますが・・・。

ところでSPAMコメントが一日50件を越えたのでしばらく、承認制度に移行します。

皆様には不自由とご迷惑をおかけして本当に申し訳アリマセン。

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